PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<物語の娘>赫灼たる眼

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●喰らい付くその顎
 文字通り終わらないお茶会の最中。テーブルクロスは半分ずれ落ちかけ、その上の茶器は欠けたり底が抜けたりしている。お茶菓子はめいめいが思うがままに食べた結果、食べかすが散乱し、食べ残しが皿の上に放置されている状態である。はっきり言えば汚い。
 だがお茶会の参加者はそんなことは露ほども気にせず永遠に続くような楽しい時間を満喫していた。ウサギがお茶を注げばカップから溢れ、双子がカップケーキを取れば奪い合いになり、猫がテーブルの上を歩いて茶器を割る。
 お祭り騒ぎのしっちゃかめっちゃか、賑やかさも相まったお茶会はもう文字通りの混沌で、思わず眉を顰めたくなるのかもしれない。だがここは「黄金色の昼下がり【ワンダーランド】」なのでこれが普通。そもそも普通なんて概念があるのかは知らないけれど。
 とにかく参加者面々は思い思いの茶会を楽しんでいた。

 ――ぐぉおおおお……

 そんな音が聞こえたのは、いつ始まったかもしれないお茶会が何度目かの賑やかさのピークを迎えたころ。まだまだ遠い
「腹の虫にしては大きすぎないか?」
「失礼な、私は腹に棲んでいないぞ」
 帽子職人が冷やかしを入れ、芋虫がむきになって言い返す。三月ウサギは震えを取るかのように針の壊れた時計を眺め、双子は殴り合いの手を止める。
  
 ――ぐぉおおおおお!

 二度目の咆哮。それはお茶会の会場を囲む森のすぐ近くで轟く。誰もがその悍ましい声に怯み、恐怖する。やがて参加者の誰かが見つけたのは、鬱蒼とした森の中に爛々と光る一対の紅蓮。
「じ、ジャバウォックだ!」
 その声は呼び水。名を呼ばれた「それ」は木々を縫い茶会の参加者に襲い掛かる。お茶会の狂騒は狂乱へと変貌を遂げ、我先にと逃げ出す参加者の一体どれから喰らいつくそうかとその眼を忙しなく動かしている。
 その眼に射竦められ身動きの取れない参加者と、獲物に狙いを定めるため動きを止めるジャバウォック。文字通り一歩間違えたら命を奪われかねない緊迫の時間。
 そのぎりぎりの均衡を崩したのは帽子職人だった。ひらりと身を翻し、危険を顧みずに躍り出る。反射的に伸びた凶悪な鉤爪をすんでのところで躱し、皮膚に大きな待針を突き刺した。
「建物に逃げろ!」
 苦悶の声に混ざるように、そんな鋭い声が飛んだ。弾かれる様に全員がその場を離れ、蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。

●ひとごろしき
「ジャバウォック……って知ってるかい?」
 呼び集めたイレギュラーズを前に、境界案内人ファロ・ブレゼレンはそう問いかけた。或いは聞いたことあるかもしれない名前に、それぞれがそれぞれの反応を返す。
「今度の依頼は、ジャバウォックっていう邪竜……竜? を討伐する依頼さ。『黄金色の昼下がり』の住人には恐怖の象徴として映っているようだけど、あんた達なら倒すのは造作もないはずさ」
 曰く、鋭い爪と牙を持ち、俊敏な動きで獲物を喰らい、引き裂く凶悪な魔物。四対の翼で空を飛び、闇の中から獲物を狙うその様は、誰が呼んだか。
「『ひとごろしき』、だってさ」
 怖いねえ、というファロだがその声に恐怖など微塵もない。
「ただ気をつけな。ジャバウォックの近くには茶会の参加者が散り散りになって逃げているから、ジャバウォックがそっちに行かないよう注意が必要だよ」
 それと、とファロが付け加える。どうやらジャバウォックは参加者の一人から思いも寄らぬ反撃を受け、怒り心頭に発しているということらしい。
「怒りに身を任せてどう動くか予測がしにくいけど、まああんたたちなら何とかなるでしょ。じゃ、行ってきな!」
 こうして貴方たちは彼女に見送られ、邪竜の討伐に向かう。
「『アリス』」
 その背中にファロが小さく声をかけたことを、イレギュラーズは知らない。

