PandoraPartyProject

シナリオ詳細

羨ましい、その宝物

完了

参加者 : 4 人

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オープニング

●真っ暗の中身、からっぽな鬼
 暗い。暗い。此処が何処で、見る事も叶わない地獄だという『事』は理解出来る。そして『それ』は大切なものを掻っ攫うのだ。繋がりか。歪みか。罅割れから起こる膨大な闇――助けを呼び、足掻き、苛まれ、最後に見つけるのは何か。貴様次第だ。世界は既に死んでいる。死が活きているのだ。天蓋にも思える夜の貌が、クスクスと餓えて鳴いていた。さあ。惑え。混ざれ。踊れ。喰らえ……その先に貴様は『貴様自身』を視る。だが。それを『生み出す』生命体。人間は絶滅した。
 怪物は命を恨んでいた。怪物は心を怨んでいた。怪物は『人間』を羨ましく思い、ただ、護謨質な輪郭を晒していたのだ。餓えた胃袋が『人間』の脳髄や精神を貪り、それでも癒えない悪夢をさまよう――滅んだに等しい世界は、人と呼ばれる宝物を喰い尽くしてしまったのだ。故に『頽廃』を取り除くには『新たなる記憶』即ち、大切が不可欠で在る。どうか、貴様等の『こころ』をください。
 腹が減った。咽喉が渇いた。養分が足りない。共食いを成しても空しいだけだ。霞を食べて生命を維持するなど不可能だ。助けてくれ、怪物の音は聞こえない。口も鼻も耳も目も在らず、それらは『触れる』事で食む――痩せ細った、枝のような貌でも。その『性質』は死ぬまで枯れないだろう。

 夜の鬼が泣いている。鳴く事も出来ず、嗤っている。

●大切なもの
「人間が餌で、それが失われたなら。頂点もきっと滅ぶでしょうね」
 案内人たる『こすも』は息を吐いた。頁を閉ざす事なく、蒼白に染った顔でイレギュラーズを認識した。嫌な予感が汗と成り、背中や額を這いウネル。
「今回の物語は。こう。絶望の内に自らを知る。そんな内容になりそうね。あなた達には『真っ暗』な世界に入り込んでもらうわ。そこで鬼ごっこするのよ――貌の無い、化け物。住人……弱肉強食のピラミッドの頂点との『大切』を賭けた。彼等は飢えに苦しんでいるから、全力で追ってくる。降って涌いた望みに縋るような――逃げ切ったら何も無いわ。逃げきれなかったら『大切な記憶を失う』かもしれない。ええ。勿論、全てが終われば【元通り】よ。安心してちょうだい。物語は現実ではないのだから」
 黒いお面を被って揺れて、こすもはイレギュラーズを見送るだろう。
「あなた達の『大切』を再確認する機会かしら。それとも。ただの恐怖体験。何方にせよ、良い宝物になる筈。頑張って」
 物語が開かれた。

NMコメント

 にゃあらです。
 真っ暗な世界で餓えた化け物と鬼ごっこ。
 因みにこの世界では『あなた達は普通の人間』程度の存在です。
 気を付けてください。

 プレイング例
「畜生……なんだってこんな」
 化け物から逃れる為に建物などを使って隠れます。可能なら木材などで即席の武器を作り、気休めとして揮います。最後まで全力で抗います――ああ。持っていくんじゃねぇ。俺の最愛の人……その記憶。

  • 羨ましい、その宝物完了
  • NM名にゃあら
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年01月23日 22時25分
  • 参加人数4/4人
  • 相談4日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

アリシア・アンジェ・ネイリヴォーム(p3p000669)
双世ヲ駆ケル紅蓮ノ戦乙女
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900)
秋縛
ドゥー・ウーヤー(p3p007913)
海を越えて

リプレイ

●かたちない
 物語は開かれて、貴様等は暗黒の何処かに在った。お互いが今現在、佇んでいるのか座っているのか。なにものに囚われたのか判断し難い状況。真逆、一切が違う頁なのか。云々と思考を巡らせていると、痩せ細った羨望が貌を晒す。宙に星など浮かばないのだ。如何か、自らの大切を再確認し給え――その宝物を、しっかりと箱に入れて。

