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シナリオ詳細

<黒鉄のエクスギア>狂乱のロブスターキング

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●スラムにエビは踊る
 この日、ショッケン・ハイドリヒは強硬策に出た――。
 鉄帝国は、スラム街モリブデン。その地下に眠るとされる古代兵器。
 それを狙ったショッケン将軍による作戦は、その尽くをイレギュラーズ達によって妨害されていた。
 こうなれば後がない悪漢が行う事は一つ――大軍勢による強硬策である。
「ハハハ! やれ! ロブスターども!」
「エビー!」
「エビー!」
 男の号令一下、スラム街を2mはあるであろう、巨大なエビ達が侵略する! カチカチとハサミを鳴らし、放たれるエビ光線が、スラムの街を焼いた!
 男の名はロブスターキング! もとは海洋で海賊をやっていたケチなチンピラであったが、先の第三次海戦の折、ショッケン派の軍人に拾われ、こうしてはるばる鉄帝国までやってきたのだ!
「エビ……? なんで、エビが……!?」
 スラムの住民たちが困惑と恐怖の悲鳴を上げる! エビたちは返答代わりにハサミを鳴らし、エビ光線を放ってスラムの住民を撃ち抜いた!
 ロプスターキング、その特殊能力は、魔物種であるジャイアントロブスターを制御できるところにあった! ロブスターキングは、操ったジャイアントロブスター達を利用し、住民たちの排除に乗り出したのである!
「どうせ再開発するなら、粉々に破壊しちまってもいいんだろうが!」
 邪悪な笑みを浮かべるロブスターキング! ぴい、と口笛を鳴らすと、整然と並んだジャイアントロブスター達が、次々とハサミからエビ光線を撃ち放つ! エビ光線の威力は、決して馬鹿にできたものではない。灼熱のエビ光線がスラムの粗末なテントに直撃するや、瞬く間にテントは燃え始める! 直撃を受ければ、一般人であれば死は免れないだろう!
「エビー!」
「エビー!」
 ジャイアントロブスターの特徴は、それだけではない! 巨大なそのハサミは、建築物を砕くほどの威力を持っている! それが人間に向けて放たれたならば、その脅威は言うまでもないだろう!
「に、逃げないと……! このままじゃ、エビに殺される……!」
 住民たちは悲痛の声をあげながら、一目散に逃げだした! だが、エビ達はそれを逃がさない。果たして彼らは無事に逃げ切ることができるのであろうか……!?


「と、そこであたし達の出番だよ」
 と、『ぷるぷるぼでぃ』レライム・ミライム・スライマル(p3n000069)は、ぷにぷにと身体を震わせながら、そう言った。
 ショッケン・ハイドリヒによる、鉄帝国スラム街モリブデンへの侵略行為――私利私欲をむき出しにしたその行為のせいで、今まさに、モリブデンは戦火に包まれていた。
「あたし達は、この地区のスラムの人たちを逃がすのがお仕事。だけど、この地区ではロブスターキングって言うのが暴れてて、スラムの人たちを逃がすのを妨害してくるはず」
 そこで、イレギュラーズ達の出番である、というわけだ。
「あたし達は、現地に向かってこのロブスターキングと、エビの軍団を撃退して、スラムの人たちを逃がしてあげればいいの。相手は巨大なロブスター。変に感じるかもしれないけど、実際つよいロブスターが相手だから、油断は禁物だよ?」
 まるでギャグのような絵面ではあるが、実際にロブスター達は魔物……モンスターの類だ。それを使役するロブスターキングも、決して、侮れる相手ではない。
「……こんなところかな。皆が頑張れば、スラムの人たちが逃げる時間が稼げるんだから頑張ろうね」
 そう言って、レライムは「おー」と片手をあげて、イレギュラーズを鼓舞するのであった。

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 この間プレイしたゲームに、蟹を使役する悪役が出てきまして、

●成功条件
 すべての敵の撃退

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●状況
 スラム街、モリブデン。その一区画に、魔物ジャイアントロブスターを使役する悪党、ロブスターキングが現れました。
 皆さんには、このロブスターキングと戦い、撃退し、スラムの住民たちが逃げ出すための時間を稼いでもらいます。
 作戦遂行時刻は昼。作戦エリアは、ロブスター達の攻撃により廃墟と化したスラム街となります。

●エネミーデータ
 ロブスターキング ×1
 特徴
 エビ使い。人間の男。元海洋の海賊でしたが、ショッケン一味に拾われたようです。
 中距離~超遠距離を攻撃範囲とし、毒、痺れ、乱れなどのBSを付与する神秘攻撃を行います。
 エビを使役しているため、彼を先に倒すと、残されたエビ達が暴走し、あらぬ方向へと向かい始めるかもしれません。

