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シナリオ詳細

<青海のバッカニア>本物の海賊

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●おもかじいっぱい
 新天地を目指すという、海洋王国の見果てぬ夢。幾度となく失敗したこの試み。しかし彼らは諦めなかった。再び準備を整え、海へ漕ぎ出すというのである。そうなれば、当然商人たちはそこに商売のチャンスを嗅ぎつける。船に食糧に何やらかんやら。あらゆるものを海洋に売りつけようとやってくる。
 そして、それを狙おうとする不届き者も沢山いるのだ。

「皆さんの今回のお仕事は、海賊さんへの対処です」
 港に集められた君達の前で、『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)が任務書を手に説明を始める。その頭にはトリコーンハットが載っていた。
「一隻の海賊船が最近近海に出没していろいろな船を襲おうとしているそうなのです。その辺りは海洋の皆さんですから、上手くかわしたりしているようなのですが……放っておくにもだんだんとうるさくなってきたらしいので、海戦訓練もかねてさっさと片付けてきてほしい、とのことなのです」
 ユリーカは君達に海図を手渡す。そこにはすでに印がつけられていた。
「海賊の出現ポイントは此処なのです。この辺りの海は穏やかで暗礁などもないので、航海そのものには支障ないはずなのですよ。こういうところを選ぶのが素人の証、と海洋の方は言っていますが……」
 天下の海賊達を要する海洋に喧嘩を売る他所の海賊というのも中々な話である。ユリーカは小さな肩を竦めると、傾いたトリコーンハットをくいと直した。
「どちらにしろ、海洋の人達に操船は任せておいて大丈夫なはずなのです。皆さんは存分に戦ってきてください」

●本物の意地
 帆の大きい快速のキャラベル船に乗り込み、君達は碧空の下に広がる海原へと漕ぎ出す。君達の乗るキャラベル戦の少し前には、囮として駆り出したキャラベル船がいる。
「まあ、待ってりゃそのうち来るだろ。のんびり行こうや」
 船乗りの男はさらりと言い放つ。キャラベルの帆も半開き、スピードはやや控えている。船端によりかかる船乗り達は口々に唄っている。
 そうこうしているうちに、一隻の船がするすると近づいてきた。掲げる旗は真っ黒な海賊旗である。
「見ろ、あれだ。さっさと片付けようぜ!」
 言うや間もなく、男は仲間達をぐるりと見渡し、彼らは一気に帆を広げた。海原の風を受け、海賊船へと一気に接近していく。
「こういう戦いじゃ、好きに大砲を撃たせると面倒になりやすい。その辺上手い事そっちで工夫してくれや!」
 言いながら、船乗りたちは船端に結び付けられた大砲を放つ。爆音が響き渡り、海賊船は方向を変えてこちらへ近寄ってきた。
「さあ来るぞ。頼むぜ!」
 
 かくして、イレギュラーズの海賊退治が始まった。

GMコメント

 影絵企鵝です。ようそろ、とりかじときて今回はおもかじです。ということでよろしくお願いします。
 という事で。

●目標
 無許可海賊に対処せよ

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●ロケーション
 昼。海上及び船上で戦闘を行います。
 船のタイプは敵味方共にキャラベル船です。お互い範囲攻撃の良い的です。
 大海に落ちた場合にはなるべく早期の復帰をお勧めします。
 飛行技術があると便利かもしれません。

●敵
☆海賊×10
 イザベラの号令を外から聞きつけた何者かに雇われた海賊です。食糧を積んだ船を守るため、早々に片付けてやりましょう。

・攻撃方法
→鉄砲
 喇叭銃です。面で攻撃してくるため躱しにくいです。
→曲刀
 乗り込んできたイレギュラーズに対して振るってきます。特筆すべきポイントはありません。
→大砲
 船に乗ったままだとぶっ放してきます。船に当たりすぎると沈没の恐れがあります。