NMコメント

 お世話になっております。澪です。NMとしてほぼ初めての戦闘依頼です。

 ●目的
 ジャバウォックの討伐
 お茶会参加者の安全確保

 ●敵
 ジャバウォック×1
 緑色の鱗、紅蓮の瞳。四対の翼に爪と牙。「邪竜」と呼ばれてますがその実態は翼が生えた爬虫類のようです。
 小麦色の昼下がりでは最強の存在ですが、混沌における竜種とは比較してはいけません。とはいえ怪物ではあるので、中々のタフネスさと攻撃力を誇るのですが。

 ※攻撃パターン
 噛みつき 物至単 BS流血
 切り裂き 物近扇 BS出血
 火炎の息 神中扇 BS火炎、窒息
 
 翼もあるので飛行もでき、巨体の割に俊敏性も併せ持ちます。
 戦闘時は見境なく目についた者に襲い掛かります。それがNPCであったとしても。

●現場
 木立の中に急に現れる開けた空間です。お茶会の会場だけあってテーブルやら椅子やら茶器があるのですが、ジャバウォックと彼の出現にパニックを起こした参加者により物が散乱しています。裸足のPCは変なものを踏むかもしれないのでご注意を。
 開けた場所は見やすいのですが木立の向こうは暗さも相まってかなり見辛いです。
 ジャバウォックは初期位置は開けた空間の中にいますが、進行によって森の中に姿を隠すかもしれません。紅蓮の瞳はどんなに暗くても彼が生きている限り煌々と光を放っています。

●NPC
 お茶会参加者×10
 帽子職人だったり双子だったり兎だったりと、まあとにかく賑やかでしっちゃかめっちゃかないつもの面々です。ジャバウォックから見れば恐らくただの食糧です。
 基本的にはジャバウォックに見つからないようにしていますが、その逃げ方は個性が出るようで、ある者は目にも止まらぬ速さで逃げていますし、ある者は下手くそなかくれんぼを強いられているかもしれません。

 ファロ・ブレゼレン
 今回初登場境界案内人。案内までで本編には一切絡みません。

●その他
 NPCもジャバウォックも(ジャバウォックは喋れませんが)イレギュラーズ面々を「アリス」と呼びます。
 アリスのことについて聞いても何も答えません。だってアリスだもん。

 それでは、皆様のご参加お待ちしております。

  • <物語の娘>赫灼たる眼完了
  • NM名
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2019年12月11日 23時35分
  • 参加人数4/4人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (4人)

アイリス・アニェラ・クラリッサ(p3p002159)
傍らへ共に
ラルフ・ザン・ネセサリー(p3p004095)
我が為に
ポムグラニット(p3p007218)
ダーティ・ローズ
紅楼夢・紫月(p3p007611)
呪刀持ちの唄歌い

リプレイ

●恐れるに足らず
――ぐるぉぉぉぉおお!!

 最早お茶会は破壊と蹂躙の様相を呈し、混沌としながらも団欒としたひと時は既に陶器のように粉々に砕けてしまっている。
 その元凶たる竜は、痛みにより赤々とした瞳をさらに怒りの炎で燃え上がらせ、自らと比較すると羽虫の如き大きさの存在を見下す。
 だが相対する彼等に恐怖はない。
「お腹が空きました~」
『年中腹ペコ少女』アイリス・アニェラ・クラリッサ(p3p002159)にしてみれば、竜だろうが何だろうが食事の対象であることに変わりはない。角度によって色を変える瞳はさながら好奇心をそのまま映し出している。
「まあ まあ せっかくのおちゃかいが だいなしね」
 破壊の痕跡をどこか楽しそうに見ているのは『ゆるふわ薔薇乙女』ポムグラニット(p3p007218)。その視線のままに「おいたは だめよ」と呟く顔は一切の変化がなく、故に残酷。
「ふふ、楽しみやわあ」
『呪刀持ちの唄歌い』紅楼夢・紫月(p3p007611)はそう言って妖刀の柄を握る。刀が血を啜る喜びに震えた気がした。
各々が各々の思いを有する中、『ゲーム上手』ラルフ・ザン・ネセサリー(p3p004095)に去来した感情だけは他のそれとは異なる。
「成れの果て、か……」
 かつて彼のいた世界において存在した、人知を超越しようとした者の末路。その言葉に含まれていたのは僅かばかりだが憐憫の情。
 だが、それは討たない理由にはならない。