 ジャイアントロブスター ×6
 特徴
 巨大なエビ。陸上でも元気に活動します。
 近距離物理攻撃であるハサミ攻撃や、中~遠距離攻撃であるエビ光線を使います。
 ハサミ攻撃にはブレイク、エビ光線には火炎のBSが付与されます。
 食べるとおいしいです。

 以上となります。
 それでは、皆様のご参加をお待ちしております。

  • <黒鉄のエクスギア>狂乱のロブスターキング完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年01月30日 22時55分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)
黒鎖の傭兵
リディア・ヴァイス・フォーマルハウト(p3p003581)
木漏れ日のフルール
Tricky・Stars(p3p004734)
二人一役
矢都花 リリー(p3p006541)
ゴールデンラバール
湖宝 卵丸(p3p006737)
蒼蘭海賊団団長
ひつぎ(p3p007249)
ラブアンドピース
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
アルマ・サンデリア(p3p007478)
拳神の神官拳士

リプレイ

●廃墟に踊るエビ
「エビー!」
「エビー!」
 がさがさと、大地を這いまわるのは、巨大なロブスターだ。魔物、ジャイアントロブスターは、身体をくねらせぴょんと飛び上がると、ハサミの先から光線――エビ光線を撃ち放つ。
 ぼっ、と音を立てて、スラムに林立するテントや急ごしらえの家屋に光線が着弾した。わずかな間をおいて、弾痕からはパチパチと火が爆ぜ、瞬く間に燃え広がってゆく!
「はっはっは! この辺から整地してやるかぁ!」
 下卑た笑い声が響く――男、ロブスターキングを名乗る元海賊は、新たな獲物――スラムの建物を見つけると、エビ達を伴い蹂躙を開始する。
「に、逃げろ! エビだ! エビの男が来たぞっ!」
 その暴力の前に、スラムの住民たちは怯え、逃げ出すしかない。そして逃げ出す住民たちを、ロブスターキングが見逃すことは無かった。
「別にお前らの命を取る事は命令されてないがなぁ、取るな、とも言われてないんだよなぁ!」
 ロブスターキングが視線をやると、一匹のロブスターがハサミを鳴らし、エビ光線を放つ!
 光線は一直線に、スラムの住民たちへと迫る! このままでは彼らの命が奪われることは確実――だが。
「――ふっ」
 鋭く呼気を吐きながら、何者かがその前に立ちはだかった。かざす盾がエビ光線を受け流し、あらぬ方向へと発射させる。
 明滅する光の中に浮かぶその姿――立ちはだかった何者かは、イレギュラーズ、『かくて我、此処に在り』マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)であった。
「珍妙な奴だとは聞いていたが」
 光線をすっかりと受け切り、盾を振るったマカライトが静かに声をあげる。
「まさに色々な意味で精神を疑うな。無抵抗の命を奪う事がそんなに楽しいか」
「なんだぁ、テメェらぁ……?」
 その眼を見開いて、ロブスターキングが首をこきこきと左右に振る。せっかくの楽しみを邪魔されたという苛立ちに、その眼は輝いていた。
 気づけば、ロブスターキングの前には、マカライトを含め8名の男女が立ちはだかっている。
「イレギュラーズ……と言えば、お前の足らなそうな頭でも、俺達の目的が理解できるだろう?」
 肩をすくめながらその中の一人、『二人一役』Tricky・Stars(p3p004734)……『稔』が言った。
「罪もない住民の生活を理不尽な暴力で奪う貴方達を、これ以上先には進ませません」
 続いたのは、『木漏れ日の妖精』リディア・ヴァイス・フォーマルハウト(p3p003581)だ。その手に杖を持ち、ゆっくりと構える。
「なるほどな、邪魔しに来たってわけか」
 ぐるり、とロブスターキングが、イレギュラーズ達を見回す。その瞳は下卑た色と、過剰な自信に輝いていた。
「ロブスター、ですか……」
 呟くように、『ラブアンドピース』ひつぎ(p3p007249)が言う。
「そうだ! 俺の最強の兵士たちさ!」
 自慢げに語るロブスターキングへ、しかし投げかけられたのは、
「ギルティ……」
 その言葉。
「ロブスターとか所詮ザリガニだから……火を噴くとかイキったって無駄だから……タラバガニがいるやどかり勢の方が上だから……」
 と、語るのはやどかり……『壺焼きにすると美味そう』矢都花 リリー(p3p006541)である。リリーは懐から何かを取り出すと、ロブスター達の前にちらつかせて見せた。
「エビー!」
 ロブスター達が、喜びの声をあげる。
「ふっ……やっぱりねぇ……。このペットショップで買ってきたザリガニのエサ……こんなものでも気が散って、コントロールしづらくなったでしょ……所詮はザリガニだよぉ……」
 何処か勝ち誇ったように言うリリー。どういった争いだ、と思うかもしれないが、実際少しばかり、エビのコントロールにノイズが混ざったようで、ロブスターキングは苛立ったような声をあげたた。
「ちっ……テメェも甲殻類使いか! 確かにカニだか貝みてぇな奴だが……!」
 ロブスターキングの言葉に、
「あ゛あ゛……っ!? いま……あたいの事をカニとか貝とか言ったねぇ……!?」
 リリーはいきなりキレた。
「お、落ち着いて……! 落ち着いて、ください……!」
 慌ててわたわたとなだめすかせる『拳神の神官拳士』アルマ・サンデリア(p3p007478)である。
「と、とにかく……っ! お、横暴な振る舞いは、ゆるせませんっ!」
 と、アルマがゆっくりと、こぶしを握り締める。
「やろうってのか?」
 ロブスターキングがあざ笑った。
「面倒は嫌いだが……そうも言っていられないからな。随分とシュールな奴だが、お前のもたらす被害は事実、甚大だ」
 『凡才の付与術師』回言 世界(p3p007315)が言う。ロブスターが地上を飛び回る光景は確かにシュールであったが、それを楽しんでいる余裕などはないのだ。
「皆に迷惑をかける悪い海賊は、元でもなんでも、正義の海賊として放っておけないんだからなっ!」
 『蒼蘭海賊団団長』湖宝 卵丸(p3p006737)がその矢いbを抜き放ち、叫んだ。
「はっ、やってみろよ! 正義の味方さんよぉ!」
「エビ―!」
「エビビー!」
 イレギュラーズ達に応じるように、キング、そしてロブスターが一斉に構える。
 そして一瞬の間をおいて、両者は一斉に動きだし、此処に戦いの幕は上がったのであった。

