シナリオ詳細
氷の王と春告げ女王
オープニング
●フローラへ。
霜の下、花達がいのちを歌う季節が近づいてきた。
フローラ。厭──ティターニア。
俺がいない間に妖精祭を成功させたと聞いた。
成長したな。
今まではサンタを強請ったり、遊んでくれと我儘を言ったり。
これでも兄だから、心配していたんだぞ。
嗚呼、そうだ。お前の事だから────
(長いお説教。略)
小言はここまでにしておこう。
残りは会ったときに。
本題なのだが、明日にでもそちらに帰ろうと思っている。
数百年ぶりの再会だ、楽しみにしている。
グレイシア
●絶叫
「兄様が帰ってくるですって?!」
「うん! おてがみとどいてたよ~~」
「ちょっと、早く渡してくれるかしら?!」
「わかった~」
金色の羽がきらり、ゆれた。
ティターニア、改めフローラ。
春呼びの姫、春告げる女王となった彼女の兄が帰ってくるというのだ。
「……あの人のことだから、またお小言ばかりで終わるのでしょうね」
長いまつげが伏せられる。
フローラは兄をあまり好いていない。
再会の度に告げられるお小言、お説教の山が彼女と兄を疎遠にしてしまったのだ。
「……そうだわ。フルールなら、兄様が帰ってくるのを阻止できるんじゃないかしら」
「グレイシアさま、悲しむよ……?」
「私だって今まで、悲しかったのよ……」
妖精はどちらかといえば、フローラに懐いている。
下位妖精は、だ。
「フローラ様。グレイシア様は貴女のことを思って────」
「黙りなさい」
「……はい」
上位妖精たちはみな兄が王位を握っていた時のようにすべきだと考えていた。
「ともかく、フルールを呼んで頂戴。彼らに妨害を頼むわ」
今、史上最大の兄妹喧嘩がはじまった。
なお一方的である。
●迷惑な隣人たち
「……はぁ。君たちに依頼だよ。ただし、超ド級のね」
カストルはため息を吐くと、手紙をこちらに見せた。
拝啓、フルールの皆へ。
大切なお願いよ。
兄様──いえ、前王のグレイシアが帰ってくるらしいのだけど。
彼と私は犬猿の仲だから、国に入れたくないの。
協力を頼めるかしら。
ティターニアより。
「これ、明らかに兄弟げんかの予感がするんだけど。僕の気のせいであってくれることを祈るばかりだよ」
赤い瞳が不機嫌そうに揺れた。
「ともかく、頼んだよ」
- 氷の王と春告げ女王完了
- NM名染
- 種別ライブノベル
- 難易度-
- 冒険終了日時2020年02月06日 22時20分
- 参加人数4/4人
- 相談4日
- 参加費100RC
参加者 : 4 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(4人)
リプレイ
●雪下に埋もれる花は冬を厭うものだ。
(数百年ぶりの再会ってすごく羨ましいねぇ。
まだ家族に逢えるだけ羨ましいわぁ……。
本当に逢えなくなったら後悔だけが残るからねぇ……)
『呪刀持ちの唄歌い』紅楼夢・紫月(p3p007611)はその瞳を揺らしながら、ティターニアの元へと向かう。
「妖精美酒でティターニアには世話になったからねぇ。
美味しいお酒でも持って行くとするかねぇ」
その手に握られたのは立派な酒瓶と、いくつかの化粧品。以前ティターニアが化粧をされたときに好感触だったのを覚えていたのだろうか。さすがというべきだろう。
ティターニアはいらだった様子で忙しなく飛び回っていた。
しかし、フルールの姿を見ると、ふわりと地上へ降り立った。
「この前の妖精美酒で世話になったねぇ。
またああいった催し物があるなら是非呼んで欲しいわぁ。
これプレゼントするねぇ」
手渡された贈り物に、ティターニアの表情は喜色に染まった。
「あら、いいのかしら!
……折角だし、使い方を教えて頂戴?」
「勿論やねぇ」
手に握られた酒瓶は何種類か酒が入っており、組み合わせればカクテルにもなるし、そのままでも楽しめるというなかなかの代物だった。
「化粧水の方は寝る前やお風呂に出た後に使うとええよ。
保湿成分高いから綺麗になると思うわぁ」
「あら、ほんと?
今度お風呂上りにでも使ってみようかしらね……」
「それがいいと思うわぁ。温泉とか、ここにはあるん?」
「ええ、あるわよ。今度温泉にも案内するわね」
きゃぴきゃぴとした少女のトークが続く。
漸く話が落ち着いたところで、紫月は笑みを浮かべて告げた。
「私にも世話を焼いてくれる姉がおったんやけどねぇ……思いを伝える前にある日突然いなくなってねぇ。
まだしっかりと逢える時に家族には言いたい事があるんなら、はっきり言ってやった方がええと思うわぁ。
……お節介やとは思うけどねぇ」
今でこそ笑えるようになった紫月ではあるが、昔は悲しみの底にいたのではないだろうか?
