PandoraPartyProject

シナリオ詳細

祝福されない命たちへ

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●生誕直後に貼られる『欠陥品』の烙印

「臭いな」
 既に人の管理を離れ幾年の時を経た建物。その外観は廃屋と呼ぶのが相応しい。庭も雑草が生い茂り、かつてそこにあったであろう生活は最早その残滓すら感じることはできない。
 ……否。かつての生活の名残とも言えなくもないものが、そこにはあった。

 敷地に入った途端に感じるのは、不衛生さを感じる悪臭と、劈くような動物の鳴き声。やや遅れて文字通り敷地のあちこちから視線が貴方たちにぶつけられる。その視線は様々な感情があるだろう。警戒、怯え、恐怖、憎しみ、或いは感情ではなく本能かもしれない。痩せ細った痩躯を満たす「食欲」として。
 確実に言えることは、ここの「先客」はどれ一匹として貴方たちに好意的な感情を見せてないという事だ。
「ここが、『現場』です」
 貴方たちを案内する職員が、悲痛な顔をしてそう紹介した。

 
●大枚を叩いて買うのは『ステータス』か『友』か

「『多頭飼育崩壊』っていうらしいんだ、そういう状態のことを」
 話は少し遡る。呼び出された貴方たちにファロが見せたのは、一冊の本。どうやらこの混沌より動物がペットとして身近な存在になった世界線の話のようだ。
「その世界で問題になっている現象、それが『多頭飼育崩壊』ってやつだ」
 傍目にもわかるほど表情が険しいファロだが、説明を聞いているうちに貴方たちの表情も曇っていく。
 概要はこうだ。多頭飼育崩壊とは、ペットたちが繁殖を続けて数を増やす一方で、飼う側が何らかの事情で世話をしきれなくなり、動物たちが劣悪な環境で生きている状態を言うらしい。全てがそうとは言い切れないが、多くの事例が発生しており、その大半が不衛生な環境下で満足な餌や水さえ与えられず、半死半生の憂き目にあっている。
「原因は様々さ。飼い主が急に亡くなり引き取り手がいないが故に繁殖しちまったケースなんかはまだ同情の余地がある。けどね」
 ファロの口調が尖っていく。イレギュラーズの面々も、その内心は複雑だ。
「この事例は悪質だ。何せ金のために動物たちを繁殖させた上に、売れないと見るや世話を放棄してとんずらしちまったんだから。幸いそういう動物たちの保護をする団体の目に留まったからまだましだけどね、なんだか、人間の『業』を感じるねえ」
 ファロによると、これから行く世界線ではこうした問題が深刻で、慈善団体が動物たちの保護活動を行っているが、人手が足りていないのが現状のようだ。
「そういうわけで、アンタ達にはこの動物たちの救出に手を貸してほしいんだ」
 依頼に盛り込まれているのは二つ。一つは当然だが、劣悪な環境に置かれている動物たちを救出すること。ただし、ほぼ全ての動物が虐げられた、或いは放棄されたという生い立ちを鑑みると、尻尾を振ってついてくるという事はまずありえない。吠えたり、噛んだり、逃げ回ったり、彼らなりの抵抗を見せてくることは十分にあり得る。
「掃除については専門家がしてくれるらしいから大丈夫。その代わりじゃないんだが、もう一つやってほしいことがあってね」
 それは、新たな飼い主に巡り合うために必要なステップの一つ――身だしなみを整えることだ。
「向こうの世界では『トリミング』と言われてるようだね。要は、毛をカットしたり洗ったりして、キレイにしてやることだよ」
 それ以上のこと、例えば躾や病気罹っている動物たちへの治療については、ここではやらず慈善団体が時間をかけて行うとのことだ。

 つまり、劣悪な環境から動物を保護するとともに、身だしなみを綺麗にする手伝いをするのが依頼、ということか。
 貴方たちの言葉に、ファロは満足気に「そういうことさね」と答えた。