●TIPS(PL情報)
 敵はロープを使ったり橋を掛けたりして船に渡ろうとしてきます。
 砲撃の使用優先度は高めです。船を沈められると任務は失敗となるでしょう。

●重要な備考
<青海のバッカニア>ではイレギュラーズ個人毎に特別な『海洋王国事業貢献値』をカウントします。
 この貢献値は参加関連シナリオの結果、キャラクターの活躍等により変動し、高い数字を持つキャラクターは外洋進出時に役割を受ける場合がある、優先シナリオが設定される可能性がある等、特別な結果を受ける可能性があります。『海洋王国事業貢献値』の状況は特設ページで公開されます。

  • <青海のバッカニア>本物の海賊完了
  • GM名影絵 企鵝
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年12月15日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

夢見 ルル家(p3p000016)
夢見大名
十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)
共にあれ
黎明院・ゼフィラ(p3p002101)
夜明け前の風
寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
マリナ(p3p003552)
マリンエクスプローラー
リーゼロッテ=ブロスフェルト(p3p003929)
リトルリトルウィッチ
桐神 きり(p3p007718)

リプレイ

●船に取り付け
 二隻のキャラベルは互いにセーカー砲を撃ち合う。鋳鉄の弾が海を挟んで飛び交い、互いの舷側に小さな穴を空けていく。飛び散る木くずを浴びながら、秋宮・史之(p3p002233)は向かいの船をじっと睨んだ。
「イザベラ女王陛下! この秋宮史之、いかなる時もあなたの下僕です! 美しき海を荒らす輩、見事成敗して御覧に入れます! 偉大なる海洋の大号令を邪魔するなんて許すまじ! 皆さんけちょんけちょんにやっちゃいましょう!」
 彼は叫ぶなり海の中へと飛び込んだ。先日の戦いで負傷したばかりだが、女王の為ならいてもたってもいられなかったのだ。迷わず海へと飛び込んだ彼を、十夜 縁(p3p000099)は煙管片手に見送る。
「はあ、随分とやる気満々な少年もいたもんだな」
 空に向かって紫煙を燻らす縁。飛んできた砲弾が側の甲板に突き刺さったが、彼は一向に動じる雰囲気を見せない。新たな砲弾を砲身に詰め込みながら、船乗りは縁に尋ねる。
「お前は随分余裕だな」
「余裕じゃないからこっちに残っているのさ。何せ歳なモンでね。勇ましく乗り込む気力も、華麗に泳ぎ回る体力もねぇってわけだ」
「なら、せいぜいこの船が沈まねえように守ってくれよ」
 船乗りは肩を竦めると、砲弾を敵の甲板へ撃ち込む。その爆音に、縁は軽く片耳を塞いだ。
「はいはい……せいぜい報酬分くらいは働くようにするさ」
 そう言いつつも、一向に縁は煙草を止めない。海賊船から再び放たれた砲弾が、船の側面や船縁に次々に突き刺さる。穴が空いて木くずが飛び散るが、キャラベルはびくともしない。マリナ(p3p003552)のクラバウターとしての力が、キャラベル船に不沈の祝福を与えているのである。
「私が乗る船に正面から挑むとは……好きなだけ撃ってみやがれです。そんじょそこらの賊に沈められる私じゃねーですよ」
 少し大柄のフリントロック銃を肩に担ぎ、敵の船をじっと見据える。海戦には不慣れなのか、反動で下がった砲台を船縁へ押し戻すのに苦労していた。
「今のうちに、船を背後まで回り込ませてくだせー」
「ああ、やってるよ!」
 船乗り達は帆を引いて、風を捉えながら旋回する。

