PandoraPartyProject

シナリオ詳細

あどけない花は二度と咲かない

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 誰にも譲れないことがある。
 少年と呼ぶには表情に憂いがあり、青年と呼ぶには幼すぎる男は、血がこびり付いた短刀をまじまじと見つめた後、静かに鞘に戻した。
 事の発端は一年前に遡る。

 少年は、バルツァーレク領の小さな村で、父と共に狩りで生計を立てていた。
 慎ましく、真面目に、多くを望まず。
 そんな生活も悪いことばかりではない。傍らでは、幼馴染の少女がいつもにこやかに微笑んでいた。彼女のあどけなさが少年にとって心の支えだった。
 少女の家は貧しかった。父は早くに亡くなり、母は病気がちだった。
 それでも、皆前向きに、仲良く、精いっぱい生き抜いてきた。

「俺がおおきくなったら、父ちゃんなしでも獲物をいっぱい狩って、おまえんちも、めんどう見てやるからな!」
「……うん。……待ってる」 
 
 きっと、結婚ってやつをするときは、こいつとするんだろうな。少年は根拠なくそんなことを思っては時折、頬を赤らめていた。
 貧しくてもいい。こんな日々が続けばいい。だが、そんなささやかな願いすら叶わないのが、幻想という国だ。
 
 ある日、少年が狩りから戻ると、寒村に似つかわしくない豪華な馬車が目にとまる。そして少女の家から、襟のとがった黒と白のちぐはぐの服を着た数名の男が、ふんぞり返って出てくるところを目撃する。
 一瞬にして、少年の口の中はカラカラになり、体中からは汗が噴き出てくる。焦燥感が止めどなく湧き上がる。
 少女の家に行くと、彼女の母は膝をついてすがるように泣いていた。ごめんね、ごめんねと、何度も。少女は傍らでただ立ちすくむ。
 それは貴族の人買いであった。
 借金も多かった少女の家は、泣く泣く少女を売ることにした。売るしかなかったのだ。一家が共倒れになるくらいならば。

 少女が自害したという報が村に届いたのは、奉公に行ってから三か月後のことだ。
 何が起きたのか。何をされたのか。想像なんてしたくない、できない。
 少年は、血の涙を流しながら決意をする。


「やあ。今日の依頼は少々、人を選ぶんだ」
 ローレットの情報屋、『黒猫の』ショウ(p3n000005)は、イレギュラーズ達を前に愛想よく依頼の説明を始める。
 貴族の暗殺に加担してほしい、というのが依頼の趣旨とのこと。
「とにかく、屋敷の警護を皆殺しにしてくれ」
 ああ。無理に殺さなくてもいい、次の日の夜まで目が覚めないように痛みつけてくれたらな。そう付け加えた。
 広義の意味での無力化。それが依頼とのことだ。
 注意点として、屋敷にいる貴族の殺害は依頼主である少年がやる。これは譲れないらしい。
「彼は復讐に命をかけている。持つもの全てを賭して依頼してきた訳だ」
 少年は復讐を決意してから、彼にできるありとあらゆる仕事をして、依頼料を稼いできたそうだ。今は唯一の肉親である父とも離れ一人で生きているらしい。
「それはそれとして、実はこの貴族非常に評判が悪い。別口からも似たような話は来ているんでね」
 容姿端麗な少女を求めて寒村に従者を送っては安く買いたたく。買われた少女は持っても半年。
 一番熱心な彼の依頼を引き受ける事にした。ショウは皆に背を向け、背中でそう語る。

 貴族の屋敷についての情報収集は概ね完了していた。
 貴族の家は二階建て。警護は多くても10人程度。いずれも傭兵くずれで、並の戦士よりも強いらしい。脛に傷のあるごろつき共を集めているってわけだ。
 気を抜いたら怪我じゃすまないぜ。そう言うと、ショウはニヤリと口角を上げた。
「少年を止めたい? 貴族を代わりに倒したい?」
 前者は可能性があるかもしれないが、後者は絶対にないとのこと。それが契約内容だ。

GMコメント

日高ロマンと申します。
何卒よろしくお願いいたします。

●依頼達成条件
 屋敷の警護の無力化(生死問わず)

