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シナリオ詳細

<第三次グレイス・ヌレ海戦>海老名補給倉庫防衛戦

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●闇にほくそ笑む
 輸送船がグレイス・ヌレ海域の中継島へと接岸し、食料その他の様々な補給物資を運び出していく。
 それも全て、これから始まる第三次グレイス・ヌレ海戦に向けての物資であった。
 『海洋王国大号令』の名の下に活発化したネオフロンティア海洋王国は目下の障害である海洋モンスターや無許可の海賊たちの駆除にいそしんでいた。
 国家をあげての『大掃除』に海賊たちは生き残りの道を探し、ある者は国におもねり私掠船許可書を得ようとし、ある者は国外へと逃亡し、ある者は足を洗う。そんな中で、『違法な海賊』として生き残りを狙う複数の組織が併合。
 うろこ諸島海賊同盟を結成。彼らはまるで何者かにあおられたかのようにグレイス・ヌレ海域へと集結。王国へのテロを計画していた。

 ……と、いうのが、先日までの情報である。
 時を同じくして鉄帝からも『新天地の利益に一枚噛ませろ』とばかりに皇帝率いる艦隊が接近。
 海洋王国海軍はグレイス・ヌレ海域に兵を集めるだけでなく、大々的に協力を依頼したローレット・イレギュラーズを戦力に加え迎撃準備を整えていた。
 配備は充分。
 戦力はそろった。
 いつでも迎え撃てる。
 そう考える彼らに、突風のごとく知らせが走った。

 ――『哨戒部隊第十二班壊滅。敵は輸送船を奪って警戒ラインを突破。補給庫に向かっている模様。敵の数、八』

●重要指定危険団体『化骨衆』
「ざーんねん。雑魚だった。全然楽しめなかったなー」
 拳銃を指でくるくるとまわす、身なりのよい少年。
 彼が腰掛けているのは血まみれの死体。
 まわりには、十数人の死体がごろごろと転がっている。
「まさかこの先ずっとこんなのばっかじゃないよね? ヤだよ? なんのために貝塚家と甲羅戯家をハメたのかわかんなくなっちゃう」
「ハッハー! 焦るなボーイ。『遊興』には準備が必要なもんさ」
 ドレッドヘアの大柄な黒人男性が笑った。
 死体を軽々担いでは、一部分だけ派手に粉砕した手すりの隙間から海へ放り落としていく。
「ギギギ、ギギ……」
 黒い粘液のような大きな物体が、黒人が放り出そうとしていた死体のひとつを引き留めた。
「アァ? なんだ」
「自分の『ごはん』を残しておけ、だそうよ」
 手すりの上に立ち、海風を浴びていた女が声をかけてきた。
 銀色のうろこめいたボディースーツが陽光を妖しく乱反射する。
 彼女の言うように、黒い粘液は死体を覆い尽くすと内側でぼりぼりと音とたてながらうごめきはじめる。
 その様子を何気なく眺めながら、女は船首へと振り返った。
「で、今度の『遊興』はどういう仕掛けなのかしら。八十神サン?」
 声をかけられた青い和服のサメ系海種、八十神。
 またの名を『人喰和邇』八十神 劫流。
 キセルをくわえて遠くを見る彼が、口の端で笑った。
「燕黒家……いや、奴と『ローレット』だ。まずは奴らと遊びに行く。
 国が壊れるさまを眺めるのは、その後でいい」

●海老名補給倉庫防衛戦
 三矢黒海老の家紋がついた羽織をきて、和装の老人が立っている。
 その立ち居振る舞いひとつだけで、彼が高貴な家の出であることと高い政治力を持っていることがうかがい知れる。
 名を海老名 楽宗(えびな がくしゅう)。海洋貴族連合の一党を担ううろこ諸島貴族連合通称『八家紋』の一人である。
 彼はグレイス・ヌレ海域の中継基地にあたる島――の、砦内にてローレット・イレギュラーズを迎えていた。なかでも顔見知りである彼女のことは……。
「よく来てくれた。燕黒の。父上は息災かね」
「さぁねえ。あたしに似て自由奔放が売りだからね、いひひ」
 ギザギザの歯を見せて笑う燕黒 姫喬(p3p000406)。
 逆だろうに、などとは言わぬ海老名。
 ただ、要件だけを話して終わろうというつもりもないらしかった。
「甲羅戯の件は残念だった。貝塚家もあれ以降領民が塞ぎ込んだようでな、領地の立て直しに苦しんでいるよ。よもや、その裏で動いていたのがおたくの分家であったとは」
「分家じゃあ、ない」
 とっくの昔に縁は切れたよ、とジェスチャーで示す姫喬に、海老名は手をかざして簡単に謝罪した。
「この場にいる者にも、わかりやすく説明しておこう。
 八十神家……いや、八十神 劫流という男の危険さを、な」

