PandoraPartyProject

シナリオ詳細

アンダー・アンダー・デスマッチ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●地下アイドルの地下デスマッチ
「地下闘技場でデスマッチ? いまから?」
 ふりっふりのアイドルコスチュームを身にまとった炎堂 焔(p3p004727)が、メッセージカードを手になんともいえない表情をした。
 さて、なんでまたこんなハナシになったのか。順を追って説明せねばなるまい。

●USAMI! UASMI!
「みんなー! ウサミだぴょん☆」
 万歳して両膝を曲げ一斉にジャンプするという、訓練されないと膝の皿かちわりそうな空中ポーズをキメるラビット獣種の美少女がいた。
 ウサミ・ラビットイヤー(リングネーム)、通称鎖兎。
 年齢は17才(と■■ヶ月)。
 鉄帝首都でブイブイ言わせるトップアイドル……に、なる予定の者である。
「「イーエーッ!!」」
 木箱を並べて作ったお手製ステージの前には少年少女。それも明らかに貧民層の子供たちと、それに付き添った老人しかいなかった。
 もっと言えばそこはライブステージというよりスラム街の広場であり、もっといえばスラム街そのものであった。
「確かに鉄帝トップアイドルことパルスちゃんとは雲泥の差。しかしワタシは諦めないぴょん!
 なぜならば――」
 遙か天空を指さし、ウサミは叫んだ。
「諦めなければ、夢は叶うから――だ、ぴょん!」

「無理だああああああああああああああああ!!!!」
 ライブ後の酒場。ウサミは床に突っ伏して叫んでいた。
 ウサミミだけが反抗的に逆立って振動している。
「毎日毎日ゲリラライブ! 客は地元の子供とおじーちゃんだけ! ワタシが注目されてんのはもう地下でチェーンデスマッチしてるときだけじゃん!!!!!!」
「ごめんね、たまにナイーブになるんだこの子……」
 焔はオレンジジュースをちびちびやりながら苦笑してみせた。
 今回ローレット・イレギュラーズたちはウサミからの依頼によりアイドルライブの応援と手伝いをしていた。
 細かい説明は省くが、設営とか宣伝とかその他諸々のスタッフ仕事である。
 こうして、ウサミ史上最大規模でライブをやるぞと息巻いたウサミによる、スーパーゲリラライブ(予告つき三日連続ツアー)が行われたのだが……。
「いつもとお客変わらないじゃんんんんんん!!!!!!!!!!
 しかも予告したらゲリラライブじゃないジャンンンンンン!!!!!!!
 ツアーとかいいながらずっとスラム街の公園跡地だしいいいいいいいいいい!!!!」
「ごめんね。ボクもそれは気づいてた……」
「増やすしかないぴょん……こうなったらウサミwithファイヤーシスターズになるしかないぴょん!」
 どこからともなく取り出したアイドルコスチューム。
 焔はそれを見てイヤーな予感がしたが、断れる空気じゃあなかった。

 でもって翌日(自称ツアー二日目)。
「みんなおまたせー! ウサミwithファイヤーシスターズだぴょん☆」
 ウサミと焔と仲間たちは強制的に着せられたアイドルコスチュームで一斉に膝折ジャンプをしていた。
 していた、彼女たちの前には。
 ヒュウ、と風だけが吹いていた。
 膝から落ちるウサミ。
「子供たちすらいないいいいいいいいいいいいい!!!!!」
「ウサミちゃん落ち着いて! 膝! 膝すごいいってる!」
 アイドルウサミもここまでか。
 脳内自叙伝に『完』の文字がつきそうになった、そのとき。
「た、大変ですじゃあああ!!」
 メッセージカードを持ったおじいちゃんが、ぷるぷるしながら走ってきた。
 そう、おまたせしました。
 ここから冒頭につながるのである。