●武闘会はお茶会の上で
 真っ先に邪竜の懐へと飛び込んだのはアイリス。鍛え上げた速度を余すところなく活かしきったソニックエッジはジャバウォックを的確に捉え、苦悶の声を上げさせる。
 反撃をせんと邪竜が爪を振るおうとするも、その動きが更なる痛み――紅楼夢の飛翔斬の一撃に邪魔され空しく空を切る。生じた隙を見事につくような格好で、ポムグラニットの魔砲が直撃する。
轟音、そして閃光。雑魚ならば文字通り蒸発しそうな威力だが、邪竜はダメージを負った気配はあれど外見的に大きく損傷した様子はない。
「かったいなあ」
「腐ってもドラゴン、ということやねぇ」
 ポムグラニットと紅楼夢の感想が開けた空間に木霊する。
「さあて、行きますよ~」
 邪竜の爪を卓越した反応で躱したアイリスのそんな言葉を皮切りに、3人は再度竜と踊る。

 その頃、木立の中。ラルフはそこかしこに仕掛けを施しながら縦横無尽に駆けていく。
(間違いなく、奴は参加者を狙うはずだ)
 なれば、その時に備えて対策を講じねばならない。大局を俯瞰できる彼の思考はどこまでも隙がない。
 万能金属にお茶会の残骸や木材を繋いで拵えた即席の鳴子を随所に設置すると同時に、見つけた参加者に一カ所に集まるように声をかけていく。
 そうしてほぼ全て――ウサギだけが逃げ続けているようで捕まらない――に安全な場所に集まるよう伝え、ラルフもまた最前線へと躍り出る。
「お疲れ様やねぇ」
「遅くなってしまってすまないね」
 最も近い所にいた紅楼夢が労いの言葉をかける。二人の視線の先には、高速で動いては五月雨の猛攻を展開するアイリスとその場から動かず砲台の如く射出を繰り返すポムグラニットの姿が見て取れた。二人の攻撃はジャバウォックの体力を確実に削り取っているが、致命傷には至っていないようだ。
「随分とタフなようだね」
「ほんまや。はよぅ終わらせたいのになぁ」
 その間延びした語尾とは対照的な機敏な動き。銀色の流麗な線が真っすぐにジャバウォックへと伸びる。外三光の一閃は自身を蝕む代わりに、敵へ確かな一撃を叩きこむ。剥がれ落ちた鱗、剥き出しになった表皮にラルフが仇花の紅刃を叩き込む。
 蠍姫の毒が、水面に落ちたインクの如くゆっくり、ゆっくりと滲み、浸透し体内を狂わせる。さしもの竜も文字通り焼けるような痛みに苦しみ、もがく。のたうつような動きに合わせ、爪が誰かれ構わず襲い掛かる。
 無差別な爪の動きを掻い潜りながらアイリスが何度目かの接近を試みる。蛇のように這う尻尾を飛び越え、鞭のように振るわれる首を潜り抜け、こじ開けた間隙を逃さずに五月雨を叩きこむ。
 内部を焦がす痛みに外圧からの痛みが加わり、これまでに何度か聞いた遠吠えとはまた違う声——痛みに呻く声が木霊する。その声を、ポムグラニットが放つ魔砲の音がかき消した。
 衝撃は地を這い、全てを貫き、蹂躙する。アイリスの繰り出す打撃、紅楼夢の妖刀が織り成す剣技、そしてラルフが紡ぐ魔術と体術の垣根を超えた戦法に、内から体を焼き尽くす熱毒の痛み。
 その全てを身に受けた上でポムグラニットの砲撃を真正面から受けきることは危険だと察知したのだろう。ジャバウォックは無様にももがくように体をよじることで躱そうとするが、尻尾の一部が避けきれずに直撃を受け、吹き飛んだ。邪竜の一部を消し飛ばした魔力の塊は、直線状にあるものを平等に吹飛ばしていく。
「わわわわわ!」
 その声は唐突に響いた。紅楼夢でも、アイリスでも、ラルフでもポムグラニットでも、ましてやジャバウォックのでもない声。

