PandoraPartyProject

シナリオ詳細

新型警備ロボット能力テスト

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●練達企業のたまによくある日常
 練達というのは、異世界からの技術だけで構成されているような国家なのだと、憶測混じりに誰かが酒の席で言った。
 それはある意味では過言ではなかった。イレギュラーズの傭兵に流通している暗視ゴーグルを始め、国内限定の通信経路であるとはいえインターネットや携帯電話を混沌に生み出したのは彼らに他ならない。
 このファンタジー世界にも関わらず、そんな先進的技術を有しているのはひとえに練達の民が優れた技術者である事の証明ともいえよう。

 さて、そんな優れた技術者が一日二日でちょちょいと先進的技術の代物を生み出しているかといえば、ほとんどの場合はそうではない。
「なんだと!!?!!!! 何処に!!!! 何処に問題があるというのだ!!!!!!!!!!!」
 練達のとある企業の会議室にて、ギザっ歯で目つきの悪い女技術者が雇い主の者と口論になっていた。いや、口論というより、彼女が一方的に怒り散らしている状態か。
「言葉通りの意味だよ。警備ロボさえあれば人間の傭兵不要論なんてのは希望的観測に満ちた机上の空論に過ぎない」
 プレゼンテーションに持ち出された見てくれの悪い警備ロボットを見て、雇い主は呆れてたような顔をした。
「これ一つで生身の人間がいくら雇えると思ってる? しかも、こんな見栄えもダサくて客受けもしない。名前は、なんだっけ。スーパーウルトラハイテク……」
「なっ、なっ……なっ……!!!!」
 コストが高価である事までは真っ当な意見として女技術者も受け入れていたが、見栄えがダサいといわれて顔を真っ赤にした。そして名前までバカにされかけて、ついにキレた。
「スーパーウルトラハイテク警備ロボマルキューちゃん何処がダサいんじゃああああ!!!!」
 文字通り、その女技術者は会議中に上司の顔面に噛みついた。

●そうして練達
「……って事です」
 現地へ向かう途中、延々一人芝居で女技術者と雇い主の様子を再現していた『若き情報屋』柳田 龍之介(p3n000020) 。
「いや、これから案内する企業さんマジでそんな状況だったみたいですよ。で、我々に求められたのは案の定その警備ロボとのバトル。生身の傭兵相手に勝てなきゃ、高価な警備ロボを雇う必要性がない、って事ですね」
 イレギュラーズと共に企業へ向かいつつ、急に声を潜めた。
「……依頼金を出してきたのは、企業の幹部。いわば技術者の雇い主さんですね。公平に第三者であるローレットギルドの協力を経て警備ロボの有効性をテストするという体です」
 その警備ロボットは試作機がいくらか生産され、企業の私有地にて疑似的な市街戦を執り行う。
 警備ロボとはいえちゃんとした武器を有しているというのだから、油断はならぬ。むしろその一体は高給パーツをふんだんに使って、耐久性と火力が異様に尖った性能を持っているという話だ。
「こういうのもなんですが、雇い主からしてみればおそらく会社の財政に悪影響与えるような代物お抱えになりたくもないのです。今回の試作機を生産しただけで、会社が少し傾いたらしいのですよ」
 歯に衣着せない言い方であるが、要は「生身の傭兵より役立たずである事を証明しろ」と求められている事が分かりやすい。
「まー、自分の作った子が否定されるのってちょっとかわいそうにも……ともあれ期待していますよ、イレギュラーズ様」

GMコメント

 稗田ケロ子です。報酬全額前払いなんてケロ子シナイヨー。

●環境情報
 夜間。企業の私有地。道路は電灯などの光源が点在している。
 1~4階ほどのビルが建ち並び、それらには窓を破壊するかピッキングするかでもしなければ入れない。
 作戦行動範疇での破壊行為や隠密・奇襲は警備ロボットのテストという性質上は歓迎される。

