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シナリオ詳細

旬の味覚・レガドコショウダイ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●レガドコショウダイ -Sea bream-
「ちょっと! 急にいわれても困る!!!!」
「ラサから来た盗賊とかいうので、人手が足りねーらしいんだ。公のほうが金払い良いんでね!」
 浅黒く鞣したような肌の老人と、革鎧を着た傭兵然とした男が言い合いをしていた。
 時刻にして4:00ごろ。周囲は暗闇である。
 老人は漁師である。
 程なくして、老人が折れる。
「愚か者どもめ、これからコショウダイの時期というに……!」
「へ、言ってろジジイ!」
 日々のルーチンワークのように、港へ来た老人であったが、海上の魔物から護衛をしてくれる傭兵が立ち去ってしまった。
 また、若い衆も荒くれ者に近い性質であるから、傭兵の甘言によって人手を攫われた顛末である。
「……ええい! 海の男は狼狽えん!」
 大漁の暁には、若い衆に金一封を渡そうと思っていた老人、もう知らん知らんと船に乗る。
 若い頃は1人でやっていたという自負心が老人を突き動かしたのである。
 一本マストに一枚の横帆。
 ざざん、ざざんと、人の世を嚇かしに来る海原の上を、闇、恐るるに足らず。
 漁火を立たせて、コグ船は進撃けり。
 かく、漁師の朝は早い。
 太陽も昇らぬ時分に起床し、昇り始めたくらいには港に到着す。
 船を出し、船の上で朝食をたべて、魚を捕り、世間がうごきはじめる頃には一仕事終えて帰港するのである。
 ターゲットの魚次第では、夜通しも有り得るだろう。
 あるいは朝の一番市場に間に合わせるために、もっと早く起床するものもいるだろう。
 明けゆく空の気色。
 老人、網を引き上げる作業にかかった。
「うおおおおおおお!!」
 原始的な巻取機で網を引く。
 やがて、網は岩を引っかけたように重くなる。
「っだオラ――ッ!?」
 たちまち老人は網を固定して後退。
「いきなり出やがったか! かかってこいい! レガドコショウダイ!」
 奇な。
 それはマグロのごとき大きさの鯛!
 網に絡め取られた全身をそのままに、海面をもがくように跳ね回る。
 魚の力は強い。
 漁が目的の小型のコグ船では、引っ張られて船体が傾き、沈没が関の山である。
「喰らえ!」
 ならば銛! 絶命させればよいのである。
「ちぃ! 老眼だ!」
 舌打ち。
 銛、海原を突く。
 次弾――装填役の若い衆も、クロスボウなどを持つ武装した傭兵も不在にして――
「な!!!!」
 海上を跳ねる影、一匹にあらず。
 連続の体当たりにて、船体はたちまちの内に沈没す。


●ヤムノス漁業共同組合からの依頼
「バルツァーレク領の西、ヤムノス漁業共同組合からのお仕事なのです」
 『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)の第一声から、海、魚関係の仕事と怪しまれた。
 卓には『地域密着型で美味そうな依頼ない?』という条件をだした者が集っている。
「魚か?」
「はい、レガドコショウダイなのです」
 コショウダイ、それは弾力があり、くせのない旨みの白身魚である。
 中でも、西の海で捕れるレガドコショウダイという種は、細やかな斑紋が美しく、味もタイの味を濃くしたような強い旨味が特徴だ。
 東の方でいくら【海洋】が頑張ろうとも、決して捕れない魚なのだ。
「でもでっかいのです」
 ユリーカが両手を広げた。
 マグロくらいの大きさであるという。
 いやさ、マグロにも色々種類はあるが、世間一般的なマグロ――300kg水準だ。
「海の魔物も一杯いるので、いつもは、漁業協会と契約している傭兵さんたちも一緒にいくみたいなのです。けれど、とある漁師さんと契約していた傭兵さんたちが逃げちゃったみたいなのです」
 漁業共同組合が大急ぎで代わりの傭兵を探している状況らしい。
 更には、よりにもよってその漁師は、1人で漁に出てしまったという。
 事故が起これば協会の過失。
 結果、ローレットに案件が来たという話である。
「それは、その漁に出た漁師を連れ戻すだけで終わりなのか? 移動手段は?」
「漁業協会が、海上警邏用のコグ船を貸してくれるそうです。あとついでにその日の漁を手伝ってほしいそうなのです(チラ)」
 ユリーカがチラっと部屋の隅に視線を動かす。
 思わずその方向を見る特異運命座標。
 そこには、お土産を期待するような練達製のクーラーボックス、土鍋や焼き魚セットが鎮座していた。