●誘拐とデスマッチ
『拝啓。雨が雪に変わる昨今、お体を冷やしておりませんでしょうか。
 このたび誘拐代行サービスFORE YOUがあなたさまがお連れの児童七名を誘拐したことをお知らせいたします。
 いまより5時間以内に所定の場所にて指定した行動をとらない場合、誘拐したお子様たちを殺害処分いたしますので、くれぐれもこのメッセージカードをお捨てにならないようお気をつけください。
 日時と行動についてはカードの裏をご覧ください。
 サンキュー敬具』

 これ以上無くふざけたメッセージカードを手に、焔とウサミはそっと裏面を見てみた。
 すると、別の筆跡でこのように書かれていた。

『ガキどもは預かった。
 地下闘技場の炎獄ノ間・氷漬ノ間・魔凶ノ間まで来い。
 そこで我々の用意したファイターとデスマッチをしてもらう。
 定員は9人だ。それを下回ったらこの取引はナシだ。
 もし3試合中2試合まで勝てれば、子供たちを返してやろう。
 せいぜいいい武器を装備してくることだな』

「……つまり、子供たちが誘拐されちゃったってコト?」
「は、はい。ワシの家にこれが届いて。とはいえ、家にはワシひとりですし……子供たちはみな孤児です。軍に相談しようにも、スラムの駐在はワシらを相手にしてくれません。どうすればいいか……」
 焔たちが状況に危機感をおぼえた、その横で。
 ウサミはどこからともなく取り出した鎖を腕にぐるぐると巻き付けていた。
「わかった。おじいちゃんは家に帰ってて。いますぐ全員絞め殺してくる」
 ウサミから湧き上がる静かな殺気。
 メッセージカードを焔からひったくると、ウサミは歩き出した。
「地下闘技場のことは詳しいの。それに……アイドルはファンを大事にするものだぴょん?」
「まって」
 止めても無駄だよ、とでも言いそうなウサミの背中に、焔はこう続けた。
「今は、ウサミwithファイヤーシスターズのライブ中でしょ」

●ウサミwithファイヤーシスターズ VS アングラファイターズ
 さあ、ひょんなことから始まった誘拐騒ぎ。
 子供たちを取り戻すには地下闘技場でデスマッチをすればよいというこの一風変わった要求内容。
 不思議なことは多々あれど、誘いに乗らない手はあるまい。
 前代未聞。
 観客七名。
 デスマッチアイドルライブが、いまここに始まろうとしていた。

GMコメント

■■■依頼内容■■■
・成功条件:デスマッチに2戦以上勝利する
・オプションA:アングラファイターズを全員殺害する
・オプションC:ウサミのアイドルライブを成功させる(させたと言い張ってもOK!)
・シークレット:アングラファイターズを半数以上【不殺】攻撃で倒す

 ややメタ情報になりますが、デスマッチに勝利すれば子供たちは無事に返されます。
 なぜ要求がデスマッチなのかについては、ちゃんとした理由があるらしいですが……それは今のところわかっていません。
 皆さん+ウサミはいまから3チームに分かれ、それぞれの部屋にて3体3のデスマッチを行ってもらいます。
 チーム分けは相談によって決め、その際ウサミの配置も決めてください。(誰かがプレイングに全員の配置表を書く必要はありません。判定処理によってちゃんと振り分けが行われます。かぶりが起きた場合、空気を読んであいたところに配置しなおします)

■■■エネミーデータ■■■
 地下闘技場に配置されている敵ファイターはそれぞれ別の依頼人からファイトを依頼された者たちのようです。誘拐の旨を知らされてはいますが、お金のためにやむをえずデスマッチをしているようです。
 以下の情報は地下ファイターであるウサミから提供された情報になります。

●炎獄ノ間
・3ターンに1回魔術トラップが部屋全体に発動します。これは『【炎獄】【災厄】、命中そこそこ、威力小』の全体攻撃に相当します。
 戦う相手は地下闘技場のファイターチーム『ダブルタップス』です。
 全員前衛。攻撃威力の高い短期決戦型のチームで、相手の防御を貫いたり炎系BSの付与でゴリ押しするスタイルが売りだそうです。

