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シナリオ詳細

<Despair Blue>山のごとくそびえたつもの

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●絶望の海域とブルー・タイラント
 絶望の青。
 前人未到のその海域は、まさに人を拒むかの如き様相を呈していた。
 まるで意志持つように唸り襲い来る嵐。
 熟練の航海士がその全神経を注いでようやく安定するかしないかという綱渡りの海路。
 そして何より――この胸をざわつかせる、強烈な違和感だ。
 それは確かに、この海を行く人々の胸をかき乱す。
 絶望の青に足を踏み入れてから続く――あの『異様な臭さ』を嗅いでから続く、ざわざわとした何か。あるいは実際に体調に影響を受けた者もいるのかもしれない。
 絶望の青はまさに異常たる海――病もまた、行く手を阻む要因となりえる。
 今はまだ、強い影響は出ていないとはいえ。充分に留意する必要があるだろう……。

 イレギュラーズ達は旗艦船の上で、絶望の青における何度目かの朝日を迎えた。今日の天気は比較的良好。とはいえ、絶望の青においては全く、まばたきをした瞬間に天気が変わる事すらある。油断はできない。
「天候、海そのもの、狂王種(ブルータイラント)……障害は多いですからな」
 旗艦船の船長がイレギュラーズ達へと笑いかける。ある程度航海を同じくしたこともあり、イレギュラーズ達の中にも、船員達と打ち解けた物もいるかもしれない。
「今日も気を付けて行きましょう、イレギュラーズの皆さん」
 挨拶に、イレギュラーズ達はそれぞれの返答を返す。
 ――と。
 にわかに周囲がざわつきだした。
「なんだ……ありゃぁ?」
「島じゃないのか?」
「どうした、報告しなさい」
 船長の言葉に、一人の船員が駆け寄ってくる。
「はぁ、それが前方に突然、巨大な物体が現れたのであります」
「巨大な物体?」
「はい。それがなんとも全容がつかみにくく……巨大な、長い、細長い山と言いますか……」
 船員自身も、それが何なのか、まったくわからないらしい。イレギュラーズ達も、どうした事かと前方を見てみれば、確かに船員の言葉通り、奇妙な――細長く巨大な何かが、そびえたっていた。よく見れば、それは徐々にこちらに近づいてくるのが分かっただろう。ずり。ずり。と、まるで海中から上半身を出して歩くかのように――。
 それが近づいてくるにつれて、それが一体何なのか、判明することになる。
「なん……だ……?」
 船員達が、あっけにとられた声をあげた。
 イレギュラーズ達の中にも、思わず圧倒された者がいたかもしれない。
 それはまったくもって、異質な物体だった。
 まず、全体が白い毛皮に覆われていた。此方の船の甲板のあたりくらいの高さの位置に、巨大な細い、二本の、これまた細長い棒状の何かがくっついている。
 さらにその上には、顔があった。二つの眼と、尖った耳――。
「ね、猫?」
 そう。その物体は、白猫だった。
 猫の前足あたりを抱き上げて、にゅーん、と身体全体を伸ばした状態を想像してみてほしい。猫はちょうどそのような状態で、腹辺りから上半身を海上に出して、ゆっくりと、ゆっくりと、此方に向って――おそらく二足歩行で――歩いてきているのだ!
「にゃーん、猫です」
 そしてそれは、可愛らしい口元を開いて、確かにそう言った。
「喋っ……た……」
「きょ、狂王種か!?」
 船員達が騒ぎ出す。おそらくはその通り、狂王種であろう。まったくもって意味は不明だが、二足歩行するにょーんとのびた巨大な白猫の狂王種――。
「勝手ですが、今から皆さんで遊ぼうと思います」
 白猫はにゃあ、と鳴きながら、その巨大な前足を、旗艦船の甲板へと叩きつけた。
 鋭い爪が甲板に突き刺さり、ぐい、と胸元へと引き寄せられる。ぎょろり、と猫の眼が、甲板の上を睥睨する。
「これまずいですよ、イレギュラーズさん!」
 船長が叫ぶ。まったくもってシュール、かつ意味不明な状況ではあるが、このサイズの猫に遊ばれては、船が壊滅状態に陥る事は目に見えている。
 なれば戦うしかあるまい。イレギュラーズ達は、この白猫を撃退し、生き延びなければならないのだ……!

