PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<幻想配達人>白い便箋

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●白い翼に思いを載せて
 其処は煉瓦が積まれた家々が並ぶ住宅街。所々空襲で焼けた土地。
どこまでもいつでも蒼く、高く広がる空に、小さな白い点が群れを成して飛んでいた。
それを見つけたあどけない小さな子供が母親の服の裾を掴み、歓声を上げる。
子供の頬は煤けていたし、母親の顔は少し痩せていた。しかし其処に見えるのは絶望の色ではなく。

「はとだ、はと、きたよ、おかあさん!」

「本当ね。お手紙は持ってきた?」

「うん!」

 子供は元気よく頷いて、ぴゅいと指笛を吹く。すると親子めがけ群れの中から一つ、飛び出してくる影。
鳩だ。彼はぽっぽぅと一声鳴いて、地面にお行儀よく止まった。子供がそれに駆け寄って、自分の懐を弄る。

「てがみ、おとうさんに。届けてくれるんだよね? あのね、おとうさんはとおい、とおいところに行っちゃったんだって。空の上にいるんだって。……きみはとべるから、きっとおとうさんのところに行けるんだよね?」

懐から飛び出したのはすこし縒れてはいるが、綺麗にたたまれた紙だ。封のつもりで貼られたかわいらしい花のシールだけがすこし、浮いている。

「これ、ぼくのとっておき! だからぜったいとどけてね」

 子供は鳩の頭を撫でた。鳩はぽぅ、とまた一声。
くちばしに手紙を咥えて、翼を広げた。高く、高く舞い上がり、そしてまた点の一つになる。

 鳩が来る。鳩は行く。
白い翼を羽ばたかせ、千里を、万里を、時空を、世界さえも超えて――。
貴方に、誰かに、彼らのように白い封筒の手紙を届けに来る。
例えば遠い場所にいる恋人、居場所もわからない昔の友。
実際には居ない、物語の中の人。
……もう会えない誰か。
そのくちばしには一通の手紙を。その翼には抱えた想いを。
それは叶わぬ思いを伝える一筋の糸。もう一度、を現にする世界。
手紙配達を望むものが居る限り、何度でもいつでも鳩は飛んでいくのだ。
その物語は<幻想配達人>。

●手紙を書いてみよう!
「何処にでも、誰にでも。伝えたい思いというものはあるものよね!」

 『ホライゾンシーカー』ポルックス・ジェミニは興奮気味に貴方達に一冊の本を見せる。
その物語の中では、何処へでも、誰にでも、届く手紙があるらしい。

「きっと、あなた達にも伝えたい人、知らせを届けたい人が居ると思うの。だから、その人に向かって手紙を書いてみない? 深く考えなくても大丈夫。日頃の感謝、ぐらいでもいいと思うの」

 レターセットは用意したのよ、とポルックスは歌うように。楽しそうにあなた達の目の前に便箋を広げた。
色とりどりの、様々な模様の材質の用紙が机の上を彩る。

「封筒は真っ白で。ってお約束らしいけれど、封筒や、封に工夫したり、飾り付けたりするのは大丈夫みたい。あとは物語の中で鳩を呼べば、それを咥えて持っていってくれるの。イレギュラーズはいろんなお仕事で大変だと聞いたもの。たまにはゆっくり、文字と向き合ってみるのも悪くはないと思うわ!」

NMコメント

こんにちは!! お手紙っていいですよね。手書きの温かみがあると思います、金華鉄仙です。
自分の大切な人や、伝えたいことがある人にお手紙を書いて、鳩に託すまでのシナリオになります。
鳩から手紙を受け取るシナリオも今後公開予定です。