GMコメント

 Celloskiiです。
 相談期間5日です。
 特定のクラスやスキルで補正があります。
 ネタっぽいですが、難易度Normalです。ご注意ください。
 以下詳細。


●勝利条件
 漁師を無事連れ戻す
 レガドコショウダイ×3の撃破

●状況
 ・海上です。周りは海なので、特定のスキルが無い場合、船から降りての戦闘は困難です
 ・足場は縦20m、横5mほどのコグ船×2(漁師船と警邏船)
 ・合流するための移動手段として、海上警邏用のコグ船が用意されています。
 ・漁師の船を探知できる水晶が搭載されています。
 ・非戦スキルの天気予報により、快晴が続くことは確定しています


●エネミー(初戦確定枠)
・レガドコショウダイ×3
 マグロ級の大きさで、ほぼ全てが白筋という恐るべき鯛です。
  船体破壊   物特レ  至近レンジ相当。対象の船に乗っている者にダメージを与えます。 [乱れ][崩れ]
  I can fly   物遠単  300kgの体躯で跳びはねた勢いのまま、押しつぶそうとしてきます。 [麻痺]
  白身魚    自付与  瞬発力が上がり、殺戮能力が高まります。

●貸与品/船体付属品
・銛射出機
 性能はshopのクロスボウの準拠。遠距離攻撃手段です

・投網射出機
 「物遠単 消費AP40:命中+2、【麻痺】」の投網を発射できる装置です。

・銅鑼
 天候により視界が悪くなった時に鳴らすものですが、船体に至近距離まで近づいている魚を驚かせます。
 「物特レ ダメージ無 【呪縛】」

・突撃ラム
 警邏船専用。船首にあるラム(水線下に存在する体当たり用の角)です。
 命中させるためには、極めて高い操舵能力を要求します。

●Danger!
 このシナリオはプレイング如何によって、食事シーンが増大する可能性があります。
 予め御了承下さい。

  • 旬の味覚・レガドコショウダイ完了
  • GM名Celloskii
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年03月26日 21時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アミ―リア(p3p001474)
「冒険者」
クィニー・ザルファー(p3p001779)
QZ
ライネル・ゼメキス(p3p002044)
風来の博徒
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
黒撃
エルラ(p3p002895)
九本足のイカ
コルザ・テルマレス(p3p004008)
湯道楽
ヴィエラ・オルスタンツ(p3p004222)
特異運命座標
最上・C・狐耶(p3p004837)
狐狸霧中