 敵と味方のキャラベルが互いに小さな砲弾を撃ち込み合っている間に、デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)の駆る豪華旅船『ビッグドリーム号』はこっそりと敵船へ接近していた。ドレスの裾から蛸足を波打たせ、腕組みして頬を膨らませる。
「いかにもな海賊どもじゃの。妾の海で悪事を働くとは不届きなのじゃ」
 彼女の使役するウミネコやカモメが洋上を滑るように飛び回り、海賊十人の陣容をその鋭い目で捉えている。
「訓練もかねて軽く懲らしめてやるとするかの」
「よーし、ここは存分に暴れさせてもらいますよ!」
 ビッグドリーム号に乗り込んだ桐神 きり(p3p007718)は、その指先に深紅の光を纏わせ、素早く魔法陣を描いていく。海賊達も旅船に気付き、慌てて砲台に飛びついた。しかし、船底近くに張り付くデイジーの船を狙うのは難しい。砲口を下へ向けようと躍起になっている間に、きりが魔法陣に掌を叩きつけた。放たれた深紅の波が、船縁の海賊を纏めて吹き飛ばす。小船からの強襲に慌てふためく海賊達を見上げて、きりはからからと笑う。
「船の旅と戦い、二つ同時に味わえるのはやっぱり美味しいですね!」
「うーん、素人の海賊に対して、素人に毛が生えたくらいのわたし達を当てよう、と?」
 リーゼロッテ=ブロスフェルト(p3p003929)はきりの隣で敵の船縁を見上げる。懐に潜り込んだ小型船は最早砲台では狙えない。海賊は躍起になって砲弾を諸手で掲げて投げ下ろしてきた。ひょいと飛び退いて躱しながら、彼女は羽ペンを取り出す。
「つまりはわたし達に海の戦いを練習させようって腹なのよね。海の人達はなかなかしたたかなのよ……」
 彼女は溜め息を吐くと、練達製のジェットパックを背負う。曲刀を抜いて威嚇してくるような敵だ。練習というには若干物騒な相手だが、尻込みしていてもいいようにやられるだけである。
「仕方ない。やってやるのよ!」
「よし、では妾がこれより仕掛ける。その隙に主らが船に乗り込んで奴等と組み合うのじゃ。一度乗り込みさえすればもはやこちらのものよ」
 言い放つと、デイジーは大壺をまるで砲台のように構える。壺の口の奥で、深蒼の光が立ち籠め始めた。
「さあ、妾の絶望の歌に酔い痴れるが良い!」
 彼女の壺から光が放たれた瞬間、背筋を凍らせる冷たい歌が甲板に響き渡る。砲台にとりついていた海賊達は思わず耳を塞いでしまう。
 刹那、両手に持ったナイフを突き立てながら敵船の船尾を一気に駆け上り、史之がキャラベルの甲板へといきなり飛び出した。彼は海賊達が一斉に振り返った隙を突いて、大音声で叫ぶ。
「俺は秋宮史之、大号令の体現者! 奪う事しか出来ない三下どもめ、女王陛下の威光にひれ伏せ!」
「あん? 海賊なめんじゃねえぞコラァ!」
 彼の挑発につられて海賊は一斉に銃を抜いて史之へ鉛弾の嵐を叩きつける。
