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シナリオ詳細

<青海のバッカニア>勇者進水GC外伝 正義の味方は、正義の敵

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●正義のありか
 海を切り裂き進む黄金の船。
 『不正義断罪』を意味する古代文字を船体側面に刻み込んだその船こそ、聖教国ネメシス(通称天義)より遣わされた正義の船であった。
 聖別フィルタと聖別されたワインの循環機構による『聖力エンジン』式クルーザー。ホーリーシンボルを象った操縦レバーがただ一本突き立った運転席には、袈裟を纏った丸メガネの男がひとり。
 三十代なかばといったところだろうか。顔や体つきに対して振る舞いや目つきには成長しきっていない印象があった。
 男は……ベンサム・パノプティコン神父は座席の背もたれによりかかり、遠い水平線を見つめている。
「ベンサム神父。まもなく目的の海域に到着します」
 後ろで、一段低い階級の法衣を纏った男が黒い聖書を広げた。
「敵は」
「先行したファミリアーが他国のものと見られる船体を確認。武装しているものと思われます」
「我らの正義に立ちふさがるか。神の作りし世界をはみ出そうとする愚かしさを、彼らは正そうともせずに……」
 後ろの男から聖書を引き取り、ベンサムはその内容を読み上げた。

 ――神は海を作り空を作り、そして人を作った。
 ――海は限りあるものであるとし、それを侵すものを裁く。

 この混沌世界をよく知る皆ならば、この文言に違和感を覚えるかもしれない。
 さもあらん。なぜならこの聖書を記したのは他ならぬヒトであり、ただのヒトに神の意思や世界のなりたちなど分かるはずもないからだ。
 しかし間違ったことであろうとも。その成り立ちでデタラメであろうとも。
 信じたのなら、それが正義になりえるのだ。
「『大号令』などという不正義を我らパノプティコン教会は容認しない。
 我らの説法を聞き入れぬというのなら、実力をもってそれを阻むほかあるまい。
 彼らが世界の摂理を破壊する不正義とならぬように」
 聖書を間にはさむように、両手を合わせて祈りの姿勢をとるベンサム神父。
 すると船にのった弟子たちも同じように手を合わせ、彼らの祈りに応じるかのように光の巨大ホーリーシンボルが空中へと現れる。
「こちら海洋海軍の巡回船です。ここからは海洋王国の領海になります。ただちに停船してくださ――」
 拡声によって呼びかけてきた船へ、無数のホーリーシンボルが飛んでいく。
 否。
 ホーリーシンボルは複雑に変形。自律戦闘人形の形をとると、海軍船へと飛び乗った。
 それでも必死に説得を続けようとする兵士たちを腕からはやした聖熱ブレードで切り裂き、聖別されたパラペラム弾の連射を浴びせていく。
 爆発を起こし、転覆する船。ホーリーシンボルへと戻り、神父たちのもとへかえる戦闘人形。
 駆け抜けていく黄金の船は、陽光をはねかえす。
 ベンサム神父は眼鏡のブリッジを指で押し、低く唸るように言った。
「不正義断罪」

