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シナリオ詳細

思春期乙女と恋の歌

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●自覚した想いを音にのせて
 またこの痛みだ。忌々しげに胸に手を当てて、シャツを握る少女──改め、主人公の成瀬結衣のその口からは、悲しげなため息ひとつ。
 恋だと自覚したあの日から、ずっと。結衣の胸はズキズキと音をたてて痛むようになった。
(……胸が、痛い。)
 彼に他の女の子のことを見ないで欲しい。
 彼に触れないで欲しい。
 彼に頼って欲しい。
 彼に。彼に。彼に。
 脳内を埋め尽くすようなその思考も、また忌々しい。
 憎々しげにため息を吐くと、結衣はその瞳の端にたまった涙を乱雑に拭って、掲示板に貼られたポスターへと向かい直った。

『求む! 共に歌い上げてくれる仲間』

 その内容はこうだ。
 来る文化祭に向けて、部員四人の軽音部は仲間を求めていた。何せ、メンバーの三人が骨折捻挫などなど、色々とやらかしてしまったのだ。ボーカルは勿論、他の楽器でも構わないとのこと。
 それだけなら、結衣はスルーしていただろう。
 けれども。
 だけれども、彼女の心を掴んで離さない、そんな言葉が、荒々しい字で踊っていたからだ。

『あなたの想いをぶつけてみませんか』

 と。
 素直になれないと悩んでいた結衣でも。歌ならきっと、届けられる。そう考えたのだ。
「……でも、作詞までやるのは恥ずかしいな」
「なら俺も一緒にやろうかな」
「!?」
 隣に立つ青年──鈴鹿涼は、結衣の顔を見てね?と首をかしげた。
(いやいやいやいや、アンタに告白したいんだ、けど……いや、待て私。これってむしろいいタイミングなのでは?)
 思わず百面相をする結衣の頭をくしゃっと撫でると、涼は嬉しそうに告げた。
「俺もやってみたかったし。結衣もでしょ?なら丁度いいじゃん」
 それとも、と近寄って、悪戯に囁くのだ。
「俺が一緒だと、嫌だった?」
「~~~~っ、はぁ!? 冗談もからかうのも大概にして!
 ……別に涼くんと一緒にやるの、嫌なんて一言も言ってないでしょ」
 語尾は段々と小さくなり、しかもその口振りも可愛らしいものではないが、結衣の表情は嬉しげで。あの氷人形と呼ばれた彼女からは想像できないものだった。
「じゃあ決まり。ふふ、俺も楽しみだ!」
 何より、嬉しそうに笑う彼を見ていると、結衣自身も嬉しくなるのだから。
「いやここ部室の前だから!!!!!!」
 軽音部最後の生き残り──改め、部長兼未だ負傷なしの陽太が扉を勢いよく開けるまで、ツッコミは入らなかったようだ。

●奏でませ、恋の音
「さぁさ、物語は最終章と言ったところかな?」
 カストルは楽しそうに腕の中の本──天邪鬼な恋心の頁を捲った。
「結衣はついに決心したようだね。なかなか大胆な方法で、告白するつもりらしいじゃないか? ふふ、なら君達にも物語の結末を見届けてもらわなきゃ」
 差し出されたのは2枚のチラシ。
 1つ目は学園祭のお知らせ、と書かれている。
 そしてもう1つは、部員募集のポスターだ。
「ここに彼女は、片想いの彼と参加するようだよ?」
 にっこりと笑みを浮かべつつも、ただ、と表情を曇らせつつカストルは続けた。
「ただ、これ、作詞作曲とかも自分でやるらしくてね。あとは……彼女、楽器ができないんだって」
 だから。
 ここまで来るとわかるだろう。最早テンプレだ。
「彼女のこと。最後まで、助けてあげてくれないかな」
 よろしくね、とカストルは微笑んで言った。

