PandoraPartyProject

シナリオ詳細

欲しいのならば奪い取れ
欲しいのならば奪い取れ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 幻想国内の貴族の1人、カラック卿。若かりし頃から多くの合法的ないしは超非合法的ビジネスを多く手掛けて財を成し、その余りある財力で驚く程多彩な趣味を持つ齢99の超元気なおじいちゃんである。
 そんなおじいちゃんカラック卿の趣味の1つが、迷宮探検。といってもカラック卿自ら迷宮に赴く訳ではなく、自身の従者や金で雇った傭兵を混沌各地に点在する迷宮に送り込み、迷宮内の価値があるのか無いのかも分からない品々を収集し、飽きるまで屋敷に飾っておくという趣味である。
 そしてこの日もカラック卿は、つい先日新しく発見した迷宮に探検隊を送り込むべく、細々とした手続きを自らの手で行っていた。
「うむ……あまり大人数を送り込んでも逆に身動きが取り辛かろう。じゃが内部に何らかの罠やモンスターが居る可能性も否定できん。となれば少数精鋭……特異運命座標に依頼を出すのもいいかもしれんの。奴ら結構優秀じゃからなぁ……」
 ブツブツと言いながら書類をめくり、誰に仕事を頼むか頭を悩ませるカラック卿。そんなカラック卿の元に、1人の執事が姿を現した。
「……ん? なんじゃエドガー。わしこう見えても結構忙しいんじゃけど」
「申し訳ありません、カラック卿。ですがつい先程緊急性の高い情報が入りまして……」
 エドガーと呼ばれた執事はそう言うと、カラック卿に近づき何かを耳打ちする。カラック卿は腕を組み目を閉じ、ひたすら相槌を返す。
「うむ、うむ……なるほど。うむ、わしがグズグズしておったから。ああ、おう……それはホントごめん。うん、うん……ちょっとそれは言い過……ああ、はい。以後気をつけます……うん……うん……」
 一しきり執事の耳打ちを聞き終えたカラック卿。どことなく元気が無くなっている気もしたが、多分気のせいだろう。
「えー、つまり纏めるとあれじゃな。わしが例の迷宮に誰を送り込むかとウダウダ悩んでいる間に、あの迷宮の存在を察知したワシと同じような趣味を持つ別の貴族が探検隊を送り込んでしまったと。折角一番にあの迷宮の存在に気付けたのにこれじゃあ無駄骨じゃと。どうにかしろと。ふむ、なるほどのう……」
 うんうんとしきりに頷いていたカラック卿。だがここで突然カッと目を見開き、
「そいつは困ったわい! カッカッカッカッカ!!」
 と、元気に高笑いを響かせた。


「……という話なんじゃよ、イレギュラーズ殿。酷いと思わん? 1番に見つけたのはワシなのにそれを横取りって。そんな事されちゃったらもう……横取りし返すしかあるまいて! カッカッカ!! 今から急げば多分間に合う筈じゃ!!」
 ギルドローレットへ依頼を出すのは実に三度目となるカラック卿。この日も多数の護衛を引き連れ、カラック卿自ら仕事を引き受けるイレギュラーズ達に説明を行う。
「じゃがまあ、危険度も今一分からん迷宮を先に探検してくれたと思えば、手間が省けたと言えるかもしれんの。お主等は迷宮の外やら入り口付近やらで、どこぞの貴族たちが派遣した探検隊を待ち伏せて……そんで1人残らず皆殺しにして、奴らが迷宮で得た戦利品を持ち帰ってきて欲しいんじゃ!」
 仮に探検隊が生き延び、『誰かに襲われた』と派遣主に報告されれば、カラック卿に疑いの目が向けられる可能性も無くは無い。
「じゃが全滅となれば、探検隊を派遣したどこぞのボンクラは単純に探検隊が失敗したと判断するじゃろう。そうでなくとも証拠も証言も無い状態じゃあ何を喚こうが唯の難癖じゃ。じゃから皆殺しは必要なんじゃ。バレたら後処理面倒じゃしの……ま、こんな仕事受けるお主等ならわざわざ説明する必要も無かったかもしれんの」
 そう言ってカラック卿は、敵となる探検隊の戦力についての説明に入る。
「ワシの調査の結果、ボンクラ探検隊は合わせて20人じゃと判明しておる。じゃが20人と言っても、奴らはお主等程の戦闘能力を持たず、なおかつ迷宮の探索を終えた直後。つまり内部で罠やらモンスターやらに遭遇してる可能性は高く、多少数が減っておったり、それなりの手傷を負っている可能性は十分考えられるわい」
 探検隊は全員金で雇われた傭兵で構成されており、イレギュラーズ程の戦闘能力が無いにしろ、全員何かしらの武器を装備し、ある程度戦える面々だという。
「……と、まあ大体そんな感じじゃな。そんじゃあ頼んだぞい。細かいやり方は任せるがの、きっちり全員殺して、きっちり奴らが持ってたお宝は全部持ってきてくれい! 今回も良い報告を聞けることを楽しみにしとるぞい、イレギュラーズ殿! カッカッカ!!」

