PandoraPartyProject

シナリオ詳細

過ぎ去りしときより来たる

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●黒の夜、土の底より
 月も厚い雲に隠れて、夜の森はまるで漆黒だけだった。
 幻想領内のとある場所、かつてここには村があった。
 遠い、遠い過去の話だ。
 小さい村には百人も村人はいなかったが、それでも平和な村だった。
 皆が家族のようだった。
 皆が寄り添い合って暮らしていた。
 ゆえに彼らは完結していた。外に出る必要などなかった。
 外は恐ろしい場所だというのが、村人たちの共通見解だった。
 滅んだ理由は人によるものではない。病によるものだ。
 流行り病が村を襲ったのだ。
 どこから来たものかはさだかではない。
 ただ、百人もいない村人は次々に病に倒れ、そして死んでいった。
 しかし残った村人も外を恐れ、村を出ることなくやがて死んでいった。
 こうして村は滅び、その痕跡は森に呑まれ、外の誰もそれを知ることなく、時間が過ぎていった。
 つまりはそれだけの話であった。
 だが、この夜に変化は生じた。
 森の地面が奇妙に動き、そこから何かが出てこようとする。
 土の底より這い出てきたものは、人の形をしていた。
 もしもこの場に誰かがいれば、積み上げられた彼はの中に沈んでいる墓石を見たかもしれない。
 ここは墓地。
 村であった場所で、最も多くの骸が埋葬されている場所。
 となればそこから這い出てきたものは何か。
 ――当然、骸である。
 動き始めた骸がひとつ、ふたつ、みっつ、さらに増えて、土の底から姿を現す。
 腐肉がまとわりついているものがいて、骨だけの姿になっているものがいる。
 されどその全てが、瞳の部分に忌まわしき赤い光を灯らせて。
「ォォ、……ァァァ……」
 小さいうめきを発しながら、いずこかへと歩き始めた。
 彼らが進むその先には、今を生きる人々が集まって暮らす、街があった。

●迷い出た死者に再び眠りを
「リビングデッドの群れを退治してほしいのです」
 集められたイレギュラーズに、『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)はまずそう言った。
 昨日、森に狩りに出かけた狩人が街の方向へと歩いていく死者の群れを見たという。
 歩みは遅く、街まではそこそこ時間がかかりそうだったという。
「街の方に知らせれば騒ぎが起きるかもしれないので、死者の群れが街に到達する前に森で撃破してくださいなのです」
 依頼の内容はそんな単純なもの。
 しかし、死者は群れというだけあって数が多かった。
「どうして死者の群れが発生したのか、これは謎なのです。しかしとにかく、現状への対処が最優先なのです」
 ユーリカの言葉にイレギュラーズはうなずく。
 とかく何が起きても不思議ではない世界。死者が歩き出すことだってあるだろ。
 しかし、今を生きる人々には何ら関係のない話。彼らの営みを守ることが、今回の仕事である。
「それでは、よろしくお願いしますなのです!」

GMコメント

 はいどーも、天道です。
 早いものでそろそろ季節も春ですね。
 今回はフィトンチッド溢れる爽やかな森の中での依頼となります。

◆成功条件
・街への到着前に死者の群れを撃破する


◆敵
・死者の群れ
 ゾンビ×10
 スケルトン×10
※死者の群れの中には「子供の死体」とかもあったりします。
 ゾンビはタフです。
 スケルトンは刃物での攻撃が効きにくいです。


◆戦場
・森
 森です。戦闘は街から半日程度の距離にある森の中で開始されます。
 丘陵地帯ではなく、木々の感覚も結構空いているので戦う分には支障はないでしょう。

  • 過ぎ去りしときより来たる完了
  • GM名天道(休止中)
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年03月15日 21時35分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (8人)

アート・パンクアシャシュ(p3p000146)
ストレンジャー
蜜姫(p3p000353)
甘露
日向 葵(p3p000366)
紅眼のエースストライカー
楔 アカツキ(p3p001209)
踏み出す一歩
カレン=エマ=コンスタンティナ(p3p001996)
妖艶なる半妖
ティミ・リリナール(p3p002042)
フェアリーミード
クロネ=ホールズウッド(p3p004093)
自称騎士の騎士見習い
アンネリース(p3p004808)
炎獄の魔女