●エネミー情報:
量産型マルキュー:
 見た目はビッグサイズの白いビリヤード球体。
 カメラやゴム弾や電撃棒など非殺傷の武器を内蔵し、転がって移動する。
 視覚や聴覚で相手の存在を感知し、通信を行って一斉に招集を掛ける。(この通信は【テレパス】と同様のものとして扱う)
 その数は20体ほど。難点は高火力ならば一撃で破壊される低耐久力。

スーパーウルトラハイテク警備ロボマルキュー:
 量産型が全て破壊されると投入される。
 見た目は量産型を一回り大きくした赤い球体。明らかにオーバースペックな武器(大口径ガトリングガン・広範囲ロケット砲・レーザーブレード)。
 全体的な性能が量産型より高く、特に火力と耐久力が顕著。暗視機能付き。
 ただしAIを変えた影響か特殊抵抗が低減されている。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • 新型警備ロボット能力テスト完了
  • GM名稗田 ケロ子
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年12月16日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談4日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

リュグナー(p3p000614)
虚言の境界
七鳥・天十里(p3p001668)
グレイル・テンペスタ(p3p001964)
青混じる氷狼
ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)
月夜の蒼
ルナール・グリムゲルデ(p3p002562)
片翼の守護者
クローネ・グラウヴォルケ(p3p002573)
幻灯グレイ
ローガン・ジョージ・アリス(p3p005181)
鉄腕アリス
恋屍・愛無(p3p007296)
終焉の獣

リプレイ

●機密
「なに、私有地の地図が欲しい?」
「……侵入者対策だってんなら公開されてる情報くらいは貰らいませんとね……」
 『幻灯グレイ』クローネ・グラウヴォルケ(p3p002573)と『蒼き深淵』ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)は到着後、戦闘テストを始める前に依頼人である企業幹部に対して提案を打ち明けた。
 依頼人は二人をじろりと品定めするような目で見る。
「ダメに決まってるだろう。万が一に漏洩されては困るからな」
 にべもなく断られた。その理由はテストの有効性といった話ではなく、今後の防犯性を念頭に置いたものであった。
 断られる事自体はなんとなしに予想していたが、どうにもそこまで協力的でもないらしい。此処に到着してからというもの、イレギュラーズが妙な行動を取らないか常に目を光らせていた。
 第二手段としてファミリアに私有地を偵察させる予定だったが、この様子だと気取られれば真っ先に注意されるだろう。
「最近は狂気の行動に走る者も増えて来ていたが故、確かにこのような人の心が介入しない防御手段は有効やもしれんな」
 そういった最中、ロボットについて私見を述べる『虚言の境界』リュグナー(p3p000614)。
「だが高すぎる」
「然り。それは性能を伴って初めて有益となる」
 リュグナーはそういった風に依頼人と会話の調子を合わせた。気を引いてくれているのか? それとも無自覚か。
 クローネとルーキスは顔を見合わせてから、予め召喚しておいたファミリアを私有地の上空から偵察させた。
「さー、いってらっしゃいソラス。ダメダメの兵器が必要かどうか、こちらも品定めしましょう」

●群
『あー、聞こえるか諸君? これから我が子達の相手をしてもらう』
 私有地で初期配置に付いたイレギュラーズに向けて、頭上から拡声器を用いた女性の声が響いた。話し振りからしておそらくロボットを開発したという女技術者だろう。
 少し気まずそうに頬を掻く『当たり前の善意を』ローガン・ジョージ・アリス(p3p005181)。女技術者の声色がやたら不服そうに聞こえたからだ。
「まあ、真面目に作ったロボットを役立たず呼ばわりも可哀そうであるが……」
 とはいえ彼女を雇っている企業や社員も財政事情は常に死活問題だ。
「すこーしだけ心は痛むであるが……ロボットはボッコボコにするであるよ!」
 ローガンの意気込みが耳に届いたのか。改めてイレギュラーズに対して拡声器で呼びかける女技術者。
『予め話が付いてるだろうが警備テストの性質上、破壊行為は一向に構わん。我が子達もその例外ではない。……オーバー』
 女技術者が自信ありげに言い終えると、電子的な起動音があちらこちらから鳴り響いた。各地に配置された量産型の警備ロボットのスイッチが入ったのだ。
 情報では相手の数は多い。ともかく、各々の作戦通りに動き始める事にした。