●氷漬ノ間
・3ターンに1回魔術トラップが部屋全体に発動します。これは『【氷漬】【災厄】、命中そこそこ、威力小』の全体攻撃に相当します。
 対戦相手はチーム『キャットワン』。
 鉄帝北方部族シルヴァンスの出身である猫獣種シロ、クロ、ブチという三人組です。
 近接ナイフ連続攻撃が強みのシロ。
 二丁拳銃によるオールレンジサポートが得意なクロ。
 高めの特殊抵抗とEXFでタンクをはるブチという連携で攻めてきます。

●魔凶ノ間
・3ターンに1回魔術トラップが部屋全体に発動します。これは『【魔凶】【災厄】、命中そこそこ、威力小』の全体攻撃に相当します。
 対戦相手はチーム『クアッドコア』。
 白い学ランがチームコスチュームの鉄帝ギャングです。『女を傷つけない』という信条のもとスラムに流れてきた女性たちを保護するナワバリをもっていますが、ナワバリを維持するための資金が枯渇しやむなく今回のファイトを受諾したようです。
 殴る蹴るの格闘で戦いますが、動きがとにかくアクロバティックで俊敏です。
 CTとFBがそれぞれ高いというステータスが共通しており、このフィールドでは不利なはずですが……?

■■■オマケ解説■■■
・地下闘技場
 鉄帝首都のスラム街には地下闘技場があり、非合法な賭け試合が行われています。
 バトルスペースはいくつにも分かれておりなかには居住可能なスペースまであるためスラム民の一部は地下に住んでいたりします。
 ウサミもそのひとりであり、地下闘技場で主にチェーンデスマッチをして人気やお金を稼いでいるようです。
 なお、地下闘技場がいつからあったのかは知りません。

  • アンダー・アンダー・デスマッチ完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年12月22日 22時25分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

セララ(p3p000273)
魔法騎士
エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
愛娘
黎明院・ゼフィラ(p3p002101)
夜明け前の風
鬼桜 雪之丞(p3p002312)
白秘夜叉
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
すずな(p3p005307)
信ず刄
ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)
奈落の虹
ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)
私の航海誌

リプレイ

●アイドルはキープスマイリング
「今は、ウサミwithファイヤーシスターズのライブ中でしょ」
 肩を叩かれたウサミは、その言葉に振り返った。
「でも……」
「犯人は、誘拐代行と、名乗っている。用意された相手を殺しても、実行犯、依頼人の情報は、得られん、ぞ」
 黒いふりふりレースのアイドル衣装に身を包んだ『深海の金魚』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)が腕組み姿勢で頷いた。