●情報確度
 A(オープニングと、この補足情報に記されていない事は絶対に起きません)

●ターゲット概要
 ・警護の数は10人以内。
 ・武器を使った白兵戦の能力はLV1のイレギュラーズよりも弱い程度です。
 ・特殊能力はありません。(武器のみ)
 ・武装は革製の鎧、小剣、ナイフ、短弓等の軽量武器を有します。

●その他補足
 ・舞台は深夜となりますが、屋敷には篝火があるので照明には困りません。
 ・貴族の屋敷に到着したところから、シナリオはスタートします。
 ・屋敷の警護は騒ぎには敏感です。
 ・屋敷の外の馬車で少年が待機しています。警護を無力化した後に現れます。
 ・イレギュラーズは契約内容に基づき、屋敷に入ることができません。

●注意
 この依頼は悪属性依頼です。
 成功時の増加名声がマイナスされ、失敗時に減少する名声が0になります。
 又、この依頼を受けた場合は特に趣旨や成功に反する行動を取るのはお控え下さい。

  • あどけない花は二度と咲かない完了
  • GM名日高ロマン
  • 種別通常(悪)
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年03月19日 21時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (8人)

ロザリエル・インヘルト(p3p000015)
深海の薔薇
空摘・骸(p3p000065)
ガラクタあつめ
エリク・チャペック(p3p001595)
へっぽこタンク
灰塚 冥利(p3p002213)
眠り羊
赤羽・大地(p3p004151)
遺言代行
Λουκᾶς(p3p004591)
おうさま
ニゲラ・グリンメイデ(p3p004700)
特異運命座標
スケアクロウ=クロウ(p3p004876)
小さな巨人

リプレイ

●屋敷前にて
 夜のしじまを二台の馬車が駆け抜ける。
 先頭を走る馬車にはイレギュラーズ、後続の馬車には依頼主である少年が乗る。
 屋敷に到着してからは、イレギュラーズと少年は別行動となる。警護が全滅するまで少年は馬車からは一歩も動かない。
 貴族の広い庭付きの屋敷は郊外にあり、周りに民家は無く静寂に包まれている。『人に知られたくないこと』をやるには持ってこいの環境というわけだ。