 八十神 劫流。
 彼の行動目的は一貫して『遊興』である。
 人や物が壊れていくさまを鑑賞して楽しむことをさし、そのための準備を惜しまない。
「目的のために手段を選ばない優秀な人間が、ただ破壊だけを目的にした。そういう厄介な人間だ。
 そして今回の破壊対象は、『海洋王国そのもの』であるらしい」
 無論、この混沌世界で均衡を保っている七大国家の一つを破壊することは困難を極める。それだけの何かを、彼は握っているかないしは知っているということなのだろうか……。
「現に、海洋貴族のうちふたつの家が今回の騒動によって破壊されている。
 ローレットを引きずり出すために利用された貝塚家。第三次グレイス・ヌレ海戦の引き金として生け贄にされた甲羅戯家。準備だけでこの有様だ。この先何が壊されるかわかったものではない」
「だから……あたしたちに止めさせようって?」
「なに。そこまで大それたオーダーは出さぬ」
 老人は首を振り、『本題に入ろう』と述べた。

 現在、輸送船を奪ってこの中継基地へと接近している一団がいる。
 海老名家の管理する備蓄倉庫が狙いだろう。これを破壊されれば前線で戦う海洋海軍たちがたちまち疲弊し、鉄帝海軍に押し切られる危険がある。
 非遠征側は自国の補給で防衛できるという有利条件を潰す返す形だ。
「これをなんとしても排除しなければならない。
 奴らの率いる『化骨衆』を倒し、倉庫への接近を食い止めてくれ。それだけでいい。
 とはいえ『化骨衆』は八十神の思想に同調した危険な集団だ。個人ごとの戦闘力も高い。心してかかれよ」
「当然」
 姫喬は笑って、刀の柄をたたいて見せた。

GMコメント

■■■オーダー■■■
・成功条件:八十神および『化骨衆』の撃退
 彼らを戦闘によって撤退させるのが今回のオーダーです。
 『化骨衆』は輸送船を使って島に接近しているため、こちらも船を出して海上で迎撃することになるでしょう。
 どちらにも特殊装備はついていないので、船に乗り移ったり戦場から射撃を行うなどして戦うことになるはずです。

■■■船について■■■
 皆さんが誰も小型船及び水上運搬アイテムを装備していなかった場合、海老名家から小型船を一隻借りることができます。
 が、自前の船を使ったほうが船上での戦いが有利に運ぶでしょう。
 船を投入する場合、以下の特別ルールが適用されます。
・船アイテムの操縦者は必ず自分で装備すること
・船アイテムに同乗するPCは命中・回避にかかる足場ペナルティを軽減でき、操縦者のプレイングによってはプラス補正を受ける。
・敵船に乗り込む、戦闘に集中するといった場合は船の操縦がおろそかになり有利条件が消える
・操縦者の交替は認められるが、頻繁な交替はペナルティの増加をまねく。一回程度の交替ならペナルティなしとする。

■■■エネミーデータ■■■
●『化骨衆』
 八十神の思想に共感した危険人物たち。
 入団条件が八十神との一騎打ちで傷を負わせることであるため、個々人が高い戦闘力をもつ。
 今回確認されているのは八十神を含め八名。
 そのうち五名だけがデータにある。
 個体戦闘力の高さは確認しているが、チームとしての戦術レベルは不明。『普通以上』とみてもよいはず。

・八十神
 リーダー的存在。炎を操る力を持ち、安定した破壊力を持つトータルファイター。
・黒人キックボクサー
 大柄でパワフル。防御を打ち抜く高い火力と耐久力を持ったトータルファイター。
・銀色の女忍者
 忍者刀による斬撃と敵を攪乱するBS攻撃を得意とする。
・少年
 アクロバティックな動きと拳銃による距離を問わない戦闘スタイル。
・粘液
 人間に化ける能力をもった意思のある粘液。ギギギと鳴く。
・???
・???
・???