「もしかして、一緒に行くつもりなんですか?」
「無論。それ、に……口調を忘れている。こうだ」
 お手本を見せろといって『未知の語り部』ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)を引っ張り出す。
 白いドレスに金色のリボンでキャピキャピに仕上げた美少女(?)アイドルウィルアム子ちゃんがそこにはいた。
 稼働するウサミミ。
「子供達を人質にしてマッチングとは何たる卑劣!
 ヒールらしいと言えばそれまでだけど、月が許しても私達が絶許!!
 ウサミwithファイヤーシスターズがお仕置きだ――ピョン!!!」
 両手を招き猫みたくして片足をあげるウィリアム。
「……こんな感じでいいの?」
「ぐっ」
 頭髪で大きなサムズアップを作るエクスマリア。
「みんな……」
 白と赤の(割と自前の)アイドルコスチュームで横に並ぶ『魔法騎士』セララ(p3p000273)。稼働するウサミミ。
「たしかに! 子供達を人質に取るなんて許せないね。
 この試合に勝利して子供達を絶対取り返さなきゃ!」
 真っ赤なアイドルコスチュームで頷きながらウサミの前へと立ってみせる『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)。ファイヤーパターンの模様がはいったウサミミが(あえて本来の耳といっしょに)ぴこぴこ稼働する。
「何の狙いがあってこんなことをさせてるのかわからないけど……。
 ボクも子供を攫うなんて許せないよ! 早く子供たちを助けてあげよう!」
 ね、みんなも! と振り返ると、同じようにアイドル衣装をまとった仲間たちがステージを手早く片付けてから駆けつけた。
 黒に金のコスチュームでゴーグルをあげる『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)。稼働するウサミミ。
「どうやら対戦相手にはシルヴァンスの民もいるみたいだしね。俄然興味が出てきたよ」
「この寒い鉄帝でこんな服着てきたんですからぴょん! 一暴れしないと収まらないですよねぴょん!」
 口調をぶっ壊して焦げ茶と白のシックなアイドル衣装でポーズをとってみる『虹を齧って歩こう』ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)。稼働するウサミミ。
 和風のアイドルコスチュームを着た『玲瓏の壁』鬼桜 雪之丞(p3p002312)と『妹弟子』すずな(p3p005307)はそれぞれ頷いて、荷馬車から自分の刀を取り出した。
「なにやら事情がありそうですが……」
「ええ。人質をとってのデスマッチとはやり口が気に入りませんが、要は勝てばいいでのす」
 刀の柄をぎゅっと握り、同時に振りかえる雪之丞とすずな。稼働するウサミミ。
「よ……よっしゃあ! わかりました!」
 ウサミはチェーンでぎっちり固定した拳を握りしめると、天空めがけて突き上げた。
「ウサミwithファイヤーシスターズ!
 地下闘技場でゲリラライブだ――ぴょん!」