NMコメント

 澪です。お久しぶりです。
 今回は情状の余地もない金の亡者……の最大の被害者たる動物たちを劣悪な環境から救い出す依頼です。

●世界観
 現代日本と同様と考えて下さい。ペットがより身近になり、それによる多頭飼育崩壊の問題が顕在化しています。
 
●目的
 ・劣悪な環境にいる犬を保護すること。
 ・保護した犬たちをキレイにすること。

●状況
 舞台は廃屋同然の一軒家(2階建て)です。建物と一緒に『商品』にならないと判断され半ば投棄されるように放置された犬がいます。総数は10匹を超えるでしょうが具体的な数はわかっていません。避妊もされていないので仔犬も仔猫もいる可能性があります。
 建物付近はかなりの異臭が漂っており、屋内は汚いです。協力してくれる団体の厚意で防毒マスク、長靴等必要な物は貸してくれます。
 敷地内の一角にメディカルチェック用の簡易テントが設けられ、保護した動物たちは全て一度健康状態をチェックします。
 その後、身なりを整えるべくトリミングスペースに移動し、毛をカットしたりシャンプーしたりします。スペースは仮に四人全員がトリミングしたとしても十分な広さと設備があるものとします。
 
●NPC
・犬
 人間の身勝手の最大の被害者。今回の被救助者です。先述したように数は不明ですが、最低でも10匹はいます。全て名前はまだない。
 劣悪な環境で生きてきたこともあるのか、警戒心は相当のものです。怯えていますし、大抵は逃げます。噛んだり引っ掻いたりすることもあるでしょう。ダメージを受けたりBSを受けたりするわけではありませんが、それなりに痛いです。

・保護団体職員
 依頼主のようなもので、本編では二人います。何も指示しなければ保護された犬たちのメディカルチェックを担当しますが、言えば快く手伝ってくれるでしょう。

・ファロ・ブレゼレン
 境界案内人。今回は犬の保護に協力してくれます。特に指定がない場合は、リプレイに登場することはありません。

  • 祝福されない命たちへ完了
  • NM名
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年02月06日 22時20分
  • 参加人数4/4人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (4人)

ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)
天穹を翔ける銀狼
ヨシト・エイツ(p3p006813)
救い手
庚(p3p007370)
宙狐
レオ・ローズ・ウィルナード(p3p007967)
青に堕ちる

リプレイ


 崩れそう、とまではいかないが廃墟と呼ぶには差し支えのない建物。まだ玄関前にいるだけだが、既に多くの犬が吠える声でかなりうるさい。
 4人の顔は曇っている。しかしそれは騒音のせいではなく、それまでの経緯を聞き、哀れな被害者に思いを馳せているがため。
「……確かに、これはキッツイ場所だねえ」
『救い手』ヨシト・エイツ(p3p006813) の顔は険しい。充満する臭いは日常生活で味わえるものではない。仲間達と同じくマスクを装着し、これから挑む居城に視線が注がれる。その舌打ちは、誰に或いは何に向けられたものか。
「行こう。動物たちを助けに行かないと」
『青に堕ちる』レオ・ローズ・ウィルナード(p3p007967)はどこかクールに、けれどその内情に熱い使命感を湛える。重なってしまうのだ、自らの境遇に。忙しなく動く指先は、そんな逸る心を如実に示していた。


「これは……予想以上だな」
『天穹を翔ける銀狼』ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)の面前に広がっている光景は、予想したより遥かに劣悪な環境だった。外見はそれでもまだ建物の姿を保っていたが、内装は爪や牙などでボロボロにされ、見る影もない。床には彼等の生活の痕跡が堆く積もっている。勿論、それが悪臭の原因だ。漏れ出た言葉は本心であり、そしてこんな環境で生きてきた、彼の愛する動物たちを思いやる本心でもあった。
「そーれー!」
 その横で他の3人と異なる反応をしめすのは『宙狐』庚(p3p007370)。なんと庭の一角に、借り受けてきた餌を盛大にばら撒いた!
 一瞬呆気にとられた3人を尻目に、食欲さえ満たされない動物たちは一目散に餌へと群がっていく。
「さて! 餌を食べに行く気力のない仔達から助け出してあげましょう!」
 なんて、一人どこか楽しそうに家の奥へと消えていってしまった。
「デキるな、庚……」
 その背中に、ヨシトがポツリと賛辞を送った。そして彼等も、めいめいの行動をとり始める。

