PandoraPartyProject

シナリオ詳細

遅れて舞い込む大掃除!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ゴミ屋敷

 ここはゴミ屋敷ではない。
 いや、ゴミ屋敷ではあるのだがれっきとした貴族の屋敷である。そのはずだ。多分。きっと。メイビー。

 段々自信なさげになっていくメイドの前には、溜め込みに溜め込まれた洗濯物の山。いったい何日、いや何週間分溜めたと言うのか。
 ちなみに厨房は大量の洗い物と中途半端に出されたまま放っておかれている食材と器具がある。すごく臭うものもあったので慌てて蓋をしてきたのだ。……家具に匂いが付いていないと良いのだが。
 この分だと子供部屋はおもちゃが散乱しているだろうし、書斎は書類と本の山だろう。普段から掃除している廊下や玄関などもやらねばならないのに、全くもって1日で終わる気がしない。
(やっぱり長期休暇なんて取らない方が良かったかも)
 12月の暮れ、仕える主に言われたのだ。『よく働いてくれているから、たまには実家で休んだ方が良いのでは』と。
 ちょうど母の足が悪くなったという話も聞いたし、折を見て様子を見に行こうとしていた矢先だ。主たちの性格から一抹の不安を感じながらも休みをもらったのだが……まあ、この有様である。
 はあ、と溜息を漏らしたメイドは踵を返した。こんな量、1人でなんとかできるわけがない。応援を呼ぶのだ──何でも引き受けてくれるローレットに。


●ローレット
「何でも、ではないかもしれませんが依頼は幅広く受け付けているのです!」
 承りました! と『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)が依頼書を作成する。彼女は自分を見るイレギュラーズに気づくと、ちょいちょいと手招きした。
「お掃除は好きですか? もしそうなら聞いて欲しいのです!」
 こちらです、と出来たばかりの依頼書を出すユリーカ。そこにデカデカ載せられているのは『求む! ゴミ屋敷の掃除人!』というタイトルだ。
「もうこの通りでしかないのです。お屋敷の掃除依頼なのですよ」
 その屋敷に住む貴族たちは大変ズボラで、色々なものをやりっぱなしにしてしまうのだという。普段は1人だけいるメイドが片っ端から戻し、綺麗にし、注意するということで何とかなっていたそうだ。
「メイドさんが帰省している間にも、やりっぱなしが積み重なってとうとうゴミ屋敷になってしまったのです!」
 帰ってきたメイドは唖然としたそうだ。まさか自分がいないだけでこんなことになるなんて、と。
 散らかした本人たちはと言えば、メイドと入れ替わりで旅行へ出ている。彼らには帰ってきたらメイドからの説教と、彼女と入れ替わりで勤務できるようなメイドの増員を進言する言葉が待っているわけだが──そこは本人に任せよう。
「皆さんにはそのゴミ屋敷を綺麗にして欲しいのですよ。必要なのは汚れてもいい服装だけ。掃除道具はメイドさんが準備してくれるのです」
 どうでしょうか? とユリーカは首を傾げた。

GMコメント

●すること
 ゴミ屋敷の大掃除

●詳細
 ゴミ屋敷の大掃除です。分担してやると良いでしょう。
 掃除道具の場所などはメイドが教えてくれます。

●屋敷
・玄関&廊下
 比較的使用されていることもあり、目に見えるゴミはホコリ程度です。逆にいうとホコリがとてもたくさんあります。窓も含めて軽い掃除が必要でしょう。

・厨房
 洗い物がシンク内に、その脇に、作業テーブルにとたくさん積まれています。
 また作業テーブルには使いかけの食材や、出したままの器具が散乱しています。食材は傷んでいるものもあるようです。
 コンロに置かれている鍋はきっちり蓋をされています。危険、注意。

・書斎
 足の踏み場がないほど書類と本が散らばっています。積まれているものも多く、奇跡的なバランスを保っていると言って良いでしょう。
 書類はすでに公開された事業の話などです。見ても問題がないものだけ散らばっていることに、何かの陰謀を感じずにはいられません。

・洗濯室
 洗い物の山です。床に置かれていますが、もはや壁。タライに少しずつ移して洗う必要がありそうです。外は幸いにも良いお天気なので、比較的早く乾きます。
 下着などはないため、やはり何かの陰謀かもしれません。どうだろう。パンツは当然ないですよ。

●メイド
 依頼人です。この屋敷の貴族たちに対して、片付けてくれと心底思っています。それ以外では結構仲良しみたいです。
 掃除道具の場所を教えてくれる他、屋敷の案内もしてくれます。

