PandoraPartyProject

シナリオ詳細

イーゼラー教団の暗躍

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

 《教皇(ハイエロファント)》シギネア・ウガラティアを教祖とし、日々、神イーゼラーへと祈りを捧げ、時に魂を供物として捧げることを是とした、危険思想の集団と言えた。
 ヴェルフェゴアの一連の殺害事件は、当然教義に則った行動であり、ヴェルフェゴアにとっては日常に過ぎない。彼女を始め、イーゼラー教団の教義を心酔する教団員は、自らの手による殺害行為を正しきものと考え、善行であると考えている。
 だが、当然一般市民の民心は真逆だ。
 幻想国内で起こり続ける連続殺人事件に、多くの民は不安に駆られ、領主へと対策を急がせた。
 ヴェルフェゴアが主に活動していた幻想東部のフォルクス領の領主、フォルクス・フェン・ステーカー伯爵は正義感に溢れる人物である。
 民の請願に対し、即座に行動を移した。
 フォルクス伯は領地に駐屯する兵士、警備兵の実力をよく理解していた。そして連続殺害事件の犯人は、それら兵士達の実力を十分以上に上回るものとすぐに気づいた。

 ――どんな手段を持ってしても、この事件の犯人を捕まえる。

 義憤に駆られたフォルクス伯爵が、ローレットへとこの事件の犯人捜しを依頼するまでに時間は掛からなかった。


「以上が現状の説明となります。神イーゼラーを否定する者によって敬虔な信徒である《月》の立場が危ぶまれています。
 彼女にはこれからも我が教団――いえ、イーゼラー神へと尽くして頂きたいと考えています。
 現状を打開するには貴方の力を借りるのが適切と思い、頼らせて頂くことに致しました」
 《教皇》シギネアは温和に微笑みながら、対面に座る男――《世界(ザ・ワールド)》アートルム・モリオンにそう告げた。
「話は了解したよ。すぐに手を打とう。
 幻想国内にもコネクションは伸びているしね、そう難しくない仕事だよ。プランとしては幾つかあるけれど……うん、イーゼラーの教義を否定するような穢れた魂は、供物として捧げるのが一番じゃないかな」
 アートルムの言葉に、シギネアは満足そうに頷いた。
「では、こちらからも手を貸しましょう。《月》はもちろん、《節制(テンパランス) 》、《戦車(チャリオット)》、《審判(ジャッジメント)》、《力(ストレングス)》、《女教皇》、《皇帝(エンペラー)》それに宣教師であるアンゼリカに手伝ってもらうことにしましょう」
「十分すぎる布陣だね。それじゃ、上手くいったらまた連絡するよ」
「ええ、お待ちしています」

 ――イーゼラーのご加護を。

 その日より、イーゼラー教団の暗躍がはじまった。


 工作員であるアートルムの手腕は見事なものだった。
 あらゆる証拠がすり替えられ、証言すらも覆った。連続殺人事件の手がかりは、追えば追うほどその犯人像を浮かび上がらせる。
 小説の中の名探偵であれば、気づくことができたかもしれない。
 しかし、調査を行ったイレギュラーズは名探偵ではない。行き着いた結論に調査を担当したイレギュラーズはこう報告した。

 ――犯人は、フォルクス・フェン・ステーカー伯爵であると。

 調査を担当したイレギュラーズはハイ・ルールに抵触していない。全力の調査結果がこの結果だったのだ。
 これはアートルムの工作が万全だった証左に他ならない。
 調査結果を聞いたフォルクス伯は、怒りとともに困惑の表情を浮かべた。
 ローレットの活躍、そしてハイルールの存在を知っているフォルクス伯はイレギュラーズの調査能力に疑いを持っていない。だが、自身の身の潔白は自身が一番知っていた。
 困惑するフォルクス伯を他所に、ローレットでは新たな展開が待っていた。
 つまり、連続殺害事件の犯人たる、フォルクス・フェン・ステーカー伯爵の殺害依頼が舞い込んだのである。