 ウサミミをぴこぴこさせながら自分のパスキーを堅い防護扉に読み込ませるウサミ。ぶしゅうと音を立てて開く扉の向こうへとイレギュラーズを案内した。
 声のしわがれた老婆が椅子に座り、それぞれのバトルフィールドへの通行キーを渡してきた。
「それじゃあ、また後でね」
 セララやエクスマリアたちはそれぞれキーを受け取り、別々の部屋へと入っていく。
 焔とウサミもまたキーを受け取り……。
「ウサミwithファイヤーシスターズの素敵なライブを皆に見せてあげようよ!」
「……ん」
 拳をぶつけあわせ、部屋へと入っていく。

●魔凶ノ間 VS『クアッドコア』
 白い学ランの三人組が、部屋に入ってきたセララたちに顔をしかめた。
「チッ……やっぱりそういうことかよ」
 彼らの表情が意味するところを、ウサミ(アイドルフォーム)からの情報で知っていたセララはぴんと手を上げて見せた。
「じゃあ、この試合中だけボクは男の娘ってことでどうかな? これで問題なし!」
「あーなるほど問題ないすね」
 アフロの男がぽんと手を叩いた途端、サングラスの男が彼の後頭部をはたいた。
「ないわけあるか。クアッドコアなめんな」
「性別はお気になさらず。お互い、譲れぬ一線があるなら、後は勝者こそが全てを得るのみです」
「…………」
 そう言って自らの刀を半分ほど抜く雪之丞。
 いわんとする意味を察したのだろうか、顔が半分隠れるほど髪の長い男が、ズボンのポケットに手を入れたままわずかに雰囲気を変えた。
 だがそれだけで、雪之丞やなずなたちには彼の発する空気が強烈な殺意のそれだとわかる。
 『サングラス』が半歩前に出て、両腕を広げるようにして構えて見せた。
「まあ、そういうこった。悪いが遠慮はできねえ。……殺す」
 ズン、という奇妙な振動音とともに空気が握る感覚。
 まるでアルコールで酔っ払ったかのように視界や平衡感覚がぼやけはじめる。
「てやー! セララスペシャル!」
 セララは回転しながら攻撃を繰り出し、サングラスはそれを跳び蹴りによって迎撃した。
 その横を抜けて『アフロ』へと斬りかかるすずな。
 動きには一切の迷いがなく、このフィールド全体にふりかかる【魔凶】の力をはねのけているように見えた。
(動きが捉えにくい方々ですが、望む所です。
 私自身、動き回ることを主体とした剣ですので!
 飛んだり跳ねたりは得手とする所なのですよ……!)
 乱暴に動き回るアフロへと素早い居合い切りを繰り出していく。
 アフロはそれを、紙一重で回避しながら懐へと潜り込んでくる。
 強烈なショルダータックルによって吹き飛ばされるすずな。しかし空中で身を転じ、すばやく反撃に出た。
「やり辛くはあります。が、多少の失敗程度、ライブには付き物でしょう!」
 一方で高速の踏み込みを見せる雪之丞。
 『ロン毛』の男は両手をポケットに入れたまま雪之丞へ正面から突撃してくる。
 防御のブレを計算に入れ、雪之丞は相手の攻撃を読んで刀をかざした。
 が、かざしたラインをわずかにそれる形でロン毛のキックが打ち込まれる。
「――ッ!!」
 雪之丞の回避や防御を抜いて攻撃を打ち込むのは相当に難しい。いや、理論上はほぼ不可能といってもいいくらいだ。
 つまり……。
「セララ様、すずな様、お気をつけて。彼らはクリティカル特化型です」
「おっとお?」
 攻撃を打ち返され、靴から広がる魔法の翼で制動をかけたセララ。
 このタイプとの戦闘経験はそう少なくはないが、『今回の目標』に対してはキツい難点があった。
 つまりは基本成功条件の更に上。『全員不殺勝利』である。
 攻撃が通るか通らないかが極めて見極めづらいために、『トドメの一撃だけを不殺攻撃に限定する』といったギリギリが狙いづらい。更に言うなら相手のHP減少状態を正しく目測できるわけではないので、かなり初期の段階から不殺攻撃を使い続ける必要性が出ててきた。
「けど、そういうことなら……!」
 セララは武装をフォトンセララソードにチェンジ。
 サングラスへと斬りかかる。
 一方で雪之丞も刀を返し、峰打ち狙いでロン毛へと斬りかかった。
「強力な不殺攻撃手段を持っていて正解でしたね」
 すずなもまた峰打ちねらいで刀を返し、アフロへと突撃。
 彼らは激しくぶつかり合い、そして……。
「こちらも、子供たちの無事が掛かっていますから、負けるわけには行きません!」
 雪之丞の叫びに、ロン毛がびくりと動揺した様子を見せた。