「さぁて、盗人はどう出る」
 女技術者……ハスラーという女性は高いビルの屋上から、双眼鏡を通して警備ロボットやイレギュラーズの位置を視覚的に確認しようとしていた。
 傭兵の戦術というものは、情報という意味では“重要”だ。今後の開発において貴重なデータだから、直に目で置きたい。
 警備ロボットは予定通りに分散して各所に向かっているようであるが、イレギュラーズの何人かが見当たらない。
 私有地の情報を手に入れて死角に隠れたか。
 分析している内に窓ガラスが割られる音、続いて発破の音やらエンジンやらの爆音が鳴り響いた。ハスラーはすぐそちらの方へ双眼鏡を向ける。
「……殺傷力は無いであるが、逆にこういう時には便利であるなぁコレ」
 そちらではローガンが爆発物片手に、そう呟いていた。後ろで音を鳴らしているのは、『紅獣』ルナール・グルナディエ(p3p002562)。『ガンスリンガー』七鳥・天十里(p3p001668)。
「見ろ、ロボット達がこちらに気付いたぞ」
「技術者さんも折角造ったもの破壊されちゃうのは可哀想だなあ……ちょっと残念だけどお仕事だからね、壊しちゃうけど許してね!」
 わざと派手な音を立てておびき寄せる作戦か。技術者がそうは理解しても、警備ロボット達としてはそれ以上の破壊行為を続けさせない為に全力で向かわざるを得ない。
 近辺に居たロボットの数体はローガンを筆頭としたイレギュラーズと鉢合わせ、ケロケロとした機械音声の警告と共に武器を構える。ローガンは少し迷いながらも、バッと腕を突き出して、名乗りをあげた。
「吾輩はローガン・ジョージ・アリス! 言葉が通じるかどうかは分からん……が、正々堂々戦うゆえ、かかって参れ!!」
 出来れば、痛いで済むと嬉しい。ローガンはその言葉をぐっと呑み込んだ。
 ロボット側もその名乗りで警告を無視したと認識したのであろうか。その一体が真っ先にローガン目掛けて非殺傷性のゴム弾を発砲してくる。
 ローガンは銃口が向けられている事に気付いて、鉄腕で慌てて射線を塞いだ。ビリビリと酷い金属音が響いて弾丸は弾かれる。
「……な、何度もマトモに当たったら痛いで済まないでござるな」
 一発の威力を理解して、少しひやりとするローガン。彼が息をつく暇もなく、集まっていたロボット達の銃口はローガンへ一斉に向けられ、連続した銃声が立て続けに鳴った。
 反射的に騎士盾で身を守るローガンであるが、彼に向けられた弾丸は思った以上に少なく、それどころか警備ロボットの何体かが損傷を受けていた。
 何が起こった? それを確認する間もなく、また鳴り始める発砲音。
「はーい横一列に並んでね。纏めてばばばんっ!」
 異様な早さでリボルバーのリロードを終えた天十里が、再びファニングショットでシリンダー内の銃を撃ち尽くす。その射撃に併せて、暗所に隠れ潜んでいたリュグナーとクローネが同じターゲットに範囲攻撃――オセの狂眼や身を震わせる獣性を繰り出した。
「……リボルバー、羨ましいッス……私のは派手さに欠けますからねぇ……」
「しかし派手さにつられて追い詰める役割を持つ者が誘い出されてはな。……さぁ、次なる"戦闘テスト"を始めようではないか!」
 それらによってロボットの内、隊列を組んでいたものはことごとく破壊されるか、致命的なエラーを引き起こして機能を停止させた。
「おぉ、先の銃声は七鳥殿でござったか!」
 味方の援護と認知して、安堵するローガン。範囲攻撃で一網打尽にされたサマを感心すると共に、苦い顔をするハスラー。
 それらの心境に関わらず、イレギュラーズの範囲攻撃を免れたロボット達は他の警備ロボットを呼び寄せる事に集中あるいは狙いを付けやすいイレギュラーズを無力化する事を優先し始めた。
 次第、後続でぞろぞろと集まり始めたロボット達にイレギュラーズのルナールは呆れたような顔をする。
「加減を知らんのか、ここの開発者は……」
 会社を傾かせるレベルの代物を生産性も省みず量産するとは。とはいえ、これらの抜き打ちテストが自分達の仕事。仕方無いとばかりに彼は首を傾げる。
 その内、ルナールの胴体目掛けてゴム弾が数発撃ち込まれた。丈夫な彼は昏倒とまではいかないまでも、いささか不機嫌そうに顔を歪めた。
「本当にこの程度なら置物に代わりないぞ」
 そう言い放って、ルナールは再び射撃姿勢を取ったロボットの一体に対して距離を詰める。しかし、格闘戦を仕掛ける前にそのロボットは粉々に砕け散った。
「最初からあんまり飛ばさないようにねルナール。後続がいるわよ」
 ルーキスのブラックドッグか。ルナールは恋人の指摘に苦笑しつつも、すぐに標的を切り替え、警備ロボットを蹴鞠か何かのように軽々と蹴り上げ、破壊した。
「飛ばす気は無いんだが、ルーキスも気をつけろよー?」
「いやはや数の暴力は厄介ですこと」
 互いの苦手距離を埋め合うように援護し合う二人。高い火力を持った彼らが攻撃する度に、ロボットは一体ずつ着実に破壊されていった。