●恐怖、ロブスター地獄!
「蒼蘭海賊団団長、湖宝卵丸参上!! 悪の海賊は許さない、ロブスターキング、卵丸が相手だっ」
 キングへ向かって、真っ先に飛び出したのは卵丸であった。一直線にキングへと迫る――だが、そこにロブスター達が立ちはだかった!
「はっ! すんなり通してもらえると思ったか!?」
 勝ち誇るキングであるが、これは卵丸の策である。キングを真っ先に狙うと見せかければ、キングは自身への防御を最優先とするだろう。そうすれば、ロブスター達の注意を卵丸へと、イレギュラーズ達へと集中させることができる。万が一にも、スラムの住民たちが狙われる……そのような事態を避けることができるのだ。
『活きのいいエビじゃねぇか! 終わったらまとめて油に放り込んで喰ってやろうぜ!』
 Tricky・Stars……『虚』の言葉に、『稔』は心底嫌そうな表情を見せた。
「冗談でもごめんだ……あんな大根役者……海老役者? なんにしても……!」
 放つ賢者のギフトが、マカライトへと降り注ぐ。攻撃力を増強させる術式を施し、
「さぁ、名演技を見せてもらおうか」
「了解だ。海老もろとも焼き斬らせて貰うぞ」
 マカライトが機械剣を振り下ろす。ロブスターはエビ! と声をあげ、その巨大な鋏で受け止める。じりじりとつば競り合いを見せたのち、数回の打ち合いによる甲高い音が、周囲に響き渡る!
「スラムの皆さんのためにも……頑張りましょうっ!」
 リディアが歌い上げるバラードが、辺りに鳴り響く。イレギュラーズ達の活力となり、盾となる力をもたらすその歌は、スラムの住民たちの悲哀を想い、込められたものであった。
「これで、怖いもの、なしですっ!」
「そうかい! じゃあやれ、エビども!」
 あざ笑うようなキングの言葉にエビ―! と応じ、ロブスター達が一斉にエビ光線を放つ! イレギュラーズ達を貫く火炎の光線は、しかしスラムの住民たちの想い、それを乗せた歌声に護られたイレギュラーズの身を燃やすには至らない!
「防御、回復は、任せてください……!」
 リディアが叫ぶ。
「背中は任せる……さぁ、エビども。まとめてエビチリにしてやるからかかってこい……!」
「エビ―!?」
「エビービー!」
 世界の挑発の言葉に、エビが怒りの声をあげた。その矛先が世界へと向けられ。振るわれるハサミを、世界は寸での所で躱す。
「ちいっ、当たれば痛そうだが……」
「当たらなければ、いいんだよぉ……」
 リリーがバールを放り投げる。鋭い軌跡を描くそのバールは、エビの外殻に当たって跳ね返る。
「むぅ、硬いみたいだねぇ……生意気……ギルティ……」
 逆ギレしつつ、リリーがぼやく。
「――拳神アシタールの名の下に!」
 力強く拳を握り、己に神官拳士としての役割を課したアルマが、その拳をエビの甲殻へと叩きつけた。がきっ! 鋭い音が鳴り、しかしエビの殻を破壊するには至らない。硬い。流石に魔物種、タダのエビではないようだ。
 事実、ふざけた外見をしつつも、エビは決して弱敵ではない。相手はイレギュラーズ八名を必要とするほどの相手なのだ。その硬い甲殻を前に、イレギュラーズ達は些か攻めあぐねてはいた。
「……すこし、マズいかもしれませんね」
 回復術式を飛ばすひつぎの足元を、エビ光線が薙ぐ。懸命なリカバリもあり、イレギュラーズ達も全滅するという事はない――だが、敵の攻撃も苛烈であり、危うい綱渡りの連続を続ける羽目になる。
「はははっ! どうしたどうした!」
 ロブスターキングが挑発の笑い声をあげる。ロブスター達が一斉にエビ光線を撃ち放つ。衝撃がイレギュラーズ達の身体を貫き、その体力を削っていく。
 倒れてしまうのか。
 諦めてしまうのか。
 体に走る痛みを前に。
 されど――イレギュラーズ達は立ち上がる!
「たとえ硬い甲殻や鎧であろうとも……たとえどれだけ強大な相手であっても! 我が胸に揺らぎ無し!!」
 アルマが叫んだ。言葉と共に放たれた拳が、ロブスターを怯ませる。
「そうだねぇ……」
 リリーが言った。
「やどかりとしては、ザリガニに負けるわけにはいかないからねぇ……」
「ここで悲劇の全滅……などと言う三流脚本を認めるわけにもいかんからな!」
 『稔』が言った。
「はっ……諦めて逃げ帰ったらどうだ?」
 なおも挑発を続けるロブスターキングへ、しかしイレギュラーズ達は首を振った。
「それはこちらのセリフです」
 ひつぎが答える。
「俺たちは負けないさ……決してな」
 世界が言った。
「卵丸たちはイレギュラーズ……無理も道理もぶっ飛ばすんだっ!」
 卵丸が、叫んだ。
「だから……私達は、諦めませんっ!」
 リディアは歌う。癒しの歌を。加護の歌を。
「だったら、やれ、エビども、……!?」
 叫ぶロブスターキングのかをが、驚愕に染まった。
 煌く一筋の斬撃。
 マカライトの刃が、ロブスターの鋏を斬り落としていた。
「なるほど。まぁ、こんな所か」
 マカライトが、静かに刃を振るい、そして、構えた!
「さぁ、ここからが反撃開始だ――やるぞ」
 その言葉を合図に。力を振り絞り。
 イレギュラーズ達は、再び駆け出した!