GMコメント

 のらむです。不運にもカラック卿に目を付けられた傭兵達を、全員抹殺してきて下さい。

●成功条件
 探検隊として送り込まれた傭兵を全員殺害し、所持していた戦利品を全てカラック卿の元に持ち帰る。

●迷宮
 とある森の中に存在する迷宮。具体的な広さや深さについては不明。
 迷宮の周辺は草木が多く生い茂っている。入口自体はギリギリ人間2人が横並びに立てる程度で、さほど大きくは無い。
 入口から中に入ればかなり広けた空間が広がっており、大きな岩や風化した屍が沢山転がっている。
 入口が狭いこともあり、内部はかなり暗い。灯り、あるいは有効なスキルが無い限り、迷宮内部では命中回避に-10の補正が入る。
 入口付近の広けた空間の先には更に奥に続く通路がいくつか存在している事が確認されているが、それ以上の調査は為されていない。

●傭兵達
 探検隊として雇われた傭兵。今回の依頼の殺害対象。全員の殺害が必須。
 また、イレギュラーズ達が現地に到着した段階では既に迷宮探索を開始しており、しばらくの後に帰還し姿を現すと思われる。
 迷宮侵入時には20人という大所帯だが、探索を終えた段階では数が減っていたり傷を負っている可能性が高い。
 人間種が5名、幻想種が5名、鉄騎種が10名。鉄騎種が前衛、人間種と幻想種が後衛を担う。
 前衛は多彩な近接武器を装備し攻撃を行う。後衛の人間種は銃、弓といった遠距離武器を用い、幻想種は魔術を用い攻撃を行う。また、魔術を扱う幻想種の傭兵は回復魔術による仲間の援護も行う。

●注意
 この依頼は悪属性依頼です。
 通常成功時に増加する名声が成功時にマイナスされ、失敗時に減少する名声が0になります。
 又、この依頼を受けた場合は特に趣旨や成功に反する行動を取るのはお控え下さい。

 以上です。皆様のプレイング、お待ちしております。

  • 欲しいのならば奪い取れ完了
  • GM名yakigote
  • 種別通常(悪)
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年04月29日 21時55分
  • 参加人数 8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ギルバート・クロロック(p3p000415)
リドツキ・J・ウィルソン(p3p000766)
群青紳士
シュバルツ=リッケンハルト(p3p000837)
死を齎す黒刃
ティシェ・アウレア(p3p001249)
空疎の宝物庫
陰陽 の 朱鷺(p3p001808)
ずれた感性
アリスター=F=ナーサシス(p3p002118)
モノクローム・ウィスパー
ヴィクター・ランバート(p3p002402)
殲機
モルテ・カロン・アンフェール(p3p004870)
冥灯