リプレイ

●空と海の境界
「美味しいごはんの為に! 困っている人を救うために! さあ行くのだよ皆、海が待っている!!」
 『白仙湯狐』コルザ・テルマレス(p3p004008)がキメポーズをとると、背後にざぱーんと大きな波が押し寄せた。
 迫力のワンシーンであった。
 ここは船の上である。出港はまだだ。
 依頼を受けて駆けつけて、迅速に船まで案内された一行だが、問題は操船役であった。
 手引きを渡されて程なく、『「冒険者」』アミ―リア(p3p001474)が張り切って買ってでた。
「まっかせなさーい! 何年冒険者やってきたと思ってるの!」
「あーそれなら任せた」
 『風来の博徒』ライネル・ゼメキス(p3p002044)も操船については心得があったが、アミーリアが張り切っているので任せることにした。
 一気に暇になるライネル。
 アミーリアに背を向け、到着まで昼寝にでも興じようか考えたが、アミーリアはフフフと自信ありげ言葉を付け足した。
「ふふふ。嵐で沈没した事あるけどそれはそれ! それじゃあしゅっぱーつ!」
 ライネルは、顎に手をやってうつむき加減に沈黙。次にアミーリアを見やる。
「いや、操船のやり方見ておくか……。いざって時に沈んでからじゃ遅いからな」
 不穏な言葉が付属するも、船は海原へと出航した。
 視線の先は大海原である。
 景色は晴天。空は蒼。海も蒼。
 空の色は、海面にむかって空気遠近のように白色へと徐々に変化し、途中でスパっと刃物で切断されたように、海の蒼さへと切り替わる。そういう景色である。何事もないような気色であった。
 特異運命座標《イレギュラーズ》は船旅に興じる。
「海の男の血が騒ぐ……」
 『九本足のイカ』エルラ(p3p002895)が水平線を見ながらつぶやいた。目はあけていない。
 海の男は例えではない。軟体動物門頭足綱十腕形上目(イカ)のディープシーである。足十本。
 釣り人でもある。海の上の戦いであるなら、格好の舞台といえた。
 『狐軍奮闘』最上・C・狐耶(p3p004837)は、書道の筆のごとき尾っぽをぼふぼふさせ、ぼんやりした目で彼方を見る。
「(拝啓、母様。只今狐耶は漁船に乗って漁に出ております。いえ、お金に困ってそういう仕事をしているわけでは。別件の仕事です、はい)」
 センチメンタルであった。
 まあいいやがんばろうと続けて思った。
「オレのショクヒのために、大漁を目指すよ!」
 と、『無影拳』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)は意気込んで、網と竿の点検を行う。
 イグナートは武闘家だ。操船の手引きも確認。続き、今は身体を動かしたい気分に加え、食費も絡んでいる。
 大漁を目指すための準備をするしかないではないか。口角は無意識につり上がっている。
 『特異運命座標』ヴィエラ・オルスタンツ(p3p004222)は、帆柱《マスト》に背中を預けながら事件の背景を回想す。
「(傭兵はお金で動くからね、金払いの良い方についちゃうのは仕方ないか)」
 家柄によって高潔さを心得ているが、現実的な利得に流れる者にも理解はある。命を切り売りする傭兵ならば尚更だ。
「(とはいえ、漁師の若い人達までとは……死ななきゃ良いんだけど)」
 ヴィエラが背を預ける帆柱《マスト》の遥か上の見張り台で、『QZ』クィニー・ザルファー(p3p001779)は頬杖をついていた。
 海原は、悠長にのたくらせた様な青色を広げて。
 海を切る船が、通り道に泡をぷくぷくと作り、波が白泡を消そうと逆巻いている。
 ざざんざざんと声を出す。どどん、どどんと波が消していく。……
 ふと、海原に黒点がみえた。それはだんだんと大きくなっていく。
「ん、見つけたよ」
 頬杖を切り上げて、目標の船が視認できた事を知らせた。