 庚とヨシトは比較的弱ったものを救助していく。骨が浮くほどに痩せ細った仔犬を抱き上げるヨシト。その動作にも「大丈夫か?」と声をかける仕草にも、不良のような気配はなくむしろ善人の香りすら漂う。それが彼の持ち味でもありコンプレックスでもあるのだが、少なくても今は優位に働いているようだ。その事に嬉しさとほんの少しの複雑さを味わいつつ、それでも彼は腕の中の命の温もりに笑みを漏らす。
 ヨシトとは別の部屋で庚は赤子を抱えるかのように仔犬をひょいと抱く。噛まれるのも威嚇されるのもお構いなし。むしろ多少なりとも抵抗があるのを言祝ぐのように「元気なことは素晴らしいことです!」とか言いながら救助活動を繰り広げる。ヨシトが善人の空気で犬を落ち着かせているとすれば、庚は犬達から、そもそも警戒すべき「人」として認識されていないような印象さえあった。
 こうして二人は、ヨシトが使役する精霊の助けも借りつつ、着実に救助していく。
「ヨシト様、首尾はどうでしょうか?」
「ん~。そうだな、粗方救助できたみたいだ。屋根裏に逃げ込んだままの奴はいねえな」
「それは上々!」
 そんな報告を受けた庚は、それはそれは楽しそうに頷いた。

 一方、まだ元気のある犬達を担当するゲオルグとレオはなかなか順調には行かない。皆一様に汚れ、痩せているが威嚇と警戒は怠らない。逃げるものもいれば抵抗するものもいる。
 それでも、モフモフを愛し、またモフモフに愛される――要は動物の扱いに長けているゲオルグにしてみれば、この程度の事は想定の範囲内。脅かさないようにゆっくりと、しかも正面から堂々と近付き、時間をかけ着実に救助していく。
「大丈夫だ」
 強面の彼だがその声は力強く、そして優しい。
 何かを感じたのか犬達も少しずつ警戒を緩めていく。まずは第一段階を乗り越えられたことに安堵しつつ、次の救うべき命に視線を向ける。

 レオもまた犬達からの信頼を得るべく、膝を折って視線の高さを合わせる。同一直線に並ぶ瞳、その奥にある怯え。彼はその色を具に感じ取っていた。何故なら、
「ボクにもちょっとだけわかるよ、キミの気持ち」
 彼もまた同じ立場に立ったことがあるから。犬の目に、レオの姿が映る。
「おいで」
 伸ばしたレオの手に、犬の鼻が触れる。怯えの色は抜けきれない。それでも、一歩を踏み出した彼をレオはそっと抱き上げた。
 そうやって必死の努力を重ね、4人で救い出した命は総勢27匹。そのどれもが痩せ細り、汚れに塗れていた。


 健康診断を終わらせた犬からトリミング用のスペースに連れられる。餌を与えられたおかげかはたまた僅かばかりでも人に触れてきたお陰かはわからないが、全ての犬が最初の様に勢いよく吠えたり威嚇することはない。だが、まだ警戒心が抜けきっているわけでもない。
 最初の一匹は庚が担当する。改めて抱き抱えると、犬の毛はあちこちで複雑に絡まり、その上自身の脂で固着している。庚はまず、そこにぬるま湯を当てて解れるようにしてから、とても繊細で優しい手つきで絡んだ毛を解いていく。幸いにも、彼が請け負った犬は水を恐れないようだ。
「いい仔ですね、痛くありませんからね」
 丹念に、慈しみを込めて。毛先が終わったら段々と根本へ。あくまでも基本は優しく、だが時に少し勢いを強めてわしゃわしゃと泡立てる。それだけ汚れがこびりついていたのだ。
 そうして時間をかけて洗った仔犬は、ハサミを受け持つヨシトへと手渡される。
「よっし、大人しくしといてくれよな」
 台に犬を置き、ゆっくりとハサミを滑らせていく。最初はぎこちなかったものの、次第に慣れた様子でトリミングしていく。あちこちに毛玉があり、うっかりすると傷つけてしまいそうだが、丁寧さの合わさったハサミ捌きがそれを許さない。
 最後にタオルで身体を拭き、ドライヤーという風を吹かせる小型の機械で水気を飛ばしてトリミングは終了。仕上がった姿を身に庚が顔を覗かせる。
「素晴らしい! ヨシト様、結構なお手並みで御座います。ですが……その髪型は?」
「カカカッ、イケてるだろ!」
 あえて残した頭頂部の毛は、ヨシトの髪型そっくりに整えられていた。
「これも一種のオシャレだ!」
 ヨシトの言葉に呼応するかのように、犬が一声吠えた。どうやら気に入っているようだ。

