PandoraPartyProject

シナリオ詳細

おれさまは超わるいやつなんだぜ!!!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●まーくんは世界で一番悪いやつを目指している。
 まーくんはご近所でも有名な悪童だ。
 とにかく悪さをするということで有名だった。早弁をする。授業中に寝る。女子のスカートを捲る。男子のズボンを下ろす。サッカーの授業で手を使う。お使いのお釣りでガチャを回す。米を洗剤で洗う。プレイングを白紙で提出する。
 そういうことばかりをしているものだから、ご近所でも鬼子じゃ鬼子じゃと言われていたが、本人はまるで気にしていなかった。
「おれさまはサイキョーの悪になるんだ!!」
 そう言って憚らないまーくんだったが、それはそれで弊害も出てきた。
 そんなことばかりをしているものだから、友達が全くいないのである。
 体育の授業で二人組みを作ることが出来ない。社会科見学で乗るバスの隣に誰も座らない。トランプの大富豪に混ぜてもらえない。演劇で木の役すら回ってこない。
 まーくんは孤立している。まーくんは孤独である。
 それを心配したのがまーくんのお母さんだ。このままではまーくんは自分以外の誰にも愛されない子になってしまう。
 そこで、まーくんのお母さんはどうしてまーくんが悪さばかりをするのか考えた。本当は心優しい子の筈だ。それがどうして。
 答えは明白だった。まーくんは悪に憧れすぎているのだ。まーくんは今年で十歳。闇属性や暗黒騎士に目覚めるにはまだ少し早い年齢である。もう少し、正義のヒーローに憧れていても良いはずだ。
 それがどうしてか悪に傾倒し、それを体現しようと動いている節がある。しかし、悪というものがどういうものかはいまいちわかっていないので、ああしてヒトの嫌がることばかりしているのだろう。
 ようは暴走しているのである。まーくんのお母さんはまーくんが悪を諦めるようにしたかったが、どうこうしてもまーくんの憧れを諌めることはできなかった。
 まーくんのお母さんは自分の育児手腕の未熟さに嘆いた。しかし、我が子の将来がかかっているのである。まーくんのことを諦めるだなどという選択肢はまーくんのお母さんにはなかった。
 しかしご近所を頼ることも出来ない。ご近所さんはまーくんのお母さんと違って、まーくんのことをとっくに諦めているのだ。
 打つ手はないのだろうか。いいや、そうではない。最後の希望がある。そう、ローレットだ。彼らは国家間の争いにまで介入し、その中で巨悪を打倒しているというではないか。彼らなら、まーくんを正しい道に戻してくれるかもしれない。
 まーくんのお母さんはすがる思いでギルドの門戸を叩き、受付窓口でこういったのだ。
「どうか、どうかまーくんより悪なのを見せてまーくんの悪を諦めさせて下さい!!」

GMコメント

皆様如何お過ごしでしょう、yakigoteです。
まーくんの『悪』への憧れを止めて下さい。
自分はこんなにも悪いやつだ。過去にこんな悪いことをしてきた。こんな悪いことも出来るんだぞ。そういうことをアピールして、世の中にはとんでもなく悪いやつがいるんだとまーくんに知らしめ、彼が悪の道に進まないようにしてください。
それが真実である必要はありません。思いつく限り『悪ぶれ』ればそれで大丈夫。信じ込ませればいいのです。
しかし、注意点があります。
まーくんはまだ10歳。あんまり難しいことや、残虐すぎることを伝えても理解できません。
彼の年齢に合わせて、ほどほどに悪いやつを演じてください。

【キャラクターデータ】
■まーくん
・本名、マックス・ジャスティス。
・10歳の少々やんちゃ過ぎる少年。
・『悪』に憧れており、思いつく限りの悪事を行うため、ご近所や同級生から嫌われている。
・しかし暴力事件はなく、しつこく嫌がらせをする相手は『いじめっ子』などに限られる。

■まーくんのお母さん
・若くておっとりしている。まーくんのことがいつも心配。

  • おれさまは超わるいやつなんだぜ!!!完了
  • GM名yakigote
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年01月09日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