●ワタツミ島地下拠点
 幻想と海洋の間にあるワタツミ遺跡。
 小さな島の地下に隠されていたこの遺跡は、ある出来事をきっかけに改装され秘宝種特異点座標『勇者進水』グッドクルーザー(p3n000117)の発進基地となっていた。
 管理しているのは幻想南方貴族エトワール十二家紋がひとつブレイブ・ペンドラゴン氏。
 イレギュラーズたちはブレイブ氏の依頼によって、この基地に集められていた。
「諸君、集まってもらってのは他でもない。ネオフロンティア海洋王国が二十二年ぶりに『大号令』を発して以来海洋のみならず各国が敏感な動きを見せているが……その中で天義過激派に属するパノプティコン教会が強行的な妨害を始めたことを察知した。
 海洋海軍がこれを撃退すれば領海をかけた大きな問題に発展しないとも限らない。海軍側も極力説得を試みているが、一方的に攻撃されるばかりだという。
 だが我々幻想貴族であれば、海洋における不慮の衝突として政治的に片付けることが可能だ。
 さらに言えば、それが調査依頼を受けたギルド・ローレットとなれば完璧だろう」
 なぜそんな遠回しなことを、と思うかもしれない。
 その疑問には、透明な棺に眠っていた大型ロボット『グッドクルーザー』が身体を起こして応えてくれた。
「ペンドラゴン一族の家訓は正義と勇気。
 一方的に傷つく弱者がいるのなら、駆けつけるのが当機グッドクルーザーの正義です。
 私達なら、海洋の人々を傷つけることなくこの問題を解決できるかもしれません。
 希望の戦士よ、共に戦いましょう!」
 やる気を見せるグッドクルーザーの一方で、ブレイブ氏は小さく唸った。
「ところで、ひとつ気になることがある。パノプティコン教会が所有しているという聖力エンジン式クルーザー……我が一族の文献にあるものと同じなら、グッドクルーザーの成長に役立つかもしれない。もし回収できるようなら、回収してきて欲しい。これは達成確実な要素ではないから、依頼に含めなくても結構だ。
 なににせよ――。
 過激な横暴に傷ついた海洋の人々を救うべく、君たちの力を貸してくれ!」

GMコメント

■成功条件とオプション要素
このシナリオの成功条件は
・パノプティコン教会を撃退すること
にあります。
彼らは発見した海洋王国の船を片っ端から襲撃し、損害を与え続けるというテロリズムを行っています。
これを対抗武力にとめるのが、今回の依頼の趣旨であります。

またこのシナリオは『海洋名声』『海洋貢献値』の他に、皆さんの行動選択とその結果に応じて『天義悪名』『幻想名声』に影響が出ることがあります。
条件の目安としては以下のとおりです。

・パノプティコン教会のメンバー全員の生存
 →影響不明
・パノプティコン教会のメンバー全員または半数の死亡
 →天義名声に悪名が付与されることがあります
・聖力エンジンの回収
 →幻想名声がプラスされることがあります

■パノプティコン教会
 聖力推進クルーザーを用いて海を移動し、『聖巧人形』というホーリーシンボル変形型の戦闘人形を用いて戦う過激派の聖職者たちです。
 いちおう天義の名誉のために述べておきますが、彼らの聖書にある文言はあくまでパノプティコン教会に伝わるものであって天義全体の共通教義ではありません。同じ天義PCでも理解できないということもあるでしょう。

・教会員&聖巧人形 約10人
 この二つは1ユニットの扱い、というか教会員がメインで聖巧人形は武器の扱いになります。(戦闘において「教会員にダイレクトアタックします」と書く必要もありません。字数がもったいないのでスルーしてください)
 戦闘能力的にはオールレンジに対応した戦闘と自他の回復スキルを共通してもっています。
 要するに全員がヒーラー兼アタッカーです。
 それ以外のスキルにはやや個性があるようですが、それは戦ってみないと分からないでしょう。

■グッドクルーザー&ビッグクルーザー
 今回の依頼にはNPCのグッドクルーザーが同行し、愛機である古代船(小型船相当)を操縦してくれます。
 グッドクルーザーは超貫【万能】の攻撃のほか、格闘と射撃をこなすことができます。
 戦いの結果によっては、彼が成長していくこともあるかも……。



●重要な備考
<青海のバッカニア>ではイレギュラーズ個人毎に特別な『海洋王国事業貢献値』をカウントします。
 この貢献値は参加関連シナリオの結果、キャラクターの活躍等により変動し、高い数字を持つキャラクターは外洋進出時に役割を受ける場合がある、優先シナリオが設定される可能性がある等、特別な結果を受ける可能性があります。『海洋王国事業貢献値』の状況は特設ページで公開されます。

■■■アドリブ度■■■
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用ください。

  • <青海のバッカニア>勇者進水GC外伝 正義の味方は、正義の敵完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年12月17日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)
華蓮の大好きな人
デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)
共にあれ
主人=公(p3p000578)
ハム子
フロウ・リバー(p3p000709)
夢に一途な
寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
グリムペイン・ダカタール(p3p002887)
わるいおおかみさん
新道 風牙(p3p005012)
よをつむぐもの
伊達 千尋(p3p007569)
Go To HeLL!