■■■アドリブ度■■■
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用ください。

●重要な備考
<第三次グレイス・ヌレ海戦>ではイレギュラーズ個人毎に特別な『海洋王国事業貢献値』を追加カウントします。
 この貢献値は参加関連シナリオの結果、キャラクターの活躍等により変動し、高い数字を持つキャラクターは外洋進出時に役割を受ける場合がある、優先シナリオが設定される可能性がある等、特別な結果を受ける可能性があります。『海洋王国事業貢献値』の状況は特設ページで公開されます。
 尚、『海洋王国事業貢献値』のシナリオ追加は今回が最後となります。(別途クエスト・海洋名声ボーナスの最終加算があります)

  • <第三次グレイス・ヌレ海戦>海老名補給倉庫防衛戦完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年01月02日 22時45分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (8人)

エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)
波濤の盾
燕黒 姫喬(p3p000406)
猫鮫姫
イリス・アトラクトス(p3p000883)
光鱗の姫
武器商人(p3p001107)
闇之雲
鬼桜 雪之丞(p3p002312)
玲瓏の壁
フィーゼ・クロイツ(p3p004320)
穿天の魔槍姫
新道 風牙(p3p005012)
よをつむぐもの
伊達 千尋(p3p007569)
Go To HeLL!

リプレイ

●ドミノ倒しの指
「国壊し……それは、なんとも、大がかりな遊びでございますね」
 補給基地の建設された島。その港には船がとまっていた。
 乗り込んだ『閻桜』鬼桜 雪之丞(p3p002312)は、遠くでおきる戦いの風景を横目にゆっくりと呼吸を整えた。
「海洋は、美味なる物も多く、気の良い方も多く……拙にとっても遊興の場です。それでも、これを壊すなら……」
「ああ、俺たちが相手になる」
 碇をあげ、船を出航させる『海抜ゼロメートル地帯』エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)。
 彼の砕氷戦艦がゆっくりと波をかき分け、スクリューを回し始める。
「緩衝地帯とは名ばかりといえる両国の境界海域。
 そこに名ばかり艦隊の配置は違和感があった。
 なるほど、その一要因はあいつらってわけか」
 あの海で命を落とし、今も尚底に沈んでいる者たちのことを考えた。
 この世界では人は簡単に死んでしまう。
 そして殺すための道具は、なにもナイフや銃ばかりではないらしい。
 まるでドミノ倒しをするように、連鎖する事件を眺めて楽しむ者がいる。
 死と破壊を花火が散るように楽しむ者がいる。
 それ自体の善し悪しは横に置いたとしても……。
「奴らの無念は、必ず晴らす」
「ヒヒヒ……」
 横についていた『闇之雲』武器商人(p3p001107)がエイヴァンの横顔をみやった。
「例の略奪された輸送船が見えてきたら運転を代わるよ。旦那は戦いに専念すればいい」
「そうさせてもらう」