リプレイ

●影に沈む森の中で
 影に沈む森の中で、彼らは溢れかえる死を見つけた。
「オ、オォ……、ォ……」
 ゆっくりとゆっくりと、街の方向へと歩いていく腐肉の屍、純白の骨。
 中には小柄な屍もある。それは間違いなく、子供の屍だ。
「子供までとは痛ましい話だ……」
 言いながらも、『ストレンジャー』アート・パンクアシャシュ(p3p000146)は決してそれから目を背けない。
 彼らイレギュラーズがここに来たのが少し前、その短い時間にアートが用意した柵が、僅かではあるが屍たちの進撃を食い止める。
 屍も骨もイレギュラーズを認識できているわけではない。
 もはやその知能は獣以下。ただ、己に立ち向かってくるものを自動的に攻撃するだけだ。
 だからこそ、準備を進めることができた。
「……蘇った死体というものは、見ていて気持ちのいいものではありませんね」
 木陰に身を隠しているクロネ=ホールズウッド(p3p004093)が、木の柵をガリガリと掻き毟っている屍を見て呟く。
 その存在は聞いていた。しかしこうして目にすると、現実感が押し寄せてくる。
 かといって、目をそらすつもりはない。
 蠢くあれらは、街に迫る危機なのだ。
「哀れな死者にはせめて安らぎをくれてやらねば」
 同じく木陰に身を潜め、『軋む守り人』楔 アカツキ(p3p001209)が短く言った。
 自らを所定の場所に置き、彼は森の中に散っている他のメンツの姿を探す。
「死者が半端に蘇るのはどこの世界でも変わらんのぅ」
 声が聞こえた。
 それは『妖艶なる半妖』カレン=エマ=コンスタンティナ(p3p001996)の声であった。
 元々いた世界でも、こうしたアンデッドのたぐいはいた。
 だから別段驚きはしないが、しかし、今を生きる者たちを襲うのは見過ごせない。
 彼女はジリジリと動いている屍の群れを見て、一体ずつ位置を確認していった。
「結局、何で死体は動き出したんだろうね」
 もっともなその疑問を口にするのは、『炎獄の魔女』アンネリース(p3p004808)であった。
 彼女自身にとってそれは大した疑問ではなかった。
 戦いが始まれば、結局叩き潰すことに変わりはないのだ。
 だから戦う相手に疑問を持てるのは、今というタイミングだけだった。
「分かりません。でも、大丈夫です」
 『儚き雫』ティミ・リリナール(p3p002042)が抑揚のない声でアンネリースに応じた。
 それは、アンネリースが求める返答ではなかったかもしれない。
 いや、そもそも会話として成り立ってもいない。
 ただお互いの隠れている場所を確かめ合った。それ以上の意味はなかった。
「さすがに敵が多い、なの」
 己が術によって屍たちがここにいることを調べた『甘露』蜜姫(p3p000353)が、柵を突破した連中を見て言う。
「数が多いのは最初から分かってたことッス」
 蜜姫へと、『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)がそう言って肩をすくめた。
「こんな世界ッス、今さら死体が動くくらいでビビッてられねぇッスよ」
「確かに、なの。じゃあ、合図は任せた、なの」
「分かってるッス」
 今回、全体の指揮を任されているのが葵だ。
 他のイレギュラーズの視線が、彼の方へと集まっている。
 葵は息を殺しながらタイミングを計り、屍たちが柵を壊したそのときに、
「――今ッス!」
「「「撃てェ!」」」
 葵が下した号令と共に、イレギュラーズの攻撃が始まった。