「嵌められた……!!」
 私兵より上げられた急報に、フォルクス伯は怒りのままにテーブルを叩いた。
 ローレットに舞い込んだ自身の殺害依頼。その事を知ったフォルクス伯は震え、青ざめ……そして怒りで顔を紅潮させた。
「ローレットは常に中立……どのような善悪もすべて世界救済のために応える組織……つまり私が逃れる道はすでに断たれていると考えるべきか」
 だが、なぜこうなったのか? フォルクス伯は思索を巡らせ考える。
「真犯人はローレットに近しい人物……いや、まさか? ローレットに属するものの犯行、なのか……?」
 世界を救済する者の中に、殺人を好むような狂人達が紛れ込んでいる……?
 その考えに思い当たり熟考し――間違い無いと確信する。
 混沌のみならずあらゆる世界からイレギュラーズは選ばれる。その全員が正義である訳がないのだ。
「後始末なのだから――きっと犯人ないしは関係者がくるだろう……」
 そのような悪を野放しにはできない。フォルクス伯は覚悟を決めた。
「可能な限り私兵を集め、対処するほかない……命を捨てられるものだけを集め決戦とする……!!」

 こうして、イーゼラー教団からの刺客が迫る中、フォルクス伯は自らの屋敷を戦場とし決戦に挑むことを決めた。

GMコメント

 こんにちは。澤見夜行(さわみ・やこう)です。
 シナリオリクエストありがとうございました。
 イーゼラー教団と正義を標榜する貴族との戦いが幕を開けます。
 神イーゼラーを否定する穢れた魂をすべて供物として捧げましょう。

●注意事項
 この依頼は『悪属性依頼』です。
 成功した場合、『幻想』における名声がマイナスされます。
 又、失敗した場合の名声値の減少は0となります。


●達成条件
 フォルクス伯の殺害
 イーゼラー教団の教義を遂行する

●情報確度
 このシナリオの情報精度はAです。
 全ての情報は信用でき、想定外の事態は発生しません。

●シナリオについて
 フォルクス伯の屋敷に乗り込み、待ち構える私兵四十名及びフォルクス伯を殺害しましょう。
 フォルクス邸は広大な敷地面積を誇る三階建ての建物です。
 私兵が待ち構えてるポイントは調査により判明済み、フォルクス伯の居場所も確定しています。
 私兵の強さはイレギュラーズにはまったく及びませんが、対複数では当然大きな被害を受けることも考えられます。

■庭園、及び一階フロア
 二十名の私兵が待ち構えているエリア。
 突入には此処を通るのが早いでしょう。
 彫刻や家具など、障害物も多く有り、室内戦闘も問題なくできる広さがあります。
 個室には特に隠れている者はいません。 

■二階階段前
 階段を上っていくと私兵十名が待ち構えています。
 主に射撃武器を得意とするもの達が、高低差を利用して有利に仕掛けてきます。
 射撃武器に対する対抗手段を用意しておくことが肝要でしょう。

■フォルクス伯の私室前、及び室内
 最後の砦です。熟達の私兵が十名待ち構えています。
 老獪な私兵が多く、スタミナはありませんが様々な戦術で戦ってくるでしょう。
 罠も仕掛けられていることが予想できます。色々な状況を想定してみましょう。

 室内にはフォルクス伯が待ち構えています。
 剣術の腕前はそこそこで、油断をすると足下を掬われるかもしれません。
 罠などはありません。

●戦闘地域について
 貴族邸での戦闘となります。
 室外及び、室内での戦闘になりますが、戦闘行動は問題なく取れるでしょう。
 室内は明かりがあるため明るいです。
 戦闘開始時刻は選択できます。

 そのほか、有用そうなスキルやアイテムには色々なボーナスがつきます。

 皆様の素晴らしいプレイングをお待ちしています。
 宜しくお願いいたします。

  • イーゼラー教団の暗躍完了
  • GM名澤見夜行
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2019年12月26日 22時20分
  • 参加人数 8/8人
  • 相談8日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