●決着、ロブスター
「エビ―!」
 一斉に放たれるエビ光線を、イレギュラーズ達は散開して躱した。
「貫け、零距離銛打ち術!!」
 接敵した卵丸のパイルバンカーが、ロブスターの殻を破壊し、貫いた。内部の筋肉を切り裂かれたロブスターが、
「エビ……エビー!」
 断末魔の悲鳴を上げる!
「お前たちの面も見飽きたところだ」
 マカライトが刃を、エビの頂点から一直線に振り下ろした。それはエビの殻の筋を断ち切り、真っ二つの、見事な活造りを作り上げる。
「文字通り……調理してやろう」
 一方、稔もまたロブスターへと接敵する!
『やっちまおうぜ、稔!』
 虚の言葉に、稔は頷いた。
「当たり前だ。こんな三文芝居の舞台になど、これ以上たっていたくはないからな!」
 至近距離で放たれる格闘術式が、エビの背中へと叩き込まれた! まるで花が散る様に外殻が粉砕され、ロブスターは昏倒する。
「援護します。どんどんやっちゃってください!」
 リディアが叫び、援護術式を展開する。援護を受けたイレギュラーズ達の力は増し、さらなる攻勢をかける!
 援護術式の展開には、ひつぎも続いた。治癒の術式が、イレギュラーズ達の傷を次々と癒していく!
「さて、ここまでだ」
 世界の描いた白蛇の陣が、生命持つようにうごめいた。放たれた白蛇はロブスターへと絡みつき、その鋭い一噛みで、ロブスターへと食らいつく。
 痛みはない。ただ確定された死という概念のみがそこに在った。ロブスターはわけもわからぬままに絶命する。
「今度は全力全開のぉ……バール投げだよぉ……!」
 リリーが放り投げたバールが、今度はロブスターの外殻を完全に破壊した。バールはそのまま突き刺さり、エビは痛みにエビ―! と悲鳴を上げ、そのまま意識を手放す。
「これで、最後ですっ!」 
 アルマの拳が、ロブスターの外殻をひしゃげさせた。ロブスターはそのままぐるり、とあおむけに倒れ、ずしり、と地に横たわる。
「ば、馬鹿な……」
 あわあわ、とキングが泡を喰った様子を見せた。自身の強さの裏付け、その象徴たるロブスターは、反撃に転じたイレギュラーズ達の手により、瞬く間に粉砕されたのだ。
「さて、どうしますか? ……降参するなら、受け入れます」
 リディアが静かに、そう告げた。
 イレギュラーズ達は武器を構え、油断なくキングを包囲する。
「ち、ち……チクショウ!」
 キングは悪あがきした様子で、術式を編み上げる。しかし、それが放たれるよりも先に、卵丸が動いていた。
「喰らえ、音速の一撃!!」
 その速度を威力へと変換した、音速の一撃が、キングへと突き刺さった。
「がっ……!?」
 キングは鋭く息を吐きながら、吹き飛ばされる。そこへ、
「さぁ、下らん監督には退場願うか」
 放たれた稔の魔砲の一撃が、直撃した。
「ぎゃあああああっ!」
 悲鳴を上げながら、ロブスターキングが何処かへと吹き飛ばされていく。
「やれやれ……悲鳴も三流か」
 稔は思わず、肩をすくめるのであった。

