PandoraPartyProject

シナリオ詳細

狙われた和菓子

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●いつもは平和なお菓子の下町
 お菓子がいっぱい詰まった、とある世界。
 現代日本に似ているようで、信号機がキラキラとしたキャンディ-だったり、道はブラウニーのタイルだったりと所々でメルヘンな物が織り込まれている――のは、若者向けの都会だ。
 少し交通量の少ない場所に行けば、岩おこしの石畳、おせんべいでできた建物に、カステラの屋根。練り切りでできた石垣など、ちょっと和風でファンタジーな町が見えてくる。
 そんなのんびりした町だ、当然バレンタインの風習なども関係ない。
「去年は栗をたっぷり入れた羊羹をあげたわねぇ」
「今年はちょっとハイカラな物でも買いに行こうと思ってるのよ」
 普段は和菓子を好んで食べる活気な老人達もまた、特別なお菓子を贈り合うことはあれど、チョコレートにこだわりも無く、テレビでチョコレートばかりの特番が続いても文句は言わない。
 平穏にほのぼのと、イベントの一種として楽しんでいた――のだが。

●甘き戦争?
 カストル・ジェミニはため息を吐く。
「このままじゃ、ご老人達が諍いに巻き込まれてしまう……どうにか、この平和な町を守る方法はないかな?」
 バレンタインになぜ和菓子の町が渦中となるのか。どう説明したものかと、カストルは言葉を選ぶ。
「端的に言えば、和菓子が大流行し始めたんだ。とある美容家の発言が発端でね」
 小豆に含まれる食物繊維やポリフェノール、サポニンは美容と健康に良い。特にポリフェノールに至っては、赤ワインやチョコレートを凌ぐと言うのだから、女性達の注目を一気に集めた。
「自分用や友達用を買うつもりだった人たちが、すでに下町に流れはじめている。のんびりした町では、到底さばききることは不可能だ。君たちには、喫茶や販売の補助をお願いしたい」
 カストルは眉間にしわを寄せ、ため息を吐く。
 流行に流された女性というものは怖い物だ。それも、美容を目的にしているのだから、なおさら。
「……検討を、祈る」

NMコメント

またまたお菓子ネタの浅野悠希です。
どこの世界も、この時期はチョコレートの香りでいっぱい……のはずが、今度は和菓子が狙われてしまったようです。
バレンタインのあの猛者を知らない老人達、ぜひぜひお手伝いをしてあげてください!


●目的:和菓子屋さんのお手伝い
テレビで特集を受けた、和菓子屋さんのお手伝いです。
お店は、販売スペースと喫茶スペースに分かれています

販売補助
焼き菓子、練り切り、大福など様々な和菓子を取り扱っています。
特に、小豆の特集を受けただけあり、小豆を使った商品がずらり。
でもできれば、他の商品にも目を向けてほしいところ。
バレンタインを意識したハート型のおまんじゅうや、ピンクの可愛らしい落雁もあります。
そのほか、バレンタインっぽい和菓子を提案して頂いても構いません。

喫茶スペース
甘味処が併設されています。
ほとんどのお客様は小豆を使った料理がお目当ての様子。
バレンタインのメニューに、桜色の焼きたてどら焼きや、ハートの白玉が入ったぜんざいがあります。
そのほか、可愛らしいメニューをご提案頂いても構いません。



●場所
お菓子の下町の和菓子屋さん


●登場人物
和菓子屋の店員や来客など、モブNPC。
※皆さんの行動を妨害する人はいませんが、皆さんが妨害する側であればその限りではありません。

●サンプルプレイング①
喫茶のお手伝いをする。
話題のお店はすぐに並んじゃうと思うので、他のお店のご迷惑にならないように列整理。
待って貰ってる間にメニューを見て貰って、もうすぐ案内できそうなら先にオーダーをとるよ。
そしたらきっと、着席と同時に提供できるよね。……えへへ、よく行くウエイトレスさんがやってるんだ~!
運ぶときは、そーっとより堂々と。そろそろ運ぶ方が不安定になっちゃう、らし……!?
うう、トレイをいくつも持つのは無理かも。しっかり両手でトレイを持とう!

●サンプルプレイング②
お手伝いはさておき、自分の美容のために行動!
小豆が美容に……それは一大事ですね。
ええ、お店が大変なことは重々承知しておりますが、
美容に良い物が目の前で売れていくのを見守ることなどできません!
まずは喫茶スペースでぜんざいを頂きます。
小豆の艶、砂糖の塩梅……くどくなくていいですね。
これだったら、持ち帰りも検討しなくては……日持ちのする小豆商品はあるかしら?

