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シナリオ詳細

コーケッツ・クエスト!~高潔なる勇者コーケッツの冒険~

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 その世界は闇に覆われようとしていた。
 各地で魔物が活発化し、少なくない血が流れた。夏に雪が降り、冬に日照りが続き、作物が育たず民は飢えている。密林に、洞窟に、海底に、闇にまつろう者共が集い、邪悪な計画を練っている。
 誰かが言った。『伝説にある、魔王の復活が近いのだ』と。世迷い言のようなその言葉は、しかし真実としてとられ、大陸中を駆け巡った。人々の心は絶望に囚われようとしていた。

 しかし、希望は失われていなかった。古きに伝わる魔王の伝説。そこには、必ず魔王を打ち倒す希望が記されている。魔王と対をなす存在、すべての魔を祓うもの、人類の残された希望の光。すなわち、勇者である。


「あぁ、騎士様!どうか、どうか我々をお救いください……!」
「山にあの悪竜が住み着いてからというもの、我々は恵みを得ることができす、飢える一方なのです……」
「最近では、悪竜の瘴気に他の魔物まで引き寄せられてくる始末……」
「このままでは、我々は村を捨てるか、その前に魔物に食われて全滅するか……」
「騎士様!どうか我らをお救いください!」

 村人たちの訴えを、真剣な眼差しで聞いていた青年は意を決したように頷く。そこに躊躇いや、強大な敵への恐怖は一切感じられなかった。

「お任せください、この騎士コーケッツが悪竜を打倒してみせましょう!!」

 村人の歓声を背に、コーケッツは悪竜の住まう山に足を進めた。



「救ってほしい世界があるんだ」
 境界案内人カストル・ジェミニは、集まったイレギュラーズに向けてそんなふうに話し始めた。

「世界の名前は『アルソドクス』。魔法があって、魔物が居て、人間やその他の種族がそれと戦っている、言ってみればオーソドックスな剣と魔法のファンタジー世界ってところかな。滅びの原因は、魔王の復活とそれに伴う闇の勢力の増大。と、これもまぁよくある話だね」
 よくあるんだろうか、というイレギュラーズの疑問によくあるんだよ、と視線で答えながらカストルは説明を続ける。

「けど、この世界にはそれに抗うだけの存在が居る。こんなに王道な世界の、魔王を倒す存在とくれば。そう、勇者だよ」
 と、そこでイレギュラーズは首をかしげる。勇者が居るならわざわざ向かい必要はないのではないか、と。

「あー、うん。それなんだけどね……」
 と、カストルは急に歯切れ悪くなり。
「その勇者、いずれは魔王を打ち倒す存在となることは間違いない、はずなんだけど……その、現時点では実力が一切伴っていないと言うか」

 えー……みたいな顔になるイレギュラーズ。説明を続けるカストル。

「その勇者、高潔なる騎士コーケッツって言うんだけど。本人は真面目に研鑽を積んでて、いずれは強くなる、んだけど、高潔だから人々の頼みを断らずに、今の実力だと確実に命を落とすような場所にも躊躇わずに向かっちゃうんだ」

 なんとも言い難い表情になるイレギュラーズ。志は立派だが、実力が伴わないとなんとも危ういことになる。

「というわけで、君たちにはいつか世界を救うために、今勇者を救ってほしいんだ」

NMコメント

 おそらくはじめましてでしょう、はじめまして小柄井枷木と申します。
 今回始めてライブノベルを出させていただきました。王道ファンタジーの裏側の悲喜こもごもと言うか、なんかそんな感じです。

●世界観
 オーソドックスなファンタジー世界、『アルソドクス』です。ツッコミは受け付けません。
 世界自体の力が弱いため、この世界では圧倒的な力を持つとされる存在でも、イレギュラーズからすれば問題なく倒せる程度です。ただし、近く復活するとされる魔王だけは勇者の力がなければ倒せません。