GMコメント

 にゃーん。洗井落雲です。

●成功条件
 『白猫』の撃退

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●状況
 絶望の青での航海中に、狂王種、『白猫』に遭遇しました。
 白猫は、イレギュラーズの皆さんが乗る旗艦船をがっちりと掴んでおり、逃がそうとはしません。
 このままでは、そう遠くないうちに『白猫によって玩具にされて』船は破壊されてしまうでしょう。
 そうなる前に、白猫と戦い、この白猫を撃退してください。

●エネミーデータ
 白猫ヘッド ×1
  白猫の頭です。この部位を倒すことができれば、白猫は撤退します。
  主に目から猫ビームを放ち、遠距離攻撃を行ってきます。

 白猫あんよ ×2
  白猫の前足です。近接距離の物理範囲攻撃を行ってきます。
 
 白猫ヘッド、白猫あんよ、何方もそうですが、『興味を引くことができれば』、そちらに攻撃を誘発させることができます。猫なので、動き回るものとかに弱いかもしれません。

 以上となります。
 それでは、皆様のご参加をお待ちしておりますにゃーん。

  • <Despair Blue>山のごとくそびえたつもの完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年02月21日 22時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ノリア・ソーリア(p3p000062)
半透明の人魚
十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)
灰雪に舞う翼
寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
リナリナ(p3p006258)
湖宝 卵丸(p3p006737)
蒼蘭海賊団団長
スノウスノウ・プラチナム・メルヘニア(p3p008056)
白妙の吸血姫