  • 狙われた和菓子完了
  • NM名浅野 悠希
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年02月23日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

リュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)
黒狼の従者
カロン=エスキベル(p3p007972)
対価の魔女
奏多 リーフェ 星宮(p3p008061)
お嬢様の恋人
甘露寺 結衣(p3p008114)

リプレイ


 世間ではバレンタイン。
 各地から集められたチョコレートのイベントや、美味しいショコラトリーに列をなす人々は見かけても、和菓子屋に殺到する人というのは珍しいかもしれない。
「これが、テレビ特集の力……といったところでしょうか」
  外の様子を窺ったリュティス・ベルンシュタインは、まだ開店前のお店に並ぶお客様が何を求めてくるのか、店員に確認を取る。
 お薦めのメニューと人気のメニューは違う物。人の導線を把握していれば案内もしやすく、補充の対応も先手を打ちやすい。しかし、気になることがもう1つ。仕事には差し支えないだろうメイド服も、和菓子屋ともなれば印象も変わってこないだろうか。
「私はこの格好で良いのでしょうか?」
「うふふっ! 今からそんなに張り詰めてちゃ疲れるわよぉ? それとも、私への当てつけかしら?」
 真面目すぎる彼女を笑うのは、カロン=エスキベル――沼地の魔女ではあるが、今日はあんこを纏った猫に見えなくもない黒猫の形態でトコトコと歩いている。
 固形化されているとは言え、身に纏っているのは本当は泥。返答次第では……と含みを持たせたまなざしで見つめている。
「申し訳ありませんカロン様。あくまで私自身が、この店に相応しい格好をと思ったまでです」
「色んな格好があって、面白いねぇ。きっと若い子達も、そういったハイカラな格好が好きじゃないかい?」
 茶房の仕切りを務める初老の婦人が、カラカラと笑う。懐の広そうな様子に、カロンは「いひひ」と笑いながらその空気に乗った。
「ちゃあんと私のぶんのお菓子もあるのよねぇ?」
「任せておいで。裏でたーんと小豆を炊いてあるから!」
 気前の良い言葉に気を良くしたカロンは、くるりと店の品揃えを確認すると、勿体ぶったように笑う。
「うふふふ! 私に『待て』をするなんて怖い物知らずの人間ね。お外で待ってる和菓子の亡者たちへ、和菓子の営業トークしておいてあげるって言ってるのよ」
 そのためには、売り物を知っておく必要がある。そう言わんとするように、カロンは舌なめずりをして和菓子を眺めた。
「安心なさい、これは仮初めの姿よ。何でも食べれるから、その美味しそうなの食べさせなさい、早く」
 そんな軽快なやりとりを見て、リュティスはおずおずと手を上げる。
「私、も……ここのお菓子には不慣れです。お客様にお薦めするべく味を知っておきたいです」
 カロンの言い様は褒められた物ではない。けれども人に勧めるべき物を知らないのは確かにおかしい。妙な説得力から、リュティスは自ら試食を申し出た。
「あははっ、確かに口は上手そうだ。期待しているよ、お嬢ちゃんたち」
 そうして婦人は、開店前に少しだけイレギュラーズへお薦めメニューを振る舞うことにした。


 ひとたび店が開いてしまえば、買い物に茶房の利用にとお客様はひっきりなしだ。奏多 リーフェ 星宮は、今回の依頼が戦闘でないことにすっかり心を落ち着けていたため、目の回るような忙しさにふぅっ、と息を吐く。もちろん接客業なので、注文の品をキッチンから受け取るためにお客様に背を向けたタイミングでこっそりとだ。
(アーリーデイズを使ってみたけど、効果あったかな?)
 呼ばれたときの反応速度、提供するタイミングが合う命中率。効果があったかは自覚がないものの、体感的に疲労度は忙しさの割に高くはない。
 できあがったオーダー品のテーブル番号と内容を確認し、丁寧に運ぶ。客受けのためにと、優しく微笑み笑顔で対応することを心がけていた奏多を見て、甘味の美容効果を求めてやってきた客も、思わぬ目の保養となったことだろう。
「ご注文の商品をお持ちしました。ゆっくりお寛ぎくださいね」
 商品を届け、一礼。ますますお客様の心にクリティカルを与える美青年の儚げな微笑みに、彼は気づいているだろうか?
 見た目よりも長生きな彼ならば、人心掌握も容易い――のかもしれない。

 販売スペースでレジを担当していた甘露寺 結衣は、品物を丁寧に包みながら実家を思い出す。お嬢様だった彼女が実際にこうして表に立つことはなかったため、アルバイトの経験こそ無いが、結衣の実家は有名老舗和菓子店「甘露寺」だ。
 和菓子に関する知識なら、店を手伝うイレギュラーズの中で1番であることは間違いない、はず。けれども彼女は、謙遜なのか事実なのか、自らの知識を過大評価しない。
 ふと、会計にやってきた客が包まれていく和菓子を見てポツリと呟いた。
「美容にいいって聞いたけど、やっぱり和菓子って地味だよね」
 小豆が単体で有名になってしまったおかげで、店内はわかりやすく羊羹や鹿の子など小豆が中心の和菓子の写真が飾られてある。どれも赤茶色なそれは、確かに洋菓子に見慣れた人からすれば地味かも知れない。
「和菓子には、季節や風景を現す物もあるのですよ。どうか、他の時期もご贔屓にして頂けますと嬉しいです」
 例えば春の咲き誇る桜、夏の涼しげな水槽を泳ぐ金魚、秋の紅葉。今だと、梅や鶯だろうか。上生菓子の鮮やかさは、洋菓子にも負けはしない。
「へぇ、これって飾りじゃなかったんだ! じゃあ、これも貰っていきます!」
 結衣の案内に、ディスプレイだと思っていた上生菓子へ興味を示した客は、明るく可愛らしい色合いの練り切りを選ぶ。しかし、人気が出そうだからと言って、職人の技が必要なそれを今すぐ大量生産出来るわけもない。
 折角興味を持ってくれたチャンスを逃す手はない。結衣は自分に出来ることを思案した。