 一方、レオは苦戦していた。彼にあてがわれた犬は有り余るほどの元気さを見せ、シャンプー用のスペースでも落ち着きなくしている。更に、水に恐怖心があるようで、試しにシャワーを見せたところ大暴れしてしまった。
「うーん……どうすれば……」
「大丈夫か? レオ」
「あ……ゲオルグさん」
 弱り果てたレオの背中にゲオルグが声をかけた。振り返ると、筋骨隆々のゲオルグが水着姿で仁王立ちしている。眼光の鋭さも相まって圧が凄い。
 事情を説明すると、なるほどと彼は呟いた。そして、「真似してみるといい」と言って。

 もふもふもふもふ……。

 大きな両手で犬を撫で始めた。一旦はパニック状態に近かった犬も、そうやって撫でられているうちに落ち着きを取り戻す。そうしたところで、ゲオルグは再びシャワーの栓を開く。ただし、レオが出した水量より更に少ない。チョロチョロと、という形容がしっくりする程度である。それを脅かさないように足元に少しずつかけていく。
「あ……」
 レオが驚く。湯を当てられた瞬間こそぴくっと反応したが、それ以降は恐慌状態にならずゲオルグにされるがまま。
「ごく少量のぬるま湯を、足元から少しずつかけてやるといい。彼等に『悪いものではない』と認識させることが必要だ。やってみるか?」
「は、はい!」
 ゲオルグからシャワーを受け取り、同じようにやってみる。少しずつ足元にお湯をかけるが、暴れる兆候はない。慣れたところで少しずつ勢いを強めていく。犬の反応は……暴れない。
「上出来だ」
「いえ、この仔が賢いからですよ」
 そう言ってレオは犬を優しく撫でた。ゲオルグも同意する。
「これだけ賢いなら、私達が綺麗にしてやればすぐに新しい飼い主に会えるだろう。手分けしてシャンプーとカットをしていくぞ」
「はい!」
 こうして二人は時に洗う役と切る役を交代しながら次々と犬達を生まれ変わらせていく。

 4人が全ての犬のシャンプーとトリミングを終えた時、既に辺りは暗くなりかけていた。


「お疲れ様でした!」
 生まれ変わった動物達の姿を見て、保護団体の職員が労いの声をかける。4人の足元には見違えるほど綺麗になった犬達。何頭かユニークな毛の残り方をしているのはヨシトと庚の遊び心の発露である。オシャレ、らしい。
「でも……。この仔達、なんで放置されたんだろう?」
 近付いてきた1匹を撫でながらレオが問う。それに答えたのは、一際大きな犬をもふもふするゲオルグ。
「例えばこの仔。見てみろ。左右の足の長さが少し違う」
 言われた3人が目を凝らす。確かに座した時に少し体が傾いているが、言われて初めて気づくレベルだ。
「こんな、こんな理由で?」
 レオは絶句する。
「『商品』にならないと判断したのだろう。愚かな」
 ゲオルグの言葉に同感の三人。気まずい沈黙が場を覆うが、ヨシトがそれを打ち破り大きな声を張り上げる。
「こいつらの事、よろしくお願いします!」
 深く頭を下げ律儀に頼み込むその姿に、「ええ、勿論」と職員も力強く返した。
「それでは皆様、一杯食べて、一杯遊んで、幸せに生きるのですよ? さようなら」
「キミたちの未来が幸せで、手を差し伸べてくれる人が現れるように。じゃあね」
「二度目の生が祝福されるよう祈っている」
 庚が、レオが、ゲオルグが手近な犬達を撫でながら別れの言葉を述べる。踵を返した4人に、救われた犬達が何かを察したのか一斉に吠えた。

『助けてくれてありがとう。絶対幸せになるから!』
 そう叫んでいるように聞こえた。

成否

成功

状態異常

なし

PAGETOPPAGEBOTTOM