 動き出した船の上で、『光鱗の姫』イリス・アトラクトス(p3p000883)は難しい顔で過去の資料を眺めていた。
「うーん……目的と手段が想像の埒外にあるうえに次の手が読めないひとって、怖いよね」
 何をするか分からない人間。何を考えているか分からない人間。そういうものは、もはや他人という以上に恐怖の対象である。
 そして仮に理解できてしまったとしても、それはそれで怖いことなのかもしれない。
「ホントだぜ! 今度の相手は人間だけど、性根がヤバイ! なんだよ、人やモノが壊れるのが好きって。頭おかしい!
 百歩譲って人の趣味はそれぞれだとしても、それで人様に迷惑かけちゃダメだよな!」
 『帰ってきた牙』新道 風牙(p3p005012)が剣をぎゅっと握りしめて憤りをあらわにした。
「人の世に仇為す魔を討ち、無辜の民を護る!
 それがオレのやるべきこと! こんなやつ放っておけねえ!」
「わかるぜー。国をぶっ壊して金儲けとか偉いなんかになるとかわか分かるけどよ、壊すこと自体が目的とかヤバい奴じゃん。それも国家規模とかマジのテロじゃん。
 バイクチームで疾走ってた俺だってもうちょっとマシだったぜ?」
「そうかねぇ。案外単純だと思うよあたしは、きひひ」
 引きつるように笑うと、『猫鮫姫』燕黒 姫喬(p3p000406)は鞘に収まったままの刀を杖のように両手でついた。
「要は頭の良い子供でしょ。楽しいことがしたくてたまんないんだよ。
 だから今回は『遊びに引き込む』。相手がそうして欲しいってシグナルを出してるんだから、わかりやすいほうよ」
「まあ、ね」
 『黒曜魔弓の魔人』フィーゼ・クロイツ(p3p004320)はかの男……八十神 劫流について考えた。
 永久に遊びたい子供。
 それが彼の本質なのだとすれば、彼は世界という資源を体力の続く限り無限に食い潰すことになる。
 彼のカリスマや知能がそれを実現してしまうなら、彼は『世界のルールが許した世界の危機』とも呼べるのかもしれない。
「けど、だとしたら……世界には悪いけどちょっと楽しみね。
 強くなるならそういう輩を相手取るのが手っ取り早いもの。
 腕をあげて、島も守って、仕事もこなす。一挙両得でいきましょ」
 ほら、噂をすれば。
 フィーゼが振り返ると、真っ赤な旗をたなびかせた輸送船がこちらへと向かってくるのが見えた。
 あの船に赤い旗など積んでいない。
 ベッドシーツを血に染めて、柱にくくって見せつけているのだ。
「子供がくるよ。世界を壊しに」

●I want call me
 血の旗を掲げた船が迫る
 船首に堂々と腕組みをして立つ男。彼こそが破壊屋『化骨衆』の頭目、八十神 劫流。
 千尋は対抗して手すりに足を乗せ、八十神へを指を突きつける。
「おいおいテメー等よォ! 遊びの相手サマが来てやったぞオイコラァ!! 俺ぁチーム『悠久-UQ-』の切り込――」
 すこーんと千尋の額に矢が刺さった。
「ぐおああああああ!?」
 千尋が白目をむいてぶっ倒れた途端、勢いをつけるように輸送船がまっすぐにぶつかってくる。
「旦那」
「ぐおおっ、任せた!」
 武器商人に運転を任せ、倒れた千尋を守ろうと走り出すエイヴァン。
 が、鋭く打ち込まれた銃弾が武器商人を狙ったのを見て急速転換。
 盾を水平にかざして自分の身と武器商人をかばった。
 彼を足止めするかのように連続して打ち込まれる銃撃。
 仰向けに倒れた千尋めがけて獣が飛んだ。否、ドレッドヘアの黒人男性が跳躍し、その巨体から拳を振り上げて見せた。
「うおやっべ!!」
 額に刺さった(と思ったが案外外れていた)矢を投げ捨て、千尋はその場から転がって回避。さっきまで寝転んでいた甲板がこぶしによって粉砕される。
「俺は守りを固める。そいつの対応は任せたぞ」
「簡単に任せてくれるなっつー」
 充分に距離をとって起き上がった……つもりだった千尋の顔面に、先ほどの黒人の拳がめり込んだ。
「ミーのパンチからは逃げられないぜ、ボーイ」
「――!?」
 きりもみ回転し、吹き飛んでいく千尋。手すりを破壊して船外へと転げ落ちていく。
「千尋!? ドロップアウト早すぎない!?」
「他人事じゃない。来るよ」
 姫喬は抜刀した刀を振り抜くように、手すりにぎゃりぎゃりとこすりつけるとその表面に燐光を灯らせた。
「耀化鮫牙造御神楽宝刀『八尋火』――燕黒の剣が目に入らぬか、ってねぇ」
 狙い、通り。
 まるで光に引き寄せられるかのように八十神は甲板に着地し、一直線に姫喬めがけて突っ込んできた。
「来たね八十神ぃ! うちの家宝の力、返せっての!」
「食ったもんは返せん。ついでにそいつも食ってやる」
 獰猛に歯を見せつけ、ガチンと噛み鳴らす八十神。
 その途端鮫型の炎が飛び出し、姫喬めがけて食らいつく。
 姫喬はそれを、刀を打ち付けることで防御した。
「黒人ボクサーは任せた。こっちは手一杯かも!」
「オッケー任せて。足止めは得意分野!」
 イリスはラグビーでいう制止タックルの動きで黒人ボクサーに飛び込んだ。
 腰から下へのタックルで強制的に体勢を崩してマウントをとろう……としたが、まるで木の幹にでも激突したかのようにボクサーの体幹は硬かった。
「むぐっ!? ――なんの!」
 ただでは転ぶまいとボクサーの腰にしがみついたまま足払い。
 てってけ走り出す『人相のない誰か』を転倒させた。
 顔から地面に激突したその誰かはぐちょんと溶解し、灰のような色をした粘液へと変わった。
「思ったより感触気持ち悪ー!」
 などと言いながら、『この二人は私が押さえる』と雪之丞にサインを出すイリス。
 雪之丞はうなずき、そして強く柏手を打った。
「あなたの相手は、拙がいたします」
 その姿勢から素早く抜刀。
 飛来する半透明なクナイを打ち落としていく。
 銀色のボディスーツをまとった女が迫り、顔面めがけた回し蹴りを仕掛けてきた。つま先から露出したナイフには麻痺毒。
「全力でお相手しましょう。こう見えても、多少は憤りを感じておりますので」
 直撃――かに見えて、雪之丞は顔の横にいつのまにかかざしていた手で足をとめ、つま先から露出したナイフは彼女の頬をわずかにかするのみであった。
 その動き。そして毒に対する反応から、女は敏感に雪之丞の性質を悟った。
「あぁら、これは手がかかりそうねぇ」
 くにゃっとした金髪の前髪を指でかきわけ、長いまつげとあつい唇で笑う。
「簡単に壊れないで頂戴ね。わたし、頑丈なおもちゃが好き」
「満足はさせませんよ。不満を抱え、悔しさに唇を噛みながら帰るのです、あなたは」