レオン・カルラ(p3p000250)
名無しの人形師と
グドルフ・ボイデル(p3p000694)
アト・サイン(p3p001394)
観光客
ハルラ・ハルハラ(p3p007319)
春知らず雪の中
庚(p3p007370)
宙狐
メリー・フローラ・アベル(p3p007440)
虚無堕ち魔法少女
ゼファー(p3p007625)
祝福の風
ギンコ・キュービ(p3p007811)
天使の選別

リプレイ

●まーくんは悪の凄惨さを知らない
 正義とか、悪とか、世界がそういう極端な境目で出来ているわけじゃあないってことは、なんとなく理解できていた。人を守ることは正義だ。だけど、そのために人を殴る行為は本当に正義だろうか。毎日決まった時間に目覚めることは正しいことだ。しかし、かと言ってたまたま寝坊したらそれは悪だろうか。

 物語の中では、正義というのも悪というにも脚色して描かれるものだ。それが子供向けであるなら尚更に。
 実際にある泥臭さなどはその世界に入ってみるまで見えては来ない。そして、見えてきた頃には、とうに抜け出せないところまで沈んでいるものだ。
 どうしようもなく落ちたものを拾い上げてやる気にはなれないが、危ないところで子供がはしゃいでいるだけならば、手を引いて叱ってやるのも、大人の役目というものだろう。
「まーくん、良い子だと思うんだけど……何か間違えているような」
『名無しの人形師と』レオン・カルラ(p3p000250)から見れば、まーくんの行為はまだまだ幼いものだ。ただ思いつく限りの悪いことを続けているだけで、半端なあこがれが暴走しているに過ぎない。
 それは可愛らしくもあるが、放置出来ない程には危険なことでもあった。
『まぁ、まだまだ子供ってことよね』
「とりあえず悪ぶれば良いと思ってるんだ」
『山賊』グドルフ・ボイデル(p3p000694)が首をゴキリと鳴らした。
 彼の外見は、正に『如何にも』であるが、だからとて危ういところに居るだけの少年を引き入れるつもりはない。
 一度道を逸れてしまったら、誰かが示してやらねば違ったところへ辿り着いてしまうものだ。どうしようもなく踏み外す前に、振り向かせてやる必要がある。
「やれやれ、悪ガキを正してやるのも大人の役目よな。良いぜえ、このグドルフさまがビシッとかましてやるよ」
「悪人らしさをアピールって……ちょっとまって、僕は善良だけど」
 お前にはぴったりだ、という一方的な理由で『観光客』アト・サイン(p3p001394)はこの仕事に放り込まれた。悪を見せろと言われても、ごく普通に、ごく善良に生きているつもりであるので、仕事の内容を聞いてもマッチングしているとはどうにも思えないが。
「え、普段どおりやっていればいい? ……すごい失礼なこと言われてる気がするけど、まあいいや」
「男の子ってのはどうしても悪いヤツに憧れる時期がある」
 仕方のない話だが、放っておくのも寝覚めの悪い話だと、『春知らず雪の中』ハルラ・ハルハラ(p3p007319)は頭を掻いた。
 悪が格好良く映る。実態を知れば、協調性を身につければ自ずと薄れていく感覚だが、度が過ぎてもことだ。既に弊害が出ているならば、メスを入れてやらねばなるまい。
「まーくんは早熟だが……ここから拗らせちまっても問題だし、母親のためにもここは一肌脱ぐか」
「まー様に悪のなんたるやを教えて進ぜる、と」
 どうしたものかと、『宙狐』庚(p3p007370)はなにもない空を仰いだ。早熟な少年に危険な世界の一端を見せる。通常の感覚を持っていれば、そこに小さな期待感と、大きな恐怖を覚えるだろう。本質が偏っていれば、どうなるかは知れたものでないのだが。
「一歩間違えればただの英才教育やもしれませんけれども、カノエなりの悪を論じさせて頂きましょう」
「十歳ならもう殺人は理解できる年よね?」
『躾のなってないワガママ娘』メリー・フローラ・アベル(p3p007440)は社会的な最大のタブーを持って示そうと考えたようだ。殺すこと、殺されること。そのような世界で生きることを、大抵の人間は避けたがるものだ。まだ母に守られる少年ならば尚更そうあらねばならないが、きっと想像力が追いついていないのだろう。実態は物語よりも残酷で、闇とはただ暗く暗く混じりいっていることを教えてやらねばなるまい。
「ふふ。可愛いお年頃よねえ」
 悪に憧れる少年。ゼファー(p3p007625)から見ればその幼さは背伸びをしているようで、なんとも微笑ましい。
「こんな子には寧ろ悪いコト、教えたくなっちゃうんですけどねえ? ……いや、変な意味じゃないんですけどぉ!」
 うーん何とも教育に悪い。
「まあでも、お友達がいなくなるのは考えものよね。ええ、健全な少年の教育の為に一肌脱ぎましょう!」
 うーん何とも教育に悪い。
「悪になりたいねぇ……ガキの考えるこたぁよくわかんねぇな」
 まるで良いものじゃあないのだけれどと、『銀狐』ギンコ・キュービ(p3p007811)。なりたくてなるものではない。転がり落ちた先に這い上がれず沈み込むものなのだ。誰だって、善良に、まっとうに、それでやってけるなら、それで生きていけるだけの性質を持っているならば、そこで陽を浴びたいものなのに。
「依頼の内容を確認するが、悪っぽい事を教えて悪になるのをあきらめさせりゃいいんだな?」
 