ティターニアは少し暗い表情になると、その言葉を心の中で反芻した。
「……そうね、話せるうちに話した方がいいかもしれないわ。
ありがとう、紫月。貴女には助けられてばかりね」
「そんなことないわぁ」
紫月のやさしさに安心した様子でティターニアは目を伏せた。
そして紫月が去った後、この世界では皆勤賞(すごい!)の『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)がやってきた。
今日のサイズは、いつも通り鎌を綿でぐるぐる巻きにした上に、事前に鎌に妖精酒に浸しておくという用意周到っぷりだ。さらに精神耐性のある装備をしておくことで、妖精の誘惑にも負けないぞという意思表示をしている。
そして格なる上はサングラス。ティターニアの顔を直視しないようにしているのだ。
さすがのティターニアもこれには不審に思ったようで、首を傾げ乍ら出迎えた。
「貴方……先日鎧を贈ってくれた方ね?
魔力が同じだわ」
「あぁ、ばれたか……まぁそんなことはどうでもいいんです」
ぐ、と吸血衝動をこらえながら告げるサイズ。流石に妖精の長たるものに話しかけられるとぐらっときてしまうのか。
しかしここで負けるようなサイズではない。ぐっと我慢したまま言葉を続けた。
「争いを起こさなければ後で新しいドレスを仕立てますので戦争とか勘弁してください」
突然言い放たれたその一言にあら、とティターニアは目を瞬かせた。
「……貴方は兄様を止めてはくれないの?」
「ここで俺が動くと妖精たちに被害が及ぶ可能性がありますので」
さらりと告げられたサイズの言葉に、ティターニアはぴくりとその動きを止めた。
(……。そうね、私も大人にならなければいけないわ。
あの人が嫌いだからと言って、ほかのひとまで巻き込んではいけない。
反省しなくっちゃね……)
ふ、と笑ったティターニアはふわりと飛び上がると、サイズに礼を告げた。
「ありがとう、サイズ。心の整理がついたわ」
「それならよかったです」
「次に来たときは顔を見せて頂戴。
次は沢山布を用意して、お洋服を作ってもらいたいものだわ」
ふふ、と冗談でもなさそうにさらりと告げたティターニアにサイズは肩をすくめるのだった。
「……まぁ、何とかなりそうでよかった」
顔見知りの妖精たちに呟くと、ありがとう鎌のフルール~! と囲まれるサイズは、またその顔色を悪化させていた。
ティターニアはその様子を微笑まし気に見守っていた。
●雪すらも溶かしつくす春を冬は厭うものだ。
一方その頃グレイシア。冬に生まれた冬の長。氷を操る前妖精王。
そんなグレイシアの元へ向かう少女が一人。『生き人形』雫(p3p002862)だ。
(妹が可愛いのはわかるけど、押しつけがましいのは誰でも嫌がるというもの。
…耳は長い癖に、聞く耳は無さそうね?
でも、戦争なんて始められても困るわ)
雫は赤い着物の袖を揺らしてグレイシアが来るという国の門の前で、グレイシアを待っていた。
「なんだ貴様は」
開幕一声。なんだこいつは。
「はじめまして、グレイシア。私は雫というの。早速だけど、……はい、これ」
手渡されたのは薄くて、ひらがなが多くて、どう見ても子供向けの本。
グレイシアは眉根をよせて、雫に問いかけた。
「なんだこれは」
「何って、見ての通りの絵本よ。
迷い込んだ深い森の中から、兄妹が一緒に頑張って家に帰るお話」
淡々とつげた雫から手渡された絵本をパラパラとめくると、グレイシアはむ、と声をあげた。
「絵本はね、単純に見えるけど奥が深いの…子供に色々と教える為のものだから。
あなたがこの絵本の兄なら、どうするのかしら」
ふふ、と笑う雫に対してグレイシアの鉄仮面は徐々に蒼白になっていく。
心当たりしかない、というのが感想だろうか。
客観的に見ることで理性を取り戻したグレイシアは、自身のこれまでの妹に対する振る舞いに少し引いてもいた。
「妹を思ってあれこれ言って、妹が逃げ出してはぐれてしまう…そんな未来が見えない?」
「……あぁ、見えるな」
眼鏡をくい、とあげたグレイシアは、寂しげに瞳を揺らした。
「愛情が根元にあっても、…いえ、あるからこそ、相手の意見にも耳を傾けること……それが大事だと思うわ」
自身よりも年下の少女から言われたことに少し恥ずかしさを覚えたのだろう。あぁ、と小さく返事をすると、ぎゅ、と絵本を握った。それはそれは、大切そうに。
「…妹に会ったら、この絵本について互いに語り合ってみるのも良いかもしれないわね」
あぁ、と思い出したように呟いた雫は、ひらひらとその手をあげると、グレイシアに向けて手を振った。
「それじゃあ、いってらっしゃい、前王様。
兄妹喧嘩で国を滅ぼさない様に、ね」
(数百年ぶりの再会か。俺のような普通の人間には途方もない時間だが、妖精にとっては瞬き一つ…とまではいかなくともそう長い年月ではないんだろうな。
さておき、この二人の不仲は一朝一夕でどうなるものでも無いだろうが、関係改善の一歩を踏み出せるように後押ししないとな。……戦争になる前に)
『凡才の付与術師』回言 世界(p3p007315)はその表情をこわばらせていた。不断から仲の良い妖精が悲しみに暮れていたからかもしれない。
その眼鏡の奥にグレイシアを見つけると、グレイシアを呼び止めて世界は近づいた。
「貴様もフルールか」
「ああ、そうだ。さて、何故こんなことになったかだが、そもそもは妹に対して小言が多すぎるのが原因かと。もちろん彼女を心配しての事だろうとは理解している。だが、一々あれやこれやと自分の事に口を出されていい気分になる人はいないだろう?