リプレイ

●インターセプト
 遠出をするのなら家路までを含めてだとは、誰が言ったのだったか。
 宝物というものは、それだけではまるで意味がない。
 納品か、売買か、少なくとも金銭的な価値があるものに変えるまで、それはただ宝物と言うだけの予定に過ぎない。
 貨幣に変え、金庫にしまい、しかるべきところに預けて。そこまでしなければ、額に括り付けているのと同じことだ。
「随分と横暴で負けず嫌いな爺さんだ」
 依頼主の思惑など、『群青紳士』リドツキ・J・ウィルソン(p3p000766)は興味がない。関心がないと言い換えても良い。カラック卿がその対象から著しく外れている以上、これがどれだけ陰湿な思惑を含んでいようと、ただの仕事に過ぎないのだ。
「僕君の手が汚い大人の血で汚れるのは不愉快極まりないが存分に調理してやろう。悪く思わないでくれたまえよ。貴様らが少年少女じゃなかった我が身を呪え」
「一匹残さず片付けりゃ良いんだろ?」
『通り魔』シュバルツ=リッケンハルト(p3p000837)はそれをこともなげに言う。数の上で不利だとしても、相手は一仕事を終えた後だ。この迷宮がよほど簡易なものであれば話は変わるかもしれないが、そうであれば依頼主の目に止まることもなかっただろう。
「なんの恨みもねぇが、貴族の目に触れちまったのが運の尽きだ。その首残さず貰っていくぜ」
「新発見の迷宮に対する利権の依頼と言うことでしょうか。半分ぐらいカラック卿のメンツとか誇りとか混ざってそうですね」
 陰陽 の 朱鷺(p3p001808)は依頼の持つそれに思うことがないでもなかったが、考えすぎないことにする。引き受けた以上は今更だ。折り合いはつけるべきだろう。
「まぁ、今回は幻想内で有名なカラック卿との伝も作れますし、新発見の迷宮も見れますし、依頼の内容には少し目を瞑って成功を目指しましょう」
「これも仕事でね……なんて常套句、吐きたくならない?」
『暗闇を覆う光』アリスター=F=ナーサシス(p3p002118)がわざとらしく肩をすくめてみせる。雇われて仕事をするのなら、こういうものがまわってくることもある。それだけの話だ。だったら、多少悪ぶって見せたところでバチはあたるまい。何せこれから、他人の功績をかすめ取ろうと言うのだから。
「少し数が多い以外は気楽なものさ。だろう?」
「フム、殲滅。分かり易くて良い」
 戦って、殺す。後腐れなく、全て処理をする。シンプルで良いと、『殲機』ヴィクター・ランバート(p3p002402)。わかりやすいのはいいことだ。イージーとは限らないが、有用性も目に見えやすかろう。妙な手間など必要ない。アフターケアも思考の外だ。銃を構えて、引き金を絞れば良い。
「理由は聊か思う所がない訳ではないが、雇用主の仔細まで末端が問う事もないだろう。
ただ、殺す。それで十分」
「先を越さレル前に動ケば良かったノニ。人間トハやはり不思議なモノだ」
『冥灯』モルテ・カロン・アンフェール(p3p004870)はカラックが機を逸したそれを理解できないとばかりに首をかしげた。趣味だからこそ、ディテールに拘ろうとする趣味人特有の機微が想定の外にあるのだろう。無論、だからといってこんな依頼まで出したカラックの行動を褒められはしないが。
「ただ、与えラレた仕事ハこなす。それだけダ」
 この迷宮より、何か手にできないものか。思案にふけっていた『梟』ギルバート・クロロック(p3p000415)だったが、リスクを考慮し、諦めることにした。良心の呵責なく、殺人を手段のひとつとして選ぶような相手の機嫌を損ねかねないような行動は、リターンを考慮しても取るべきではない。何より、生命を賭けるに値するような代物が、ここから都合良く見つかるとも思えなかった。
 その思考に、『空疎の宝物庫』ティシェ・アウレア(p3p001249)も賛同する。物欲をそそられる『何か』の存在には、思うだけで掻き立てられるものを感じはするが、その一時のために今後が支障を来すというのなら、さもありなんというものだ。ここの宝より、これからの宝の方が数は多い。それは明白だ。刹那的な欲に興じるには、些かベットするものが大きすぎた。
 やがて足音が聞こえて、一同は思考をシフトさせる。
 心を凍てつかせ、仕事というフィルタをかける。
 では、剣を抜こう。正々堂々とは言えず、大義のある行為とも言えまい。だが、これもまた、ひとつの巡りのようなものだ。
 一仕事終えた気になっている彼らには、可哀想だが。

●ロブ
 総員20名と聞いていたが、なるほど、迷宮は想定よりも遙かに厳しいものだったらしい。
 自分たちよりも数が少なくなった彼ら。その残った数名も怪我と疲弊が見て取れる。
 嗚呼、同情しよう。別に彼らが悪いわけじゃない。
 嗚呼仕方がない。仕方がない。
 残念ながら誰一人、二度と日の目は見られぬのだ。