 暗い。昏い。重く圧し掛かる静寂が、『黒焔纏いし朱煌剣』アリシア・アンジェ・ネイリヴォーム(p3p000669)の心身を嘲笑った。世界に這入り込んだ。迷い込んだカタチに近いが。何処か懐かしい心地が涌き出す。前に居た世界の最後も、こんな『鬼ごっこ』みたいな――ひたり。宙が目眩に苛まれている。地面が沸騰するように歪んでいた。グチグチと発する音は己の咽喉か何者かの飢餓か。赤茶色の束を乱しながらブレる金色に怪異を映せば好い――最後まで。最期まで。自身が悪だろうと。危険で避けられようと。独りの『私』を……関わりの鎖。剥奪した【私】。大切な記憶の願いを渡す結果だけは赦せない。赦されない。赦すものか。責務は果たすべきだと。気配は感じ取れないが――奴等は大柄だ。たとえ暗黒でも吐き気じみた接近で解せる。はぁ……はぁ……油断するな。気を抜くな。一瞬でも攫われれば何もかもを啜られて終う。其処等の木材や鉄棒を掴めば気休め程度には成るだろうか。そもそも。鬼とは死ぬのか。痛みを感じるのか。次元が違うのでは。音を消せ。息を整えろ――心音……もしや恐怖か。錯乱と言った類の感情か。嫌な予感が臓物を引き千切っている。
 聳え立つ闇の眼前に巨大な尖塔が在った。宙を貫くような出入口――此れは脱出の為の手掛かりか。地獄への螺旋階段か。いいや。楽園への導きだ。解らないならば『隠れて』過ごせば好い。幸いな事に考える時間は異常に有る――音を殺して戸を開け、光の無い段差を上る。おかしい。振り向いても地面が無い。崩れそうな精神を抱えて向かう他にないのか。その時まで、抗わせてもらうわ――窓は無い。硝子は見当たらない。ただ、口のような黒が続いている。誰が如何に『このような』奈落を。上を造ったのだ。もしや此れは永久だ。永遠だ。さまよって、逃れて、最悪に訪れる記憶の深海……真逆。真逆だったのだ。この尖塔は巣に繋がっていた。ぎぃぃぃぃ……覗き込む、貌の無い。楽しませてもらうわね。しかし。如何やって貪るのだろうか。護謨質の指先が脳天を――突き刺さない。触れた程度だ。質を観て在るのだろうか。なんだか、笑える光景だろう。
 早く。速く。いっそ。殺してほし……全てを切り裂かれる。脳髄の上から下までに糸が垂れる想像――素直さ。諦めが肝心とは真実だったのだ。消える。吸い取られる。とろける――嫉妬すらも消えて逝く。一種の救済が落ちてきた。ああ、おぞましい聖なる――。

 はは――笑い声が本物か、渇いていたのか。真実は『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)の記憶だけが知っている。塵のように降り注ぐ漆黒が、肌を舐ってたまらない。これはまた難儀な状況だ。絶望的なのは常日頃からだ。神も人も戦争には敵わない。死ぬ寸前まで抵抗すべきだ。我らが国是――肺が新鮮な空気を欲している。胃袋が緊張状態から解放されたい云々と叫んでいた。さて。鬼ごっこの続きと行こうか……何処に往く。逝くべき運命なのは微かに臭っているのだ……死ぬ思いで走れ。奔れ。駆けろ。音を総て滅ぼす、憎しみのような感情を抱擁せよ。あの階段は何処に繋がっている――鉤爪から逃れ、下へ下へと転がった。全身が痛む。骨は折れていない。視界が鮮やかに光って……この輝きは脳髄の錯覚だ。本来の現実はもっと、もっと、最も無……まだ、終わらない。終われない。肉に鞭を思考に針を。起き上がって壁を伝い、無限とも思える地下を歩め――気を抜いたら気が狂うぞ。鬼どもは『それ』も狙っている。嗅覚と聴覚を研ぎ澄ませろ。視覚は殺された。故に『磨かれる』べきなのだ。むぞり。脳味噌の隅で何かが生じた。もしや鬼とは。
 自らの耳朶から護謨質の腕が伸びた。弄るように腹に触れ、こしょこしょと謳っている。もう片方の耳朶からも護謨質が出現し、にんまりと側頭部をつついている――抗わねば。抗う事が唯一、赦された人間としての道。掴む。力を入れる。蹴る。撲る。噛み付く。マズイ――血が噴き出した。隣には友・友・友・とも・トモ……戦友。民の貌が塗り潰されている。ずるりと皮が捲れて、油絵のように死んでいく。理解はしていた。知っていた。これが一番大切な、誇りと――この程度で悪くない。真実とはそういう宝物なのだ。それを『羨ましい』と奪われるならば証明と成る。満足だ。ああ。満点だ。後悔など全くない。眠るように、自分が――おもいが鳴って、くさる。