●世界観
<幻想配達人>と呼ばれる世界で、様々な小世界が連なるオムニバスな世界です。
一人ひとり、もしくはプレイングを合わせた方々で別の世界に飛ばされ、鳩に思いを託すことになります。メタ的に言うと何を言っても秘密は守られます。
そのため、希望する世界観等ありましたらそれとなく伝えていただけると情景描写などに利用させていただきます。無ければそれっぽく書きます。
冒頭の世界は夜と昼の利権を争って戦乱中の、一日中青空が広がる世界になります。
ただ、全世界共通して白い鳩が手紙の運び手である、という認識があり、鳩だけは何があっても殺さないという風潮があります。

●目的
お手紙を書く。そして鳩に託す。
便箋等凝っていただいてもいいし、あっさり白便箋でもオッケーです。
素敵なお手紙をかいていただくことが成功条件です。

●書いていただきたいこと
・届ける相手
・書いた手紙の内容
・どのような思いでそれを書いたのか
・手紙の見た目
あたりがあるととてもリプレイを書きやすいです。
他にもどんどん心情や行動などください!!! 助かります!!

  • <幻想配達人>白い便箋完了
  • NM名金華鉄仙
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2019年12月22日 22時25分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

カレン・クルーツォ(p3p002272)
夜明けの蝶
ジェック・アーロン(p3p004755)
冠位狙撃者
アリア・テリア(p3p007129)
いにしえと今の紡ぎ手
香宮夜 凪(p3p007556)
メンヘラクソ女

リプレイ

●伝書鳩は舞い降りる
 くるる、と声が聞こえた。
 上を見上げれば空の奥に白い、白い鳩。地上に居ても配達の兆しが見えるように、きっとかれらはあんな色をしているのだろう。
 ひらりと手を振れば滑るように舞い降りて、従順に、求めるならばお愛想に擦りついたりなんてしながら貴方を見上げる。
 それは願いを運ぶ鳥。それは思いを届ける鳥。
 故に、ことさら多くの出会いや別れの物語があるイレギュラーズ達がそれぞれの大地を踏みしめた時、彼らはまるで待っていたかのように、その傍らに滑り込む。

●無くした記憶と金の君

「秘密のお手紙なのよ、鳩さん」

 そっと頭を撫で、品のいい金の意匠が施された便箋を渡す。
 『蝶かげろい』カレン・クルーツォ(p3p002272) が足を踏み入れた、そこは満面のお花畑だった。
 なんの花かはよくわからない。けれどやわらかな甘さがカレンの鼻孔をくすぐった。赤、白、桃の花が舞い飛び、ひらりと蝶が鳩の咥えた手紙に添えられた、小さな桃色の花飾りに止まる。

「わたしはね、私の故郷の様な場所にお手紙を届けたいの」

 鳩に教え込むように、そして自分で思い返すようにカレンは告げる。
ような、というのは記憶が定かでないから。もはや名前もなにもかも、そこの建物一つ思い出せないけれど。
 カレンはそれを知っている。幾重の平行世界の一つ、最下層の秘密の作戦司令室。
 そこでいつもカレンを待っていた、ひだまりのような金を。
 戦いなんて似合わないのに、あえて戦う事を選んだ。小さくて可愛い、誰かのことを。

「きっと、受け取る人も読む人も居ないのでしょうけど……。それでも、ね」

 便箋に記した名前は今のもの。直筆なんてあまりしないから、少したどたどしい丸文字で。もしも貴方に届いたとしても困ってしまうかしらね、と眉を小さく下げる。
 でも、カレンは信じている――。
 貴方はきっと私に気づいてくれると。そしてもう一度、私の名前を呼んでくれるのでしょう。
 そう考えればなんだか少しカレンは嬉しくて、そして少しさみしい。


「『名前も忘れてしまった大切な人』へ。お願い。少し無茶を言うかもしれないけれど」

 ごめんなさい、忘れてしまって。貴方と一緒に笑った日々は遠く、遠く昔で。
 覚えているのは貴女の色彩だけだった。
 だから、貴女の色を背負って、貴女の分まで生きていくの。……たとえ、その手を血に汚してしまっても。
 知らない場所でちゃんと立っているから。