●氷漬ノ間 VS『キャットワン』
「さっむ~~い! アイドル衣装で来る部屋じゃないっすよこれ!」
 その場で激しくじたばたして身体を温めるウィズィニャラァム。
 その左右でエクスマリアとゼフィラはそれぞれ妙に暖かそうにしていた。
「なんで二人とも余裕!?」
「毛が暖かい」
「局地耐性の魔石があるからかな」
 なにそれいいな入れてくれないかな、という顔を一瞬だけしたが、すぐにウィズィニャラァムは気分を元に戻した。
 小柄な猫獣種三人組、キャットワンがそれぞれの武器を構え始めたがゆえである。
「ニャア? なんかアイツ見たことないか?」
「さぁ? 覚えてねえな」
「有名人がこんなとこ来るかよ」
 小声で語り合う三人。
 一方でゼフィラは弓の狙いをつけ、クロめがけてナイトメアバレットの連射を開始した。
「キミには聞きたいこともあるんでね。少し付き合ってもらうよ」
「ニャア!?」
 射撃をかわしながら二丁拳銃での反撃を試みるクロ。
 しかし部屋に走った激しい冷気によって身体の動きが鈍り、クロもゼフィラも互いの射撃が深く刺さるようになっていた。
「火力を重ねさせんな」
「わかってる、二人で抑えるぞ」
 突撃をかけてくるシロとブチ。
 エクスマリアは身を乗り出すと、ウィズィニャラァムに合図を出した。
「凍えるような世界でも、私達なら、加速していける!‪──‬いくよ、親友(あいぼう)!」
「ああ。たかが凍れる世界程度、マリア達には、追いつけん。行くぞ、親友(あいぼう)」
 アサルトグローブで殴りかかるブチを、大量に分裂した頭髪の腕によって捕まえにかかるエクスマリア。
 その一方で、猛烈な速度で走るシロがウィズィニャラァムへナイフの連続攻撃を繰り出していく。
「ナイフで連続攻撃ですか! 親近感湧くなぁ!」
 背負っていた巨大なテーブルナイフを担ぎ上げ、シロめがけて叩きつけるウィズィニャラァム。
「ぎゃあ!? そんなナイフがあるか! 反則だ反則ー!」
 ぴょんと飛び退き距離をとろうとするも『次はおまえだ』とばかりに頭髪を伸ばして捕まえようと突っ込んでくるエクスマリア。
 ブチはなんとか動きを制限させようとしがみついて引きずられていた。
「うあー! 逃げろシロー! こいつ『金獅子』だ!」
「早く言えバーロー!?」
 戦場がぐるぐるとかき混ぜられるかのように動いていく。
 ウィズィニャラァムは絶えずナイフの連続攻撃を仕掛けてくるシロを防御しながら、彼にだけ聞こえる声でささやいた。
「死んだふりしてて。じゃないと殺さなきゃいけなくなる」
「ニャア!?」
 一瞬驚いたその隙をつくように、ウィズィニャラァムが巨大テーブルナイフをシロめがけて投げつける。
 押し潰されるようにして倒れたシロ。一方ではエクスマリアはブチの対応に手を焼いていた。
 というのも、なんとか押さえつけて組技で倒そうにもブチがしぶとく立ち上がるせいで決着がつかないのである。
「頼む親友(あいぼう)」
「イエス親友(あいぼう)!」
 どりゃーと言ってナイフを(シロごと)ぶん投げるウィズィニャラァム。
 ブチは飛んできたナイフ(とシロ)に『ぶもっふ!?』といって押しつぶされた。
「おっと、そっちは決着がついたかな? 悪いけどこっちも頼めるかな」
 ゼフィラはダイブダメージがかさんだようで、自己回復を連射しながらクロの銃撃に耐えていた。
 一方のクロは……。
「あっこれ死ぬやつだ」
「クロ、クロ、死んだふりしとけ」
「こいつら殺す気ねえ」
「まじか」
 うつ伏せでナイフに潰されたシロとブチが小声で呼びかけてきたもんだから……。
 ブチはエクスマリアのジャイアントハンドクラッシュをあえてわざと受けることにした。