灯代 狐太郎(p3p004546)
《皇帝(エンペラー)》
ヴェルフェゴア・リュネット・フルール(p3p004861)
《月(ムーン)》
ティア・テレイア(p3p007329)
《審判(ジャッジメント)》
セレスチアル(p3p007347)
《節制(テンパランス)》
ピリム・リオト・エーディ(p3p007348)
《戦車(チャリオット)》
ブリジット・ウガラティア(p3p007362)
女教皇(ハイ・プリーステス)
ネメアー・レグルス(p3p007382)
《力(ストレングス)》
アンゼリカ=フォウ=イーゼラー(p3p007587)
イーゼラーの光を

リプレイ

●イーゼラーの強襲
 闇夜。
 月明かりのない夜だ。
 フォルクス伯の邸宅は、静けさに包まれていた。
 そして息遣いさえも消えて行くような、静謐の庭に足音が響いた。
 一人ではない。複数だ。
 庭の警戒を当たっていた私兵達は、緊張と共に足音の響く入口を見た。
「誰か!?」
 勇敢な私兵の一人が闇に誰何する。だが闇は返答しなかった。
 明かりを手にして、入口である門の方へと近づいていく。
 警戒はしていた。しかし、その影が密接するまで反応することができなかった。
 気づけば、勇敢な私兵の腕に触れる少女の細腕。そして触れた掌の甲に浮かび上がる黒い紋章。
「黒……」
 影――黒髪、そして眼鏡を掛けた少女が呟く。
 同時、少女の後ろから巨躯の影が現れて――勇敢なる私兵は仰ぎ見たその光景が最後となった。暴力的な音を立てて、顔を文字通り潰されたからだ。
 強靱な腕力によって潰され圧縮された肉片が、ビチャビチャと音を立てて庭を汚した。
 首から上がなくなった私兵が倒れる。
「穢れた魂らしい汚い最後ですね。しかし《力(ストレングス)》。もう少しやりようがあったのでは? 飛び散った血が服に付いたのですけど?」
 眼鏡をかけた少女――『《審判(ジャッジメント)》』ティア・テレイア(p3p007329)が服に飛び散った返り血を睨めつけながら、後ろに立つ巨躯の影――『《力(ストレングス)》』ネメアー・レグルス(p3p007382)へと言う。
「間違えてしまった魂には即刻の救済が必要なのだ! こればかりは仕方ないのだ!」
「まあいいですけど。
 それよりも……《月(ムーン)》、触れずともわかります。この場にいる者は異端者、穢れた魂だらけです。即刻イーゼラー様へと捧げ作り替えてもらうのがよいでしょう」
 ティアがさらに後ろへと声を掛けると、闇より浮かび上がるように六人の教団員が現れる。
「此度は皆様に集まって頂き大変恐縮ですの。心強い限りですの。
 《審判(ジャッジメント)》の言うように間違った魂達を今こそイーゼラー様の元へと送りましょう」
 今回の事件の発端である連続殺人――教義に則った魂の献上を行っていた『《月(ムーン)》』ヴェルフェゴア・リュネット・フルール(p3p004861)が、さも当然のように頷いた。
 彼女の覆い隠された視界の先には、突然の出来事に反応しきれない私兵達が見える。どの人間も、目の前で起きた仲間の死に、恐怖と怒りを覚え激情しているのがわかる。勇敢であった彼は、ようやく穢れた魂をイーゼラー様によって解放され新たな魂に作り替えてもらえるというのに。
「この者達を穢れた魂へと堕とした主犯は中でしょう。皆様、一人残らずイーゼラー様へ供物を捧げて行きましょう。――ええ、もちろん。一人残らずです」
 狂気的な笑みを浮かべたヴェルフェゴアを見て、私兵達は恐慌に陥りそうになった。