●ご挨拶
 愁です。片付けは苦手です。どこかにしまうくらいなら捨てます。
 今回は貴族の持ち物なので捨て……腐ったものは捨ててください。よくわからなかったらメイドさんに聞いてみてください。
 そんな感じで、ご縁がございましたらよろしくお願い致します。

  • 遅れて舞い込む大掃除!完了
  • GM名
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2020年02月15日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

メートヒェン・メヒャーニク(p3p000917)
メイドロボ騎士
アリス(p3p002021)
オーラムレジーナ
メイメイ・ルー(p3p004460)
祈りの守護者
アルメリア・イーグルトン(p3p006810)
緑雷の魔女
フラン・ヴィラネル(p3p006816)
ノームの愛娘
アンジェラ(p3p007241)
働き人
ゼファー(p3p007625)
祝福の風
ドゥー・ウーヤー(p3p007913)
海を越えて

リプレイ

●皆でメイドさん!
「いつかお家に住みたい、って言ってたわね? 蜂蜜ちゃん」
 ゼファー(p3p007625)の言葉にアリス(p3p002021)はええと頷いて気合いを入れる。
 いつかのための練習。共に家事が出来るようになれば、かかる時間は半分こ。それにゼファーと一緒に居られる時間が増えると思えば意欲も湧くものだ。
 ゴミ屋敷なんてなんのその、見せてあげましょう乙女のガッツ。

 ──なんてものは玄関を入った瞬間に折れかけた。

「やっぱりさっきの意気込み、撤回して良いかしら……」
 状態はどれも良いとは言えず、買い換えた方が早いだろうものばかり。思わず視線を逸らしたアリスと反対に、『繋ぐ命』フラン・ヴィラネル(p3p006816)はまじまじとそれらを見て「うわぁ」と呟いた。
「どうやったらこんなにぐちゃぐちゃにできるんだろ……」
「いや、此れは圧巻の光景ねぇ……」
 唖然とするのはゼファーも同じ。メイド服に身を包んだ『メイドロボ騎士』メートヒェン・メヒャーニク(p3p000917)は思わず遠い目になる。
 さしたる時間は経っていないはずだ。たとえ短いといえなくとも、長いとだって言えない期間。一体何をしたらこうなるのか予想がつかないあたり、この屋敷に住まう家族はある意味天才なのかもしれない。
(メイドさんが休むだけでこの惨状……ここの住人は凄くズボラだ)
 自分だって得意なわけではないけれど、と『風のまにまに』ドゥー・ウーヤー(p3p007913)は心の中で呟く。でも流石に、自分の方がマシ……なはずだ。
「あれ? アルちゃんどしたの、面白い顔してるよ?」
 どんな顔よ、と長い前髪越しにフランをちらりと見たのは『かつての隠者』アルメリア・イーグルトン(p3p006810)。顔の半分以上が前髪で隠れているというのに、この幼馴染はどうして気づくのか。
 最も変な顔をしていた自覚はないのだが、なりそうなことを考えていたといえばいた、かもしれない。
(何もしないとね、ごみって勝手に溜まっていくのよね……なんでかしら……?)
 ──屋敷の持ち主に及ばずとも、彼女もまた同じ類の者のようだ。
 その傍ら、『さまようこひつじ』メイメイ・ルー(p3p004460)は窓枠を見て目を真ん丸に。おおよそ1ヶ月とは思えないほどの埃がこんもりと溜まっているのだ。
「放っておくとここまで、なるものなのです、ね……」
 本当にこれが放っておいただけなのか、という疑問はさておいて。
 この屋敷の有様に『働き人』アンジェラ(p3p007241)はワナワナと唇を震わせていた。その瞳に映るのはゴミ、ほこり、蜘蛛の巣、エトセトラ。
「何という惨状でしょう……これは働き人の清掃本能が疼きます……」
 元は働き人でないアンジェラだったが、この混沌に居続け──正確には特殊なホルモンの未摂取が続き──働き人となっている。その足にまとわりつく幻の足枷はその証拠。
(こんな生産性皆無の仕事を、生殖階級の方々にも任せる状況にはいまだ慣れませんが……)
 生殖階級の(足枷のない)方々の意欲に水を差すことはアンジェラにできない。働き人とはそういうモノであった。
 でもやっぱり働き人である自分だけでやりたい、と心の内で葛藤するアンジェラ。その視界へ不意に白い布が現れた。
「はい。着るなら貸し出すよ」
 メートヒェンがそう告げて差し出していたのは──メイド服。彼女自身も着る立派な作業着である。様々なデザインとサイズを揃えているので、体型や性別を気にしなくても大丈夫。
 アルメリアは自らメイド服を調達し、他の者は全員が貸し出しメイド服を受け取る。更衣室は唯一ゴミに塗れていないメイドの部屋を代わり番こに。
 背が高くて格好いい、とゼファーへ目を輝かせていたフランはメートヒェンのある部分を見て愕然とした。
「ひよこさん入れてないでそれ??」
「ひよこ……?」
「あ、ううんなんでもない」
 慌てて首を振るフラン。自分のそこをぺたりと触れば──悲しいかな、本日はひよこさんがいない。
(悲しいことを思い出した時はお掃除してスッキリしなきゃだよね、うん、うん……)
 何やらたそがれるフランへアルメリアは視線を向けるが、何も言わない。言ったらほら、また気分を沈めてしまうだろうから。
 ちなみにお気づきの者はいるだろうか。『全員が』メイド服を受け取って着替えている。そして──性別不明も何名かいないことはないが──1人は確実に男性であった。
 あわや女装かと思うじゃん。思わない? いいや少なくとも1人くらいは「あの人メイド服着るの?」と心の中で考えたはずだ。
 ガチャリと扉を開けて出てきた唯一の男性枠、ドゥー。ばっちりメイド姿かと思いきや、彼はロングスカートの下にしっかりとズボンを履いていた。さらによく見れば、足元は汚れても良いブーツ。見る者が見れば女装かもしれないが、概ね言葉通り『作業着』である。メイド服には違いないけど。
「こうやってみんながメイドさんの格好してるのを見てると、ほほえましいというか、皆かわいらしいわね」
 うふふ、と微笑むアルメリアは『何だか母に似てきたわ』と思わず頬を押さえた。望もうと望まなくとも、親に似るのは宿命であろう。
「借りた服は後日洗って返すよ」
 ドゥーの言葉にメートヒェンは頷いて、依頼人へ掃除用具や部屋の場所を問うた。