サポートNPC一覧(1人)

グッドクルーザー(p3n000117)
勇者進水

リプレイ

●ビッグクルーザー
 走るクルーザーの上でリズミカルに歌う『Punch Rapper』伊達 千尋(p3p007569)。
 操縦桿を握る全長3m近い人型ロボットグッドクルーザーの横で、『ハム子』主人=公(p3p000578)がドリンクを飲み干した。
「一緒に戦うのは古代遺跡の時以来だね、グッディ」
「はい、戦士主人公! ビッグクルーザーも再会を喜んでいます」
「それはよかった」
 ビッグクルーザーとイレギュラーズたちの出会いはつい最近のことだった。
 古代遺跡に眠っていた秘宝種の彼を目覚めさせ、彼や古代船を奪い取ろうとする海賊と戦った彼ら。希望合身(パンドラ・フュージョン)によって新たな姿を見せたグッドクルーザーは新たなイレギュラーズとなり、ローレットへと合流したのだった。
 彼は厳密にはローレットギルド員の扱いではないが、オーナーであるところの幻想貴族ペンドラゴン氏から出向という形でローレットに強力している。
「お前マジ半端ねえからさー、ゆくゆくは俺のチーム『悠久-UQ-』に入って欲しいんだわ。絶対ェ楽しいからよ、な!」
「悠久……いい響きです、戦士伊達」
 グッドクルーザーはロボットの割にやや有機的な口元で小さく笑った。
「今回はしっかり相手をやっつけて、海洋の人たちを守ろうな!
 よろしくなグッドクルーザーさん!」
 『帰ってきた牙』新道 風牙(p3p005012)が拳をかざすと、グッドクルーザーは大きな拳をそっと風牙の拳に当てた。彼から湧き上がる勇気や正義、そして優しさの感情がオーラとなって風牙には見える。
(強くて優しいロボか……こんなのと一緒に戦えるなんてワクワクするな!)
「ヨォーシ。今回の目標をおさらいするぞ。
 敵をなるべく死なせない!
 聖力エンジンの奪取!
 はい! 復唱!」
 後ろの船へ振り返って指を突きつける千尋。
 モルティエ号を操縦していた『蒼海守護』ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)は手をかざして復唱した。
「敵をなるべく死なせない! 聖力エンジンの奪取!」
 それに続く『夢に一途な』フロウ・リバー(p3p000709)とはまた別に、ココロはふうと息をついた。
「相変わらず天義の人たちは何を言ってるのかわからないわ。海洋の邪魔だからどっか行ってくれないかなあ」
「クハハ!」
 その横を走るグレイスフルイザベラ号の座席でワインを片手に笑う『わるいおおかみさん』グリムペイン・ダカタール(p3p002887)。
「しかし正義・不正義ときたか!!! 私にそれを言う輩がまだ居るか!!!
 いいだろう、ああいいだろう!!! 私が悪の役を担おう。
 そして正義の諸君等は自らが主人公で無い事に絶望し悪夢に魘されると良い。
 生きてそうする事が出来たらな!」
「だいぶやる気だなあ」
 『女王忠節』秋宮・史之(p3p002233)は苦笑しつつ、前方をはしる船に横付けして呼びかけた。
「船を連結しよう、グッドクルーザーくん。それと紹介が遅れたね。俺は秋宮史之。イザベラ女王陛下の忠実なる下僕だよ。大号令の成功こそが俺の正義だ!」
「はい、よろしくお願いします戦士史之!」
「とう!」
 『大いなる者』デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)が壺に横座りして浮遊、ビッグクルーザーへと乗り込んできた。
「妾の小鳥が敵の船を発見したのじゃ。南南西に舵を取るのじゃー!」
「イエス、戦士デイジー!」
 三隻の船は同時にカーブをかけ、それぞれに加速をかけた。
 船の形状やシステムは異なれど、同じように動くというのがこの世界である。
 それは天義の聖力エンジン式クルーザーも同じだ。
 こうこうと光を放ち、走る天義のクルーザー。
 乗組員たちの頭上にホーリーシンボルが現れたのを見て、全員が一斉に戦闘態勢に入った。
 ゲーム端末を起動し装備を展開する公。
「話し合いをする気は無い、ってことか。いくよみんな!」