リプレイ

●船上の白猫
「にゃーん」
 と、白猫が可愛らしい鳴き声をあげると同時に、船を抱える両手をグラグラと揺らしだした。
 それだけで、まるで大津波に襲われたかのように船上が踊り狂う。
 船員達はそれぞれ帆や扉などにしがみつき、海へと放り出されることをどうにか堪えている。だがそれも、空しい抵抗と言えただろう。今はまだ、船を揺らして遊んでいるだけの猫が、本気で遊び始めたらどうなるか――船自体が、容易に転覆することは目に見えていた。
「ど、どうしてこんな所に、白猫さんがいるんですのー!?」
 帆につながるロープにしがみつきながら、悲鳴を上げるのは『白妙の吸血姫』スノウスノウ・プラチナム・メルヘニア(p3p008056)である。スノウスノウの言う通り、どうしてこんな所に猫が、しかも二足歩行で海に突っ立っているのか。まったくもって意味不明であるが、常識の範囲外の出来事が起こるのが、絶望の青と言う物だ。まぁ、それでもかなり異常事態ではあるかもしれなかったが。
「大海獣ギガにゃん!! このままだとリナリナたち、海のもずくだゾ!」
 器用にバランスを取りながら、『天然蝕』リナリナ(p3p006258)が声をあげる。もずく……藻屑、と言いたかったのだ。さておき、猫が遊んでいる――とは可愛らしい光景であったが、遊ばれる側としてはたまったものではないし、事実船はぎしぎしときしみ始めている。
「狂王種って変なのばっかりだよ! どうするの、これ!?」
 わたわたと慌てる『猫さんと宝探し』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)。流石のアクセルも、こんな猫と一緒に宝探しはしたくあるまい。
「どうするって……やるしかないでしょう? 圧倒的猫派の俺でも、こんな猫はいらないっ!」
 『女王忠節』秋宮・史之(p3p002233)の発言に、仲間達は同意した。船の揺れが収まった僅かなタイミングをつき、イレギュラーズ達は一斉に船首、猫の前足と顔の待つ方へと駆け抜ける!
「にゃ?」
 そんなイレギュラーズ達を見つけ、白猫は可愛らしく小首をかしげる。仕草は可愛らしかったが、その顔は巨大――人間なら、一口で食べてしまえるほどに。
「別に海種だからってわけじゃないが……」
 じろり、とこちらを見やる白猫へ、表情を歪めつつ吐き捨てたのは、『濁りの蒼海』十夜 縁(p3p000099)だった。
「流石に、このサイズの捕食動物はおっかねぇな……!」
「にゃーん、新しいおもちゃの皆さんですか?」
 イレギュラーズ達を前に、白猫は傲慢ともとれる発言をした――やはり野生の(?)白猫にとっては、小さな動物などおもちゃか餌でしかないという事なのだろう。
「猫さん! いたずらはダメだよ! どうしてこんなことするの!?」
 叱るような口調で、『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)が声をあげる。白猫はにゃーん、と首をかしげると、
「どうしてと言われましても……本能的なものですにゃん」
 などと言い放つのである。
「そうじゃなくて、いたずらはやめて!」
 焔の言葉に、しかし白猫は困惑するそぶりを見せるだけだ。
「本能的なものなので……どうしてやめないといけないのですにゃん?」
「会話はできるのに、話が通じない感じがしますの……!」
 びくりと身を震わせて、『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)が呟く。多少可愛らしくても、やはり相手は狂王種――狂いし海の怪物なのだ。
「……わかったぞ!」
 ふと、誰かが声をあげた――そちらの方に視線をやれば、得心の言った表情で、『蒼蘭海賊団団長』湖宝 卵丸(p3p006737)がぽん、と手を叩いていた。
「海にいる猫……これが噂に聞いていたウミネコなんだなっ!?」
 それは違う、と、その場にいた全員が胸中で突っ込んだ――実際に口に出して突っ込もうと思ったが、ぐらり、と白猫により船上が揺らされ、その辺はうやむやになっていく。
「にゃーん、では、遊ばせてもらいます」
 白猫が、そのあんよを持ち上げ、甲板上へと叩きつけた。ぷに、とした肉球が、しかし激しい重量を伴って落下してくる。それは充分に、凶器と言えるものであった。
 イレギュラーズ達は、とっさに散会してそれを回避。みしり、と音を立てて、あんよが落着する。甲板に激しくひびが入り、船の崩壊が一歩近づく――。
「まったく、こりゃあまり余裕はなさそうだな!」
 縁が些かの焦りを見せつつそう言った。このまま猫の隙にさせていては、そう遠くないうちに船体は破壊され、此方は海に放り出されるだろう。
「わるいこにはおしおきですの!」
 スノウスノウは緊張の面持ちで、武器を構えた。合わせるように、イレギュラーズ達も武器を構え、戦闘態勢に入る。
「敵の攻撃は、オイラ達でひきつけるよ!」
 アクセルが声をあげるのへ、
「うう、恐ろしいですけれど……皆さんを、信じていますの!」
 ノリアはそう言う。ノリアの『つるんとしたゼラチン質のしっぽ』……それは食材としての適性抜群のしっぽである。猫にとっては美味しいおやつ。まさに身を削る思いであるが、囮としては充分な能力を持っているといえた。
「おー! じゃあギガにゃん退治、始めるゾ!」
 リナリナが声をあげ、イレギュラーズ達は一斉に動きだした。
「イザベラ女王陛下、俺に加護を!」
 史之が声をあげ、
「勝負だ、ウミネコっ!」
 卵丸も叫ぶ。
 かくして、絶望の青の海の上、非現実めいた戦いの幕が上がった。