 『へっぽこタンク 』エリク・チャペック(p3p001595)は、絢爛豪華な貴族の屋敷を見上げてぽつりと呟く。
 内容を選ばずに一心不乱に依頼を受けてきたら、いつの間にか自分の評判が下がってきた。
 このままだと、幻想で悪い噂が立つようになるのではないか。色々な意味で世の中、世知辛いと。
「皆、少し待ってナ」
 『自称、あくまで本の虫』赤羽・大地(p3p004151)は、屋敷の庭に足を踏み入れる前に皆を静止し、鮮やかなピジョンブラッドの瞳で宙を見つめる。
 囁き声で誰かと会話しているような素振り――彼は死霊魔術の力で霊魂と交信し、人ならざるものから情報を得る。
「概ね、分かったゼ」
 警護の数は10人もいない。ただし霊が嘘をついていなければの話だ。後、出入り口は正面扉だけとのことだった。
 出入り口が一つしかない理由は至極明快で、監禁した少女たちを逃げ出せないようにするために絞っているらしい。
「その少女の霊っていうのはもしかして依頼主の……」
 エリクが恐る恐る大地に問う。
「いや。ついさっき、殺された少女みたいだ。屋敷にいる最後の『ストック』らしいゾ」
 そうと分かれば、早く終わらせよう。そう言うと大地はボロを纏い、松明に火を付け仕込みの準備をする。
「そうよ。早く行きましょうー!」
 『妖花』ロザリエル・インヘルト(p3p000015)はフードを被り仲間たちを戦場に誘う。彼女が移動中の馬車にいるうちから『待ちきれない』のは誰の目にも明らかだった。
 早く殺したいの。罪のない少女の敵討ちを……というのは皆に任せるわ。私は殺して、食べたいだけ。ロザリエルは思わず舌なめずりする。
 『ガラクタあつめ』空摘・骸(p3p000065)もボロボロの外套、つぎはぎが混じったみすぼらしい服を着込んだ青年風に変装し、松明を掲げて歩を進める。
 『眠り羊』灰塚 冥利(p3p002213)も皆の後に続き、機嫌よくトンファーを持った手首を回す。
 人の子を堕落させるのが僕の唯一の楽しみなんだ。後で痛い目に遭うまでがセットで美味しいよね。本当は貴族の最期が見たかったのだけれど、我慢して雑魚掃除の方に専念しよう。
 冥利は僅かに口角を上げ無精ひげを軽くさする。
「此処の主人に用がアる! 会わセテクレなイか!?」
 骸を先頭に一同は屋敷の入口に無力なものを装い立ち並ぶ。
 骸の傍らには『見習い』ニゲラ・グリンメイデ(p3p004700)が立ち、予期せぬ展開になってもすぐに対応できるようボロの中ではソードをしっかりと握っている。
 一同は沈痛な面持ちだが、『おうさま』Λουκᾶς(p3p004591)は一人表情が硬い。彼は演技でも悲しむことが苦手であった。誇り高き血ゆえのことか。それは本人にも分からない。Λουκᾶςは表情を読み取られないように俯き加減で佇む。
「俺たちの家族ガ、其処ニイルんダろう! ナぁ!? 返せヨ!」
 再度、骸が叫ぶと同時に扉が開かれ、中から不機嫌そうな顔をした男が現れる。
「なんだっ。お前ら」
 警護らしき男の顔は赤く、焦点が定まらない目でイレギュラーズ達を舐めるように見回す。
「酒くせぇな」
 『小さな巨人』スケアクロウ=クロウ(p3p004876)はうんざりした顔で男を見上げた。
「(ぶった斬ってやろうか)」
 彼は鋭い視線を隠したまま、ボロの中では二本の獲物をしっかりと握りいつでも『やれる』状態である。
「ん? 新しい女か。どれどれ……」
 警護の男はロザリエルを『少女』と勘違いし、強引にフードを剥がす。
「うおっ、人間じゃねぇのか?」
 うふふ。死になさい。ロザリエルはあっけにとられている警護の頭部を、手にした盾で力いっぱい殴りつけた。盾に施されたスパイクが頭皮を切裂き激しく出血する。
「お前、その部位ヲ、よコせよ。どうセもウ死ヌんだかラ」
 骸はボロを投げ捨て、うずくまる警護の両耳を手際よく削ぎ落とす。
「俺の耳がっ……ひぃ!」
「必要以上に苦しませるつもりはない」
 ニゲラは恐怖にたじろぐ警護の首を一刀のもとに刎ね落とした。
 ――何の騒ぎだ。
 屋敷の奥からは警護の集団が流れ出てくる。全員で8人。1人始末しているので計算は合う。
「おまえら……貴族の家に殴り込みとは、何者だ?」
 警護のリーダー格の男がすごむ。顔は赤く息は酒臭い。どうやら酒宴をしていたようだ。
「仲間の首を刎ねられているのに、そんな間抜けなことをいうのかい?」
 冥利は感情をおくびにも出さずに言い捨てた。
 冥利の目を見た警護の一人は、彼の持つ得体の知れぬ闇を垣間見てぞくりと悪寒が走る。
「さぁ、早く出てきてください。僕たちは中に入れないんです」
 Λουκᾶςはそう言って笑顔で手招きする。
「望むところだ! 一人も生かして返さんぞ、貴様ら!」
「毛頭、そんなつもりはねぇよ」
 スケアクロウはボロを投げ捨て、身構える警護達に二本のロングソードを突き付けた。

