PandoraPartyProject

シナリオ詳細

月に映る恐怖

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●その月は震えて
 闇が広がる無限の空。そこにゆらりと浮かぶのは銀に光る三日月。深い森の下からふと見上げれば、吸い込まれるような錯覚に陥り……

「へ……あ、ぇ……っ」
 月を見てしまった彼女はカタカタと震え出した。彼女にとってこの世で一番恐怖を抱くそれは彼女にそろりと近づく。
「来ないで……っ、お願い……来ないで……っ!」
 恐怖で涙が込上がる。彼女が恐れるのは虫。中でも苦手とする黒くテカテカとした動きが気持ちの悪いアレである。
 しかも、だ。口にするのも恐ろしいソレは彼女の身長をゆうに超え、二メートルの大きさにまでなっていた。……恐怖を煽る演出とでも言うのだろうか。
「おお、お願い……ほ、ほんとに無理……、こんな、こんな大きいの……っ、ただでさえ通常サイズのでさえ無理なのに……っ!!」
 彼女はゆっくりと後退る。しかしソレもその動きに合わせて彼女に迫る。まるで弄ばれているかのようで、彼女はその恐怖のあまりにどうしようもなく涙が溢れる。
「来ないでって、言ってるのに……!! なんで、なんで来るのよぉっ!! ほんと……っ、ほんとに、やめて……っ」
 喚くように叫ぶけれどそれの動きは止まらず言葉に詰まる。そもそも私らどうしてこんな目にあっているのだと、理不尽すら感じてきた。
「もう嫌……いやいやいや!!!!離れなさい……これ以上……これ以上近づいたら……っ、私……っ!!」
 ここにいつも使ってる殺虫薬があればまた違ったのだろうかと思う彼女とソレの距離はもう数センチ。もう、もうダメだ……諦めた彼女は意識を手放したいと力を抜いて……

「──ハッ!!!!」
 そこはもう元の森の中に戻っていた。
 あまりの恐怖に彼女はカタカタと震えが止まらない。先程まで流していた涙も全部本物で、最後の最後に触れられた感触すら、本物に思えて……酷く吐き気がした。


 ここは複数の月がある世界『常世の月』。
 無限に広がる闇の空と森。けれども色も形も様々な月がそれぞれぼんやりと浮かんでいる。
 その中でも『恐れ月』は見つめた瞬間別空間に飛ばされるらしい。そして月を見た者は口々に

「今度は恐怖体験ですかぁ〜、なかなかに興味深いですねぇ」
 相も変わらず他人事のようにのんびりとした口調でこの境界案内人はくすくすと笑う。

「まぁ幻影であろうと嫌なものは嫌でしょうからね。これを機にトラウマから脱却する方も入れば、その逆も有り得ましょうが。……一先ず今回もご調査お願い致しますねぇ」
 今回もこの境界案内人はおかしそうにあなた達にそう告げた。

NMコメント

月熾と言います。
六作目のライブノベルはシリアスに返って参りました。
恐怖体験であります。

シリアスで心情を強めとした内容となりますが
どうぞよろしくお願い致します。

●依頼内容
『恐れ月』の光の調査
成功条件は恐れ月の光による恐怖を経験することです。

●詳細
この月を見つめた瞬間別空間に飛ばされ
あなたは恐怖を経験します。
それはちょっとした恐怖でも、トラウマ級の恐怖も可能です。

書いて頂きたい事は
・時間と場所等
・どんな恐怖か
・それに対してのあなたはどんな反応を示すか
※恐怖対象が誰かの場合は名前を出さずそれっぽく描写します。

を、最低限書いてください。

●世界観
夜しかない空に様々な月が浮かぶ闇の世界
地上では無限とも呼ばれる森が広がっています。
『恐れ月』の他にも様々な月があるようです。

●サンプルプレイング
いつどこ】夜の森の中
恐怖】
クマに追いかけられる
反応】
なんで、なんでこんなところにクマなんているんだ?!
あいつに見つかったりしたら……親父の二の前だ。
早く隠れてやり過ごさねぇと……くそ!
親父みたいに……襲われちまう!!

それではご参加、お待ちしております。

  • 月に映る恐怖完了
  • NM名月熾
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2019年12月16日 22時10分
  • 参加人数4/4人
  • 相談3日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)
無敵鉄板暴牛
アウローラ=エレットローネ(p3p007207)
電子の海の精霊
メリー・フローラ・アベル(p3p007440)
虚無堕ち魔法少女
ゼファー(p3p007625)
祝福の風