そもそも兄妹っていものは支え合うものであって一方的にしかりつけるものでも支配するようなものでもないんだよ。だからな……」(以下省略)
世界の長いお説教に悶々としだしだグレイシアの様子を見ると、世界は狙い通りだといわんばかりに口角を釣り上げた。
「今抱いた気持ちに似たものを貴方の妹も感じてるんだ」
先程の雫に諭されたこともあり、ぐ、と小さく呻くグレイシア。
「相手の悪い粗を探して注意してばかりでなくもっと相手を褒めた方が互いの為になる。
あ、もちろん褒めすぎも鬱陶しがられるから程々にな」
白衣をはためかせ告げる世界に、うむ、とうなずいたグレイシア。
「俺にもフローラに好かれる未来はあると思うか」
ふと。
意を決したように問いかけたグレイシア。
世界はにっと笑うとこう告げた。
「さぁな。だからこそ、あなたは行かなきゃいけないんだろ」
ひとつぼしの菓子折りを手渡すと、世界はグレイシアの背を叩いて後押しした。
「これ、ティターニアも好きなお菓子だ。
二人で食べて仲直り、とか。いいんじゃないか?」
「……助かる」
グレイシアは駆けだした。
その手に絵本と菓子折りをもって。
その背を世界は見送った。
●後日談
どこかの世界で、口喧嘩だけでおさまるようになった妖精兄妹がいたそうな。
めでたしめでたし?
成否
成功
状態異常
なし
NMコメント
染です。
久々の依頼でしょうか。12作目となっております。
妖精王兄妹の兄妹げんかを止めてください。
●依頼内容
兄妹喧嘩を止める。
まずいことになると察した妖精たちがこのあほらしい喧嘩を止めてほしいというお願いをしにやってきました。
フローラとグレイシアが少しでも仲良くなれるようにしてあげてください。
●手段
・グレイシアに会いに行く
グレイシアは無表情ではありますが重度のシスコンです。
不器用なあまり言葉をストレートにアタックしすぎた結果、ティターニアは兄嫌いとなりました。
アドバイスをあげて、ティターニアとの再会をスムーズに進められるようにしましょう。
・ティターニアの説得
妖精や人間はグレイシアと再会、または謁見することを楽しみにしています。
ティターニアのご機嫌斜めをなおし、再会できるように促しましょう。
プレゼントが効果的です。
●世界観
魔法世界『ブルーム・ブルーム』。
花と魔法で満ちた世界。魔法で文明が築かれています。
基本的には物理攻撃よりも神秘攻撃がメインの世界です。
また、ファンタジーな世界ですので、妖精やドラゴンなど、ありえない生物がいます。
●NPC
・フローラ(ティターニア)
妖精女王。引き摺るほど長い若草色の髪が特徴。桜色の髪留めが宝物。
エルフのように長い耳を持つ。成長が遅いとはいえ、いつまで経っても凹凸のない身体に悩んでいる。
兄との再会を断固拒否している。
・グレイシア
前の妖精王。鋭い目つきと薄氷色の髪が特徴。ガタイがいい。
エルフのように長い耳をもつ。シスコン。
他国の妖精へ外交をしに行っていた。
妹との再会を楽しみにしている。
・カナタ
花冠師ギルド『Flowers Flag』のギルドマスター。齢19にしてトップクラスの実力を持つ温厚な青年。
胃薬が手放せないのが最近の悩み。
何かあればカナタへ。
●注意
ティターニアの機嫌が最高に悪くなると、魔法を使った戦争がはじまります。
どうかお気をつけて。
●好きなもの
効果的なアイテムです。
ティターニアやグレイシアに渡すと喜ばれるかもしれません。
もしかすると、これを用いれば……?
・酒
・紅茶
・おいしい食べ物
・ぬいぐるみ(ティターニア)
・おしゃれ道具(ティターニア)
・本(グレイシア)
・防寒着(グレイシア)
●サンプルプレイング
えっ、ティターニアってお兄さんいたんだ!
折角の機会なんだし、会ったほうがいいと思うな。
ここは私に任せて! お兄さんの気持ちをティターニアに伝えてあげるよっ。
以上となります。
ご参加お待ちしております。
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