「そこのボクサーは任せろ! フィーゼ、援護頼む!」
 助走をつけて跳躍し、剣を振り込む風牙。
 斬撃は光となって黒人ボクサーの頬をピッと斬り付けたが、第二の斬撃をたたき込もうとしたその瞬間に飛び込んできた男に斬撃をとめられた。
 亀の甲羅めいた盾によって斬撃がぬるりといなされ、体勢がくずれたところで短い手槍によって膝を刺し突かれる。
「うおっ!?」
 追撃をさけるべく飛び退く風牙。
「ハハ、ハハハ。早い早い。早いなあボク。いやオジョウチャンかなあ。縛ったかみが、カワイイねえ」
 ケタケタと笑う男の様子に、風牙はぞくりと背筋に悪寒をおぼえた。
 なぜなら、男は大きな甲羅盾を前面に押し出したまま自分の身体のほとんどをすっぽりと隠したまま、『盾越に』こちらを把握しているからだ。
 その一方的な視線を感じ、風牙は気持ち悪さに半歩退いた。
「な、なんだこいつ」
「気をとられないで。作戦が崩れるよ」
 フィーゼは船内の様子を今一度確認してみた。
 少年からの銃撃で足止めをくらうエイヴァンと、彼にかばわれながらも船を操作する武器商人。
 武器商人は巧みな操船技術によってラムアタックによる足場の崩れを限界まで抑えてくれていた。
 八十神たちが元の船に戻れないように、ないしは何かしらの仕掛けを使えないように距離をとるのも忘れない。
 一方で千尋は船外に放り出され、黒人ボクサーにはイリスが対応している。立ち回りの美味い彼女は同時に粘液(性別不明)も足止めし、彼らを船の端でせき止めた。
 銀鱗のボディースーツを着た女忍者は雪之丞と斬り合いに。これは雪之丞の仕込みだが、彼女の防御力と特殊抵抗力をぶつけることで女忍者の特技に対抗し浮き駒化させようという動きである。
 風牙は亀甲羅と槍の男に足止めをくらい、ボクサーへの集中攻撃はしづらい状態になった。
 そしてフィーゼは……。
「ワシらの担当はこの嬢ちゃんってぇことでええんかいな」
「心苦しいなー。リンチみたいでかわいそうだなー」
 巨大な蟹。
 そして巨大なホタテ貝が、フィーゼへと迫っていた。
 見上げるほど大きなタカアシガニが、細長い腕をぐわりと広げた。
 蟹といってもはさみ部分は小さく、ハサミというより槍に近い。
 そんな腕をものすごいスピードとパワーでフィーゼめがけて振り込んでくるのだ。
 細長い足によって体長をかさまししていることもあって、基本的に上から目を突かれるというきわめて嫌な攻撃方法である。
 それを、フィーゼは魔力で生成した槍を巧みに振り回すことで防御。
「なんやぁ嬢ちゃん思ったより手堅いやんけ。しっかしワシの堅い甲羅を悪にゃあひと苦ろ――痛ったあ!?」
 フィーゼの槍が蟹の腹を貫通する。
「戦い方くらいちゃんともってるのよ」
「嬢ちゃんどちゃくそつええわ! ホタテェ! 手伝えや!」
「寝てたらだめ?」
「ダメに来まっとるやろ!」
「しかたないにゃあ」
 巨大なホタテ貝がぱかんと開き、中から小柄な少女があくびをしながら現れた。
「かわいそーだけどお姉さん、ぶくぶくの水死体になってね」
 両手をかざす、それだけで、大量の黒い真珠が空中に生まれてはフィーゼへ打ち込まれていく。
 フィーゼはその場から飛び退きながらも、しかし全てをかわすには敵の追い詰め方がうますぎる。
 このままでは、競り負ける。