「あいたたたっ! は、早く! 早く他の人も続いてください!」
「その調子ですのよ! それらをそちらへ引き付けておいてほしいのよ!」
 彼の叫びが甲板に響いた瞬間、ジェットパックを噴かしたリーゼロッテが一気に海上まで飛び上がる。そのまま羽ペンを振るって魔法陣を描き、彼女は敵へ狙いを定める。
「まずはこれをお見舞いしてやるわ!」
 魔法陣の中心をペン先でちょんと突いた瞬間、何処からともなく湧きあがった砂が嵐となって海賊船へ吹き付ける。
「うわっ! 何だ!?」
 男達は慌てて頭を庇う。彼らの視界が狭まった隙に、船縁に鉤爪ロープが引っ掛かる。船の腹に張り付いた夢見 ルル家(p3p000016)は思い切り船の横っ腹を蹴りつけて跳びあがる。空中でくるりと宙返り、彼女は颯爽と甲板の上に降り立った。
「宇宙警察忍者、夢見ルル家! お邪魔します!」
「うわっ! いつの間に!」
 セーカー砲の側に突っ立っていた男は、慌てて曲刀を抜き放つ。力任せに振り下ろされたその刃を華麗に躱して、ルル家は素早く印を組む。その瞬間、次々に彼女の姿が分裂した。
「最初からクライマックス! 銀河旋風殺!」
 たくさんのルル家が一斉に寸鉄を手に取り擲つ。逃げ場など一つも無い。海賊は五体まとめて寸鉄で打ち抜かれ、情けない悲鳴を上げながらその場に倒れた。
「海! 海賊! いやぁ~まさに海洋大冒険って感じですね! ワクワクします! 海洋の民やソルベ殿の期待に応える為にも、まずはこの海賊退治、万事成功させねばなりますまい!」
「なにぃ! あなたソルベ派ですか!」
 ソルベの名を聞いた史之が早速噛みつく。イザベラ派としては許されざる事態だ。ルル家は慌てて首を振る。
「いえいえ! そういうわけではないですが!」
 史之は首を傾げる。蚊帳の外に置かれた海賊達は、ここぞとばかりに曲刀を抜き放って二人に襲い掛かろうとする。
 しかし、その瞬間に闇の月が彼らの頭上に浮かび上がる。放たれた黒いオーラが、群れる海賊達に直撃した。敵が怯んでいる隙に、黎明院・ゼフィラ(p3p002101)が敵陣のど真ん中へと降り立った。
「やれやれ。敵が船に乗り込んだからと言って、全ての眼を内側に向けていてはさらなる危機を呼び込むじゃないのかな?」
「あんだとテメェ――」
 海賊が振り返ろうとした瞬間に、ゼフィラがシールドのブースターを噴かせて殴りかかる。敵の勢いも借りた一撃は、あっという間に敵を昏倒させてしまった。
「さて、海賊諸君には私の実績作りのために協力してもらうとしようか」
 再びブースターを噴かせ、ゼフィラは華麗にターンを決める。一人が咄嗟に喇叭銃を撃ち込んだが、ゼフィラはターンの勢いで銃弾を弾き飛ばしてしまう。
「殴りつけても心が痛まない相手というものは嬉しいものだね、ふふっ……」
 意味深な笑みで凄みを利かせる彼女に、思わず男達はたじろぐ。その隙に態勢を整えたリーゼロッテ達が、再び海賊へと掛かっていった。