●交戦
 イレギュラーズと警護達は屋敷の庭に布陣し相まみえる。同数の戦いである。
「相手は害獣……人じゃない」
 ――だから、殺しても悪くない。殺さなくちゃいけないんだ。ニゲラは心を黒く塗りつぶすように何度も胸の内で反芻する。そして彼が戦端を開いた。
 ニゲラは大型の盾を構えて渾身の体当たりを敵の前衛に決めた。その勢いに乗じるように他の仲間達も一斉に突進する。
「こいつら、乱戦に持っていく気か」
 警護のリーダー格の男は軽く舌打ちする。個々の能力が上回るイレギュラーズ達であれば乱戦になっても支障はない。
「お前のその部品、イラネェならヨコセヨ!」
 骸はニゲラとターゲットを合わさずに、自らが見立てた『イイモノ』を持っている別の前衛に飛び掛かり、がっしりと組み付いた。
「このっ、離れろ!」
 組み付かれた男は投げ技を警戒して身を振り解こうとしたところに隙ができる。
「イただキ」
 骸は素早く懐から隠し刀を取り出して傭兵の右手の指を数本切り落とした。
「俺の指がっ!」
 男は右手を抑えしゃがみ込む。傍らでは骸が収集を完了させ鼻歌を歌っている。そこに冥利がゆらりと現れる。
「指を失ったショックは理解できるけれどさ。戦場でそんな格好しているってことは、死んでもいいってことだよね」
 冥利はトンファーをひざまずく男の頭部に叩き落した。男が最後に見た光景は指の欠けた血塗られた自らの右手だった。
「化け物どもが……あの女に攻撃を集中しろ」
 俺に合わせろ。リーダー格の男は後衛の仲間に合図し、ロザリエルに集中攻撃を仕掛ける。
 ロザリエルは小剣による突きは紙一重でかわすことに成功した。だが立て続けに飛来する矢をかわし続けることは出来ず、一本の矢が右の大腿に深々と突き刺さる。
「ぎぃぃ、痛いわねっ!」
 彼女はお返しとばかりに一番近くにいる相手に対して棘ある蔓を鞭のようにしならせ激しく打ち付ける。棘は金属すら打ち抜く硬度を誇る。警護が着ている革の鎧を貫くことは造作もない。
 胸に無数の穴を開けられた男はにわかに動きを止める。
 ――弱った敵から確実に殺す。隙に乗じてニゲラが飛び込み、鉄塊ともいえる大型の盾で相手の顔を殴り潰した。
 スケアクロウは小柄ゆえの俊敏の身のこなしから、ショートレンジの斬撃を最も近い相手に見舞っていく。彼はかつての経歴の通り集団戦に熟練していたが、今は仲間の戦術に合わせて敢えて乱戦に持ち込み相手をかく乱する。
 だが、相手は腐っても元傭兵の集団である。乱戦に付き合うつもりはない。ここから攻勢に転じるべく再度陣形を整える。
「金髪の編み髪の小僧を狙え。全員でだ」
 リーダー格の号令で火線はニゲラに集中する。ニゲラは攻勢に出るためにやや突出したことが仇となった。
 矢が一つ、また一つニゲラの肩や腕に突き刺さる。彼は一旦防御に徹しシールドで正面の攻撃に対処する。だが、そこに小剣を構えた別の男が横から迫りくる。その時――。
「私はエリク・チャペック! 誇り高き鉄騎だ。私を突破できるつもりなら、遠慮なく参られぃ!」
 エリクは戦場の中心で、愛用のソードブレイカーを天高く掲げ、堂々と名乗りをあげる。敵味方問わず誰もが彼に注目する。
 ――死にたがりめ。小僧のくせに。調子にのるなよ。
 ニゲラを狙っていた警護達は一斉にエリクに標的を変える。
 苛烈な警護の攻めにエリクは盾を構え全力で防御に徹する。
「お前ら、小僧一人も殺せんのか!」
 リーダー格の男は単身でエリクに突進し小剣で彼の肩を貫いた。元傭兵の意地である。
「……!」
 エリクが崩れ落ちようとしたその時、内に秘めし可能性『パンドラ』が呼応する。
「僕は騎士だ。皆の盾だ。だから――」
 まだ終わらない。エリクは歯を食いしばり不屈の闘志で踏みとどまる。
「今、助ける」
 スケアクロウはエリクを狙う警護に駆け寄り、頭部をロングソードの柄で殴りつけ、一撃のもと気絶させた。
 殺――さなくてもいいか。どうせな。彼はそう言って後ろを振り返ると、骸が全速力で駆け込んできて足元に転がる警護に容赦なく止めを刺した。そして『物色』を始めた。
「ちょっと。あんまり私の取り分、減らさないでよ」
 ロザリエルは不満そうにジト目で骸を射る。
「おいおい、よそ見をし過ぎだな」
 冥利はエリクに意識を集中している警護の背後に回り込み、後頭部にしなやかな蹴りを撃ちこむ。
 警護はよろめきながら振り返ると同時に、雷のようなジャブが顔面を捉える。
「鼻がっ」
 思わず短剣を落として顔を抑えたところに、冥利はトンファーで頭部を殴りつけ気絶させる。情報を聞き出すために一人は生かしておこうという算段だ。
「やれやれ。殺さないように加減するのが大変だ」
 そう言うと冥利は戦場の真っただ中で悠々と煙草に火を付けて一服する。
 さあ、もっと足掻いてくれ。人の子を堕落させるのが僕の唯一の楽しみなんだ。冥利は屋敷の外で待機する馬車に目をやる。中には依頼主である少年が待つ。
「生き残るのは君か。それとも腐った貴族か」
 まぁいい。もっと僕を楽しませてくれ。長い瞬きの後に手に持った煙草が一瞬のうちに灰になる。そして彼はトンファーを手に再び乱戦に飛び込む。
 次に、警護の攻勢に歯止めをかけたのはΛουκᾶςと大地だ。
「あなた達の血の色はきっと赤いんですよね」
 Λουκᾶςは小柄な体格に似つかわしくない超重量の巨大な車輪を警護の一人に叩きつけた。警護は咄嗟に腕を犠牲にして車輪を受け止める。致命傷は免れたが、ダメージが大きく戦意を失い後ずさりする。
「なんなんだよ、お前ら……何者なんだ……」
 警護の男は武器を落とし、右腕を抑えて呻くように言葉を零す。
「もうすぐ死ぬんダ。知る必要はないゼ」
 大地は問いに答えず、狙いを男の額に定め、静かに引き金を引いた。
「さっきはよくもやったわね! 報復よ!」
 ロザリエルは荊を鞭のようにしならせて警護の体に打ち付ける。怯んだところにΛουκᾶςが追撃する。彼は車輪を全力で相手の頭部に叩きつけ即死させた。
「その部位、ヨコセヨ!」
 一方、骸は敵の背後からタックルを仕掛けて転倒させ、隠し刀でアキレス腱を切り刻む。
「……えぐいナ。人道主義者なんかじゃないけどヨ。先に殺そうゼ。暴れられても面倒だしナ」
 大地はそう言うと、骸に足を刻まれている男の頭部に弾丸を撃ちこんだ。