 さあ、大掃除の始まりである。


●レッツお掃除!
 入り口となる玄関、そして繋がっている廊下。これらの掃除着手が早いのは道理であった。モップや雑巾を手に準備万端なドゥーがよろしく、と挨拶するとアンジェラも同じように挨拶し返す。
「ドゥー様、よろしくお願いいたします。私の責務を尽くすつもりです」
 働き人でない彼らの意欲は尊重しつつも、決して自らの動きを疎かにしてはならない。働き人としての務めだ。
 2人がさてと廊下を眺める。広い廊下はどこまでも続いていて、両脇の壁に設置された明かりがホコリを照らしていた。
「廊下だけで俺の部屋より面積がありそう。貴族ってすごいね」
 来客があった時のため、ここは殊更綺麗にしておかねばならないだろう。アンジェラは他のイレギュラーズたちが行き来することも考えて簡単な清掃から手をつけた。動くたびにふわふわ舞うほどの埃をこれ以上広げてはいけない。
 ならばとドゥーは上の方から。窓に張った蜘蛛の巣を落とし、窓を拭く。家具の上や裏も抜かりない。
「ネズミはいなさそうだ……うん?」
 何やら隙間に挟まっている。手を伸ばして拾い上げたドゥーは、それの表面をぱたぱたとはたいた。
 額縁に入れられた写真は保存状態が良い分、ホコリをかぶってしまっているのが勿体無い。ドゥーがメイドへ持っていくと預かってくれるとのことだった。
 一方のアンジェラは廊下のずっと奥にいた。ここまで来れば誰も来ないだろうから、ゴミの落ちる心配もない。
(子供部屋も綺麗にしなくてはいけません)
 頭の中ですべきことをリストアップしながら、手は止めず、誰かが落とした汚れも見逃さず。
 仲間たちがゴミ出しすることを承知の上で考えられた床の掃除は、途中からドゥーが手伝ったことも相まって着々と進捗を上げていた。