●ベンサム・パノプティコンとパノプティコン教会
 ホーリーシンボルに祈りを捧げることで操縦が可能になるこの聖力エンジンクルーザーには10名の信徒たちが乗り込んでいた。
「神父、未確認の船がこちらへ接近中」
「我らが正義を阻むか。サーチアンドデストロイだ。異教徒どもをなぎ払え」
「「了解!」」
 信徒たちはそれぞれ聖句を唱えると、頭上にホーリーシンボルを出現させた。
 変形しながら飛行し、ビッグクルーザーへと襲いかかっていく聖巧人形たち。
 聖なる祈りによって操縦者と連結した聖巧人形は、剣状の腕ホーリーブレードとそこから放たれるホーリーカノンを装備している。
「一斉放射!」
 複数の聖巧人形から放たれるカノンがクルーザーを襲う……が、史之の広げた理力障壁がそれを阻んだ。
「不正義上等! 俺こそは大号令の体現者、秋宮史之! 貴様らの偏狭な教義など海の藻屑にしてくれる!」
「大号令の体現者だと……? 不正義極まりない!」
「神父!」
 パプティノコン神父は怒りをあらわにクルーザーを反転。ビッグクルーザーとそれに連結したグレイスフルイザベラ号めがけて突進をしかけてきた。
「ふむ……」
 顎をなでるダカタール。
 彼の目には、聖力クルーザーの先端部。自動車でいうエンジンルームにあたる部分が透視できていた。
 その中で光る物体が、情報にあった聖力エンジンに間違いないだろう。
 相手にそれを知られぬため、テレパスによって仲間たちにその情報を共有する。
 ダカタールは仕上げにと『蛙の強迫』を仕掛けると、パプティノコン神父をつり上げにかかった。
「さあ、ぶつかるぞ。文字通り」
「ぶつける気なの?」
 横を追い抜き、聖力クルーザーの前に回り込んで進路妨害をしかけようとしていたココロおよびモルティエ号が急いで反転。衝突状態の聖力クルーザーを逃がさぬように、その後部に船をぶつけて距離を詰める作戦に出た。
「支援は任せて。フロウと一緒に戦うから」
「こっちも突撃じゃー!」
 激突。更に激突。
 はしる衝撃をジャンプと簡易飛行によってにがすと、デイジーは聖力クルーザー側へと飛び込んでいく。
「まずはこいつをくらうのじゃ!」
 『誘う青き月』を発動。デイジーの空に出現した月がパプティノコン教会の信徒たちを照らし、危険を察知した彼らは聖巧人形を引き戻して防御をはかった。
「まずい、【致命】攻撃です!」
「何だと!? いまいましい!」
「よそ見はさせない!」
 風牙はビッグクルーザーの足場を蹴り、弾丸のごとく飛ぶと聖巧人形へと飛びかかった。
 ホーリーブレードと風牙の剣がぶつかり、激しい火花をはしらせる。
「なんという衝撃……! 貴様は一体」
「人の世に仇為す魔を討ち、人々を護る! それがオレの務め!」
「魔だと!? 我々が魔であるはずがない!」
「かもな。けど、普通に生きてる人たちにただ暴力を振るうのは見過ごせない!」
「ただの民兵というわけではなさそうだ。ならば……不正義断罪!」
 パプティノコン神父は聖巧人形とともにビッグクルーザーへと飛び込んでくる。
 公はハイドロプレッシャーを浴びせて反撃をしかけると、どこかシニカルに目を細めた。
「正義の敵ははまた別の正義、か。わるい奴を倒して『めでたし、めでたし』といかないのが、なかなかにつらい所だね」
「諦めてはいけません戦士主人公」
 グッドクルーザーは肩の大砲を展開。接近するパプティノコン神父へと、公にあわせて砲撃を放った。
「正義そのものは人類共通のもの。その手段と信仰が異なるのみです。それを束ねるものこそ、勇気なのです。それを教えたのはあなたですよ、イレギュラーズ」
「……うん!」
「ヘイヘイ、俺とも仲良くしてくれよなグッディ。そんじゃ行くぜ!」
 千尋は助走をつけて跳躍すると、パプティノコン神父の聖巧人形めがけて蹴りか――ろうとして船の連結部につまづいて顔から倒れた。
「ぐおおおおおおおおお!」
「戦士千尋!」
「やっぱ俺船もだめだわ……ってうおお!?」
 自らの顔面めがけて振り下ろされるホーリーブレード。を、グッドクルーザーががしりと素手(?)で受け止めた。
「グッディ!」
「立ってください戦士千尋。たとえ派手に転んでも必ず立ち上がる。それを教えてくれたのはあなたです!」
「いいこと言うじゃん?」
 千尋はネックスプリングで立ち上がり、再び格闘の構えをとった。