リプレイ

●恐怖は影にひっそりと
 常世の月の森を四人の影が揺れている。
「常世の月は、いいこともわるいことも容赦ないって違うお月さまも経験したから知っているけれど、恐れ月……恐怖体験を見せてくれるお月さまかあ……死ぬことよりも怖いことって、あるのかな?」
 『無敵鉄板暴牛』リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)は平気平気と呟きながらもその武器を握りしめる力は強めていて。
「前にも似た様な事やったなー。その時は戦う事になったんだけど……今回はどうなるんだろう……」
 『電子の海の精霊』アウローラ=エレットローネ(p3p007207)はうーんと考えつつも、きっとなるようになるよね!と比較的ポジティブな様子にも見える。
「混沌に来てから数え切れないほど怖い思いをしているけど……今度はどんな恐怖かしら……」
 『躾のなってないワガママ娘』メリー・フローラ・アベル(p3p007440)は少し不安そうな様子で。
「まぁ本来、夜の森なんて人の世、人の理の外側……人が支配する世と違って、人には決して優しいものではないでしょう。夜闇と木々に紛れ潜み、時に跋扈するのは人外のもの。ええ、ええ。そんなとこに踏み入れば心細さしかありませんわ?」
 その上、地を優しく照らしてくれる筈の月までもが敵になると言うのだから……嗚呼、此の世界は何とも残酷で恐ろしいものかしら!ゼファー(p3p007625)はそう語るように。
 それぞれ思いを抱きながら別行動へ移る。月はゆらりと揺らめいていた。




 静かな森を一人で歩くのはリュカシス。
(あんなことを言っていたボクですが……本当はおばけがめちゃくちゃ怖いのデス)
 放課後のだれもいない学校……真夜中の真っ暗な道……いつもとちがう、不気味な違和感……強敵を前にした時とは違う、得体のしれない確かな嫌悪。リュカシスは想像しただけでぶるりと震える。
(……かっこわるいからと、友達にも家族にも秘密にしているけれど……そういったものが、何より何より怖いのデス)
 そう不安げに森を進むリュカシスはふと月を見上げて瞬きをする。すると次の瞬間には景色は変わっていた。
「ここは……」
 見覚えがある。そこにあったのは嘗て彼が通っていた軍学校。夕暮れ時の為なのかそこに人の気配は感じられず、ただただ静寂が広がる。不気味な雰囲気にリュカシスは嫌な雰囲気を感じ始める。
「ボクはついさっきまで友達と一緒にいたはずなのに……え、え。あれ。どこいったの? みんなー! びっくりさせて面白がろうだなんて、意地が悪いぞ! 今なら怒らないから! ほんとだよ! 出ておいで!」
 この雰囲気はダメだ。とても、とても苦手なものだ。そう自分の声で必死にこの恐怖を拭い去ろうとするが
「……ん? あれ、なあに。こっちに来る。来る。え、早い。やだやだ、あんなの無理だよ!! こっち来るな!!!!」
 彼の目に映ってしまったのはひとではない、生きているのかもわからない……ただ、それに触れられたらいけない、と感じる。得体のしれない『なにか』。それはリュカシスに気づいた瞬時に彼を追いかけ回す。彼はそれから逃れようと瞬時に曲がりすぐさま空き教室へ逃げ込んだ。
 それはまだ入ってくる様子もなく、足音も止んでいた。
「ハアハア。逃げ切れたかな。ここまで来れば大丈夫だろ」
 リュカシスは安堵したが
「……え」
 それは教室の方へ振り返った瞬間彼の目いっぱいに映り込み……リュカシスは意識を手放した。




 暗黒の夜にきらきらと光る星。その下には自分の姿がはっきりとわかる……まるで鏡のような綺麗な泉があって。アウローラはそんな場所へ移動したようだ。
 そこへ一つの影が忍び寄る。
「また、魔種のアウローラちゃん……!」
 それは自身の……嫉妬の化身へと堕ちた反転の姿。
「……、……っ、!」
「アウローラちゃんの知らない事を知ってるけど……それがどんな内容だったとしてもアウローラちゃんにはやりたい事がいっぱいあるの! だから……邪魔しないでよ!!」
 アウローラにのみ聞こえる声で魔種は囁くが、アウローラは負けじと反撃を始める。彼女は感情を乗せて全力で歌った。 魔種はその歌を聴き入って動きを止めるが精神を吸収されつつもまた彼女に迫っていく。
「っ、つ、潰れちゃえー!」
 魔種の様子に狼狽えそうになりつつも地面から巨大な土塊の拳を生やし、それを殴りつけてみる。すると魔種は漸く攻撃を受けたような反応を見せる。
「ア、アウローラちゃんは……アウローラちゃんはこんな恐怖に負けないんだからっ!」
 そう言い放ちながらアウローラは攻撃の手を緩めずに、魔種が消えゆくまで攻めていった。
「も、もう……大丈夫……?」
 無闇矢鱈に攻めたわりには不安げな声を零して、アウローラは魔種の姿を確認する。……けれど、魔種の姿はもう塵一つすら消え去っていた。
「あ……」
 同時に、彼女は常世の月の森へ帰っていた。アウローラは安堵の為かへなへなとその場に崩れ落ちたけれど
「アウローラちゃん……魔種に、勝った……よね?」
 少し乱暴な方法だったかもしれないけれど、きっと勝てたのだろう。今はそう思いこの恐怖を誤魔化していたい。アウローラは魔種である自分になんてもう二度と会いたくない……そう思いながら境界案内人の元へ向かった。