●沈めてしまえ
 デイジーの駆る小船と敵のキャラベルが、敵船を挟み込んで回遊する。マリナはフリントロックを構え、船縁に立とうとする敵へ狙いを定めた。
「こっちに近づけるとは思わねー方がいいですよ」
 彼女の意志を氷の魔力へ変えて船に撃ちかける。背中から氷柱が生え、男は悲鳴を上げながら吹っ飛んだ。船長と思しき男は慌てて叫ぶ。
「船縁に寄るな! 乗り込んできた奴だけやれ!」
「ヤー!」
 サーベルを振り上げ、男達は中央に立つゼフィラへと襲い掛かった。ゼフィラは身構え、盾の反りで敵の剣を往なしながら溜め息を零した。
「さて、なかなか忙しくなってきたな。危うくやられるところだよ」
 ゼフィラはブースターを噴かせて飛び上がり、両手を胸の前に突き出す。
「悪いが大雑把にいかせてもらうよ? まとめて吹き飛びたまえ」
 紫色の光線が放たれる。海賊達は左右に飛び退こうとするが、二人が躱しきれずに吹き飛んだ。血を吐いて倒れる海賊達を見下ろし、リーゼロッテは思わず息を詰まらせる。
「ああ怖い。こうしてみると味方の皆も怖いのよ」
 仲間達を矢面に立たせつつ、彼女は魔法の鞭を振るって男達を打ち据える。逃げ場も無い場所で刃物を振り回されるほど怖い事は無い。ふらつく敵を前に、リーゼロッテは叫んだ。
「わたしは一刻も早くこの物騒な船から降りたいの! さっさとやられると良いのよ!」
「そうそう。素早くオリてしまえば痛い目を見る必要も無いのですよ!」
 リーゼロッテの言葉に合いの手を入れつつ、ルル家は船の上を自由に飛び回る。そのまま一人の男の背後にしがみつくと、そのまま四肢の関節を極めて甲板へと叩きつける。
「まあ、このままでは迷っている間に全員伸びてしまうかもしれませんが!」
「くそっ……」
 男達は歯噛みしつつ、銃をルル家へ向けようとする。
「さあさあ。女王の意志は僕の意志だ! 女王がお前達を許さないと言えば許さない! さあかかってこい!」
 しかし、船尾に立った史之が再び高らかに叫んで敵の眼を引き寄せた。
「うるせえ小僧! 生意気言ってんじゃねえぞ!」
 彼に挑発された海賊達は、剣を構えて殺到する。彼は深紅の光を纏って必死に斬撃を耐え忍ぶ。しかし不幸なことに、今日は回復役がいない。殺到した敵の攻撃を凌ぎきれず、彼はふと意識を失いかけた。
「うわっ、これはちょっとマズいかな……」
 史之はイザベラへの愛を胸にして何とか踏みとどまった彼は、信号弾を頭上に放つ。しかし援護が来る前に、彼は海賊に蹴りつけられて海へ叩き落とされた。
「それなら……こうしてやる!」
 そのまま甲板に張り付くと、掌を船底に押し付けた。最大出力で船底に魔力を叩き込むと、竜骨に深々と罅が入った。船が歪み、船底の隙間からどんどん海水が沁み込んでいく。明らかに様子の違っている船の姿を見て取り、デイジーは目を丸くする。
「これはこれは。竜骨がいかれた船はもう海の藻屑となるしかないの」
 壺を構え、その底を小さな掌で叩く。放たれた赤い光は月輪に変じ、砲身にしがみつく男の意識を惑わせる。彼は眼を回しながら砲台へ弾を込めた。
「うわあああ!」
 男は明後日の方向へ砲を向け、弾は明後日の方へと飛んでいく。デイジーはふんと鼻を鳴らした。
「妾の船を狙おうなど、不敬じゃぞ」
「その通り! 眼にモノ見せてやりましょう!」
 デイジーの高貴な言葉に乗っかりながら、きりはその左目を妖しく紫色に輝かせる。紫に輝く指先でルーンを描き、鋭く手刀で切り裂く。放たれた紫色の輝きが、船底に深々と亀裂を入れる。竜骨の歪みがどんどん亀裂を広げ、海賊船にどんどん海水が流れ込んでくる。咄嗟に船底を覗き込んだ男は真っ青になる。
「マズい! 船が沈むぞ!」
「何やってんだ! そんな小船さっさと沈めとけよ!」
「人任せにするな!」
 言い争っている間に、ルル家は素早くロープを放って味方の船に引っかける。
「おやおや。海賊船の財宝も頂戴したいところでしたが、これでは無理そうですね。さらば!」
 ゼフィラとリーゼロッテもジェット噴射で素早く退散していく。海賊だけが船に取り残されてしまった。
「くそっ! こうなったらやぶれかぶれだ!」
 男達は叫ぶと、マストから垂れ下がったロープを掴んで次々にイレギュラーズの乗る船へと飛び移ってくる。マストの側で高みの見物を決め込んでいた縁だったが、仕方なしに乗り込んできた海賊の前へと進み出る。
「やれやれ。俺の出番は無さそうかと思ったのに、無理矢理作ってくれやがって」
「うるせぇ、くたばれ!」
 曲刀を抜いて襲い掛かる海賊三人組。縁は柳のようにゆらゆらと揺れながら近寄ると、振り下ろされた曲刀を躱してその腕を捻り上げ、そのまま肩を外して甲板に叩きつけた。男は情けなく悲鳴を上げる。
「海賊の、というか、海の事に関しちゃ海洋の右に出るモンはいねぇからなぁ。ま、そこは運が悪かったと諦めて貰うとして、だ」
 海賊達が怯んだ隙に、マリナが素早く飛び出す。懐から取り出したアンカー付きのロープを巻き付けると、力任せに海へ向かって振り回した。
「許可のない乗船、お断りなのです……」
「うわああっ!」
 マリナは次々に男達を海の中へと放り出していく。そんな取っ組み合いの中からするりと抜け出しながら、縁は煙草に再び火をつけた。
「そう勝手に船を襲われると、市場に出回る品が減っちまって困るんでな。さくっと帰ってくれや」