●聖なる力
「ほたてぱんち!」
 ココロの繰り出した細い腕が聖巧人形に命中し、謎の衝撃によって吹き飛んでいく。そのあおりによって操縦していた信徒も一緒に吹き飛び、船の手すりを乗り越えて海へと転落した。
「うーん、できるだけ死なせないんだったよね? それじゃあ……」
 ココロは少しだけ考えてから、手を指でっぽうの形にして突き出した。
 彼女の魔力がパールバレットになって発射され、魔力性非殺傷弾が水没した信徒を気絶させた。
 慌てて聖巧人形をはなって引っ張り上げる別の信徒。
「ほうほう、仲間を助けるとはよい心がけじゃ」
 後ろに立ったデイジーが拳を握り込み、信徒の頭を殴りつけた。
「でいじーぱんち!」
 崩れ落ちる信徒。
 彼らの目標とする【不殺】鎮圧作戦のネックは敵の耐久力である。
 HPや防御や回避はともかくとして、【不殺】のコスト分攻撃が弱まるのは否めず、スキル選択にもかなり縛りが生まれてくる。相手がいつ死ぬかぱっと見で正確にはわからないので、何発か撃ったらあとはとにかく【不殺】し続けるしかない。
 そこで邪魔になるのがヒールとEXF。デイジーはこの二つを上手に封殺し、上手に殴り倒していた。
「此度『大号令』は神の造りたもうた場所への巡礼。故、海を侵すものを裁くには当たらぬのじゃ」
「そんな理屈が……」
「お主にもいずれわかる」