●vsレガドコショウダイ
 特異運命座標《イレギュラーズ》の船が、老人の船に接舷す。
 この刹那に、老人の船が傾いた。糸だ。飛沫が散っている。巨大な魚影が海面をより濃くしている。
「よし、乗り込んで! GOGOGO!」
 警邏船の操船を担当していたアミーリアは、船全体を老人の船に肉薄す。
 特異運命座標の作戦は、接舷、しかるのち老人の船に飛びうつる者。警邏船に残るもので分担。
 備え付けの武器や遠距離の攻撃を、撃ち込みまくる、である。
 警邏船。クレンクインクロスボウと怪しまれる装置から、銛が放たれた。
「ほう」
 イグナートは中々面白い武器だ、と嘆息する。
「もっと右右。右に5°です――えい」
 狐耶が得物の宝剣を振るい巫術を放つ。
 ライネルは賽子を軽く上に投げて掴みとる。456《ジゴロ》。
「……出だしとしては上々」
 遠術。不可視の衝撃波が、海面という防壁を破り、暴れていたレガドコショウダイを打った。
 この初手によって老人の船はいくらか持ち直す。
「いらんお世話かもしれないけど、助けに来たよ!」
 そこへQZがマストの上から飛び降り――飛行。老人の船に飛び移った。
「なにぃ!? 助けに来ただぁ!?」
 原始的な巻き取り器の操作で忙しい老人は、不機嫌そうな発声をする。
 しかし、特異運命座標がのってきた船が海上警邏のものと悟ったらしい。
「協会の回しもんか!? 余計な――」
「おなじく……たすけにきたよ……」
 軟体動物門頭足綱十腕形上目のエルラがざばあ! っと海中より登場。老人驚愕す。
 続く、さらに大きな『ざばあ!』『ざばあ』が聞こえた。
 船床に影が落ちる。上を見る。
 釣り糸のレガドコショウダイと、別のレガドコショウダイ。白筋の申し子。落ちてくる二つの影。
 QZは釣り糸側へと向く。
「おじいちゃんはこのまま操船してて、あいつらは私達が倒すから!」
 得物である細身の槍を握り一回転。飛行を伴って重力が石突きで巨体を弾く。そらす。釣り糸のコショウダイはそのまま海中へと逃避した。
 反対側。
 コルザが影へと踏み込み、上に向けて防御の術式を展開した。
「そういうことなのだよ! そしてこの魚のことを知っているのは間違いなくあなたなのだよ、敵を教えておくれ!」
 直撃を防ぐ。
「――くっ!」
 敵の重さによって、コルザの防御の術が破れかけるも、防御は成功。
 レガドコショウダイは防御術の上で跳びはねて海面へ戻ろうとする。
 ヴィエラが逃さず、老人の船の銛を発射する。
「私達も何時までも戦ってはいられないしね、早く終わらせるに限るわ」
 この銛がレガドコショウダイを貫いた。
 船体を結ぶ紐と銛の先端に備わる『かえし』によって、レガドコショウダイ二匹が船と繋がれる形となる。
「済まんな若い衆。たしかにおれが無茶だった!」
 コルザの防御とヴィエラと銛によって全てを察した老人は、協力的な姿勢となる。
 かくて、QZ、エルラ、ヴィエラ、コルザが漁師の船へ。アミーリア、ライネル、イグナート、狐耶が警邏船に残る布陣とあいなった。老人は操船だ。
 エルラはディープシー。海面下を自由に動き回り、
 特に、より深く傷を負っているレガドコショウダイがどちらかを、上に知らせる役割が生じた。
 それをもって目標を定め、次々と放たれるイグナートの銛。ライネルの遠術。狐耶の近術。
 ヴィエラの銛。コルザの回復。QZの銃撃と滑空攻撃。アミーリアのヘビィな重火器。
 攻撃が一方のレガドコショウダイに集中し、魚類もこれがたまらなくなったのか、船体への攻撃に動く。
「それを待っていた」
 レガドコショウダイが船体へ突進――同時にイグナートが船体から飛び降り、落下を伴った鉄拳が魚類の頭をぶん殴る。
 一匹目――釣り糸側を召し取った。
「やっぱオレはコブシで勝負がショウに合っているね!」


●弱肉強食の理
 銅鑼が鳴る。
 片耳がキンキンする中での一斉攻撃にて、ヴィエラの前後を考えぬ一撃が二匹目を召し取った。
「二匹目ですね」
 やり方はイグナートと同様。近づいた所をロングソードで粉砕である。
 全力で叩きすぎた反動により、手が震える。あまりにも粉砕されつくした魚類だが、アラ汁にでもなろう。
「あと一匹!」
 警邏船で、観測主として索敵を続けていたアミーリアだが、あと一匹が見つからない。銅鑼付近まで移動。釣り糸を垂らす。
「さがしてくる……」
 エルラも、一旦海中へと潜る。
 不気味なほど静かだった。
 ざざんという音は波打ち際ではないので、それほど響かない。ちゃぷちゃぷという水の音色だけが特異運命座標の耳に入る。
「下だよ……」
 エルラの声とアミーリアのギフトが発動したのは同時だった。
 刹那。
「ふぃっしゅおーん!」
 最後の一匹が海面に跳躍。老人側の船だ。船首の一部を粉砕して参戦す。
 先の二匹とはどこやら違う。傷がある。剥がれた鱗が痛々しい。
 それが猛者の雰囲気を醸成しているのだ。
「主じゃ……」
 老人がなにやらつぶやいた。
「こいつで最後だ」
 イグナートが警邏船側の銛を撃ち込む。
「海に入るんだったら夏の方がいいわ……」
 ヴィエラも老人の船側から銛を撃つ。
 二つの船から撃ち込まれているにも関わらず暴れ回る屈強なる主。
 二つの船体が揺れる。
「これでどうです」
 バランスを崩しながらも狐耶が網を投げて拘束。
「そおれ!」
 ここぞとばかりにアミーリアは銅鑼を鳴らす。
 動きが止まったかにみえた。
「さあ、畳みかけるのだよーっ!!」
 コルザが痺れをとる治療の術をQZに放つ。
「──さっさと終わらせようか」
 QZは飛翔。急降下によって肉薄。槍で主を突く。
 主の反撃。尾ではじき飛ばされ、宙返りで体勢を立て直した刹那――
「これでどうだ」
 集中を伴ったライネルの遠術が、QZが突きたてた槍を更に押し込む形で命中す。
 ライネルは、握った手をひらいてみると、賽子の目は111。
 たちまち主はぷかりと波間に浮かんだ。