●炎獄ノ間 VS『ダブルタップス』
「兄者ぁ、拙者らババひいてへん?」
「ゆうなや弟者。いま現実逃避しとるとこやん」
 ゴーグルをつけた二人組。精霊種らしき風貌の彼らの前に、焔が腕組みをして立っていた。
「ウサミちゃん、ウィリアム子ちゃん!」
「だいじょーぶ!」
「わかってるピョン☆(裏声)」
 焔は自らに炎を湧き上がらせ、ウィリアムは自らの周囲に濃い霧のような耐火空間を展開する。
 ウサミは無防備オブ無防備だったが、チェーンを巻いた腕を鈍器のようにぶんぶんと振っている。
「なにが悲しゅうてアイドル斬らなあかんねん。弟者おまえか撃てや」
「いやや。兄者がやれや」
「俺は美少女斬ったらアカン顔やろ」
 どうやら二人はモメているらしかったが……。
「『ダブルタップス』、舐めるなピョン。『鎖兎』のウサミ・ラビットイヤーを知らないとは言わせないピョンよ」
 声のトーンだけに殺意をのせぴょんぴょんした口調を維持するという高度なトークをやってのけるウサミ。ここはさすが地下ファイターであった。
 ので。焔たちもあえてその流儀に乗っかってみる。
「ボクたちウサミwithファイヤーシスターズの炎で、骨の髄まで焼き尽くしてあげるぴょん!」
「塵も残さないぴょん!(裏声) ――轟天鎚!」
 軽く素のトーンで轟天鎚を発射するウィリアム。
 生成された破城杭がダブルタップスめがけて打ち込まれるが、ダブルタップス兄は腰についた鞘だけの刀を構えた。
「閃空――」
 次の瞬間。咄嗟に飛んでウィリアムをかばうウサミ。
 防御にかざした鎖がいきなり切断され、パーツが破片があちこちに散らばっていく。
 と同時に、弟のほうがライフルを取り出して射撃。
 爆発的な炎が光の線を描いてウィリアムに飛んでいく。
 ウサミはそれをさらなるガードで受け止めると……。
「ウサミちゃん!?」
「いいから速攻! ぴょん!」
 歯を食いしばって耐えるウサミをあえて無視し、焔の槍がダブルタップス兄へと突き込まれる。
 ギン、と炎の刀と燃えさかる槍がぶつかり、青い火花が散っていく。
 その一度で、武器をぶつけた瞬間に、焔は相手の力量が相当高いところにあることを理解した。
 ごうごうと炎が部屋中をなめるなか、焔は深く息を吸い込んでさらなる連続攻撃を繰り出していく。焔も相手も、炎のBSが通用しないタイプのようだ。
 相手を打ち崩すには相性が悪い。焔だけでは攻め手に欠ける。ゆえにここは……。
「連携を意識するんだ!(地声) ピョン!(思い出した裏声)」
 ウィリアムは大技の轟天鎚を連発。
 そんな彼を集中的に狙うダブルタップスと、ウィリアムをかばおうとするウサミ。
「やっぱり、コストを犠牲にして倒せる敵じゃないぴょんよ。ここは……」
「諦めちゃだめ!」
 ウィリアムの砲撃に兄がよろめいた所を、焔の槍が強烈に打ち付ける。
 と同時に、ウサミとウィリアムが弟のビーム砲撃によって吹き飛んだ。
 ぼう、と部屋に炎が吹き上がる。
 判断は一瞬。
 焔は攻撃直後に隙のできた弟に槍を繰り出――さずに、倒れた兄をかばって覆い被さった。
「なんやて!?」
 弟の判断は速かった。
 焔を打ち抜――かずに、倒れたウサミをかばってトラップの炎に立ち塞がる。
 ウィリアムがうつ伏せ姿勢から威嚇術を放ち、弟の側頭部を衝撃だけが打ち抜いていく。

●ゲリラライブ3日目
 全身傷だらけ、血だらけすすだらけのアイドルコスチュームの九人組が、スラムの広場に整列していた。
「わたしたち!」
「「ウサミwithファイヤーシスターズです!」」
 一斉にアイドルジャンプをキメる九人。
 子供たちと老人たち、そして白ランのギャングや猫獣種、ゴーグルをした炎の兄弟たちがウサミミ型サイリウムを振り上げる。
「「ウーサミー!!」」

 試合後、セララが無事に浚われた子供たちを発見。保護した。
 彼らを誘拐したらしい人物はすっかりと姿を消し、どうやら戦わせること自体が彼らの目的であり、その後のリスクをさけるため先に撤収していたものと思われた。
 ダブルタップス、クアッドコア、キャットワンのチームも同じように誘拐や借金を理由にデスマッチを要求されたクチらしく、同じように借用書その他諸々を取り返すことに成功した。
 ……と、いう話はここまでにしよう。
 いまはひとまず。
「「ウーーーーサミーーーーーー!!」」

成否

成功

MVP

ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)
私の航海誌

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete!
 ――perfect!

 ――シークレットフラグの発生を確認
 ――シルヴァンスルートが解放されました
 ――オールドテクルートが解放されました
 ――スラムギャング裏ルートが解放されました

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