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シナリオ詳細

青に還る

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●湖の主
「主様……」
 ゆらゆらと揺らめく水の中、湖の主がうっすらと目を開ける。
「そろそろ……還る時が来たようだ」
 湖に生まれ、千に近い年月を存在した。
 いつの間にか湖の主と呼ばれるようになり、数多の人でない者たちに慕われるようになった。
「私の子らを、頼んだよ」
 不安げに主を見つめる妖精。この子が次の主となり、この湖を、ここに住まう者たちを守り、愛しむ存在となる。
「……人の子は、どうなっているのだろうね……」
 主となった時より、湖から離れることは出来なくなった。だけど、たまに迷い込んだ人の子を助け、人の営みの事を聞くのが主は好きだった。
 最後に人の子と話をしたのは何時の事だろう。
 もう一度、人の子の話を聞きたかった。
 穏やかに終わりと迎えようとする長き時を生きた妖精。その胸の奥深くに仕舞いこんだ小さな願い事。

●穏やかな最後の前に、願いを
「『フェアリーテイル』の中にある湖で、長い間湖を守っていた妖精が還ろうとしているの」
 妖精に死の概念はない。
 ただ生まれ、世界に還る。
「主様って呼ばれてるんだけど、主様は妖精たちの話を聞くのも好きだけど、人の話を聞くのも好きな妖精なの」
 人と妖精。
 異なる視線の、異なる生活。
「湖に迷い込む人がいないお陰で、主様はもう長いこと人の話を聞いてないの。それで、最後に少しで良いから人の話を聞きたいんだって」
 違う世界の話を聞けば、驚き喜んでくれるかもしれない。
「主様に、どんなことをしているかとか、どんな生活をしているかとか、そんな些細なことで良いの。お話してくれないかな?」
 それから、人と妖精、共に主様の最後を見送って欲しい。

NMコメント

 『フェアリーテイル』第三段は、湖の主にお話をしてあげることです。
 ちょっぴり切ないお話になるかも知れませんが、主様に楽しいことを聞かせてあげてください。

●目的
・主様にお話を聞かせる。
 お話は些細な日常で良いので、聞いていて楽しくなったり、幸せな気持ちになるお話をしてあげてください。
 今日のご飯がこんなだった。
 ちょっと良いことがあった。
 綺麗なものを見つけた等々。
 その後は、妖精たちと一緒に主様の最後を見送ってあげてください。

●主様
 千に近い年月を存在した妖精。
 穏やかで、湖に住む存在を、フェアリーテイルに存在する命を愛しく思っている。
 見た目は長い水色の髪を持つ華奢な青年。
 もう起き上がることも出来ず、水底で世界に還る時を待っている。

●その他
・主様以外の妖精たちもいます。皆主様の影響で人に好意的です。
・水底ですが、妖精たちのおかげで呼吸も出来るし普通に動けます。
・主様を悲しませるようなことはしないであげて下さい。彼らは人の良き隣人でありたいのです。

 それでは、皆さまの主様へ語るお話、お待ちしております。

  • 青に還る完了
  • NM名ゆーき
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年01月25日 22時10分
  • 参加人数4/4人
  • 相談4日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

アルメリア・イーグルトン(p3p006810)
緑雷の魔女
フラン・ヴィラネル(p3p006816)
ノームの愛娘
アウローラ=エレットローネ(p3p007207)
電子の海の精霊
紅楼夢・紫月(p3p007611)
呪刀持ちの唄歌い