NMコメント

どうも、染です。
二本目にして結衣ちゃんは告白することとなりました。
これも前回の皆様の活躍あってです。
今回も期待しています。

●依頼内容
 結衣の告白の手伝い。

 文化祭では軽音部に仮入部し、歌を歌うようです。
 作詞のお手伝いや、楽器演奏(エアーでも可)をして、バンド感を上げてください。

●プレイング書式
 一行目にポジションを明記してください。
 デフォルトは友人ですが、先生や先輩後輩でも構いません。
 詳しくは ●その他 にて。

●世界観
 現代日本を舞台にした『天邪鬼な恋心』という恋愛小説の中。
 主人公である少女が通う望月学園で、少女が日に日に【無自覚に】想いを募らせていくのが見所。

●プロフィール
 成瀬 結衣(なるせ ゆい)。
 望月学園高等部ニ年。弓道部ですが期間限定軽音部。思ってることを素直に口に出せないため、クールで無愛想な印象を持たれがち。
 綺麗な黒髪と荒い口調、あまり笑わないことからついたあだ名は『氷人形』。本人は知らない。
 片想いの相手のことをアイツと呼び名前をばらさないように必死。相手が絡むとすぐに顔に出る。
【追加情報】
 恋を自覚してか、少し女性らしさを磨くようになった。最近はよく笑うようになり、氷人形と呼ばれることは少なくなった。

 【NEW!】
 鈴鹿 涼(すずか りょう)
 望月学園高等部三年。部活無所属ですが、期間限定軽音部。人懐っこい笑顔と優しい言葉がイケメン。見た目もイケメン。本の中だもの。
 結衣の幼馴染。

 卯月 陽太(うづき ひなた)
 望月学園高等部三年。軽音部部長。怪我なしの生き残り。

●その他
 場所は打ち合わせ→本番へと移り変わります。
 皆さんと結衣は【友人】という関係です。ですが、年齢や外見などを考慮して関係を【先生】や【先輩】【後輩】にして頂いても構いません。遠慮なく話しかけてください。

 また、プレイングのどこかに、組み込みたい歌詞を書いていただければ、取り入れて歌います。結衣が。

●サンプルプレイング
 ※今回は結衣のプレイングに近いものととらえてください。
【同級生】
 私は歌を作って歌うん……だけど。
 やり方とかわかんないんだよね……あ、ちょ、こら、涼!
 近いから……っ、あと、あのねぇ、落書きするためのものじゃないの!
 皆の意見も取り入れつつ完成した歌。これは、私のラブソング。
 アンタのために作った曲なんだからね……とは、言えないから。
 まぁ、うん。やれるだけ頑張ろう。

  • 思春期乙女と恋の歌完了
  • NM名
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2019年12月08日 20時55分
  • 参加人数4/4人
  • 相談4日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

マルク・シリング(p3p001309)
軍師
アリア・テリア(p3p007129)
いにしえと今の紡ぎ手
ジュルナット・ウィウスト(p3p007518)
風吹かす狩人
シュリセル=ブラッド=カーマイン(p3p007784)
自信と強さを求める者