●目的
 勇者コーケッツの生存と悪竜の討伐。
 コーケッツはびっくりするくらい死にやすいですが、いずれこの世界を救う勇者なのでこんなところで死んでもらっては困ります。なんとかして生き延びてもらいましょう。
 正確にはコーケッツが生きていればいいのですが、コーケッツは高潔なので悪竜が倒されない限り何度でも立ち向かうでしょう。そして何もなければそのまま死ぬでしょう。悪竜の討伐もコーケッツ生存の条件の一つとなるでしょう。
 また、コーケッツが見ていないところで悪竜が倒された場合、「悪竜を倒すほどの存在が別にいる」「目的の悪竜はこれではなかった」などと判断して確認のために山をうろつく可能性があります。その場合、悪竜の影響で集まった魔物にやられてしまう可能性があります。悪竜が倒されたことをコーケッツに確認させるようにしましょう。

●勇者コーケッツ
 いずれこの世界を救う勇者です。現在は実力が伴いませんが。
 高潔なので民の頼みを断れません。危険な場所にも躊躇なく向かうでしょう。
 高潔なので決めたことは必ずやり遂げようとします。悪竜の討伐を諦めることはないでしょう。
 高潔なので他人を危険に巻き込みたがりません。イレギュラーズが同行を申し出ても、危険だからと断られるでしょう。他の方法を考えるか、根気よく説得しましょう。
 高潔なので危険な魔物を見逃しません。悪竜以外の魔物にかかずらって消耗する可能性があります。
 高潔なので人の言うことを信じやすいです。騙されやすいともいいます。
 このとおり様々な要因で命を落とす可能性があります。飼育の難しい生き物か何かだと思ってください。

●悪竜
 悪いドラゴンです。知能は頭のいい野生動物程度です。言葉は通じません。
 一度縄張りを決めたらそこからめったに離れようとしません。現在は山の頂上付近の洞窟です。
 気性が荒く、縄張りに足を踏み入れたものを激しく攻撃します。
 翼はありますが、飛ぶのに魔力を使うので消耗している場合飛べなくなります。攻撃手段はシンプルに爪爪牙尾、あと火を吹きますが、これも魔力を消費するので消耗してる場合は使えません。
 体から瘴気を発しており、これに他の魔物が引き寄せられてきます。すでに山に入れば高確率で何らかの魔物に遭遇する程度には集まってきているようです。

  • コーケッツ・クエスト!~高潔なる勇者コーケッツの冒険~完了
  • NM名小柄井枷木
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年02月09日 21時40分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ハロルド(p3p004465)
ウィツィロの守護者
メリー・フローラ・アベル(p3p007440)
虚無堕ち魔法少女
小刀祢・剣斗(p3p007699)
新時代の鬼
カナメ(p3p007960)
毒亜竜脅し

リプレイ

●第一章『出会い』
 村人たちの願いを聞き届けた騎士コーケッツは些かの迷いもなくその歩みを悪竜の住まうという山へと向けた。
 敵は強大である。コーケッツはもちろん、そんなことは理解していた。今の彼の実力では、道半ばで倒れてしまうであろうとも。だが、そんなことはコーケッツが足を止める理由になりはしなかった。
 助けを求めるものが居た。命を懸けるのに、理由はそれだけで十分であった。

「む」

 故に、まさに悪竜の棲む山へと踏み入るその一歩前でコーケッツが足を止めたのは、単純に行く道を塞ぐように、二人の青年と二人の少女、合わせ四人の若者が並び立っていたからである。

「此処は」
「ここは悪竜が住み着いちゃった、危険な山なんだよね☆」

 危険だ、と続けようとしたコーケッツを遮るように、四人のうちの一人がそのように言う。言葉を遮られたコーケッツはしかし気分を害した風でもなく頷き、

「分かっているなら話は速い。魔物が現れる前に此処を離れたほうが良いでしょう」

 その義心でもって、この場を離れるように忠告する。未熟とはいけ勇者としての修行を積む自分でも死を覚悟するような場所に、他者が身を晒すような危険をコーケッツは見過ごせなかった。
 しかし、

「ごめんだけど、そういうわけにはいかないんだよね☆」

 のである。彼らは道半ばで倒れてしまうであろうコーケッツを救うため、このアルソドクスより遠く離れた無垢なる混沌世界から訪れたイレギュラーズ。この世界の救世主の救世主である。