リプレイ

●湖の底で
「珍しいお客人だね」
「お邪魔します」
 ぺこりと頭を下げたのは『かつての隠者』アルメリア・イーグルトン(p3p006810)。その横には既に泣きそうな『繋ぐ命』フラン・ヴィラネル(p3p006816)の姿。
「どうかしたのかい? 折角の可愛い顔が台無しだよ?」
 慰めるように微かに手を持ち上げる主様の姿を見て、フランの目が潤む。
「主様、もうすぐ世界に還るんだよね……。村のおばーちゃんが死んじゃった時、「命の尽きたハーモニアはファルカウの大樹に還るのよ」っておかーさんが言ってたけど、妖精さんたちもそういうことなのかな……」
 泣くのを堪えながら「笑顔で見送ってあげなきゃ」と涙を拭くフランを見て、主様が微笑む。
「優しい子だね」
 主様の代わりにアルメリアが頭を撫でると、フランは笑顔を浮かべて主様を見る。
「アルティオ=エルムって森の国から来たフランです! こっちは同じ村から来たアルちゃん! よろしくね、主様!」
「アルメリアよ。私とフランは同郷なのよね。幼なじみって奴。まだ生まれて20年もたたないけど、その内あなたみたいに1000年近くか……もっと生きるかも」
 誰かを看取るのは初めてだと言うアルメリアに、主様は悲しむことはないと言う。
「看取りって言っても、主様は死ぬわけじゃないんだっけ。でも、見送る方には似たように映るわ……」
 今までいた人と二度と会えなくなってしまう。どれだけ生きても、それはとても悲しいことだ。
「アウローラちゃんはイレギュラーズになってからの記憶しかないけど、ずっと長い事生きて、ゆっくり世界に還るのを待ってるのはなんだかすごく寂しい気がするんだよ……」
 いつも笑顔の『電子の海の精霊』アウローラ=エレットローネ(p3p007207)もすぐ目前に迫った別れに寂しさを隠せない。だからこそ、最後に沢山楽しい話をして、幸せな時間を過ごして欲しいと思う。そしてそれは、『呪刀持ちの唄歌い』紅楼夢・紫月(p3p007611)も同じ思いだ。
「皆、優しい良い子だね。皆のような子たちが会いに来てくれるなんて、私は幸せ者だ」
 穏やかに笑う主様を見て、フランがそっと主様の手を握り締める。
「あたしたち、主様にいっぱい聞いて欲しいことがあるんだよ。だから、聞いてくれる?」
 光の少ない水底でも輝くアメジストの瞳に、主様は嬉しそうに微笑んだ。

「あたし甘いものが大好きなんだけど、この前一日でいっぱい甘いもの食べたの!」
 フランは嬉しかったことをと言われ、大好きな甘い物をいっぱい食べた日の事を話す。
「朝は住み込みで働いてるパン屋さんのクリームパンとメロンパンとチョココロネ! そこからお店のお手伝いして、お昼はお茶屋さんでお汁粉ときなこ餅! あ、普段はちゃんとご飯食べてるよ! たまーに自分へのご褒美なの!
 でねー、おやつにお友達とタピオカミルクティー飲んで、夜はチョコバナナマシュマロのピザ! えへへ、美味しかったよー!」
 思い出して頬を緩めるフランに、隣に座っているアルメリアがため息を吐く。
「フランは暫く甘い物禁止かしら」
 フランが甘い物を好きなのはわかっていたが、まさか丸一日甘い物尽くしなんて。
「それだけはやめて!」
 必死になって幼馴染にすがるフランに、その場にいる全員が笑みを零した。