 そこからは、まさに地獄絵図だった。
 純白の石床、豪奢な石像、絢爛な花々が、血と贓物に塗れて染まる。
「有象無象相手には派手な技法は不要でございましょう」
 ヴェルフェゴアに追従し、周囲を取り囲む私兵達を獲物で仕留めていくのは『寵愛の刃』アンゼリカ=フォウ=イーゼラー(p3p007587) だ。
 ヴェルフェゴアに愛して止まないこの宣教師の一撃に、ある私兵は首を落とされ、またある私兵は腹を切り裂かれ臓物を外気に晒した。
 まるで踊るようにスーサイダを振り回すアンゼリカ。自身の肉体が傷付けば傷付くほどに、舞踏は激しくなった。
「イーゼラー様の元へ還らない不届きな魂は何処かしら。貴方知らないかしら?」
 この場に似つかわしくない小躯の少女が、恐慌状態の私兵に尋ねる。
「お、お前もあいつらの仲間か……!? 邪教徒め……ッ!!」
 小柄な少女に睨めつけられた時、私兵は恐慌状態にありながら態度を一変させる。この小さな少女相手ならば勝てると思ったのだ。
 本来ならば少女相手に剣を振り下ろすという道義に反した行為は忌避するものだが、混乱の戦場では心のタガが外れている。必殺の意気をもって放たれた振り下ろしが少女の頭を捉えようとした。
 しかし――
「邪教徒呼ばわりとは、まったく不届きな魂をお持ちのようね。これはすぐに魂をイーゼラー様の元へ還さなくてはいけないわ」
 少女の前に現れたアンデッドのなりそこないが私兵の一撃を防ぐ。死骸盾だ。
 狂気に微笑む少女が鋭い踏み込みで私兵の背後をとり、足を折る。跪いた私兵の頭を優しく撫でるように触れると、瞬時に私兵の顔の皮膚が溶けるように落ちた。
「ウフフフ! 皆、みぃんな、そんな醜い器なんて必要ないわ。壊れちゃいなさい……?」
 情けなく命乞いをする私兵の姿を見ながら笑う少女の名は『女教皇(ハイ・プリーステス)』ブリジット・ウガラティア(p3p007362)。イーゼラー教団の重要人物にして、度を超えたサディストに他ならない。
「久々ですねー。教団員がこんなに集まって何かするってのはー」
 薄っぺらい間延びした言葉を漏らしながら、斬脚緋刀を的確に振り回すのは『《戦車(チャリオット)》』ピリム・リオト・エーディ(p3p007348)だ。
 彼女の目的は他の教団員とは異なる。
 求めるは”脚”だ。ただただ脚を求めて、戦場を蹂躙する。
 横一文字に振るわれた私兵の剣閃を躱すと同時に下段から掬い揚げるように振るわれるピリムの一撃が、まるで身体に描かれた線をなぞるような軌跡で動く。その鋭い一撃はまるで初めからそうあったように、私兵の身体から脚を一本切り取った。
 泣き叫びながら血の海に倒れる私兵。
 切り取った脚を拾い上げたピリムは、満足そうに脚の状態を確かめると、もう一本の切り取りを始める。
 生きながらにして両脚を切り取られた私兵は、命尽きた後もなぜ両脚を切り取られたのか、理解出来ないままだった。
「大がかりな罠はないようだが、邪魔なバリケードがいくつかあるか。灯代、排除を頼む」
「はいはい、邪魔な障害物は壊していくよ」
 他の教団員が自由に戦闘を行っていく中、冷静に戦場を俯瞰していたのは『《節制(テンパランス)》』セレスチアル(p3p007347)と『《皇帝(エンペラー)》』灯代 狐太郎(p3p004546)の二人だ。
 今回の一件は、イーゼラー教団によって作られたものであり、フォルクス伯は十分な警戒をしているとセレスチアルは理解していた。
 また共に信仰を高める者達が、自由な行動を望むこともよく理解していた。戦闘能力に長けた者が多いことは分かっていることだが、慢心は手痛い反撃を貰うというものだ。
 故に、セレスチアルは教団の仲間達が自由にイーゼラー様へと魂を捧げられるように、万難を排するよう立ち回っていた。
「ほらほら皆、十二歳のお子様な僕も参戦したんだからあんまりヘマしないでくれるかなぁ」
 狐太郎も今回はサポートに回ることとしていた。
 今回は戦場に立った敵を一人残らず供物として捧げることとしている。仲間達が魂の献上を行っている間、逃げだそうというものもいるかもしれない。
 そう言った者を、逃がさず、逃げられないように立ち回るのが役目だ。
 また狐太郎個人の願いも重要だ。
 ――どのような者であれ、安らかな死を。
 その願いを遂行するために、仲間の”食べ残し”には止めを刺して回った。