 成る程。耐久性に難有りか。苦々しく思いながらも、イレギュラーズの火力に目を見張る女技術者ハスラー。
 手数でいくらかイレギュラーズに損害を与えたまではよかったが、それが効果的だったのは警備ロボットの集結が完了してからほんのしばらくの合間だけだ。
 事実、目の前で起きている出来事を見ろ。彼らはすぐにその傷を癒やしている。

「装備的に撃退用な気がするんだけど……侵入者を動けなくするくらいでいいんじゃ……」
 味方が手傷を負っているのをみて、苦い顔をする『青混じる白狼』グレイル・テンペスタ(p3p001964)。手数に押されていくらか負傷者が出てしまった事を悔やむような顔である。
 イレギュラーズの一人、『ラブ&ピース』恋屍・愛無(p3p007296)が彼を宥めるように言った。
「だがこの世界の生物は強すぎる。怪我させるくらいでなければ食い止められるわけもなかろう」
 そうはいっても、グレイルとしては目の前で怪我人を出されればたまったものではない。度々仲間から重傷者が出る事を思い返して、尻尾をしゅんとさせる。
 グレイルが使役するハティの猛攻を掻い潜ってきたのか、警備ロボットの内の一体がグレイルに近接戦を仕掛けるべく武器を構えながら突進してきた。
「……あっ!」
 咄嗟、近くで戦闘を行っていた愛無が警備ロボットに組み技を仕掛ける。
 相手が振り回す電磁棒をマトモに受けつつも、意に介する事もなく軟泥状の腕でロボットを絡め取った。
 対するロボットも転がり暴れて羽交い締めを解こうとするが、完璧に腕力負けしたのもあってそのまま完全に拘束されてしまう。
 一部始終を目の前にして思わず「ぽかん」とするグレイル。愛無は表情一つ変えるでもなく、暴れる警備ロボットを押さえつけながら言った。
「彼女は恐らく天才だろう。並の天才では敵わぬほどに」