●戦え! VS白猫!
「にゃーん、活きのいいおもちゃです」
 余裕の表れか、あるいは本気でそう思っているのか、白猫は両あんよを振り上げ、イレギュラーズ達を迎え撃つ。落着してきたあんよに、攻撃を加えたのは卵丸だった。
「船は壊させないぞっ! 掛かれ虹の橋……必殺、蒼・海・斬!」
 放たれた虹色の斬撃が、右あんよの毛を斬り飛ばした。未だ致命打には遠い――巨大故に、肉を切り裂くのも一苦労となりそうだ。
「やれやれ、こいつは苦労させられそうだ」
 流れるような一撃を、右あんよに加えるのは縁だ。攻撃の反動は、未だ肉へと届くことなき――もふり、とした感触である。異常生物とはいえ、そこは猫なのだろう。もふもふとしていた。
「こっちは裏から回って、直接頭を叩きます!」
 史之が声をあげるのへ、
「おう、下手打つんじゃないぞ!」
 縁が声をあげる。史之は頷いて返した。
「こんな所で沈むつもりはありません……絶望の青を踏破するためにも!」
 史之は力強くそう言うと、一気に海に飛び込む。海洋のため――イザベラ女王陛下のために。荒れ狂う海の中を、史之は泳いだ。
 一方、
「顔が弱点! これ、直感! 間違いないゾッ!」
 リナリナが叫び、放り投げたマンモのお肉が、やや時間をおいて白猫の額へと落着する。ぼふん、と音を立て、しかし勢いのついた攻撃が、白猫の頭をくらり、と揺らした。
「にゃーん、なんてことを」
 怒りと共に、猫の眼が輝いた。刹那、放たれるビームが、甲板を薙ぐように踊り狂う。
「直撃したら、船が危ない……!」
 焔は声をあげて、跳躍。ビームの前へと立ちはだかった。『神々の加護』、その力を集中させ、可能な限りビームの威力を減衰させる。
 じゅお、と音を立てて、ビームが焔の身体をじりじりと焦がした。しかし、その献身の甲斐あって、ビームの射線から船は外れ、海上をじゅう、と蒸発させる。
「もう……っていうか、どうして猫さんがこんな所にいるの? 猫さんって、水が苦手なんじゃないの?」
「にゃーん、生まれた時からここに居ましたので……」
 焔の言葉に、困ったような顔で回答する猫。猫ではあるが、微妙に猫とは違う生命体であるのかもしれない。
「船と、皆に攻撃を集中させたら危険だ! オイラたちで囮になるよ!」
 アクセルが叫び、甲板をかけ、
「うう、さ、さぁ! おいしい『のれそれ』ですのよ~!」
 ノリアはそのしっぽを伸ばしたり縮ませたりしながら、白猫の注意をひく。
「にゃにゃ、鳥さんに、お魚さんですね」
 ぐお、と両のあんよが、二人に迫る。二人は器用に動き回り、あんよの落着ポイントから逃げおおせて見せた。
「ほらほら、こっちだよ!」
 アクセルが白猫を挑発するように動き回る。あんよがそれを追うように、振り下ろされた。
「隙あり、ですのー!」
 スノウスノウが放つ、血飛沫――それは鋭い刃となって、落着したあんよの毛を斬り飛ばす。いや、それだけではなく、落着した隙をつかれた形となったあんよの皮膚を斬り飛ばし、猫の血を吹き上げさせた。
「ぎにゃー、痛いです」
 たまらず、白猫はその両の眼を「><」と言った形に変えて悲鳴を上げた。
「うう、なにか悪いコトをしているような気がしますけれど、心を鬼にするですの!」
 続く斬撃が、あんよにさらなるダメージを与える。これにはたまらず、白猫もあんよを持ち上げて退避。
「うにゃー、酷いです。こうなったら、ねこも本気です」
 にゃあ、と鳴き声をあげ、放たれる猫ビーム。標的にされたノリアが、ひらり、と身体を泳がせて直撃を回避。擦過する光線が、ノリアのしっぽをチリチリと焼いた。
「痛たた、焼けてしまいますの!」
 悲鳴を上げるノリア。しかし、囮としての役目は充分以上に果たせていたし、ノリアの攻撃反射の特性により跳ね返ったビームの一部が、白猫の頭に直撃、少しずつダメージを蓄積させていた。
「船は玩具じゃないんだぞっ、離せ! ……喰らえっ、音速の一撃!」
 卵丸の繰り出した音速の斬撃が、右あんよを切り裂く。ざすっ、と音を立てて切り裂かれたあんよから、激しく血が噴き出す!
「い、いたーい、にゃ!」
 たまらず右あんよを引っ込める白猫。この様子では、右あんよはもはや使い物にはならないだろう。残るは左のあんよと、顔だけだ。