●死者たちは虚ろの中を
 死者たちは虚ろの中を彷徨い続けていた。
 身に迫る脅威にも気づかないまま、屍は死臭をまとったまま歩み、白骨はカタカタと無機質な音を鳴らす。
 奇襲はそこに炸裂した。
 葵の蹴り放ったサッカーボールの一撃が、白骨を強打する。
 カレンが発生させた衝撃波に、腐肉が抉られ飛び散った。
 ティミが、アンネリースが、次々に術を放って屍と白骨を狙っていった。
 イレギュラーズが放った攻撃に対して回避を試みるものはなく、全ての攻撃が命中した。
 破砕の音が森の中に大きく響く。
「……面白いように当たったッスね」
「いや、これからだ」
 群れの様子を確認した葵に、メイスを担いだアートが軽くかぶりを振った。
 そして彼の言葉を表すようにして、奇襲を受けたアンデッドの群れがまたゆっくりと歩み始める。
「街の平和を脅かすのであれば見過ごせません。騎士的にここで討ちます!」
「そういうことだ。……行くか」
 クロネが武器を構え、アカツキが前へと出る。
 草を踏みしめる音は屍のもの。近づくそれへと、クロネが鋭くレイピアを突き出した。
 切っ先が深く肉に沈む。
 だが血は流れずに、ただ重く柔らかい感触だけがあった。
 死んでいる。
 それを、クロネは見た目ではなく感触で改めて知った。
「オ、ォ……」
「くっ!」
 屍の喉から漏れるその声は、いったい何を表したものか。
 きっと、彼らに大きな罪はないのだろう。だがウロネは揺らぎかけた心をしっかり引き締めて、攻撃を重ねる。
「もう一度、眠ってもらうとしよう」
 カシャカシャと音を鳴らす白骨へ、アートが近づきメイスを振り上げた。
 肉をなくした白骨に、刃はあまり効かないだろう。
 そう考えてのメイス。振り下ろした一撃が、左の鎖骨をバキンと砕く。
 人ならば悶絶もできずに動けなくなるであろう負傷だ。が、白骨は骨片を散らしつつもその動きを衰えさせない。
 さらに、カシャンカシャンと同じような音が幾つも重なる。
 白骨だけでもかなりの数だ。葵が皆へと指示を下す。
「囲まれないようにしてくれッス! 数が違うッス!」
 予想はされていたことだ。
 しかし、こうして現実に前にしてみるとやはり違う。
 こちらが攻撃しても、一切反応を見せず淡々と前に進もうとする死者の群れは、一見するだけでおぞましい。
 だが怖気など感じることなく、アカツキは泰然と突き進んでいく。
「こうして俺の前に立っている以上は敵だ。潰すのみ」
 彼の繰り出す蹴撃が、白骨を叩いてベキリとへし折った。
 狙ったのはアートが鎖骨を砕いた個体だ。
 相手は痛みを感じない、動く屍。ただ痛めつけただけでは動きを封じることはできない。
 ゆえに、一体すつ集中的に攻撃し、確実に破壊していく必要があった。
 だが各個撃破を狙うということはそれ以外が完全にフリーになるということだ。
 背後の死角から、別の白骨が殴りかかってきた。
「ぬ、ゥ……!」
 かわせない。アカツキは殴打にくぐもった声を漏らし、体勢を崩しそうになった。
「おぉっと!」
 だがそこで葵がカヴァーに入った。
 彼のサッカーボールが、続けて攻撃しようとしていた白骨の頭部にヒットする。
「傷を癒す、なの」
 すかさず蜜姫が魔力を操り、アカツキのダメージを回復した。
 攻撃が得意ではない彼女であるが、課された回復役という役割は重要だ。
 アカツキが一歩下がり、代わりにアートが前に出て穴を埋める。
「いやはや、なかなか厳しいな、こりゃ」
 アートはメイスを振り回し、近づいてくる屍を叩いて吹き飛ばした。
 ヨタヨタと、その足取りは力ないクセに、屍も白骨も振るう力はかなりのものだ。
 死んでいる。
 その条件を満たしただけで、こうも肉体限界を無視できるものなのか。
「後衛組、とにかく火力支援ッス! 骨の方からブッ壊すッス!」
「はははは、どんどん撃っていくよ!」
 葵の指示を受けて、アンネリースが白骨へと次々に術をブチ込んでいく。
 彼女だけではない。
「街に行かせるわけにはいきません」
 ティミも同じく、術を唱えて白骨を狙った。
 刃物があまり効かず、動きも決して鈍くない白骨は、屍に比べて対処の優先度が高い。
 一体辺りの処理時間が短く済むであろうという推測もあって、イレギュラーズはまずそちらに攻撃を集中させた。
 だが――
「……それでもなかなか、しぶといのぅ」
 カレンがわずかに眉を顰める。
 白骨は確かに、屍に比べればまだ対処しやすい。
 だがそれは相対的な評価に過ぎず――
「オ、ォ、オ……」
 カタカタと音を鳴らして、腕を失った白骨が立ち上がる。頭蓋を半ば以上砕かれた白骨が起き上がる。
 動く死者である以上、完全に破壊しなければその動きは止まらない。
「相手はしぶとい。そんなことは最初から分かっていたはずだ」
 アカツキが最小の予備動作で、近くの白骨の胸部へと回し蹴りを炸裂させる。
 蹴られ、肋骨を粉砕されたその白骨は、地面に転がり動きを止めた。
 戦いはまだ折り返しにも入っていない。