「アウローラちゃんも甘い物好きだよ!」
 元気よく手をあげるアウローラを見て、フランがぱっと笑顔になる。
「甘い物食べると幸せになるよね!」
「分かるー!」
 きゃー! と盛り上がる二人にアルメリアはため息を吐き、紫月はくすくすと笑う。
「アウローラは、フルーツサンドも幸せそうに食べていたねぇ」
「美味しいは正義なのよ!
 あ、アウローラちゃんは朝起きてからローレットって言う所でアウローラちゃんでもできそうな依頼を探すんだよー。特に依頼がなかったら幻想っていう所でお買い物とかするよ。あまーいお菓子とかよく買って食べちゃったり、可愛いアクセサリーとか見たらお試しでつけたりとか! この前見つけたクレープ屋さんのクレープ、美味しかったよ!」
 美味しいクレープと聞いて目を輝かせるフランに、アルメリアは「詳細聞くなら後で」と小さく告げる。それを聞いてアウローラは一緒に行こうと誘った。
「あとあと、アウローラちゃんはアイドルっていうのを目指してるんだよー! だから時間がある時に踊ったり歌ったりするんだ! 依頼で助けた子供達や街の人に聴いてもらったりしてるよー」
「どんな歌を歌うの?」
 主様に聞いて貰うはずなのに、フランが一番わくわくしているのは気のせいだろうか。
「アウローラちゃんは明るくて楽しい曲が好きだよ! あ、もし迷惑じゃなかったらここでも歌ってもいいかな? みんなで歌えばきっと楽しい思い出になると思うんだよ!」
 にこにこ楽しそうに笑うアウローラに、主様は穏やかに微笑んで小さく頷く。それを見て、アウローラは幻想なら子供でも知っている歌を歌い始める。
「あ、これ知ってる!」
 そう言ってフランも歌い始め、明るいコーラスにしっとりとした紫月のアルトが入る。アルメリアは恥ずかしそうにしていたけど、フランに服を引っ張られて小さな声で歌い始めた。
 歌い終えるとフランが他の曲をせがむ。
「まったくフランってば……」
「場を明るく出来る良い子だね」
「それは……えぇ、そうね。みんなを笑顔にするのは得意なのよあの子」
 困ったような、でもどこか誇らしげなアルメリアの呟きに、主様と紫月が微笑む。
「アルメリアも良い子やねぇ」
「本当に。人の良い所を見つけられるのは、とても素敵なことだよ」
 二人から褒められて思わず赤くなるアルメリアだが、流れを変えようとこほん。と咳をする。
「私の家はまじない師なんだけど、店の商品をいくつか作ってみることになったわ。将来継ぐかもしれないし練習してみろって。それでまずは傷薬を作ってみたの。基本の薬だけど、はじめてにしては良い薬とか作れたと思うの」
 ふふん。と笑うアルメリアに、他にどんな薬を作れるか紫月が訊ねる。
「咳止めに熱冷ましよ。
 それから、故郷でちょっと名が売れ始めて来た所かしら。今、私っていわゆる冒険者って感じ? まぁ、ここにいる全員そうなんだけど」
 同じ依頼に参加したこともあれば、同じ場所で行われた大規模な戦闘で一緒に戦ったこともあるという。
「以前は店の手伝いと趣味の読書くらいしかないような生活だったからね。ちょっとした有名人って言うのも悪くないわ。照れ臭いけどね」
 照れ隠しに頬を掻いた後、長く伸びた前髪越しに主様を見つめる。
「あとは、こうやって別の世界に来られた事かしら?そう、妖精の主をお目にかかれたことそのものが嬉しいわ。本当に物語みたい」
「そんなに喜んで貰えると私達も嬉しいよ」
 微笑む主様に、今度は紫月が話し始める。
「私は色んな世界を見る依頼によく参加してるねぇ。
 本当に色んな世界があってねぇ、不思議の国や私が元々住んでいた世界に似た世界、終焉を迎えそうな所もあれば宇宙もあったりねぇ。色んな世界で見た景色をしっかりと覚えて、唄の歌詞を探したりするんが楽しいんやわぁ」
 見て回った世界でどんなことがあったのか話せば、主様だけでなく、他の妖精たちも興味を示す。
「あとは依頼先で料理作ったりやねぇ。パーティを盛り上げるんに料理を作ったり、みんなで作ったサンドイッチを分け合ったりとか楽しかったわぁ」
 嬉しそうな笑顔を思い出せば、自然と笑みが零れる。
 楽しいこと、悲しいこと、嬉しいこと、泣きたいこと。沢山見てきた様々な思い。
「私は唄歌い、妖精の主様に出逢えたこの縁は忘れへんわぁ。私が歌える楽しい唄を是非聴いて欲しいねぇ。
『世界を旅して縁を結び唄に残す』
 それが私の生きる意味やからねぇ」
 今の気持ちを唄にする紫月。その唄は、優しくて穏やかで、どこか切ない唄だった。

●約束
「あのね主様、来る前に急いで深緑に戻って積んできたの! お話以外に何かできるか考えて、あたし達の世界のお花を贈りたいなって思って!」
 そう言ってフランが差し出したのは色鮮やかな黄色い花。
 胸の上にのせて欲しいと言われ、フランはそっと花を乗せる。
「有難う人の子たち。最後に、楽しい時間を過ごせた」
 花を抱きしめ穏やかに微笑む主様。
「悲しむことはない。私の命は巡り、いつか新しい命となるのだから」
 その言葉に、涙を浮かべながらフランが必死に言葉を紡ぐ。
「あのね、あたしも頑張って長生きするから。だからきっとまたどこかで会えると思うよ!」
 いつか生まれ変わると言うならその時を待とう。長く生きる種族だから、きっとまた会える。
「だから、だから……!」
 ぼろぼろとフランの目から涙が零れ落ちる。
「やっぱり駄目だよアルちゃーん! 初めて会ったけど寂しいもん! こんなに愛されてる主様なんだよ!?」
 泣きじゃくる幼馴染を抱き寄せて、アルメリアも涙を零す。
「……もっと元気な時に会ってみたかったけれど。これが最後なんて寂しいのよ」
「アウローラちゃんも、もっと沢山お話したいよ!」
 お別れが嫌だと泣く三人を見て、主様は困ったように、だけど嬉しそうに笑う。
「私も、皆の話をもっと沢山聞きたい。だから、今度会ったらもっと沢山話を聞かせておくれ」
 また今度。そう言う主様に、フランは涙を拭き、鼻をかむ。
「また会おうね主様! 絶対、約束だよ!」
「もしもまた何処か出逢う事が出来たなら、そんな楽しい事を考えながら歌わせてもらうわぁ」
 紫月がそっと再開を願う唄を紡ぐ。
「あぁ……。また、今度」
 静かに目を閉じた主様の体から力が抜け、髪の端から色が抜けて行く。そして、透明になった体が溶けて消えた。
「……またね、主様!」
 湖に、青に、世界に還った主様。
 胸に残った約束を抱きしめ、人の子も妖精も、愛しい主を見送るのだった。

成否

成功

状態異常

なし

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