●終結
 スケアクロウは自らを狙って射られた矢をロングソードで打ち落とし、相手に向かって一気に間合いを詰める。
「悪いな。お前も仕事。俺も仕事」
 至近距離から躊躇なく心臓にソードを突き刺して一撃のもと絶命させた。
 その光景を見ていた警護のリーダー格の男が次の一手に移る。
「お前ら、もう一度連携を仕掛けるぞ。狙いはあの小僧だ」
 警護のリーダー格の男は仕切り直しと言わんばかりに号令をかけ、気合いを入れなおす。狙いはスケアクロウだった。
「残るはおまえ一人だよ」
 スケアクロウはロングソードを男の首元に突き付ける。
「え……」
 気が付くとリーダー格の男は孤立しイレギュラーズに囲まれていた。
「オ前ラ、元傭兵ノ割ニ、弱いナ! 連携モ息があっテなイ」
 骸は隠し刀の血を拭きながら吐き捨てた。そしてリーダー格の男の体をジロジロと見つめる。部位の品定めである。
「どうせ貴族に囲われてから、弱いもの苛めしかしていなかったんでしょう? その気持ちはわかるわ」
 でも君達はダメよ。許さないわよ。ロザリエルは舌なめずりをしながらそう言って、荊を鞭のようにしならせて威嚇する。
「ひぃ」
 男は屋敷に逃げ込もうとしたがニゲラに捕まり足元に転がされる。そこにΛουκᾶςが待ち構えていた。
「ぎゃぁぁぁっ!」
 Λουκᾶςは車輪で男の両足をつぶした。
「喋れば命だけは助けてあげるよ」
 冥利は泣き叫ぶ男を見下して冷ややかに言った。 
「ああ! 何でも話すから助けてくれ!」
 リーダー格の男は知っている情報を洗いざらい語りだす。屋敷の内部の構造、貴族のいる部屋、今まで彼らがやってきたこと全てを。
「もう中には貴族のブタしかいねぇよ。ほら、これで全部だ。助けてくれ」
「だめです。処刑します」
 Λουκᾶςは躊躇なく車輪を男の顔面に落とした。
「ああっ! コイツの鼻ガ欲しかっタのニ」
 骸はひざを折り、頭を抱えて嘆き喚いた。