 そのようにしてイーゼラー教徒達が、フォルクス伯の邸宅の入口を固めていた私兵達を一人残らず片付けた。
 彼女等の教義に則って言えば、それはまさに穢れた魂の返還と再臨のための儀式と言えた。
 叫声の響き渡る庭園が、今一度静謐に包まれると、イーゼラー教徒達は静かに祈りを捧げた。
 彼の者達の穢れた魂が、神イーゼラーによって生まれ変わることを信じて――

●老獪なる騎士たちの終わり
 ローレットの誇る情報屋は、依頼に際してあらゆる情報を集めイレギュラーズへと知らせている。
 此度もまた、屋敷の構造、敵の配置を事細かに調べ上げ彼女達に知らせていたことから、イーゼラー教徒でありイレギュラーズである彼女等は、迷うことなくその階段を上り始めた。
「事前の情報通り待ち伏せですのね。芸のない射撃武器での掃射ですが、厄介なのは間違いありませんの」
「無駄な消耗は避けるべきだろう。ヴェルフェゴア、ネメアー、いけるな?」
「もちろんですの」「もちろんなのだ!」
 階段上から高低差を利用した射撃によって、侵入者の体力を削ろうと考えている私兵達だったが、イーゼラー教徒達にも遠距離攻撃と言う物はある。
「命中させにくい地形ではありますけれど、焦らず参りますの」
 私兵達の射撃が止んだタイミングで、飛び出したヴェルフェゴアが魔力解放を行う。圧縮された魔力が荒れ狂う力となって射出される。運悪く直撃をもらった私兵の腕が消し飛んで、怯え竦んだ悲鳴があがった。
「貴様等のその間違った魂! イーゼラー様の許に還してやろう! 善き魂になって戻ってくるがいい!」
 ヴェルフェゴアを援護するようにネメアーも自慢の筋肉を披露する。
 ポージングから放たれる筋肉の威圧感が闘気の刃となって、私兵達を襲う。息を飲み呼吸が止まった刹那、踏み込んだネメアーがその尋常成らざる筋肉をもって素手によるパンチを放つ。顎を捉えられた私兵は、脳を揺さぶられるどころか、首の骨を持って行かれて即死した。
 当然ながら私兵達もタダやられているわけではない。
 攻撃手が少ないことを見破れば、即座に集中砲火を浴びせる。特に打たれ弱いヴェルフェゴアは敵の乱射に難儀することとなるが――
「ヴェルフェゴアお姉様、ワタクシの後ろに――」
 自らを盾とするアンゼリカの挺身によって大きな被害を免れることができた。
 階段での攻防は一進一退の打ち合いとなるが、攻撃力でいえばイーゼラー教徒に分があった。特にネメアーの怪力が遺憾なく発揮され、徐々に私兵達は数を減らしていくこととなる。
 そうして最後の銃声が鳴り止んだとき、清廉な住宅内部は血みどろの赤い絨毯に塗れ、倒れた肉塊がただ静かに横たわるだけとなった。
「さてさて、脚の回収ーっと」
「では、ごきげんよう。次は清らかな魂として出会えること期待するわね」
 脚のコレクションを増やそうとするピリムや、倒れた死体に礼儀正しくカーテシーを見せるブリジット。この様子を見た者は皆気が狂っていると思うだろうか――或いはその行いを正しいものとして歓喜するかもしれない。
 どちらにしても、彼等の行いを咎める者は誰も居ない。イーゼラー教徒達は悠然とフォルクス伯の私室へと向かい歩いて行った。
「――そこまでだ」
 最後にイーゼラー教徒達に立ちはだかったのは、見るからに老骨の騎士達だった。
「邪教徒達よ、貴様等の邪教を主とした主義主張に付き合う気は毛頭無い。ここでその邪悪な魂斬って捨ててくれよう」
「イーゼラー様を否定するとは……私の紋章で見るまでもなく作り替えなければいけませんね