 一通り届け先を鳩に教えこみ、カレンは微笑んだ。
 鳩は何も語らない。ただ一声、くるっぽと応える。そして、小さく白い翼を2度はためかせた。

 風が舞う。花びらが散り、視界をかき乱す。
 小さな姿に見合わぬ羽ばたきで、力強く鳩は飛び立った。
 それは、ささやかな少女の願いを乗せることに、勿論、請け負った。と姿で示しているのかもしれない。

●尊敬と迷惑は表裏一体
 小さな宿屋。旅の途中でいつか過ごしたかもしれない、過ごしてないかもしれない。そんな没個性的な小部屋の一室で手紙のやり取りは行われた。
 渡したいものがいっぱいあるんだよねえ、と。『その手に詩篇を』アリア・テリア(p3p007129)が手紙とともに取り出したのは大量の紙束。
 その顔に浮かぶのは天使の……悪魔の? 微笑み。

「鳩さん、この手紙……と請求書の束、ちょっと重いかもだけどお師匠に届けてくれるかな?」

 そう、それは全てアリアの師匠のたまりにたまったツケの一部である。全部。明らかに鳩が持てる重量を若干超過してるし、それを見た鳩がすっと立ち上がって一度飛び去りどこからか、くくり紐と、小ぶりのバッグを持ってくるほどである。
 きちんと手紙の本文にも丁寧に、『お師匠のお部屋に大量の請求書が届いています。どうせ、旅の最中にツケで飲食した時のものだと思いますが、私は一切払っていません。
 結構な量があるので、この際その一部を送っておきます。きちんと払ってくださいね』と追伸を書き記してあるし、完璧だ。

 ……勿論、師匠のことをぞんざいに扱っているわけではないのだ。ただちょっと、時折来る督促やお怒りの手紙を読まされる私の気持ちを知ってほしいだけ。
 伝えたいこともいっぱいに込めた。
 無事でしょうか。私は元気にやっています。
 お仕事もあらゆる意味で好調で、ひとつ。生きたお伽噺に触れることもありました。
 まだまだひよっこだけど、頑張ってます。
 自分の成したことを褒めて欲しくて。
 あらゆる意味で特別な手紙だから、便箋にも工夫を凝らす。
 師匠の部屋から見つかった羊皮紙。こんなものがあるなんて珍しいな、と思うがまあ、師匠のコレクションは変なものばかりだからなぁ……。
 真っ白い封筒にそれを差し込んだときのことを思い出す。まあ、双方旅人としての暮らしを優先しているのだから仕方ないのだが、ちょっとした意趣返しだ。

 鳩は従順にアリアの願いを、思いを届ける。口には便箋、首から下げたピカピカ光る黒いバッグの中には請求書。
 さらに郵便局員、といったなんだか微笑ましげな姿になりながら。
 開け放っていた窓から飛び出す。悠々と空を駆って、どこかへと真っ直ぐに飛んでいく鳩を眺めて、そして。

「お師匠の驚く顔が目に浮かぶなあ……!」

アリアは一人、意地の悪い笑顔を浮かべるのであった。
ザマミロ!

●ラブレター・メランコリィ
 『メンヘラクソ女』香宮夜 凪(p3p007556)が世界に踏み込んで、始めに聞いたのは雑踏。
 それはきっと、彼女にとって耳に馴染むものであっただろう。
 無辜なる混沌よりもずっと濁った空気。下へ目線を向けると見えるのは人とコンクリートの建物の群れ。
 吹きすさぶ冷たい風が凪と、進入禁止のフェンスを強く揺らす。
 ……ビルだ。凪はビルの屋上に立っていた。傍らには真っ白な鳩。くる、と小さく鳴き声を上げ、貴方のことを見上げている。

「……届け先のせいかな」

 いくら物語の中の、偽物の風景であるとはいえいろいろと、思うところはあるのだろう。
 ただまあ、取り敢えず本題だ。凪が取り出したのはまるで夕焼けのようなオレンジの便箋。