 お客様が中に雪崩れ込んだからと言って、外ががらんとするわけでもない。カロンは店へ案内する人数を見誤らないようにしつつ、愛らしい招き猫として振る舞った。
(本当の闘いは、ブームが去った後。これっきりじゃ何の意味もないものね)
 また買いに来たくなるような商品紹介はしておかないと。後に続かぬようでは、まるで自分が失敗したみたいではないか。バージンを捧げてそんな結果など、プライドが許せるものではない。
「あなたたち、小豆を食べに来たのよね? 甘い物を食べたなら、しょっぱい物も食べなきゃよ」
 お店のお薦めは、小さなおかきの詰め合わせ。花の形もあしらったそれは一瞬目を引くも、それだけでは試食へすら手が伸びない。
「しょっぱいものを食べると、甘い物がまた美味しくなるのよ。うふふ、騙されたと思って食べてごらんなさい」
 負けず嫌いなカロンは本当の意味で勝つために、真面目に誘導とセールストークを続けた。


 リュティスは店外のお客様が通行人の邪魔となっていないだろうかと気にかかったが、表はカロンが見てくれているはずだと信じ、店内の仕事に集中することにする。
「お待たせしております。もう暫くでお席へご案内できますが、メニューは先にご覧になられますか?」
 店内の待機スペースで待つお客様へ深々と一礼し、声をかける。店の都合を優先するならば事前に注文を決めて貰うほうが提供を待たせないが、可能な限りお客様へ不快な思いはさせまいと考えた結果、席でゆっくり決めたい方もいるだろうと思っての配慮だ。
「うーん、悩んじゃいそうだから先に見せて貰っていいですか?」
「かしこまりました。手前のページから、季節のお薦め、お飲み物、甘味、軽食の順になっております」
「思っていたよりあるなぁ……店員さんのお薦めは?」
 迷っている時に情報が増えれば余計に迷ってしまいそうなのに。気心の知れた相手ならそんな冷たい態度も取ったかも知れないが、相手はお客様。リュティスは試食の感想を、素直に伝えることにした。
「白玉ぜんざいでしょうか。ぜんざいの甘さに白玉がマッチしてとても美味しかったですよ」
 悩むお客様へ、リュティスは深々と一礼し、優雅な仕草で仕事へと戻った。

 休憩に呼ばれた結衣は、閃いたそれを忘れる前にと厨房の一角を借りた。
 材料を少し分けて貰い、盆の落雁用だという木型も準備して貰った。職人は「若い子には面白くもなんともないだろう」と言うが、花や果物は可愛らしさがある。
 材料を迷い無く計っては混ぜ合わせ、日によって変わる水の塩梅。途中で固まってしまわないように手際よく作業する様は、なかなかどうして。
「凄いねぇ、こんなに若いのに和菓子が作れるのかい?」
「いえ、そんな……私なんてまだまだです」
 食紅で彩られた粉糖が、あん玉を包む。繋ぎの寒梅粉も程よかったのか、木型に押し固めるまで順調に進む。あとは、型から外して一晩ほど乾燥させれば完成だ。
「落雁であれば、練り切りほど難しくありませんし……見た目と小豆で、興味を示して貰えるのではないでしょうか」
 型から取り外すときの力加減は少し難しかったけれど、それでも出来は上々だ。
「なるほどなぁ、落雁であんこを……この辺りじゃ聞かなかった取り合わせだ」
「お役にたてたなら、とても嬉しいです」
 故郷でも、地域によって異なる和菓子があったという。違う世界ならばなおさらだろう。
 結衣は、この異文化が明日からやってくるお客様にも末永く受け入れられますようにと、切に願った。


 ようやく店じまいの時間となり、イレギュラーズの前には甘味が振る舞われる。
 多種多様な和菓子の中、一際目を引くのはまばゆく輝く粟饅頭。
「皆さま、ぜひ粟饅頭をお召し上がりください。プチプチした食感が、とても楽しいのですよ」
 好物が出てきた結衣は、自信を持ってお薦めする。奏多はあまり食べたことのないお菓子達に、どれから頂こうかと目移りしていた所だったので、それならと手を伸ばした。
「そういえば、結衣は新メニューも提案したんだって?」
「うふふっ、それはどれかしら? 私は全てを飲み込む魔女よ、出しなさい」
「食べ物は飲み込まず、味わってください」
 ホッと落ち着く甘さとともに、楽しく会話も弾んだ茶房が来月も流行っていることを祈って、皆で優しい味を堪能するのだった。

成否

成功

状態異常

なし

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