●無明の底に沈むべき
 無明の底に沈むべき者たちは、今、死にながら地面を踏みしめている。
「ないよりはマシだと思うがのぅ」
 カレンが取り出した小瓶を近くの屍に向かって投げつける。
 屍に触れた途端に軽い音を立てて割れ、中に詰まっていた毒液が屍の腐った体に広がって浸透していった。
 魔力によって構成されたその毒は、敵の生死に関わらずその身を蝕んでいく。
 ズルリと、毒で溶けた腐肉が地面に落ちた。
 毒は効いている。それは間違いない。だが屍は歩みを止めない。
「オ、ァァ……」
 振り上げられた腕が、カレンへと向けられる。彼女は咄嗟に盾を構え、その一撃を受け止めた。
「くぅ!」
 腐り果てた腕をただ振り回す。
 それだけだというのに、一撃は鋭く強く、重かった。
 カレンは何とか耐え凌ぐも、盾を持つ腕にジンという強い痺れが残ってしまう。
「――隙ありだ」
 しかし直後、屍が腕を引き戻すよりも早くアカツキがその懐に飛び込んでいた。
 勢いを十分に乗せた前蹴りが、屍の腹部に突き刺さる。
 脚甲に固めたその蹴りは下手な両手武器よりも強く、そして扱いやすい。
 ボグ、と生々しい音がして、屍の腹部に風穴が開いた。
 手ごたえはあった。
「グ、ァ……」
「チッ!」
 だがアカツキは両腕を交差させて防御の構えをとる。
 屍の横薙ぎの一撃が、彼の腕を激しく打った。
「倒れない、というのは厄介なモンだな! っと!」
 カヴァーに入ったアートのメイスが、追撃しようとしていた屍を叩いて転げさせる。
「助かった。……不覚、だな」
「こっちも無傷ってワケじゃない。仕方がないさ」
 森の中で、戦いは続いていた。
 イレギュラーズの絶え間ない攻撃によって、すでに白骨はあと一体のみ。だが、屍はまだ大半が残っている。
 互いに連携を重ねることで、イレギュラーズ側有利に進んではいるものの、
「さすがにキツくなってきたのぅ……」
 その豊かな胸をゆっくり上下させて、カレンが軽く笑う。
 体が重い。魔法を使い続け、気力はまだもつが限界がそろそろ近づき始めているのを感じる。
「まだまだ! さぁ、どんどん来なよ!」
 アンネリースが大きく声をあげて、魔力放出の一撃をお見舞いする。
 屍の頭を吹き飛ばす、強烈な一撃だ。だが、倒れないのだ。頭部を失いながら、屍は歩き続けた。
「この!」
 肉片を散らしながら迫る相手に、アンネリースは一歩後退する。
 先刻より、ずっとこんな感じが続いていた。
 攻めてる。ダメージを与えている。だが、退がっているのはイレギュラーズの方だった。
「もう少し退がりな、こっちは受け持つ」
 アートが自ら囮になって、アンネリースを安全圏まで後退させる。
 彼の前にはすでに、いずれも肉体のどこかが欠損している三体の屍が立っていた。
 無論、疲労が色濃い今のアート一人で対応できる数ではない。
「さて……!」
 それでも踏ん張って、殴られながらもメイスを振るっているところに、
「助太刀します!」
 気合と共に、クロネのレイピアが屍一体の胸を深々と穿った。
 そして勢いのまま突き刺した屍の腹を蹴って、自身はその反動で距離を開けた。
「大丈夫、ですか」
「おう、何とかね……。そっちもかなりバテてそうだな、しかし」
「言わないでくださいよ」
 クロネは嘆息と共に苦く笑う。
 素早さが身上のクロネだが、傷つき、体力も底を尽きかけている今、足は思うように動かなくなっていた。
 それでも、と、彼女は騎士としてレイピアの切っ先を死した屍に向けるのだ。
「ふぅ……、ふぅ……」
「スゥ……、ハァ……」
 蜜姫とアンネリースが、呼吸を整えて瞑想をしていた。
 それでわずかなりとも気力を回復させて、彼女たちは再び戦線へと戻っていく。
「みんな、大丈夫、なの?」
 弱々しく言いながら、蜜姫が癒しをもたらす。
 例え傷が浅くとも、それが深手に繋がる前に片っ端から癒していく。
 そんな彼女の存在がなければ、すでにこちらの戦線は崩壊していたかもしれない。
 アンネリースはまた魔力を打ち放ち、屍を攻撃し続けた。
「大丈夫です。いけます」
 そして、両手に持った大鎌を腐った血肉にまみれさせ、ティミが淡々と屍を刻んでいく。
 屍のうち何体かは、イレギュラーズを無視して街へと向かおうとしていた。
 彼女はそうした屍の身を狙って、ひたすらに鎌を振るい続けたのだ。
 無論、無傷ではない。
 この戦いで、無傷でいる者などもういない。だが傷つきながらも、ティミは己の職分を全うせんとしていた。
 いや、彼女だけではなく、この場にいる全員がそうだ。
 自分たちの背後にある街を守るために、何より、未だ眠れぬ死者たちに安らかな眠りを与えるために。
「……よし」
 後方に控えていた葵が、そのとき小さくうなずいた。
 これまで前に出ずにいたのは、指揮官として戦局を見極めるためだ。
 そして今、葵はここに勝機を見出した。
 いや、正確に記すならば、勝機は今しかなかった。
 イレギュラーズの気力が尽き果てる前、総力を尽くしての屍掃討。それができる最初で最後のチャンスが、今だ。
 これ以上時間をかければ、屍の損耗とこちらの損耗、それが逆転しかねない。
 ここまで戦って彼らはすでに思い知っていた。
 屍が一体でも街に到達すれば、それだけでかなりの被害が出かねない、と。
「後のことは考えないでいいッス! とにかく、持てる力を振り絞るッスよ!」
 サッカーボールを高く放って、彼は皆へとそう告げた。
 イレギュラーズたちの目に、力強い光が宿る。
 皆、今という瞬間を待ち続けていたのだ。
「行くぞ!」
 誰かが全力で叫んだ。そして――
 結末について、ひとつだけ記しておこう。
「謝るつもりはない。俺たちはこうする必要があった。それだけだ」
 最後に残った子供と思しき小さな屍を叩き潰し、アカツキは低い声でそう呟いた。
 それが、戦いの終わりだった。