●二段階の境界線
 世の中はもっと宙ぶらりんに出来ている。みんな、自分の為したい正義を実行しながら、どこかで成りきれずに正義を不確かにしている。正義はその宙ぶらりんには寛容だ。良くない行為と、悪は別物なのだ。だから正義は貫かれない。良くない行為には寛容になりつつ、だからこそ正義は絶対ではないのだ。

「まーくん、お母さんね。今日は先生を呼んであるの」
 まーくんのお母さんはどこか間延びした口調でまーくんに話した。
「先生? おれさまは教えてもらうことなんかないぜ!」
「ううん、まーくん、今日はね、『悪』の先生をお呼びしているのよ」
「『悪』の先生だって!?」
 まーくんは色めきだった。悪に憧れてはいるが、そこに先生がいるなんて思いもしなかったのだ。
 まーくんは目を輝かせ、先生たちが入ってくるのを今か今かと心待ちにし始めた。

●まず恐怖が来る
 上手く説明できないが、悪に憧れたのはその時だと思う。当然ながら、悪すらも絶対では無いのだろうけれど、幼い瞳には、宙ぶらりんで構成される世の中を広く見ることが出来ない幼稚な視界には、そちらが綺羅綺羅と輝いて見えたのだ。だからこそ、深い深い闇の底すらも見えていなかったのだろうけど。

「オウ──おめえが札付きのワルになりてえって坊主か? この山賊グドルフさまが見定めてやるぜ」
 グドルフはまーくんの前に中身の詰まった大袋を放ると、ぐいと顔を近づけた。
 早熟と言えど10歳の少年に、グドルフの強面を直視する胆力はない。既に腰が引けているのがグドルフには手にとるようにわかり、だからこそ『こちら側』に来るべきではないと感じていた。
「見ろ! こいつはおれさまが今まで色んな連中から奪ってきたモンだ。抵抗してきた奴を殴り、やめてくれと泣きながら縋ってきた奴も殴って手に入れた戦利品だぜ。羨ましいか? ええ?」
「な、殴……!?」
「無論、これらを手に入れるまでに苦労はあった。切った張ったの命のやり取りもな」
 がっしりと、大きな手でまーくんの肩を掴む。加減しているが、少年には大きな圧に感じるだろう。
「坊主、ひとつ教えてやる。悪人は、嫌われるなんて序の口。太陽が出てる内は町中歩けねえと思え」
 その言葉に、男の子は何も返すことが出来なかった。