●戦いの後に
 ぐつぐつ。
 ぱちぱち。
 湯の湧く音と、火の爆ぜる音。
 戦いの終わったスラムに響く音。
 戦いは、無事にイレギュラーズ達の勝利で終わった。残されたのは、ジャイアントロブスターの……新鮮な、食材のみ。
 となれば後は、食べるのが良いだろう。
 という訳で。
 ぐつぐつ。
 ぱちぱち。
 あるいはじゅうじゅうと。
 調理の音が、響いているのだ。
『食べねぇのか? あんなに美味そうなのになぁ』
「却下だ。アレは絶対食べたくない」
 虚の言葉に、稔はげんなりした様子で答えた。さっきまで命の取り合いをしていた相手だから……という訳ではないだろう。恐らく美的感覚に由来する何かが、食べることを拒絶していた。
 とはいえ、良い匂いはする。
「今あたいのこと、壺焼きにすると美味しそうって言った奴いるぅ……?」
 びき、と虚空を睨みつけるリリーを、
「いえ、そんなこと、誰も言ってないですよ……?」
 慌ててなだめるリディアである。
「でも、美味しそう……あ、いえ、リリーさんじゃなくて。それに沢山ありますから、スラムの皆さんにも食べてもらえれば良いかなぁ、と……」
 リディアの言葉に、イレギュラーズ達は頷いた。六体ものジャイアントロブスターである。流石に八人で食べきれるものではない。
「あ、あの、もう大丈夫ですよ……っ!」
 と、アルマがあたりへ、精一杯声を張り上げ、避難していたスラムの住民たちへと呼びかける。
「海老の海賊はやっつけたからなっ!」
 卵丸も声を張り上げた。その言葉と、おいしそうな匂いにつられて、ちらほらとスラムの住民たちが姿を現した。
「これで、万事解決……かな?」
 世界が言うのへ、ひつぎが静かに頷いた。
「さて、腹ごしらえと行こうか」
 マカライトがそう言うのへ、イレギュラーズ達は頷くのであった。
 かくして開かれたささやかな宴は、イレギュラーズ達はもちろん、スラムの住民たちの腹も心も満たしてくれる、暖かいものであったという。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ご参加ありがとうございました。
 フッ飛ばされたロブスターキングですが、その後鉄帝のまともな軍人が回収して、投獄したそうです。
 もう悪さをすることは無いでしょう。

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