●うろこ諸島の裏八家紋
 俊敏に動き回る女忍者による死角からの攻撃を、雪之丞は機敏な反応によって防御。鋭く繰り出した刀を、しかし女はぬるりとかわして雪之丞の懐へと潜り込んだ。
 互いに打ち込めない拮抗の間合い。
 どうやら相手も雪之丞を『負けはしないが勝てもしない敵』とみなして封殺する動きにかえたらしい。
「あなたイイわぁ。かわいくて強くて壊れなくて。
 ご褒美にお姉さん、オモシロイ話してあげましょうか」
「……」
 結構です。と喉まででかかった言葉を雪之丞は飲み込んだ。
 これはもしや、情報を引き出すチャンスではないだろうか?
「むかしむかし、八つのおうちがあったのよ。
 燕黒、甲羅戯、貝塚、海老名、鰺ヶ沢、糸魚川、欧鰐、蟹江。八つの貴族が小さな島々を各分野に別れて納めた、通称『八家紋』。海洋王国が国になるまえから、彼らはこの土地で自治を続けていたって話よォ?」
「しかぁし。海洋王国に統合されてから彼らの仕事といったら自治会のおじーちゃんさながらでねぇ、ハハハハ」
 話の続きを奪っていく甲羅盾の男。
 彼はぬちゃぬちゃとしたいやらしい戦い方で風牙にまとわりつき、風牙の戦力をマンツーマンで封じにかかっていた。
 風牙も風牙で、自由にさせると厄介な駒だと認識されたらしい。
 (実際、高反応高火力な風牙には陣形選択によるアドバンテージがあり、敵の死角をうつことが可能であった。敵からしたらブロックや【怒り】付与でねちねちとめておかないと危ない駒である)
「八十神サンはそれが我慢ならなかったんだねぇ。八十神家の有力者を皆殺しにして一族を支配した後は本家である燕黒家と断絶。『遊興』の始まりさぁ。
 八家紋それぞれが持ってた『汚れ仕事担当』の分家をひとつひとつ丁寧に壊していった。時には物理的に。時には精神的に。追い詰められた連中はそりゃあもう愉快にぶっ壊れ……そのたびに見込みのある一人ずつが八十神サンの右腕として残された。あ、これオジサンのことね」
 ニタァと笑って自分を指さす甲羅盾男。
「ボクたちはねぇ、『うろこ諸島裏八家紋』って、昔は呼ばれてたんだよねぇ。それが今の『化骨衆』の幹部ってぇワケ」