 縁とマリナの分厚い守りに男達は思わずたじろぐ。しかしこのまま船に留まれば沈んでしまうし、その前に暴れるリーゼロッテ達に叩きのめされてしまいそうだ。
「くそっ! こうなったら!」
 一人の男は助走をつけて船から飛び出し、デイジー号目掛けて飛び込んでくる。飛び出し角度は良好、そのまま船へ取りつけそうだったが、そうは問屋が卸さない。
「だーめでーすよーっと!」
 突っ込んできた海賊の鳩尾目掛け、きりは鋭く掌を突き出す。放たれた衝撃波が、突き刺さり、海賊は白目をむいて海へと沈んだ。
「全くもう。いい加減諦めて降伏してくださいよ!」
「う……」
 沈む船の上でまごついている最後の海賊。しかしイレギュラーズのプレッシャーには耐えきれず、遂に彼らは白旗を掲げた。
「降参! 降参だ!」

 かくして、海賊狩りは無事成功に終わったのであった。

●揚々帰還
 海から引き揚げられ、甲板の上に引き出された海賊たち。縁は船長の頭に手を翳していた。男は苦しげに喉を掻きむしっている。
「ほら。喋らねえといつまでも苦しいまんまだぜ?」
「わ、分かった。鉄帝、鉄帝の……」
「はい、よーし」
 縁は手を離すと、くるりと踵を返す。男はそのまま気を失って倒れた。
「てなわけで、こいつで万事依頼完了ってわけだ。帰ったらパーッと祝杯でもあげないかね。代金はローレットへのツケでねえ――」
「無断でツケ払いにすると、回り回って二倍の請求が来るって聞きました……」
 マリナは金槌で補修板を甲板に打ち付けながら呟く。縁は肩を竦めた。
「おっと。そいつは困るな……やっぱナシにしとくか。わざわざ許可を取るのも面倒だ」
「……そっか」
 きりは興味津々の面持ちでマリナの仕事ぶりを眺める。
「へええ……そんな風に修繕するんですね……」
「えーと、手伝ってくれます?」
「はい、もちろんです! 何処に手を入れればいいですか?」
 マリナは近くに空いた穴を指差し、修繕用の板やら金槌やらを次々に手渡す。
「まずはそこ……足引っかけて転んだら、危ないです」
「はい! ……いやぁ、やる事いっぱいですね……」

 そんな彼らを背後に、ルル家は船首に立って大きく伸びをしていた。
「うーん、勝利、勝利です! 海賊の財宝を回収できなかったのは残念ですが……まあいいでしょう!」
 ケロッとしているルル家の隣で、リーゼロッテは首を傾げる。
「さっき、海賊が鉄帝がどうのこうのって言っていたような気がしましたけれど……」
「海洋が活発になったおかげで、他の国もちょっかいをかけに来たのかもしれませんね。まあ待ってればそのうちわかる事もありますよ!」
「ふむ……これから計画はどうなるでしょうか……?」
「もし、本当に新天地というものがあるなら、その土地を切り取りたいと思うものは他にもいるだろうね。国土の狭いこの国はもちろん、気候が厳しい鉄帝も似たような事を考えるかもしれないな」
 二人の会話に割り込みつつ、ゼフィラは納得したように何度も頷く。隣でデイジーはむっと頬を膨らませた。
「新天地の発見は海洋王国の悲願であるからな。この“大いなるディー”としては、また月天の魔女としては、決してその成果を敵に譲るわけにはいかんの」

 一方、ずぶ濡れの服を着替えた史之は、船尾近くにもたれて沈みゆく陽を見つめていた。
「ふう……一仕事終わった後の潮風が身体に心地いいね」
 どこからともなく取り出したシャンメリーの瓶。その封を切った彼は、豪快にジュースを呷る。
「はあ、女王陛下、この勝利をあなたに捧げます……」
 彼は水平線の彼方を見つめる。絶望の青を超えた先に、新世界はきっとある。史之はそう確信していた。



 おわり


成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お世話になっております。影絵企鵝です。この度はご参加ありがとうございました。
中々尋問方法がキツイなあと思いつつ、エピローグまで書かせていただきました。

ではまた、ご縁がありましたら。

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