リプレイ

●輝け軽音部
「あ、皆も参加するんだ……。じゃあ丁度いいや、手伝ってよ」
 結衣が扉を開きやってきた四人に声をかける。
「軽音部、大変なんだって? 僕で良かったら手伝うよ」
 垂れ目がちな目をさらに和らげて微笑んだのはマルク・シリング(p3p001309) だ。
「助かる! 成瀬と鈴鹿だけじゃ俺の胃が持たねーんだもん」
「陽太くんちょっと!?」
 すぐにバチバチと火花を飛ばし合う二人。そんな二人をみて、鈴鹿涼は笑みを浮かべた。
 結衣が想いを寄せる相手であることを知っていて、更には相談にまで乗った『自信と強さを求める者』シュリセル=ブラッド=カーマイン(p3p007784) は、ふと思う。
(先輩、随分雰囲気が柔らかくなったというか…。
 あまり表情も無かった先輩がここまで柔らかくなったのも片想いの相手のお陰かな。
 そのお相手さんも変化に気付いて先輩の所に来てるとか…? まさかね?)
 だから、興味本位でふと声をかけて聞いてみた。
「結衣先輩…何か柔らかくて可愛くなりましたね?」
 涼は驚いた顔をしつつも、シュリセル──後輩の質問に優しい言葉を返した。
「ふふ、そうだね。結衣が可愛いことは……俺だけが知ってればよかったんだけど」
 少しむくれたように結衣と陽太の様子を見守る涼もまた、結衣に恋をしているのかもしれない。
(これは手応えアリね! ナイス判断私!)
 密かにガッツポーズをするシュリセルの隣に並ぶ『その手に詩篇を』アリア・テリア(p3p007129) は、微笑ましげにその様子を眺めていた。
(それにしても恋かあ。いいよね、恋。私もしたいなあ)
 音を愛する精霊であるアリアに、今回作る恋の歌は少し擽ったいものになるかもしれない。
 ワイワイガヤガヤしていると、そこに先生である『風吹かす狩人』ジュルナット・ウィウスト(p3p007518) が現れた。
「ンン…少し賑やかだナ…? と思ったら、なるほどネ。
 なんかいっぱい集まってたんだネ。Good moning everyone,入部希望かナ?」
 説明しよう。
 ジュルナット先生(愛称はジュル先生!)は、音楽部の副顧問である。
 50代だと本人は言い張っているが、どっからどう見ても確実に50も年食って無いけど気にしちゃいけない(らしい)。生徒からは年齢不詳だと騒がれている。
 前の英語担当の海外教師から願いを受けてやってきたようで、英語日本語両方ペラペラ、たまに英語の発音の良さから聞き直されることもしばしば。なお学校に来てから3年目。そこそこ長い。
 そこそこ有名な海外バンドの元ドラマーであったという、噂が囁かれているが、噂の真偽は如何程か。それは彼にしか分からない。
 尚、放課後は部室で寝ている。ごく稀にえげつないドラムソロが聞こえるとか何とか…という噂の元凶。部長は一度だけ目撃している。
 さて説明が終わった頃。部長である陽太が本題を思い出して紙とペンを取り出した。
「よし、作詞作曲するぞお前ら! 放課後だって有限なんだからな」
 マルクが同意するように頷けば、二人の距離を近くするナイスな名案を提案する。
「作詞は成瀬さんと鈴鹿さん中心で、考えてもらっていいかな? そしたら、作曲と編曲は僕が手伝うよ」
「おっ、サンキュー! じゃあ成瀬と涼、あとカーマインにテリアも頼む! 先生は寝るなよ」
「寝ないヨ」
「間奏のメロディ、2つアイデアがあるんだけど、成瀬さんと鈴鹿さんは、どっちが良いと思う?」
 陽太とジュルナットがいつものように和やかに話進めれば、マルクはキーボードでさらりとメロディを演奏してみせる
「んー、私はこっちかな。耳に入りやすいし、リズムもいいから」
「俺もそっちかも。ふふ、同じだね?」
「はっ……べ、別にたまたまだから、そんな、いや、うん、まぁ……」
「仲がいいんだね。じゃあこっちにしておくよ」
「俺の意見は!?」
 陽太にごめんと謝りつつ、マルクはテキパキとメロディを組み立てていく。作曲はどうにかなったようだ。しかし。
「あともう少しなのに、決め手になりそうな歌詞が決まらないよ〜」
 もちっとした頬を机にくっつけて、アリアは頬をふくらませた。
 シュリセルもうんうん唸っている。
 歌詞組にはどんよりしたムードが漂っていた。
「……じゃあさ。“君は気づいてないかもしれないけど”、とかどう?」
「先生からも。"悲しみも苦しさも、貴方と共に向かうなら"とか、いいんじゃないカナ」
 二人が意見をだすと、アリアとシュリセルは結衣のほうを見た。
 涼は結衣が意見を言う前に頭をぽんぽんして、紙にさらりと付け加えた。
「……ん、いーんじゃない」
 照れて素直になれない結衣が紙をじーっと見つめていると、シュリセルがバンッと結衣の背中を叩いた。曰く、応援のつもりで。
「歌詞が決まりましたね! じゃあ後は誰が歌うか何ですけど……」
「ぇと、私、楽器できないから、やりたぃ……か、な……」
 だんだん言葉が尻すぼみになっていく結衣に少し意地悪をするアリア。
「なんなら私が代わりに思いを歌ってあげよっか?
 なーんて、冗談だよっ。こういうのは自分で歌わないとね!」
「そうそう、ボーカルは先輩やってくださいね?想いのたけをぶつけろ!ってあるじゃないですか!
 ここでヘタレてどうするんですか!?行きましょう!!むしろ行け!
 歌詞とか最初に相手への感想でラストのサビで告白ドーンとかでもいいんですよ!!」
「ちょまっ、ふ、ふたりとも……!!」
 あ、と気がついた時にはもう遅い。涼の顔からは笑顔が消えていた。
「……結衣。告白するの?」
「……う、うん。好きな人に、この歌で」
 わしゃわしゃと涼が再び結衣の頭を撫でる。どこか、乱雑な手つきで。
「そっか……。頑張ってね」
 どこか投げやりな頑張れに、結衣は思わず俯いた。