●少年の選択
「美味しそうなやつを見繕ったわ」
 ロザリエルは『食料』を確保してご満悦だ。帰るわよ。そう言うと先に馬車に戻って行った。
「ちょっと、待ってクレ。相談ガあル」
 骸はロザリエルに先に取られた部位を奪還すべく後に続く。
 二人とすれ違うように依頼主の少年が姿を見せる。
「来たか。契約通り、仕事はさせてもらった……後のことは任せる。精々、うまくやるんだゾ?」
 大地は少年の肩を軽くたたき、ニヤリと笑って送り出す。
「復讐は止めない。でも、燃え尽きないでほしい」
 ニゲラは少年に想いを伝えた。少年は一瞬戸惑いの表情を見せたがすぐにニゲラから目を反らし、会釈して立ち去る。
「おい。なんだその荷物は? 見たところ獲物を持ってないな。俺の剣を貸してやろうか」
 スケアクロウの申し出を少年は丁重に断った。少年は腰には小さな短剣を一つ。背中には大荷物を背負っている。荷物の使途ははた目からは不明であった。
「間違っても、返り討ちに会うんじゃねぇぞ。寝覚めが悪くなるなんて最悪だ」
 少年は薄く笑顔を返した。
 それは、彼が最愛の少女を失ってから始めて見せたものだった。
 イレギュラーズ達の気遣いによるものか。或いは目的を達成できることへの満足感によるものなのかは分からない。
 Λουκᾶςは、何も語らずに少年を静かに見送った。
 貴族が命乞いをしてきたらどうするのか。聞いてみるつもりだったが、彼には少年の表情を見ただけで聞かずとも答えは分かっていた。
「本当に世知辛い世の中ですねぃ」
 屋敷に入る少年を見届け、エリクは苦虫を嚙み潰したような表情で独り言つ。

 少年が屋敷に入ってから、どれくらいの時間が経過したか。やがて正面の扉の隙間から煙が昇り始める。
「おいおい。そう言うことか」
 冥利は、扉や窓の隙間から次々と溢れ出る煙を見て呟いた。
「燃え尽きないでくれって、言ったじゃないか!」
 ニゲラの叫びが、夜のしじまに木霊する。
「世知辛いじゃ済まないですよ、こんなの」
 再び屋敷前に戻ったエリクはやりきれない思いを口にして唇を噛む。
「正義の衣を纏った復讐劇。さてさて、この結末は」
 冥利は全てを見届けることなく、踵を返した。燃え盛る屋敷の炎に照らされて浮かび上がる彼の影は、人ならざるものに見えた。
「やはり命乞いの余地なんてないですよね」
 ――分かっていたことです。Λουκᾶςはオレンジ色に染まる光景を自らの瞳に映して言葉を零す。
「まだ間に合うでしょう? 止めないと!」
 ニゲラは少年を救出すべく扉に向かおうとするが、それを大地が引き留める。
「それはだめダ。契約違反だろ。それに――」 
 彼の望み通りに動くのが俺達の仕事だから。彼に任せればいい。大地は静かにそう言った。
「馬鹿野郎が」
 スケアクロウの叫びは、屋敷が轟々と燃える音にかき消される。

 屋敷からは激しく炎が上がり、火の粉は天を目指して立ち昇る。
 願わくば昇る火の粉に乗じて、捕らわれた魂たちも天に還れるように。
 燃え盛る屋敷を前に立ち尽くすイレギュラーズの誰かが、ぽつりとそう言った。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お疲れさまでした。依頼は成功となりました。
皆様、悪依頼ならではのハードなプレイングが素敵でした。

戦闘面ではエリクさんニゲラさんの貢献がお見事でした。

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