 ここはどこなの。くらい。さむい。つめたい。頭の上から足の先までが掻っ攫われる――『言祝ぎの祭具』冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900) が色を失う時、世界は何故か活性を始めた。宙が吼え猛り、愈々鬼どもが行進する。複数の護謨質が哄笑しながら……術は発動しない。汚物じみた鬼の貌が己に視え……逃げなくちゃ。逃げないと。逃げる。逃げる逃げる――考えている暇はない。思考とは恐怖を運ぶ隣人なのだ。分かれ道は取り敢えず右へ。あっちは左でこっちは下と上。おかしい。確かに此処は先程と同じ道だ――ぐるぐると回転する世界に、胃液が反応している。武器は。鉄か。木か。ぐんにょりと歪んでいる。そんなものを持って何か救済に成るのか。足音……羽搏く音。這いずる音。舐る音滴る音啜る音触れる音切れる音鳴く音望む音餓え……音。走れ――この感覚はよく知っている。子供の頃だ。神事の道具と定められた己を呪うように、嫌で嫌でおぞましかったあの時。くらくてさむくて、つめたい神社の廊下を走っていた。大勢の大人に追い掛けられた精神の傷跡――最後は捕まって大泣きして……今は如何だ。泣いている余裕も殺されている。そう。誰もが大切に『道具』を扱うのだ。貴重な肉の意思は罵られ、意志は蔑まれ、祭神への生贄。しかし。でも。何故に出会ったのか。大事な大事な幼馴染。内緒のお菓子はひどく甘かった。さみしい夜にはあたたかな、一緒の布団。君だけが僕を友と呼び人間として――拠り所。そう考えると。あの鬼どもは大人ではない。貴様を人間として『覗き込んで』在る。
 走る。奔る。いいや。もう、はしれない。肺も胃袋も吐き出してしまった。ぐんにょりが治まらない。ぐるんと天地が反転して――土が勝手に身体を呑み込む――そうか。飢えているんだね。この世界そのものが『鬼』なのだ。頭の上から食まれるような――いいよ。お食べ。この世界でも僕は生贄なんだね。語らないが、大丈夫だ。貴様は遂に束縛から解放される。喰らって満足するなら。満足など在り得ない。餓鬼が餓鬼たる意味を知らないのか。知って如何する。そうするといい。だらり。記憶が。中身が。なんでこんなにも気分が酔いのだろうか――彼のいない。

 落ち着いていた。真っ暗で冷たいのは構わない。しかし。化け物が蔓延しているならば話は別だ。『風のまにまに』ドゥー・ウーヤー(p3p007913) は息を呑む。俺の『大切』が何かは分からないけれど、貪り食われるのは良い気分もしない。だから。逃げる。逃れる他に考えられない。抗う事が生きる事だ。たとえとべなくても、ふらりふらりと闇をさまよえ。袋小路だけは避けねば成らない。逃げ道の確保に気を配りながら、ただ、脳髄を危機察知に傾けろ――建物の隙間や路地の裏。駒形切妻屋根の影が妙に輝いて見えた。無理矢理『抗う』のは難しいだろう。小石などを拾って足しと見做すべきか。怯ませることが可能ならば最適解だ。顔にでも……ああ。貌が無かった。在るのは嘲笑と飢餓だけだ。狙うべきは足か腕だ。機動を削げれば好ましい。そもそも傷は……考えるな。考えるべきは現実的だろうよ。ぐに。脳味噌が笑っている。壁から貌が現れるとは如何なる滑稽だ。そうだ。この世界に逃走という幸福は存在しない――貌から腕が生えた。腕から貌が映えてその貌は深淵だった。弾ける事も滅ぶ事も無い『窖』が脳天から丸呑み――俺の大切って……何?
 喰われる寸前に混乱が起きた。何が在った。何が有った。何に遭って、逢って、縋り付けば良い。気が付いたのは『ここ』だ。此処に来てからの記憶こそが、俺そのものだ。そのへんに在るカラスには硝子玉が相応しかった筈だ――例えば。この前言った深緑という場所の光景。美しかったのは『それ』だけではない。皆の楽しそうな顔だ。そして、俺自身も混ざっていて楽しく過ごした。この世界こそがワクワクの未知――道を切り開くのはこれからだ。いいや。これからだった。自由に生きていいってのが凄く嬉しい……暗黒が脈動した。残るのは、惨めな記憶だけ。
 親は早くに死んだ。生きる為に必死だった。ちょっと鬱陶しいカラスのような記憶――思い出したくない。思い出す以外にない。喰われたくない。喰われてなるものか。絶対に。この幸せを手放さない――暗黒よ、吐き出せ、俺を吐き出せ。俺を毒だと思え。俺を異物だと認識しろ。撲る。蹴る。四肢を揮う。まだ、まだ、まだ――小さい、黒を。

●のこりかす
 貴様は何を落としたのだ。貴様は何を啜られたのだ。貴様は何を――逃げられると思っていたのか。諦めた存在も。受け入れた存在も。抗い尽くした存在で、その記憶は滓と成り果てる。それは説いた。私は? それは説いた。証明は? それは説いた。晴れていた? それは説いた。塵捨て場――鬼は飛び去る。ふくれた肚を抱えて、闇黒の巣に帰っていく。還る事の無い、幸せと共に――いいや。物語が閉じれば戻るだろう。戻らなければならない。

 ほんとうに?

成否

成功

状態異常

なし

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