「いいでしょ。あの子が好きって言ってたんだ。……中は水色でね、凪って水色っぽいでしょ?」

 そうでもないか。なんて独りごちながら鳩を見る。小さく首を傾げたように見えて苦笑した。

「ちょっと話したいだけだから、聞いててね。あのね、届けて欲しい相手はね、うちを殺した人なんだ」

 殺した、というのにもちょっと違うが。正しく言うと自殺の原因になった人。
 そして凪の最愛の人で、幼馴染でもあった。

「うちさ、好きだったんだよ。……その子のこと。勿論女の子だし、恋愛的な意味だよ」

 同性が好きだ、と気づいたのもその時だった。たまらなくって相手を求めたが、答えは同棲相手は無理の言葉。
 少しくらい試してみればよかったのにひどいよね。と若干独りよがりな感傷が一つ。
 だから死を選んだ。彼女に拒絶されたら生きていけないと思えたから。
 けれど……。なんだか生きているし、こっちの世界もそんなに悪くない。かわいい子もいっぱいいるし。
 だから、あの子に願うのは一つだけ。
 幸せに生きていて欲しい。
 いきなり死なれてびっくりしたよね。すごい困っただろうね。色々、迷惑をかけたとも思う。
 だからこそ、凪の事を忘れててたって構わない。
 貴方も、自分の幸せを見つけてくれてたらいいなぁ。

 鳩が飛び立つ。其の方向を追って、空を仰げば大きな月。肌寒いのも当たり前だ。あたりはすっかりと夜だった。
 親愛なる貴方へ。――今宵の月は綺麗ですか?

●ささやかな|感謝《はじめて》を君へと

 かん、と金属が擦れ合うような、甲高い音。

 『ガスマスクガール』ジェック(p3p004755)が踏み込んだ其処はどこかの廃工場のようで、先程の音はローファーと地面に転がる廃材がぶつかりあった音であることが分かった。
 崩れた地面を避けながら少し歩くと、ぽっかりと天井に開いた穴。光差す円の真ん中に鳩の姿。

「イタ。……キミが届けてクレルんだね」

 頷くように一声、能天気な声。よくよく見るとジェックと揃いのガスマスクをつけているのがわかる。てくてくぴょんとジェックの元へと歩いてきて、ぽてん、と首から下げたバッグの口を広げる。

 ああ、此処もまた空気が悪いんだな。
 そんな気づきを得ながら託すべき思いを取り出した。
 それは大切な人に送るにしてはくしゃくしゃで、飾りっ気もない。でも無骨な師匠だし、届くはずのない手紙だもの。本心以外で飾ってもしょうがないな、と思うのだ。

 銃の使い方を、気配の読み方を、焚火の焚き方を。
 小さかったジェックに教えてくれた。
 厳しくて、きっと一人では死んでしまっていたような残酷な世界を生き抜く術を与えてくれた。
 無愛想で厳しいけれども、なんだか少し暖かい人。
 絶対に、口では言えないと思うし、今までも言えなかった感謝の言葉。
 今はもう自分と同じ無辜なる混沌にいる事を知っていて、あえて自分の故郷。元いた世界へと届けてほしいのだと、ジェックは鳩へと伝えた。

「モジで伝えるのもハズかしいけど。……届かナイ手紙で伝えるクライなら、いいカナって」

 文字なんて、ましてや手紙なんて書くことはなかったから。随分拙いものになってしまった。
 紙だってひしゃげてしまったのは何度も何度も書き直したからで、それでも中々読みにくい代物が出来てしまったな、とバッグに手紙を入れてやりながらジェックは思う。

 頭の中だったら、考えるだけなら――いくらだって、言えるのにな。

「ありがとう」と。

 暗い工場から光の中へ。鳩は飛び立つ。
 翼はただただ想いを運ぶ。だから、届かない手紙でさえも受け入れて。
 きっと届くことよりも、届けることや、受け取ることの方が意味のある手紙だってあるのだ。

成否

成功

状態異常

なし

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