 ポムグラニットが吹飛ばした元木立。更地と木立の境界に二足歩行のウサギが一人青ざめた顔で立ち尽くしていた。

●備えあれば憂いなし
 十の目が、一点に注がれる。
 真っ先に動いたのはその視線の先にいたウサギ。目にも止まらぬ速さで再び森の中へと消える。その後を追うように、ジャバウォックが翼を大きくはためかせる。風圧が砂埃を撒き散らし、近くにいた四人全員が思わず顔を覆う。
 その間に邪竜は木立の中に姿を消した。
「いっちゃったね」
 ポムグラニットがのんびりとした調子で呟く。その言葉に危機感はない。
 何故なら、
「どうやら、あっちに降りたようだね」
 ラルフが木立の随所に仕掛けた鳴子がけたたましく鳴り響いているのだから。後はその音を頼りに後を追えばいい。
 固定砲台としてその場から動かないポムグラニット以外の全員が予測地点へと急ぐ。
「いました~」
 先頭を行くアイリスが、暗がりの中を右往左往する紅蓮の瞳を見つけ出す。どうやらウサギは上手く逃げ遂せたようで、その場にはもういなかった。
 痛みを与えられた怒りか得物を取り逃がした悔しさか、彼女を見るその眼は再びの怒りに燃えていた。これなら逃げることはないだろう。
 駆けるアイリスがその勢いを殺すことなく飛び掛かり、再度五月雨を叩きこむ。邪竜の体が一瞬バランスを崩すその瞬間に錬金鎖弾と飛翔斬が追撃を入れる。
 流れるような攻撃の嵐をもろに受け、邪竜は撤退することを選んだ。改めて翼を広げ、その巨体を宙に浮かべる。その左翼を、何度目かの魔砲が貫く。鱗のない翼膜に風穴があき、巨体がバランスを崩して大きくぐらつく。
「所詮は竜の紛い物。もっと強い竜なんていくらでもいるさ」
 残った右翼にラルフがメギドイレイザーをぶっ放す。左右の翼に一対の模様のような風穴を開けられたジャバウォックが地面に墜落した。
「物語に出てくる怪物がこの程度なんかねぇ? 期待外れやわぁ」
「お腹が空いて仕方ないので、そろそろ終わらせてもらいますね~」
 地に落ち、頭を垂れるジャバウォック。その脳天にアイリスと紅楼夢がタイミングを合わせて同時に五月雨を叩きこむ。断続的な雨の如く斬撃と打撃が降り注ぎ、打ち据える。
 雨が降り病んだ時、ジャバウォックは声を上げることもなく絶命した。
 紅蓮の目には誰の姿も、怒りの炎も宿っていなかった。

●俺たちのお茶会はこれからも
 ジャバウォックの絶命を遠巻きに見ていたのか、避難していた参加者が全員四人の元へ寄ってきた。始めは恐る恐る、次第に駆け足になり。
 彼らの周囲に群がったときは、四人のアリスへの賛美と感謝に満ちていた。
「ほ~ら、喜ぶのもええけど、片づけもしていかへんと、なぁ」
 紅楼夢がそう言って促さなければ、ずっとそうしていたかもしれない。

 倒したジャバウォックについてはアイリスが片付けることと相成った。
 そうはいっても小柄なアイリスの背丈を優に超える巨体。猫やウサギがどうするのかと興味深げに覗き込んでいるその目の前で、アイリスは一言。
「いただきま~す!」
 ……その後展開する景色に対して深く描写はしません。俗にいう「スタッフが美味しく頂きました」というやつです。
「ごちそうさまで~した!」
 満足そうに両手を合わせるアイリスを、猫とウサギは何とも形容のしがたい表情で眺めていた。

 亡骸がなくなっていよいよ本格的な瓦礫の撤去が始まった。
予期せぬ珍客のせいではちゃめちゃになったにも関わらず、片づけに勤しむ参加者に悲壮の色はない。不思議に思った紅楼夢が聞いてみると、
「お茶会に飽きてたから次のお茶会の準備をするのが楽しみなのさ!」
「な、なるほどなぁ……」
 さしもの紅楼夢も言葉に詰まる回答が返ってきた。
「おちゃかい きょうは もう ないのかしら?」
 ポムグラニットは残念そうに呟く。竜は倒されたとはいえ破壊の傷跡は深く、一日で元通りとはとてもならなさそうである。
「今だってお茶会だよ花のアリス、いつもとちょっと違うだけさ」
「お茶会じゃないよ、お菓子も紅茶もないじゃないか」
「じゃあ今ボク達は何をしてるんだよ!」
「知らないよ!」
 そんな彼女を置いてきぼりにして喧嘩を始めた二人の様を見て、花のアリスことポムグラニットは「なかよしさんだわ」とにこやかに微笑んだ。
 ラルフはというと片付けに勤しみつつも何か特徴的なもの――異世界の道具や知識に繋がるようなものがないか探していた。探究を是とする彼に染みついた謂わば職業病のようなもの。手は動かしながら、脊髄反射のように脳も動き、思考する。
 だが瓦礫の山からも参加者からの話の中にも、彼の求めるものは出てこなかった。それでも彼の表情に失意はない。万の失敗は一つの成功に繋がることを、彼は知っているのだから。

成否

成功

状態異常

なし

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