「ふふ、ゼファーがスカート履いてるのも新鮮」
「こういうのは形から入る方が力が入るってもんよ」
 しゅっとエプロンを締めればアリスも姿勢が伸びる気がする。普段と異なる服装は新鮮だ。
 アリスは楽しげにくるり、くるり。スカートの裾が靡く様は可愛らしい。ゼファーが同じことをしても裾が靡かなそうなあたり、後者のスカート丈は短そうであるが──多分気のせい。きっと。
 そんな2人が到着したのは洗濯室。洗われる時を今かと待つ洗濯物たちが壁のごとく立ちはだかっている。
「それじゃあキリキリ働きましょう!」
 よし、とゼファーが気合いを入れる。まずは大きくて雑に洗えるものからだ。
「こういうものかしら」
 ベッドのリネンらしきものを拾い上げたアリス。思っていたより布は重たくて、目を丸くしながらも洗濯物を集めていく。
 どれも荷の少ない旅を続けていては分からなかったものだ。
 冬の水は冷たくて、アリスは思わず手を引っ込めた。これに布をつけなければいけないというのだからまた心が折れそうになる。
「後で温かいお茶も待ってますからね!
 そして石鹸を少し入れて泡立て……ちょっとアリス!!」
 石鹸を渡して泡立てて見せ、彼女はどうだろうかと視線を向けたゼファー。そこにはドボンと石鹸をまるごと入れたアリスの姿。
「石鹸はいっぱい入れた方が綺麗になるんじゃない?」
 かくりと首を傾げるアリス。その間にも泡立てられた石鹸からはすぐさまモコモコに泡が立った。それは何かの生命体のごとく膨れ上がり、アリスの鼻へちょこんと触れて。
「……溢れちゃった」
 優しい香りが部屋に充満して、桶から泡がこぼれだす。顔を見合わせた2人は同時に笑い始めた。
「ふ、ふふふ」
「初めてだもんね……ふふ、鼻についてる」
 ゼファーがアリスの鼻から泡を拭い、気がすむまで2人で笑って。収まったら挽回の時間だ。
「お歌でも唄いながらやっつけちゃいましょ」
 洗濯室からは優しい香りとともに、楽しげな歌声が流れてきたそうな。


 さて、書斎へたどり着いたのは幼馴染ズ。フランが書類をかき集める間にアルメリアが本へ積もったホコリを払う。
「アルちゃん、本好きだからって読んじゃだめだからね!」
 ギフトにより生み出された蔦で書類を束ねるフラン。彼女の言葉に応えはなく、まさかと振り返る。
 そこにはあらあらと本を吟味するアルメリアの姿。
「……だめだからね!?」
「も、勿論わかってるに決まってるじゃない」
 はっとフランを見るアルメリア。どう見ても作業が疎かではあったのだが──気合いを入れなければと頬を叩く。
「そうそう、気合を入れて……あっ」
「あら? あの棚のあの本、あら? あらあら……あらあらあら……」
 アルメリアのギフトによって1冊の本が光り輝く。流れるような動作で本を読み始めたアルメリアの耳へ、フランの「だめだってばーーー!!」という声が突き刺さった。

 というわけで仕切り直し。

 アルメリアは本の中身に気を引かれつつも、フランに怒られてしまったので粛々と仕事をこなす。巻数を揃えたりホコリを払うくらいなら普段通りだ。
 書類を集めたフランはパッと見て同じ仕事のもの同士でまとめていく。まとめ方と内容はメモに残しておこう。
 それが終わればフランも本の整理へ──なのだが。
「バランス崩さないように、そーっと……あっ」
 スカートの裾を踏んでつんのめるフラン。目の前には奇跡のバランスでそびえ立った本の山。フランの悲鳴とともにそれは崩れ落ち、彼女の頭上へと降り注ぐ。
「あーっ! ちょっと! 大丈夫なの!?」
「たーすーけーてー!!」
 どこからか声が聞こえる、状態である。
 駆け寄ったアルメリアは本を退け、退け、見覚えのあるポニテを発掘する。その周りに積もった本を退けるとフランは頭を起こした。
「うううう、本の角でたんこぶできた……」
 幸いにして、それ以外の怪我はない。メガ・ヒールを受けたフランは強壮剤を飲んだアルメリアとともに、気を取り直して整理整頓へ勤しんだのだった。