●第二章『道連れ』
「それは、」
「あのね、カナ達も悪竜を倒すように頼まれたから、同じ方向に行くんだよ♪」

 どういう意味だ、とコーケッツは続けようとした。それを 『特異運命座標』カナメ(p3p007960)は、先程と同じように言葉をかぶせて遮る。
 コーケッツは高潔なので相手の言うことをしっかり聞こうとする。そのため、自分が喋っている途中でも相手が喋りだすと黙ってしまうのだ。

「コーケッツおにいちゃんも悪竜を倒しに行くんだよね?」
「それは、そうだですが。どこで私の名前を……」
「あ、コーケッツおにいちゃんの名前はカナたちに依頼をした人から聞いたんだ♪それでね、せっかく目的も同じなんだし、だから少しの間だけ一緒に冒険しようよ!」
「しかし、この先は危険だと」
「危険なのは分かってるし、自分の身は自分で守れるから心配しなくて大丈夫だよ☆ね、いいでしょ?コーケッツおにいちゃん♪」
「むぅ……」

 カナメが両手をぎゅっと、上目遣いで見つめながらそんなふうに頼み込めばコーケッツはむぅと呻いてしまう。カナメの言動はなぜか、似つかぬはずの故郷に残してきた妹を思いこさせるのである。高潔なるコーケッツ、昔から妹の頼みにはことさらに弱い男であった。
 しかしそれでも危険な場所に同行させることを良しとせず、どうやって断ろうかとコーケッツが頭を悩ませているところに、

「フハハハ!どうやら貴様は「正義」の心に溢れる好人物であるようだな!だが、旅は道連れ、世は情け。同じ道中を助けあう仲間を俺達は欲している。貴様に「愛」があるならどうか俺達を助けると思って同行を許して欲しい!」

 高笑いとともに、 『愛と勇気が世界を救う』小刀祢・剣斗(p3p007699)が参戦してきた。

「自分を正義だと思ったことはありませんが……助ける、とは?」

 急に笑い声を上げる剣斗に多少面食らいつつも、コーケッツは疑問を返す。

「うむ、先程そこのカナメも言っていたがな、俺達も悪竜退治を依頼されていてな。ここで足止めされては依頼を達成できぬのよ」

 正確には依頼されたのはコーケッツの生存である。まぁ悪竜討伐も必須条件のようなものなので嘘は言っていない。
 
「それならば、私が悪竜を倒してしまえばあなた方の依頼も達成されたことになるでしょう」
「悪竜を一人で倒そうという「勇気」ある心を持っている事は結構!だが俺達と協力し合えば尚更悪竜退治も簡単かつ安全に終わるだろう!」

 コーケッツ自身、悪竜を討伐することは難しいと思っている。剣斗の言う通り、協力したほうが可能性は高い。しかし、コーケッツのなかの高潔な精神が自分以外を死地へ赴かせるのを躊躇わせていた。

「やはり、あなた方は戻ったほうが……」
「あー。まぁ、そう頑なになってくれるなよ。カナメの言う通り、自分のみを守れる程度の力はある。戦力が増えるなら、アンタにも悪い話ではないだろう?」

 と、そこに加わってきたのは 『聖剣使い』ハロルド(p3p004465)である。

「たしかに、それはそうなのですが……」
「ま、初対面で信用してくれというのも無理があるか。だがまぁ俺の話も聞いてくれ」

 妹を思わせるカナメや、妙にテンションの高い剣斗を相手にしてたじたじになっていたコーケッツであるが、次に喋りだしたのが落ち着いた雰囲気のハロルドであったために多少冷静になる余裕が様子である。

「俺は世界を救う力を秘めた聖剣の担い手でな」
「なんと。では、貴殿も神託を受けて?」
「あー、まぁそんな感じだ。アンタとはいわゆる同業者ってやつで、一応アンタの先輩にあたるか?ともかく、俺もこの世界を救うべく戦っている」
「よもや、そのような方とは知らず……無礼を詫びましょう。あなたのような人が力を貸してくれるのならば百人力だ」

 説得のコツは、嘘だと思われないようそもそも嘘をつかないことだ。ハロルドの言うことはまぁちょっと世界が違う程度のことを言っていないだけで、嘘はない。コーケッツもすっかりハロルドの言うことを信じている。