●マグ
 気が緩みすぎているのも考え物だと、モルテは内心で残念に思う。
 洞窟のはじめの部屋までようやく至り、憔悴しきった彼らは、友好的に手を振るこちらに、はじめ、あろうことか笑顔を向けた。
 だから撃った。
 希望が絶望に変わる瞬間を見る。
 考えてもみなかったのだろうか、ヘルプを寄越すだけの余裕があるのなら、そもそも探索人数に割り振られるだろうに。
 いいや、それだけ疲弊していたのだろう。ただ振られた手に縋りたいほどには、弱り切っていたのだろう。
 なんともはや、それを利用しない手などない。
「……魂ヲ刈り取レバいいんダロう? 簡単ダな」
 攻撃をされたというのに、彼らが剣を抜く動作のなんと緩慢なことか。
 戸惑う彼らと、刃を向けるこちらと。恐慌に陥った彼らと、平静に銃弾を浴びせるこちらと。
 これもまあ、一種の風物詩のようなものだろう。
 宝は持ったかね。ありがとう。では、略奪を始めよう。

 ギルバートが、岩肌を背に攻撃を開始する。
 彼ら傭兵を見るに、無残なものだった。
 価値の代償はあれ、おおよそ財宝とされるものを奥に眠らせておくのならば、侵入者を警戒した罠の類いは執拗なほどに見受けられたはず。
 その苛烈さは彼らの傷、憔悴具合から見て取れた。
 その上で、出入り口はここにしかないのだ、いや、よしんばあるのだとしても、それを探しに迷宮の中をまた動き回るなど考えたくもないだろう。
 前門の虎、後門の狼。
 逆の立場であったならと、思うだけでもぞっとする。
 だが、生きる意思というのはどうやら強いらしい。
 何人かがギルバートの方を睨めつけている。正確には、彼が守る出入り口を、だろうが。
 術を飛ばす。こちらは万全、彼らは無全。なるほど、確かに裏の仕事だと内心で頷いた。
 相手の攻撃が飛んでくるが、覇気がない。そう何度も撃てず、ガス欠が近いことは目に見えていた。

 連携を考えず、入り口に向けて駆けようとしたひとりに、リドツキが横から身体をぶつけることで阻止して見せた。
 咄嗟のことに踏ん張るだけの余力も残っていなかったのか、体を入れた相手はあっけなく尻餅をつく。
 手応えのなさに、こんなものかと思いはするが、手心を重ねてやるつもりはない。
 怯えて何かを言おうとしたそいつに、感慨もなく剣を振り下ろした。
 肉を深く切った感触が手に伝わってくる。引き抜いて、二度、三度。
 集団戦闘において『しっかりと殺す』なんて行為はリスクの生じるものではあったが、それ以上に誰ひとり逃がすわけにはいかないのだ。
 殲滅という役目を負った今回に限り、必要な行為だった。
 剣を抜き、まだ生き残っている連中に構えてみせる。問題ない。あるとすれば、誰一人自分の琴線には触れず、まるでそそられないというくらいだろうか。
 仕事に楽しみは、必要なものだ。

 無理矢理に吶喊してきた一人を、シュバルツが切り払う。
 数の上では大差ないが、やはり疲労の蓄積が尾を引いているのだろう。こうなれば、烏合の衆と大差はない。
 だが、それでも警戒心を解くつもりはなかった。
 破れかぶれになっている感があるのは否めないが、しかし誰一人として生きあがくことを諦めてはいないのだ。
 手負いの獣は侮れない。人間も同じことだ。追い詰められた者が、何をしでかすかなどわかったものではない。
 同時にそれは、『自分一人でも』というエゴに苛まれるが故に、対処しやすくもなっているのだが。
 こちらは8人。向こうは、ひとりがいくつか。そういうことだ。連携を取らぬのであれば、数にはそれだけの意味しかない。
 またひとり、出口へとひた走るそれを剣で押し返す。
 そのまま返す刃で、地面に線を引いた。死線を定めたのだ。
「こっから先は通行止めだ。死にたい奴から掛かってきな」