●ここから本編
 帰港する。
 漁師の老人のツテで、組合の寄り合い所を借りて宴の準備をする。
 他でもない春の味覚を、新鮮なままに平らげようという腹積もりだ。
 さて、レガドコショウダイ。タイの一種である――その調理方法となれば。
「こいつは醤油でいいのかい?」
 ライネルが老人に問うと「あたぼうよ!」と威勢の良い返事がかえってきた。
 バルツァーレク領の領主は、美食に関して人が変わるという噂がある。醤油という調味料を練達から仕入れて、領内で作るくらいはやるだろう。現にヤムノスは魚醤だって作られる地形である。
「ところで母が昔言ってました。鯛茶漬けは素晴らしいものだと」
 狐耶が提案す。
 というより、欲望であった。欲望は、どんどん盛り上がっていく。
「ウォーカーの方なら作り方を存じてる方もいるかもしれません。知ってたら下さい、鯛茶漬け! 食べたいのです、とても! ぷりーずぷりーず」
 はよ! はよ! と卓を叩くと同時に、尻尾も上下せり。
 そんな狐耶を見ながら、コルザはテキパキと料理をする。
「やはり米と一緒に炊きこんで……ふふふ……」
 鯛の炊き込みごはん。シンプルな焼き物。アラを使っての汁――
 先が尖った形状の包丁を巧みに操り、仕込んでいく。
「美味しいと評判の魚の味、確かめてみようじゃない」
 ヴィエラも興味津々である。
 出身が幻想であるから名前を耳にしたこともあるだろうが、食べるのは初めてだ。
 これが美味ければギルドの皆に持っていくことも考えていた。
 かくて、醤油があるならばある程度は容易となる。
「オレは、食いだめしておきたいな」
 イグナートが言う。生ものであるから、持って帰るのは難しかろうという判断だ。
 切り身を天日干ししておけば、多少は持つだろうという老人の提案だが、長居も良くない。
 ならばと、老人が既に干されたコショウダイの切り身を、新鮮なやつと交換する形で持って来た。干し魚を炭火で炙りだす。
 エルラは刺身派だが、すでに取りかかっているコルザがいるので、どうしようか考える。
 そこで、ふと思い立つ。釣り人らしいところをみせねばと、巨大なるレガドコショウダイの骨から、中落ちをこそぎ、丹念に叩いて潰し薬味を混ぜていく。みそや香味野菜も一緒に練り上げていく。
「いいねそれ!」
 これを見て何が出来るかを察したのはアミーリアだ。手伝いとして力技で骨を粉砕し、中落ちをかき集める。
 『なめろう』である。
 船上でのみ造られるという料理だ。