 お揃いのメイド服で戦闘準備、ならぬ掃除準備を整えたメイメイとメートヒェン。彼女らが向かったのは厄介と思われる厨房である。
「このままじゃ作業するスペースもないし、最初は傷んでいる食材を捨てて場所を空けようか」
 テーブルへ広げられた使いかけの食材にメイメイは頷く。その他にはしっかりとゴミ袋。使えそうなものは保存して、匂いや見た目でダメなものはゴミ袋行きだ。
「メートヒェンさま、これは……」
「……微妙だから捨てておこう」
 貴族の口に入れて腹を壊されてもいけない、と判断の難しかったものはゴミ袋へ。
 あらかた片付いたところで、2人は視線を別々の方へ向ける。
 メートヒェンは危険な気配のする鍋へ。
 メイメイは洗い物の溜まったシンクへ──向けるものの、鍋もちらちら。
「早めに片づけておいた方がいい気がするよ、これ」
「……此度の厨房掃除、最大の敵……開かずの鍋、ですね……」
 できれば触れたくなかった。メートヒェンも同じ気持ちではあるし、許されるなら気づかなかったことにしたい。
 が。それもできないほど圧倒的に存在感を放つ鍋だった。何が入っているのか、何を作ろうとしてそのままにしたのか。全てが謎に包まれている。
「とりあえず過酷耐性のある私が蓋を開けてみるけど、もしもの時は後は任せたよ……」
「は、はい……頼りすぎで、すみません……」
 せめともとブレイクフィアーの準備をするメイメイ。鍋に近づいたメートヒェンはとんでもない匂いを嗅いで既に渋面である。
 鍋の蓋は開けられ──そして閉められた。
「……メートヒェンさま?」
「うん、鍋ごと捨てよう」
 鍋を洗うつもりだったメイメイは「えっ」と声を上げる。そんなに酷い状態なのか。
(……お掃除、こまめにしておこう)
 器具が使えない状態になるのは、ダメだ。
 こうして危険物を処分した2人は大量の洗い物を前にする。換気はばっちり、水は冷たいが仕方がない。
「先に洗い物の種類や大きさを揃えてみたら、片づけもしやすい、でしょう、か」
 少しずつ食器の整理を始めるメイメイの隣で、メートヒェンはシンクの中から洗い物を始める。ある程度水が切れたら拭くのはメイメイの役目。
 洗って拭いて、溜まったら食器棚へ戻して。厨房が綺麗になったあたりで、メートヒェンは休憩の準備をし始めた。


●掃除の後はティータイム
「お待たせ、準備ができたよ」
 メートヒェンが持参したレシピ本と提供された食材による軽食を持ってくる。紅茶はメイドの許可を得て良い茶葉を使わせてもらった。
「えへへ、ふりふり着てお茶会って楽しいなー♪」
 にこにこと紅茶のカップを口元へ持っていくフラン。アルメリアもそれに習い、ほぅと息をつく。
「皆さん、本当にありがとうございます」
 うちの主たちがすみません、と縮こまるメイドに「よかったら愚痴を聞くよ」とドゥーが苦笑する。
「そうそう! あたしからもお説教の手紙書いておくよ!
 埋もれて大変だったんだからー!」
「埋もれ……ああ、書斎をお願いしていましたね。仕事とか社交は上手いのですが他となると点でダメで──」
 あの惨状を思い出したのか、メイドが訥々と語り出す。ドゥーが埋もれた話を改めて聞くと、フランが本の雪崩事故を説明した。他にも聞いてみれば、玄関や廊下とはまた違う惨事が起こっていたようで。
「片付けが出来ない、にしても此れはちょっと規格外ですものねえ」
 ゼファーがカップを手に苦笑を浮かべる。話を聞く限りは貴族らしからぬ──と言っては失礼かもしれないが、悪い人ではないのだが。
「でも、一応物をあるべき所に運ぶ能力だけは有った様で何よりだわ」
 洗濯室を思い出すアリス。衣類などがあちこちに散らばっていたら……それはより大変なことになっていただろう。
「貴族の人達が帰ってきたら、メイドの増員は絶対してもらわないとだね……」
「ええ、本当に! 私も紙に書こうかしら!」
 じゃあ紙とペンを用意しよう、と何人かが動き始める傍ら、ゼファーとアリスは冷たくなった指をカップで温める。見下ろせばゆっくりとミルクが沈んでいく様子が見えた。
 いつか、いつになるかもわからない未来での出来事は──2人でいれば存外に楽しくて、穏やかに笑っていられる気がした。


 ──さて。ここに1人姿のない者がいる。

「……ふぅ」
 先ほどより綺麗になった窓を眺め、アンジェラは小さく息をついた。動けなくなるまで働く性質のあるアンジェラは、窓越しに見える庭へ目をつける。
「落ち葉がありますね」
 庭も綺麗にしなければ。馬車の通った跡も馬の排泄物が落ちていた。綺麗にしよう。
 そうして屋敷を1歩出ると、屋敷を出て向かいの教会も見える。思い出せば思い出すほど、アンジェラは『掃除しなければ』と働き人らしい思考に陥っていた。
(教会の花壇も整備しなくては……川辺にもゴミが……)

 気がつけば彼女の姿は敷地内になく。後日、やけに辺りの環境が良くなったと噂が流れたそうだ。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 皆でメイドさん! 良いですね。お疲れ様でした、イレギュラーズ。
 年末の大掃除から早2ヶ月半。皆さんのお家は大丈夫ですか?
 ゴミ出しは忘れずにしましょうね。

 それでは、またのご縁がございましたらよろしくお願い致します!

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