 苦し紛れに振り下ろされた左あんよを、イレギュラーズ達は散開して回避。左あんよを引っ込める前に、縁の痛烈な打撃が突き刺さる!
「こういうのを何て言うんだったかねぇ。窮鼠猫を噛む、好奇心猫を殺す……要は、迂闊に何にでも手を出すと痛い目みるってことだ」
「にゃーん!」
 泣き声のような鳴き声をあげる白猫。ダメージは確実に蓄積され、戦況は徐々にイレギュラーズ達へと傾きつつある――と、その時、水中から飛び出してきたのは、史之だ。史之は白猫の頭目がけて一気に飛び上がると、そのまま頭のてっぺんへと着地!
「こいつ普段なに食ってんだろ。狂王種のマグロとか? 一大スペクタクルだなー」
 にいっ、と笑いながら、史之は猫の頭を殴りつけた。途端、発生した斥力場が、頭頂部から猫に叩きつけられる!
「にゃにゃにゃにゃ、これは痛いです!」
 たまらず頭を振る白猫。史之はその勢いに逆らわず、あえて海へと落ちる道を選んでみせた。落下上等、何度でも登って見せるだけだ。
「皆、一気に決めてくださいっ!」
 史之は叫ぶとともに、一度海へ。再び浮かび上がり、頭頂部目がけて飛翔!
 一方、仲間達も、防御の手を一つ失った白猫ヘッドへ、一気に攻撃を加えていた。
「猫さんは、ヒゲを切られるとバランスが取れなくなるって言うけど……!」
 焔は手にした『カグツチ天火』へと力を集中し、力強く振るった。途端、刃に貯められた炎が斬撃となり、一気に解き放たれる! 斬! 炎の刃が猫のヒゲを根元近くから斬り飛ばした!
「うにゃー、それは困ります。反則です」
 うにゃうにゃと身体を揺らす白猫。どうやらしっかりとダメージがあったようだ。
「うう、ごめんね、猫さん……でも、船を沈められちゃうわけにはいかないから……っ!」
 申し訳なさそうに焔。襲ってきたのは白猫の方なので、申し訳なく思う必要はないのだが、それでも、やっぱり何となく、罪悪感がわいてしまう。
 白猫は最後の抵抗とばかりに、残った左あんよをバタバタと振り回し、目からビームを撃ち放つ。
「そんな攻撃、効かないよっ!」
 振り下ろされるあんよを、アクセルは受け止めて見せた。ぷにぷにとした肉球が、しかし激しく打ち据える――ギリギリの点で、アクセルはそれを耐える。
「せめて、お魚さんだけでもいただきます」
「残念ですけれど、わたしは食べられてあげませんの……!」
 襲い来るビーム攻撃を、ノリアは宙を泳ぐようにして回避。
「おー! ネコパンチ禁止!!」
 振り下ろされていた左あんよに、リナリナはガブリと噛みつく。にゃあ、と持ち上げられた左あんよから、リナリナは飛び降りる。
「あんよは引っ込めてほしいですの!」
 スノウスノウの武器に込められた魔力の一撃が、左あんよに突き刺さり、爆発した! 蓄積されたダメージが左あんよを浮き上がらせ、そのまま白猫の態勢を激しくぐらつかせる!
「ここまでだぞ、ウミネコっ!」
 卵丸の虹色の斬撃が、白猫の額に突き刺さった。ごつん、と白猫が態勢をそらせ、そこへ縁の追撃の蹴りが突き刺さる!
「動物愛護団体にゃ見せられない光景だが……ま、流石に今回ばかりは許してくれるかもな」
 苦笑などしつつ、二撃目の蹴りで跳躍、甲板へと跳躍する。
「さぁ、これで最後だっ!」
 頭頂部へ再び降り立った史之の斥力の一撃が、ぐらりと揺れる白猫へのとどめとなった。
「にゃ、にゃ、にゃーん! や、ら、れ、ましたーにゃー!」
 白猫は断末魔(?)の悲鳴を上げたまま、後ろ向きに海へと倒れていく。史之は跳躍し、甲板へと降り立った。その数秒の後に、ざぶり、と音を立てて、白猫は水中へと没し、巻き起こる波が、船を激しく揺らした。
 しばしの沈黙――やがて海は、船は、静けさを取り戻した。
「やっつけた……の?」
 焔が声をあげる――殺して、しまったのだろうか? やや心配げに、海面をのぞき込む。
 ――と、突如バシャバシャと、水を掻く音が聞こえた。みれば、異常に長い胴体の白い猫が、バシャバシャと水を掻き、去っていくのが見えた。
「……ばいばい、猫さん! 私達『と』遊ぶ、のでしたら、歓迎しますの!」
 スノウスノウがぱたぱたと手を振ってみせた。
「こんどは、いたずらはダメだよ! あと、できれば陸まで来てほしいかな!」
 焔もまた、手を振ってみせた。
 その言葉が聞こえたのかは定かではないが、白猫はにゃぁ、と鳴き声をあげて、何処かへと消えていったのである。