 手負いの傭兵に、ティシェの術式が突き刺さる。
 当たり所が悪く、血の止まりかけていた傷口が広がったのだろうか。想定していた以上の苦悶があがった。
 それを見ても、ティシェが表情を変えることはない。
 可哀想だと思わないでもない。貧乏くじを引いたやつがいたものだと、同情しなくもない。恨み辛みがあるわけでもない上に、大層な義務を抱えているわけでもないのだから、どう思おうが構うまい。
 だが、それだけだ。
 肩で息をする相手に、追い打ちをかけるよう攻撃する。怨嗟のこもったそれで睨まれるが、大岩に身を隠してそれを断ち切った。
 恨んでくれるなとは言うまい。間違いなく、それだけのことをしているのだから。
 だが、心に留めはすまい。暴力を生業としているのだ。食った食われたなど日常茶飯事だ。
 岩陰から顔を出し、また術式を飛ばす。命中。今度は、呪うような目を向けられはしなかった。もう向けられはしなかった。

 運良くというべきか、こちらからすれば運悪くというべきか。
 包囲網を抜けたひとりがいたが、あと一歩のところで立ち止まる。立ち止まってしまう。
 その後ろから仲間が切りつけたのを確認し、朱鷺は視線を戻す。
 うまくいったものだと内心で頬を吊上げた。
 事前にロープを張っておいたのだ。
 平常な心持ちであればくぐるなり何なりと対処のしようもあったかもしれないが、残念なことにそのような心理状態ではなかったのだろう。
 傷を負った仲間に、回復の術式を施した。そういえば、と視界を巡らせる。向こう側は碌な治療もままならないような姿だった。
 癒術式の使用できる仲間がいなかったのだろうか。その考えを振り払う。いいや、事前の情報ではそれが可能な幻想種を抱えているとあったはずだ。
 視線を送る。ひの、ふの、みの。端から、数えて。
 嗚呼、いないな。お気の毒。

「さ、発掘品を傷つけないように気をつけて戦おうねえ。君らとて生き残れたら貰いたい金もあるだろう。仲間が死んで手ぶらで帰って、じゃあねえ?」
 アリスターが敵を煽る。
 命あっての物種だが、手ぶらで帰るだなんて骨折り損は避けたいと考えるのが人間というものだ。
 労力には必ずしも対価が欲しい。損切りなんて芸当で、自分を律することのできるものは少数なのだ。
 実際、何人かには効果があったようだ。
 収納袋の持ち手に力を込めたのが、この距離でも見て取れるほどには。
 そちらに意識がいった彼に、遠慮なく銃弾を見舞う。
 新たな傷を負い、苦痛に表情が歪むが、慌てて取り落とした収納袋を拾い上げている。
 ここに来て、まだ。律儀というか、正直というか。
 ついでとばかり、爆弾をもう一つ投下する、
「味方を犠牲にここまで来たその狡さはいいねえ。どんな気持ちか教えておくれよ」

 卑怯とか。畜生とか。
 終わりだとか。もう駄目だとか。してやられたとか。
 恨んでやるとか。呪ってやるとか。いつか後悔させてやるとか。
 そんな無駄口を叩く者から、ヴィクターは遠慮なく銃弾を浴びせていった。
 随分と余裕があるものだと、内心で首を傾げている。
 数で劣り、体調で劣り、覇気で劣る。そんな彼らに、左様なカロリーを配給する余裕など無いはずなのだが。
 これは戦争だ。誰ひとり逃がさぬ殲滅戦だ。降伏を認めない。白旗を認めない。謝罪を求めていない。逃がすつもりは毛頭無い。
 ならば一発でも多く銃弾を吐けば良かろうに。剣を振り上げれば良かろうに。
 時と場所を弁えるべきだ。雑談がしたいのなら、もっと平時にすれば良い。先にこの場を何もかも死体に変えてから話すべきだろう。どちらがとは言うまでも無いが。
 足を狙う。動けなくする。ひとつひとつ、確実に、絶望を植え付けていく。

●スナッチ
 岩の陰に隠れてやいないか。
 死んだふりをして、やり過ごそうとしてやいないか。
 のぞき込み、あるいは剣を突き刺して。執拗なほどに確認する。
 倒れ伏した誰もが誰も、穴だらけになったところで、適当に抱え上げ、迷宮の奥へと放り投げた。
 アフターサービスのようなものだ。入り口でこうも倒れていては、万が一にも誰かが発見した際に変な波風が立つかもしれない。
 いや、だがと思い直す。
 周囲に転がった、今や風化した古い屍を眺めて。
 繰り返しているだけなのだろうと、少しだけ皮肉な笑いが顔に出た。

 了。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

向こうの依頼主はどうなったのだろう。

PAGETOP