 一方、衝突したビッグクルーザー側では史之が無数のホーリーカノンを障壁によって防御していた。
「ダカタールさん、エンジンはどうなってる?」
「戦いながら奪うのは不可能ではないが」
「貴様、我らが聖なる船に手を触れようなどと……! 不正義殲滅!」
 パプティノコン神父はフルパワーで動かした聖巧人形を突撃させ、ダカタールへと斬りかかった。
 それをひらりとかわし、神父へ急速に接近するダカタール。
 魔哭剣によってまとった虚無の力が手刀となり、神父の胸を貫いていく。
「おっと、これはこれは。うっかり殺してしまったか」
 手を引き抜き、心臓を握りつぶす。
 崩れ落ちた神父の姿に、信徒たちは激しく動揺した。
「全員殺そうなんてつもりはないんだ。おとなしく倒れてくれ」
 公の繰り出した拳が信徒に命中。その場に気絶した。
 力を失ってホーリーシンボルへと戻っていく聖巧人形たち。
 が、残った信徒のひとりがクルーザーのシンボルへと手をかけた。
「おのれ……よくもパプティノコン神父を! われらの正義を見せてやる!」
 ホーリーシンボルたちが信徒へ集まり、大きな人型の光へと変化していく。
「これは……みんな伏せて!」
 公は砲撃を察してカウンターヒールを発射。
 人型の光はめちゃくちゃな砲撃でグッドクルーザーたちを攻撃した。
「怒りの力……」
「グッディ、反撃だ。もっかいアレやろうぜ! 風牙も!」
「えっオレも!?」
「承知しました、希望の戦士よ!」
 グッドクルーザーは風牙と千尋を肩に乗せると、ジェット噴射をかけて人型の光へと飛びかかった。
「オラァ! 逆上がりキックリベンジじゃい!」
 広げたグッドクルーザーの腕をぐるんと周り、強烈なキックを繰り出す千尋。
 破壊した光の障壁の向こうに、信徒の姿が見えた。
「行け、風牙!」
「あくまで命は……」
「わかってる。オレだって、別に人殺しがしたいわけじゃないしね!」
 グッドクルーザーに投げられるようにしてとんだ風牙が、信徒ごと光をけり抜いていく。
 空中で気絶した信徒を確保し、そのままクルーザーへと着地。
 その頭上で、人型の光ははげしい爆発を起こした。

 パプティノコン教会の信徒たちは皆気を失った状態でクルーザーのデッキに並べられていた。
 もう終わったとばかりに自分の船に戻るココロと、傷の手当てを受けるフロウたち。
 公は手当をしながら、聖力クルーザーのほうを振り返った。
「ふむ……これが聖力エンジンか」
 ダカタールはエンジンルームを開いて、光るキューブ状の物体を取り出した。
「しかし他国のエンジンを積んで強化できるというのも不思議だね。
 どちらかというとこの手のものは練達にばかりあるものと思っていたよ」
「確かにそういうイメージあるけど、それってロボ系のウォーカーがいるからだしね」
 史之はグッドクルーザーのいかにもなフォルムをあらためて観察してみた。
「いままでの常識じゃ考えられなかったけど、秘宝種ってこういうものでもあるよね。確かに。ほら、グッドクルーザーくん」
 差し出されたエンジンを手にするグッドクルーザー。
 すると、胸の紋章がエンジンの光に反応して点滅しはじめた。
「おっ、なにかあるのか? 変形か? 合体か!?」
「よしっ、グッディー。今こそ合体の時なのじゃ!」
 ここぞとばかりに飛びついてくる風牙とデイジー。そして興奮する千尋。
「聖力エンジンてヤツが本当にお前の力になんなら、絶対ェなんか反応があるはずだと思ってたぜ。で……今か!?」
「いいえ。今では、ないようですね」
 グッドクルーザーはエンジンを一度箱にいれ、クルーザーへと積み込んだ。
「このエンジンは持ち帰って分析してみましょう。天義の正義とは本来的に魔種を倒す精神のこと。それは私の『魔と戦う』という使命と一致するものです。なにかわかったらお知らせします」
「おう、たのむぜ!」
 こうして、イレギュラーズたちは戦場をあとにした。
 エンジンを抜いたクルーザーはそのままに、デッキに気絶した信徒たちを適当においていったが、そのうち誰かが見つけてしかるべき所へ送ってくれるだろう。
 聖力エンジンがいかなるものであるのかも……いずれ、きっとわかるだろう。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 任務完了!
 エンジンの役割はいずれわかることでしょう。
 それでは、またグッドクルーザーと合う日まで!

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