 よく晴れた日の昼頃、どこかの山脈。
 見渡せる範囲にはメリー以外の生命体が見当たらない。
「ここはどこかしら? 以前来たような気もするわ。山の中みたいだけど、全然生き物が……居た!」
 見覚えがあるはずなのに思い出せないのは何故だろうか。疑問に思いながら歩いてみればメリーはそれを見つけた。
「岩かと思ったら生き物だったわ。眠ってるみたい。でも、何の種族かしら? 獣種にしては大きいし、なんとなくウォーカーや魔種とも違う気がするわ。……とりあえず、起こしても平気かどうかエネミースキャンで確かめてみましょう」
 メリーは何気なくただ念の為とそうスキャンを試みた。その瞬間、人形のように硬直、暫くしてからそろりそろりと忍び足でその場を離れた。
(走って逃げたいけど、音を立てちゃいけないわ。立ち止まってもダメ)
 普段の明るさからは一転、彼女は酷く顔色が青く酷く震えが止まらなくて。
(戦う? ありえない! たとえわたしが百人居ても、千人……いえ、どれだけ居ても皆殺しにされるわ。一生勝てない……わたしが混沌でどれだけ修行しても、あれには一生勝てない)
 汗が滝みたいに流れて止まらない。下半身は別の液体で濡れてるけど、汚いとか恥ずかしいなんて考える余裕無いわ。「死」しか頭に浮かばない。
 彼女がふと振り返ると、背後の生き物がピクリと動いたような気がし、恐怖に耐えかねて全速力で逃走する。早く早くここから逃げなくては。
 迫り来るその死にもう後ろを振り向く余裕もない。今どのくらい離れていて、どのくらい追われているのかすら確認出来ずまた恐怖が募っていく。追いつかれたら終わりと知っているから、逃げる速度すら下げたくない。
 メリーは目尻に涙を浮かべながら瞬きをした。

「あ……も、り……」
 彼女は森へ帰ることが出来た。
「……思い出した。ここがどこだったのか。……あの生き物が何の種族だったのかをね」
 恐怖の震えはまだ微かに残っていて




 鉛色の空の下……嘗て、人と人とが争い、多くの血が流れた場所。名も無き人々が、幾重にも重なり朽ち去った無念の地。
 ゼファーが次に目を開けた際に広がっていた光景だった。
「これは……」
 鼻を突く腐敗臭、朽ち果て崩れた肉体、光を失った双眸。嘗て人であった者達の群れ。
 それは生きている者、温もりを持つ者、未来のある者……彼らが失ったものをもつ者であるのならすべて、すべてを憎む。悍ましくも悲しいそれらの存在は目に、心に恐怖と悲愴を齎すゼファー。
「嗚呼、あの頃の私であったなら……」
 屹度屹度、怖くて蹲ってしまっていたのでしょう。泣き叫んでいたのでしょう。…大きなあの手に、縋っていたのでしょう。
 だんだんとそれの数が増えていく光景を見ながら、彼女は手に持っている槍を握る手に力を込める。
「でもあの人は、あの逞しい背中の老人はもう傍には居ない。そして私も、もうあの頃の私じゃない」
 だから、お生憎様。ゼファーはそうふふ、と笑った。
「貴方達はぜーんぶ、とっくに過去の光景なのよ。私にとっちゃね。もう、何一つ怖い事なんてありはしませんわ?」
 それでもヤるって言うんなら……彼女はそう瞬時に槍を構え真剣な眼差しに変わる。
「『今度は』私の槍が貴方達を貫くまでよ」
 その蠢くそれにゼファーは向かい撃つべく、持っていた槍を閃光の如く前へ突き出す。強い意志の元、次々に消え失せていく恐怖。恐怖が消えていく度に鈍色の空は段々と青を取り戻していった。それは彼女の『青』に染っていくようで
 最終的に美しく現れた空の下、それはもう既にすべて消え失せていた。
「……昔のこととは言え、あまり気分が良くはないわねえ……自分の恥部を晒した様な恥ずかしさっていうかぁ…はぁ」
 疲れたように気まずげにゼファーはため息をついて、気づいた時には森へと帰っていた。




 それぞれ思いを胸に四人は境界案内人の元へ戻る。
「あらあら、皆様お揃いで……どうでしたか? と聞くのも野暮でしょうか? 皆様の顔色を見れば恐れ月がどうだったことくらい、多少は察することは出来ます、ええ」
 境界案内人は最初の時と変わらぬ様子でくすくすた笑いながら、しかしスッと優しげに微笑む。
「まぁ一先ずは休息をとって頂いて。それから報告お待ちしてます……皆様お疲れ様でした」
 そう穏やかな口調で四人を迎え入れた。

 『恐れ月』は今日もゆらりと。それは時に震りと映ろう。



 ──その月は震えて
あなたの胸の中であなたの心の恐怖を揺らし続けている──

成否

成功

状態異常

なし

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