「おーい、まーくん、観光客とデートしよっか」
 そう言ったアトと公園を適当にぶらついていたのだが、まーくんは既にアトのことをやばいやつだと認識し始めていた。
 なぜなら。
「卵食いたくなったな、卵」
 言うやいなや、適当な飛行種の女性に目をつけると、近づいていってこう言ったのだ。「ちょっと産んでくれよ、お腹が空いたから」
 タコ殴りである。こかされて、周辺の誰からもヤクザキックをもらっていた。
「ぐへえ、しかし腹減ってるのにこの仕打ち。酷いな世間って」
 まーくんは学んだ。世の中の悪には種類があるのだ。中でもこいつは畜生の類だ。
「まあいいや、飯でも……あっと、持ち合わせが。仕方ない、あそこいくか。教会の浮浪者向け炊き出し」
「え……?」
「食っていいのかって? 他人の善意っていうのが無料バーゲンセールされてるなら骨の髄までしゃぶり尽くす。それが楽な生き方ってもんだ、わかるかい?」
 まーくんは何も言えなかった。わかってしまったのだ。こいつ、アカンやつや、と。

 これが暴力の結果だと、ハルラが示したその場所は、大通りから少し離れた廃屋だった。
 壁の一部は崩れ、窓板は割れて散乱している。誰も住まなくなって久しいそこに入り、ハルラはわざと大仰な身振りで適当な家具を蹴り砕いた。
 木片が散らばって、埃が舞う。その様に、まーくんは顔をしかめていた。
 それを見て、ハルラは思う。これを嫌悪できるなら、まだ大丈夫だと。荒廃や、暴力や、凄惨を忌避できるのなら、ずっとずっとまともなものだと。
「悪いやつってのはこうやって何かを壊す時に躊躇はしねぇ」
 わざと大きな音を立てて、崩れかけの壁をぶち破る。まーくんが音と荒々しさにびくりと身体をすくめたが、構いやせずに次々と破壊を、暴力を、残虐を振るう。
 悪事は省みない。思いやらない。気遣わない。壊していく、壊していく。牙を向いて、何かを発散するように。
 そうして、どれだけ立ったか。呆然として立ち尽くすまーくんに振り向くと、怯えた顔をする少年に向けてハルラは口を開いた。
「これ、本当に格好いいと思うか?」

「悪とは、既存の価値観、秩序基準……おや」
 悪について。それを座学にてまーくんに伝えようとしていた庚は、少年の表情を見て言葉を止めた。
 まーくんの顔には山程のクエスチョンマークが浮かんでいたからだ。どうにも、10歳児には難しい言葉を選んでしまっていたらしい。
「こほん……何が大切なのかや何が正しいのかという当たり前を壊してしまうもののことです」
 言葉の意味を噛み砕き、説明を再開する。伝える、教授する。そういう手法を取るのならば、相手に理解されなければ意味がない。
「例えば、国を潰せば、その国のお金というモノの価値がなくなり、物々交換の時代に戻ります。そうすれば、お金はゴミと同じになりますね」
「え、もったいねーじゃん」
「そうですね、とても勿体ない。けれどそれが悪なのですよ。それが本当の、悪の魅力なのです」
 庚の使う言葉は優しくなったが、それでも意味は難しく、まーくんにはすべてを理解することは出来ない。しかし、悪って損をするんだな、と。まーくんはひとつ賢くなった。

「わたしが6歳の時の話ね」
 メリーが話し始めた。
 6歳だと、まーくんよりも4つも若い頃ということになる。大人からすればそれほどの時間には感じないかも知れないが、まーくんからすれば遥か昔にも等しい時間。格好つけて言うのなら、『若い時』だ。
「同じクラスに気に入らない子が居たからボコボコにして、止めに入った先生も足腰立たなくなるまでボコって――」
「えっ!?」
 クラスメイトならまだしも、先生までボコボコに。それも女の子がだ。
 女の子はか弱いので、そういうものではないと思っていた。しかし、目の前の彼女は自分よりもずっと幼い頃から大人にも勝っていると言うではないか。
「――最初にボコった子の親が家に怒鳴り込んできたからボコって追い返して、わたしを捕まえに来た警官は死ぬまでボコってやったわ」
「殺したの!?」
 しかも警官を。じゃあもう止めようがないじゃないか。
「悪を貫くには相応の力が必要なの」
 その言葉には説得力があったが、それを出来るという自身はまーくんにはなかった。