 このままではフィーゼから順に撃滅されてしまう。
 エイヴァンはその様子を察して、武器商人に合図を送った。
「やれるか」
「ヒヒ……ご随意に」
 頷く武器商人。
 エイヴァンはかばうのをやめ、銃撃を続ける少年めがけて突撃を開始した。
「今だ、『アレ』をやるぞ!」
 エイヴァンの叫びに、イレギュラーズだけが反応した。
 急カーブをかけ、グンと大きく傾く船。
 それまでどっしり足をつけて戦っていた『化骨衆』幹部たちは咄嗟に姿勢を維持――しようとして失敗した。
「新道の旦那ぁ」
「サンキュー! そら!」
 地面に剣を突き立てて手すりがわりにすると、よろめいた甲羅盾男の足を払って転倒させる。
 ぐおおといって転がっていった彼を――。
「今だ千尋ォ!」
「ハッハァ!!」
 船から転げ落ちた――かに見せかけてギリギリのところにしがみついていた千尋が、転がってきた男を蹴りつけて海へと突き落とした。
「死んだと思ったろ。こういうのは生存フラグっつーんだぜ。覚えときな!」
 船内に復帰してきた千尋。
「――!!」
「あっやば」
 咆哮とともにショルダータックルを仕掛けるエイヴァン。
 少年は防御こそしたものの、バランスを失って船から転げ落ちていく。手すりにぶつかってはね、海へと転落した。
「いい加減に戦ってると思ったら、機転きくじゃん。ローレット」
 転落しながら笑う少年。
 落ちながらも更に続けた銃撃を、割り込んだイリスが盾をフリスビーめいて投げつけることで代行防御。
 更にボクサーと粘液生物を掴んで一緒に海へと転落していく。
「ギギギ!? お、オボレル!」
「ユーはディープシーだろうが! 泳げ泳げ!」
 イリスを掴んでがふっと歯を食いしばるボクサー。
 しかしイリスは水中でぐるんと回転すると、ボクサーにかかと落としをしかけて離脱。
 千尋の投げたロープにつかまって船へと復帰していく。
 その横を、姫喬と八十神はごろごろと転がって転落していった。
「いっひひ。あたしと白波で踊らない?」
「――愉快」
 転落中。空中でにらみ合う二人。
 きしむように笑い、大量の鮫型炎を発射してくる八十神。
 それを切り払って防御する姫喬の頭をつかみ船の壁に叩きつける――その瞬間。
 手すりから身を乗り出したフィーゼが咆穿魔槍を放った。
 黒い槍が八十神の腕を貫き、狙いを強制的にそらさせる。
「く――」
 苦痛。ではない。引きつった笑顔で目を見開く八十神に、姫喬は至近距離からコンパクトに斬撃を打ち込んだ。
 胸を切りつけられ、笑いながら海へ転落していく八十神。
「引き上げだ、『化骨衆』。こいつは楽しくなってきた」
「……」
「また来るぜ。『遊びに』な」
 ロープにつかまり、それを見下ろす姫喬。
 八十神率いる化骨衆たちはそのまま海へと深く潜り、撤退していく。
「終わった?」
「さあ、ね」
 フィーゼにロープをひっぱってもらい、姫喬は息をついた。
(そも今回、アンタ一人で事足りんだ。
 船だっていらない。泳いで燃やすだけですむのに。
 態々部下に自己紹介させつつ寄ってくる、大方これも仕込みなんだろ?)
 泡もたたぬ水面をみて、姫喬は目を細める。
 戦いは、まだまだ、続く。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 当初の作戦どおり、八十神率いる化骨衆は倉庫の襲撃を諦めて撤退していきました。
 作戦成功。皆さんの勝利です。

 尚、今回の戦いのなかで手に入れた手帳から彼ら化骨衆幹部勢の名前が判明しました。
 八十神、スッポン、ホタテ、タイガ、Trachurus、ドレッド、泥泥(でーでー)、タカアシ――というそうです。

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