●かくして呪縛は
 かくして呪縛は木霊と消えた。
 戦いを終えたのち、イレギュラーズがまずしたことは弔うことだった。
 体を休めるよりも先に、森に散った屍や白骨を集めて、そこに掘った穴に全て埋めた。
 ちょっとした重労働だったが、死してなお戦わされた彼らを思えば、苦労とは思わなかった。
「ごめんなさい、ごめんなさい……」
 その辺にあった石を乗せただけの簡素な墓石を前に、戦いを終えたティミは大粒の涙をこぼしていた。
 戦いが終われば、彼女は胸の奥からあふれるものを堪えきれなくなる。
 そんな彼女の背中を叩き、カレンが一緒に祈りを捧げた。
「本当だったら、村があった場所の近くに埋めてやりたかったがな……」
 黙祷をしてから、アートが力なくこぼした。
 ギリギリまで追い込まれた体力で、二十体にも上る死体を運ぶことは到底できそうになかった。
 各々、自分たちが作った墓へ黙祷し、そして、
「こっち、なの」
 蜜姫が森の向こうへと歩き始める。
 精霊と意思疎通を行える彼女の案内で、イレギュラーズたちは死者の群れが発生した場所へとやってきた。
 どう見ても森の中。しかし、地面を見ればそこには大きな穴が幾つも開いていた。
「ここか……」
 アカツキが周囲を見渡す。
 森だ。日が暮れかけた、暗い森でしかない。
 だがここはかつて村だった。そして墓地だった。
 墓石も植物に埋もれて、暗くなりかけてる今では探すこともできないが。
「ここで、何があったんスかね……」
 葵もまた周りを探し始めた。
 彼らがここに来た理由。
 眠っていた死者が、急に起きて街を目指した原因を探すことだった。
 しかし、しばらく探しても手掛かりは見つからず、
「……そろそろみんなも限界、なの。戻るの」
 夜の手前、蜜姫が皆に告げて、引き上げることとなった。
「どうか、安らかに、なの」
 最後に彼女はそれだけを言って、皆と共に街へと戻っていった。

 その後の話である。
 この事件を受けて騎士団が調査したところ、かつて村を襲った流行り病が伝染性の呪いであることが判明した。
 死者が起き上がったのも、呪いの影響によるところが原因であると確認された。
 村に、呪いをかけた魔術師がいたのかもしれない。
 そして何かがあったのかもしれない。
 数百年経った今となってはもはや分かりようもないことだが、ただ、それはきっと今に続くものではないのだろう。
 この調査の結論をもって、かの村の人々はようやく安らぎを得ることができたのだ。
 のちに話を聞いたイレギュラーズたちは、安堵と共にそう思ったという。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お疲れさまでした!
割とギリギリでしたが、なんとか勝ちをもぎとりました!
おめでとうございます!

それでは、
またいずれ他のシナリオでお会いしましょう。

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