●RainbowS
「皆、今日は来てくれてサンキューな! 軽音部期間限定スペシャルユニット、RainbowSのメンバーを紹介するぜ!」
 わぁ、と歓声が上がった。文化祭最終日の晩、毎年恒例の軽音部の演奏だ。
「ギター、シュリセル&涼!」
「……結衣。告白頑張ってね」
「先輩ならできます!」
 涼は苦しげに笑み、シュリセルはそんな涼と結衣の様子を見守りつつステージへ。RainbowS。7人の特別な音色を奏でよう、という意味でつけた名前。
 ステージに向かった涼に気づかれないように、アリアとマルク、それにジュルナットは結衣を励ます。
「嫌われちゃったかなぁ……っ」
「そんなことないよ! 結衣ちゃんは結衣ちゃんらしく、一生懸命歌えば届くよ!」
「成瀬さん。がんばれ」
「先生は大丈夫だと思うヨ。君の歌は最高なんだから」
 三人の仲間に励まされ、結衣は顔を上げた。涙を乱雑に拭うと、にっと笑みを浮かべた。
「ベースにアリアと俺!」
「呼ばれたから言ってくる。結衣ちゃん、私が教えたこと復唱して!」
「えっ、わ、わかった!
 ……言葉は。遠回しにすると伝わらないから、恥ずかしくても、失敗するのが怖くても、胸に去来したものを臆面もなく出し切ること。
 韻を踏んでなくても、リズムが多少ぐちゃぐちゃになってもいいから、思いの丈をぶつけること」
「よくできましたっ!」
 アリアがステージへと進む。観客の期待値も少しづつ上がってゆく。
「キーボードにマルク、ドラムに我らがジュル先生!」
 続いてマルクとジュルナットもステージへ進む。舞台袖に残された結衣にマルクが笑みを向ければ、結衣は小さく頷いた。
「そして、今宵の主役。ボーカル、結衣!!」
 六人のいるステージに結衣が駆け出した。六人の仲間が互いを支え合う。
(成瀬さんが長らく秘めて育ててきた恋心、それを表せるようにイントロの演奏は静かに、染み入るように入らなきゃね)
 柔らかなメロディが響き渡る。観客の喧騒が消えた。ジュルナットの真っ直ぐなドラムの音圧が、人々の耳をこちらへと向けさせる。
(ドラムの仕事はリズムを刻んで他の演奏を支え、より高みへと進ませる事サ。出張る気も無いから、みんな頑張ってネ!)
 ギターとベースの混じり合うような音色に後押しされて、結衣は声をあげた。

 ──名前を呼び合う、ただそれだけでよかったのに

(ライブを盛り上げながらも自分の想いを歌いきる何て情熱的で私は大好きですね。
 自覚したなら進むだけ、足踏みしてたら変わりませんよ!思い切りと度胸!私的な恋愛観ですけど!)
 不安になった結衣がシュリセルのほうを向けば、シュリセルは頷いてそのまま歌うように促す。結衣も笑みを浮かべてそのまま音を紡ぎ続けた。

 ──どうしてかな、それだけじゃ足りなくなったんだ

 ──悲しみも苦しさも、貴方と共に向かうなら不安じゃなくなって

 ──バカみたいって笑うかな。でも、この想いに気がつくことが出来たんだ

 マルクのコーラスと共に、結衣は隣を見た。涼の方だ。
 真っ直ぐに指を指す。ただしその顔は不満げだ。何が起こるのだろう、と観客は不安げに見守る。
(歌に乗せた気持ちを盛り上げていくような旋律を、メロディアスに……。成瀬さん、がんばれ)

 ──君は気づいてないかもしれないけど

 ──僕は君が好きなんだよ

 ──響け七色のメロディ 優しい仲間と紡ぐこの歌で

 ──君に世界一の想い届けてみせるよ

 アリアが教えてくれたことを結衣は心の中で思い返していた。だから、結衣は思いの丈をぶつけた。マルクが、アリアが、シュリセルが、ジュルナットが。皆が応援してくれたように。言わなくちゃ、嗚呼。

──指さした先にいる君が好きだよ

 演奏が終わると同時に黄色い歓声が上がる。氷人形の告白。赤い顔した結衣は思わずシュリセルとアリアの元へ駆けて、ありがとう、と二人を抱きしめる。
「結衣」
 涼が名前を呼ぶ。振り向いた先、涼は二人から結衣を奪い抱きしめる。

「君が好きだよ」

 この日。RainbowSは伝説を刻み込んだ。

成否

成功

状態異常

なし

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