「ですが……」
「なんだ?」

 と、ハロルドたちがついてくることを承知したコーケッツであるが、なにか懸念があるように眉をひそめる。ハロルドがそれを問いただしてみれば、

「それでも、彼女は連れて行くには稚すぎると思うのです」

 と、コーケッツが示したのは 『躾のなってないワガママ娘』メリー・フローラ・アベル(p3p007440)。見た目十歳程度の幼い少女である。

「あー……」

 イレギュラーズは外見によらない戦闘能力を持つものが多いので忘れがちであるが、そんなことは関係ないこのアルソドクスにおいてはメリーはやはりこんなところに居るべきではない存在に見えるのだ。さてなんと説明したものか、とハロルドが考えていると、満を持してとでも言うように、メリー本人が口を開いた。

「あのね、わたしは修行中の魔法使いなのでけど、修行のために、強い魔物が放つ瘴気を長い間浴びずにいると死んでしまう呪いを自分にかけているのよ。納得できる強さになるまでは自分自身でも解呪できない、しばらく強い魔物と対峙する機会がなかったから、今回悪竜と直接対峙して瘴気をたっぷり浴びておかないと死ぬかもしれないの。だからどうしても悪竜のところに行かないといけないのよ」

 おおむね一息でここまで言い切った。マジかこいつ。ハロルドは思った。かは定かではないが。先程、説得のコツは嘘をつかないことだとか思っていたら、まるまる全部嘘で説得を試みるやつが居た。流石に顔に出すようなことはしないが、これで大丈夫なのかとコーケッツの方を見てみれば

「なんと……若い身空でなんという……魔術師とはそこまで過酷なのですか」

 信じていた。マジかこいつ。メリーは思った。お前が思うのか。というのはさておき。コーケッツは人を疑うということを知らないタイプの人種であった。
 と、メリーの語った設定に打ち震えているコーケッツに剣斗が声をかける。

「これで分かったであろう。貴様に理由がある様に俺達にも理由がある…コーケッツよ、貴様が真に「正義」の心を持つ高潔なる者なら頑なに自分の都合ばかり押し付け、他者を慮らないのは悪の所業と言えるんじゃないか?時には妥協できる所は妥協する寛容さは持つべきだ」
「……そうですね、他人を危険に晒したくないという思いでしたが、それも私の傲慢だったのかもしれません」

 なんか丸め込まれてるような気がしないでもないが。ともあれイレギュラーズはコーケッツを説得して同行することになったのである。

●第三章『闘い』
 と、ここまでくれば実は語ることは多くない。コーケッツからすれば死を覚悟するような魔物の群れも、イレギュラーズにとっては苦戦するような要素はないのである。むしろ、人間の声真似をする魔物にコーケッツが騙され誘い込まれたときが一番の冷や汗モノであった。メリーが素早くその魔物を魔弾で撃ち抜かなければそのままゲームオーバーだったかもしれない。
 それでも、誰も大した傷を負うこともなく、悪竜の塒までたどり着くこととなった。
 決戦が始まる。

●第四章『旅立ち』
 闘いは終わった。悪竜は斃され、この地には平和が戻った。この世界において絶対の恐怖である悪竜もイレギュラーズからすればまぁちょっとは手応えあったねくらいの相手である。是非もなかった。
 さて、無事悪竜を討伐し凱旋したコーケッツであるが、ハロルドや剣斗はもとより、いたいけな少女にしか見えないメリーやカナメですら自分では苦戦するような魔物をあっさりと倒す様子を見て、流石に思うところがあったようだ。
 思いつめた表情で剣を握った手を見つめる彼に、ハロルドが声をかける。

「俺みたいになるなよ」
「え?」
「大事な人を死なせた挙げ句、人々を救うために女子供関係なく敵を皆殺しにするような勇者には、な」

 それの意味するところはコーケッツにはわからない。だが、ハロルドが何かを自分に伝えようとしてくれていることは理解できた。

「強くなれ。アンタが守りたいものを守れるくらいに」

そう言ってハロルドはコーケッツに背を向け歩み去る。もう何かを言うつもりはないようだった。

「強く……えぇ。そうですね。落ち込んでなんか居られません」

 かつての勇者の言葉は、新たな勇者に受け継がれていく。

成否

成功

状態異常

なし

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