「わたくし達が邪悪だなんて誤解も良いところですわ。わたくし達ほど清廉潔白な良き魂の持ち主などいないと言うのに」
「ええ、ええ、その通りでございますヴェルフェゴアお姉様」
「ふん、小脇に我等の仲間の脚を抱えていてよく言うわ!」
「これは別だよーコレクション用なだけだし」
「猟奇殺人鬼共めっ!!」
 激昂する騎士達が武器を構える。
 その様子を冷静に見ていたセレスチアルが不意に気づいた。
(人数が些か少ないな……情報の間違いか? ……いや!!)
「罠の可能性がある、注意しろ!」
 その言葉に狐太郎が即座に気づいた。背後だ!
「ちょ、後ろからも敵来てるからね!? 踏み込みよし、っと……!」
「せぇぇい!!」
 裂帛の気合いと共に振り下ろされた一撃を、踏み込んで躱す狐太郎。そのまま背後を取り挟撃を避けようとするも、老骨とは思えない騎士の足捌きによって防がれた。果たして、イーゼラー教徒達は老骨なる騎士達十人に囲まれる形となった。
「背後は盗った。逃れられると思うなよ邪教徒ども」
「注意を引いて挟撃に持ち込む策お見事ですの。油断していたわけではありませんが見事に囲まれてしまったですの。ですけど――」
 語りながら、ヴェルフェゴアが手を掲げる。そして上空に伸ばした掌の上に闇に輝く月が生み出された。
「な、なんだ――うわぁ!!」
 生み出されたダークムーンの波動に飲まれた騎士達が吹き飛ぶ。一網打尽を狙った作戦は、一手によって覆された。
「くっ……だが、まだまだ手段は――」
「ええ、まだまだあるでしょう。ですのでその全てを潰した上で、あなた様方もイーゼラー様の元へ還して差し上げましょう」
「さあさあさあ、愉しいダンスを踊りましょう。貴方もワタクシもボロ雑巾のようになるまで踊り狂いましょう。拒否権は一切ございません」
 邪悪に微笑むイーゼラー教徒達を、老獪なる騎士達は命を捨てて睨めつけるのであった――