「……私はね、とっても悪い人なのよ。どれぐらい悪いかって言うと、そうねえ」
 子供にもわかるレベルで、かつ教育に差し支えない悪。ゼファーそのラインを考えていたが。
「例えば可愛い女の子を食べ……エンッ」
 ちゃうわこれ。これは教育に悪いやつだ。まーくんにはしっかりと聞こえていたようで。
「人間を、食べた……!?」
 まーくんの顔に、「こいつ悪すぎる」と書かれている。
 違う。そうじゃない。いやそういう方面で誤解してくれたほうが良いかも知れないけど。
「た、例えばね……そう。私は人攫いだってしちゃう悪い人よ」
「さらって、食べた……!?」
 まーくんはガチビビりしている。目の前のこいつは、人間をさらって食うのだ。ヴァンパイアだって血しか吸わないのに。
 だめだこれ。こまったゼファーはとりあえずちょっと驚かせて置くことにした。できるだけ妖しく、甘ったるいトーンで。
「ふふふ。ところでまーくん? 貴方もとっても可愛いね……?」
 まーくんはこれ以上無いくらいビビっている。

「よう、アンタがマックスか?」
 …………。あ、そうだ。まーくんの本名、マックスだった。
「アンタ暴力はふるってねぇんだってな?」
 悪を掲げる割に、それをヌルいとギンコは鼻で笑う。
「気に食わねぇやつは殴り飛ばし、欲しい物がありゃ殺してでも奪い取る。逆らうやつはみんな力で抑え込む」
「でもそれだと、嫌な奴といっしょじゃん……」
 悪らしくない。そう言われて落ち込んだ表情を見せるが、しかし暴力を振りかざしたくはないというまーくん。根の優しさが透けて見えていて微笑ましく感じられるものだが、ギンコはそれを表情に出さない。
「暴力がありゃなんでも自由だ! 素手で勝てなきゃ武器を使え! 相手も武器を使うなら手下を用意しろ!」
 暴力とはそういうものだ。より上位の暴力を持って他者を蹂躙し、さらに上位となれば他者に代理として暴力を振るわせる。
 この少年には無理だとわかっていても、畳み掛ける。悪とは恐ろしいのだと心に刻むために。
「いいか? オレの言う通りの事を実践すりゃアンタも立派な悪になれるさ」

「そうだ。そうやって、嫌なやつをこう、ガってやってやったんだ!」
 レオンとカルラを前に、まーくんは自分の『悪事』を自慢気に話している。
「かっこいー!」
『弱きを助け! 強きをくじく!』
 やんややんやと囃し立てると、照れた表情で胸を張るまーくん。
 じゃあ今度は自分達の番だと、ふたりは口々にそれを言う。家族をおいてきたお話を。
「彼女もボクも異世界から来たからね」
『彼も私たちもお別れも言えなかったわ』
「今は心配してるのかなぁ」
『お母さんはどうしてるんだろう』
 お母さんはどうしているんだろう。
「おかあ、さん」
 まーくんは振り向くと、少し遠くに自分の母親がいることを確認する。今日はたくさんの大人に話を聞いたが、ずっと母が近くに居たことには気づいていた。
「まーくんは凄い悪い子だよね」
 その言葉ではっと我に返り、またレオンとカルラの方を見る。
『優しいお母さんを悲しませているんだもん。すっごい悪いことだよ』
「おかあさんを、悲しませて……」
 なんだろう。ぎゅっと胸が痛んだ。

●まーくんは世界で一番の悪を目指してた
 今では絶対的なものであるよりも、譲れないものを貫くことが輝いて見えている。

「本当に、ありがとうございました」
 後日、依頼人であるまーくんの母親がギルドへと挨拶に来た。
 あれから、まーくんは自分を悪だとは言わなくなったそうだ。
 今でもやんちゃなところは変わらないが、矛先のない嫌がらせや悪戯は成りを潜め、少しづつではあるが、周囲に受け入れられ始めているという。
 もう一度頭を下げて、まーくんのお母さんは帰っていく。
 それを見送りながら、ひとつ明るい未来を生み出したのだと、晴れ晴れしい心持ちになった。

 了。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

優しくなければなんとやら。

PAGETOPPAGEBOTTOM