「ほぁわ~」
 QZは目を奪われた。
 つんとした薬味の香りが鼻孔をくすぐる『なめろう』。
 火からあげたのに、パチパチと音がする炭火焼きの天日干し。
 蓋を開けると、美味そうな匂いとともに湯気が立つ炊き込み御飯。
 アラ汁。焼き物。
 次々とレガドコショウダイの料理が造られ――卓にずらりと並んだ。
 楽しみが極点へと達する。
 『頂きます』が唱和される。
「これがなきゃーあれさ、はじまらねーべさ」
 酒瓶を老人が持って来た。SAKEという種のアルコール飲料だ。
「お、いいなぁ」
 ライネルが酌を受け、酌を返す。
 白磁の猪口に透明な液体。液体をクイっと飲む――飲むというより、ほんの4,5滴を口中に含む。
 じわりと甘みが舌に広がる。すかさずコショウダイの刺身だ。醤油につけて一切れを放り込む。
 淡白な鯛の味を、淡白なままに強くしたような味と、醤油の塩気が甘くなった舌に効く。
「~~~~っ!」
 熱い息が喉の奥からこみあげてくる。たまらない。
「……食べ過ぎない様に注意しましょ」
 ヴィエラは焼き魚を頂く。ナイフでスっと刺すとほろほろと崩れる。フォークで丁寧に口中へ。
 舌上で最初に磯の香りがした。次に炭という熱源特有の焦げた香り。
 塩が効いている。脂気が少々、汁気がある。汁気の熱すら美味である。
「これは……だめだ」
 イグナートは語彙を失いかけた。炭という熱源で焼かれた天日干し。一見、焼き魚と同様。
 違う所は『干されて凝縮されている』という点だ。
 角皿に横たわり、香ばしき匂いを放っている。
 炭火の香り。磯野香り。皿の隅には大根おろしが小山になって鎮座している。これぞ王道ともいえる仕上がりである。
「白いライスを! 白いライスを!」
 というと、狐耶が山盛りの白飯を持って来た。昔話レベルの山盛りだ。
 これは狐耶がお茶漬けにするためのものだったが、余分もあった。ファインプレーだ。
 イグナートがめいっぱいかきこむ一方、狐耶のほうは醤油に漬けていた切り身を白御飯の上にのせる。
 茶は最近有名になってきた『常朝』なる緑茶の銘柄。注ぐ。頂く。
 ねんがんの鯛茶漬け!
 さらりとした白御飯。通常の鯛の上位互換のように、淡白ながら強い旨味を含んだコショウダイの切り身。
 切り身は、茶の熱によって半生となっている。噛む度にしみでてくる醤油味。これがお茶の渋みと共に、一種の汁物と化している。
「くっ……白米がとんでもない美味さ……!」
 筆のごとき尻尾。盛大に上下せり。
 QZはコルザの炊き込み御飯に舌鼓をうつ。
「おいひぃ〜!」
 ほわほわと虚空を見るQZを、コルザがねぎらう。
「慣れない海上だったけど、そこで頑張ったからこそのより一層のおいしさだね!」
 その後の漁で特に頑張ったのがQZであった。飛行による自由なポジション取りあっての快勝である。
 アミーリアとエルラも食をすすめる。
「おいしいです……」
 エルラはぱくぱくと刺身を頂く。こちこちとした歯ごたえがお気に入りだ。
「ねー! アラ汁も最高」
 熱い汁物はとても満足感を与えてくれる。
 その後の漁で、フィッシング頑張った二人は、疲労が抜けて行く感じに、思わずぼんやりとしてしまう。
 レガドトラフグ、レガドカッツォ――。
 トラフグは毒があるので、協会に持って行かれたが、カッツォは「味見してみるかい?」という老人によって捌かれている。生姜をたっぷりと入れて食する。
 カッツォは赤身だ。表面を火で炙ったタタキというシロモノである。
 なめろうについては、非常に酒に合うものだが、二人はお酒は飲めない。
 しかして、お酒を嗜むライネルにはすこぶる好評であった。
 それに、白御飯にのせても良し。
 なめろう。炊き込み御飯にアクセント加えるために用いてもいい。
 味の変化を楽しみ各々が思い思いに海の幸を堪能していく。
「おかわり!」
 和気あいあいの声は、九天の頂に鎮座する月に届き、尚も宵は更けていく。
「ごちそうさま!」
 この日養った英気と鋭気にて、これから先も自らを信じ、『運命』に立ち向かっていけるだろう。

 ふと、コルザは起き上がり、QZのところへつーっと行く。
「どしたん?」
「へへへ。約束。忘れるわけないじゃないか。クィニー君」
 寒さがのこる春の夜に、最後はあたたかいぬくもりが感ぜらる抱擁が今日の最後。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 Celloskiiです。
 遅くなりまして申し訳ありません。
 操舵に関しては一人がほぼ専任で割かれていたため、位置取りは無難より数段上という判定となりました。

 おいしい依頼になれば幸いです。
 ご参加有り難うございました。

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