●魂を捧ぐ
 僅かな音を立てて、自然にその扉が開かれた。
「……なるほど。多種多様な種族が信仰する邪教か。ローレットの中で生まれたというより、邪教を信仰する者達がイレギュラーズに選ばれていたと考えるべきか。
 どちらにしても、恐ろしい話だ……宗教とは人の倫理観すらもねじ曲げてしまうのか」
 怯えた様子も見せず、私室の奥から入ってきたイーゼラー教徒達を見据え、フォルクス伯は悲嘆するように呟いた。
「倫理観がおかしいのはそっちの方だよ。全ての命はイーゼラー様が魂を与えし尊きものだっていうのに、己がイーゼラー様に作られたということを弁えずにイーゼラー様を貶めたり、否定するだなんてさ」
「そのような神を信奉するのは勝手だが、些か自由にすぎるな。教義を押しつけ命を奪うなど、人としての道義に反する。生命は等しく同等であり、手前勝手な理由で他者の命を奪うことなど許されないのだ」
「まさに、異端者達の物言いだ」
 セレスチアルの言葉にフォルクス伯は首を振るう。
「逆だ。貴様達こそ異端なのだ。混沌に根付く名のあるいくつもの宗教の中でも、貴様等の信奉するものこそ邪悪の極致。醜悪な殺人許可証の隠れ蓑にすぎん」
 フォルクス伯が、手にした資料をバラ撒いた。
 目を落とし文字を拾っていけば、それはイーゼラー教団を表面的になぞった資料だった。
「あら? ブリジットちゃん達のことを調べたの。ふーん、でもそれを知ってその態度と言うことは教義を理解できなかったようね。残念だわ」
「理解などできるものか。貴様等は集団殺人鬼に他ならない。なぜ貴様等のような悪鬼がのうのうと生きていられる。如何にイレギュラーズと言えど、このようなこと許されるわけがない」
 吐き捨てるように言うフォルクス伯に、身体中を血に染めたアンゼリカが楽しそうに頷く。
「ええ、ええ、その通りです。ローレットにしてみれば、このような事態はあまり望まれないものですし許されないことなのでしょう。ですけど……たまになら、こうしたことも許されるのでございましょう。そう、たまになら」
「そうして罪を重ねていくと言うわけだな……恐ろしいことだ」
 フォルクス伯が腰に携えた剣を抜く。構えには一分の隙もなかった。
「領主様……貴方の正義の心は正しく素晴らしいもの。我らの神を信じられぬ事だけが残念でなりませんわ。しかしそれもイーゼラー様に創り直して頂けば良いだけですの……」
 ヴェルフェゴアが祈りを捧げる。
 イーゼラー教における祈りとは、沈黙のままに念じ届ける。それはそのまま魂を確実な死へと導く力となる。
 目を見開いたフォルクス伯は、この得体の知れない祈りの力を感じ取った。踵を返して回避しようと飛び退る。だが逃れることはできない。
「ぐああっ!」
 瞬間、フォルクス伯の背中が爆ぜた。血と肉が散華して、室内を赤に染め上げる。
 だがフォルクス伯は足を止めなかった。手にした剣をヴェルフェゴアへと投げつけて、一目散に部屋の窓へと飛び込もうとする。
「ブリジットちゃんの前で図が高いですわよ! オーホホホ!」
 ブリジットがギフトを発動すると、逃げようとするフォルクス伯の膝がカクンと折れそうになった。
「何もしなければ平穏に過ごせていたでしょーに……哀れですねー。
 まーこれも運命だと思って受け止めてくださいー。ついでに私のコレクションに加えてあげましょー」
 そこにピリムが切り込んで脚を綺麗に切り離した。フォルクス伯の悲鳴にならない苦悶の声があがる。
 床に倒れ伏したフォルクス伯が、イーゼラー教徒達を睨めつける。
「ブリジット、私の後ろへ。まだ何か隠してるかも知れない」
 教祖の親族たる娘を守るようにセレスチアルが庇う。
「罠もなし、窓も封鎖させてもらうよ。これで逃げ場はなしだよ」
 狐太郎によって、室内は完全に閉鎖された。
「ふむ……黒かと思いましたが赤ですか。たしかに素晴らしい人物のようですね」
 ティアの確認にヴェルフェゴアは満足そうに頷いた。
「ではイーゼラー様に魂を捧げましょう。皆様、祈りを――」
「ひっ……やめ――」
 沈黙が広がる中、無音で振り下ろされたネメアーの拳が、フォルクス伯の頭を潰した。
 まるで水風船が潰され割れるように、赤い液体が飛び散り広がる中、イーゼラーの使徒達は祈りを捧げ続けるのだった。

成否

成功

MVP

セレスチアル(p3p007347)
《節制(テンパランス)》

状態異常

ティア・テレイア(p3p007329) [重傷]
《審判(ジャッジメント)》

あとがき

 依頼お疲れ様でした。

 MVPはセレスチアルさんへ送ります。おめでとうございます。

 ご依頼頂きありがとうございました。またのご依頼お待ちしています。

PAGETOPPAGEBOTTOM