●戦いの後
 イレギュラーズ達は、無事に突如現れた白猫を撃退することに成功した!
 とはいえ、その傷跡は決して浅いものではなく、少々の足止めを強いられることとなった。
 旗艦船は一時海へと停泊し、随伴艦から人数と資材を受け取り、簡易的な修理を施すこととなる。
「海の男として、船の大切さは分っているからなっ」
 楽し気に資材を運び込む、卵丸。
「まさに命綱だからな。此処で可能な限り修理しておこう」
 縁も手に金づちなどを持ち、簡易的な補修を行う。
 一方、船の修繕ももちろん、戦闘に巻き込まれた船員たちの治療も担当してるのが、史之だ。
「何から何まで……世話になります」
 申し訳なさそうに言う船員へ、史之は笑いかけて見せる。
「俺たちは戦える、でも船を動かせるのは船員さん。俺たちと君たちは戦友だよ。航海、頼りにしてるね」
 その言葉に、船員達も笑顔を見せるのであった。
「それにしても、滅茶苦茶な相手だったね」
 アクセルが言うのへ、ノリアはこくこくと頷いた。
「しっぽが削られてしまった気がしますの……」
 さめざめと泣くノリア……じっさいにしっぽを削られこそはしなかったが、多くの攻撃をその身に浴びたノリアである。あの猫の眼光を思い出すだけで、少し身震いがする。
「おー、次に来たらギガにゃん、遊べると良いな!」
 リナリナの言葉に、スノウスノウは微笑んだ。
「そうですの。とっても大きくて、ふかふかでしたの……」
 思い出す、白猫の毛並み。戦闘中でなかったら、身体を埋めてみたいほどだった。
「そうだね、今度はきっと、仲良くできるよね」
 焔は頷いた。
 次は出来れば陸地で。
 あの猫の大きなおなかで、一緒にお昼寝できたらいいな、と、焔は思うのであった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 にゃーん、ごさんかありがとうございましたにゃーん。

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