●強個体
「……全滅? ……20体の警備ロボットが10分も経たずにか……」
 初めてイレギュラーズの戦闘を目の前にして、ハスラーは一種の敬意を抱くと共に青ざめた。彼女だって、金銭感覚が全く無いわけではない。ロボットの生産費が高額なのは承知している。
 だが並の武装強盗なら容易に撃退出来る性能だからこそ、自信を持って量産までこぎ着けたのだ。
 ……それが、たったの10分も持ちこたえられずに全滅……。
 最後の一体が完全に拘束されるのを見届けて、量産型の全滅と判断した彼女はロボットの操作ボタンを押した。

「……技術者さん……さっきよりもずっと不服そうッス……」
「フハハ! 丹精込めた自信作がこうも無残にやられれば当然というヤツだな!」
 リュグナーは前哨戦が順調とみて、彼らしい大笑いをしてみせた。クローネはなんとなく不憫に思い、ため息をつく。
 グレイルもなんとなしに思うところありながらも、負傷の度合いが高いイレギュラーズに目を向けた。
「……とにかく今の内に治療を……」
『量産型は機能停止。今からスーパーウルトラハイテク警備ロボマルキューを投入する』
 そんなやり取りが出来たのも束の間、拡声器から呼びかけられた直後にドシンとアスファルトが揺れ動いた。
 なんだ? イレギュラーズは周囲を見回して発信源を確かめようとする。
 咄嗟、ルーナルが何かに気付いてルーキスに飛びかかった。彼女が何事か問い返す前に、足下が爆発を起こして、破片と熱風が二人に襲い掛かった。
「ルナール!」
「っ……鉄屑風情が、人の恋人に手を出すとはいい度胸だな?」
 暗闇を睨み付けるルナール。奇襲まがいの攻撃からルーキスを庇ったせいもあり、意識を失いかけた。しかし、パンドラの力を使ってどうにか立て直す。
 ルナールが倒れないのを見届け若干安堵してから、暗闇から姿を現した球体上のロボットを憎々しげに見つめるルーキス。
「……うわあオーバースペック。確かに警備用に持たせる装備じゃないわ」
 先程撃ってきた爆発物は……事前情報通り、ロケット砲か。明らかに殺害用。建築物にも被害が出ているし、目的が完全に警備ロボットというものから外れている。
 ともかくとして、ルーキスは相方がやられた仕返しとばかりにブラッグドッグを発射した。
 ロボットは反射的に防御を取るが、自我を持ったその攻撃は防御をすり抜けてロボットの胴体に命中。
 高威力のダメージを与えたはずなのだが、先とは違って破壊しきれなかった。耐久力が高いというのは本当らしい。
「所謂、デバッグの時間……だな」 
 正攻法では若干攻略に手間取ろう。リュグナーはバッドステータスの付与する作戦を即決した。
 ロボットの周囲に魔術を展開させようとする。内蔵していたブースターを発動して回避行動を取るロボットであるが、それを妨害せんとイレギュラーズの一斉に攻撃を仕掛けてきた。
「大物相手って結構得意だったり。ついでにのんびり出てきたのは失敗だね!」
 銃口から鮮血を込めた弾丸を撃ち放つ。ロボットは回避態勢を続行し、それをどうにか回避してみせた。しかし、それさえ読み切っていたのか天十里が間髪入れずに移動先へと狙いを付ける。
 気分の高揚もあって、天十里の意思の魔力が思わず溢れ出る。黒髪の先端をチリチリと焦がした。
「アフターファイア……もう一発!」
 赤熱化した弾丸が放たれ、敵の体内に滑り込んだ。電気系統の一部を発火させ、ロボットの体を体内から蝕んだ。だがこれだけに終わらない。
「ふはは、いいぞ七鳥! いでよ! スケフィントンの娘!!」
 声高らかにリュグナーが叫んだ瞬間、黒いキューブがロボットを取り囲んだ。
 むせび泣く様な軋む音を立て、炎や感電に蝕まれていく。キューブの圧縮から逃れようと、自壊も構わずロケット砲をキューブの内側から撃ち込んでいる。
「ム、電気系統がやられてバグったか? 人間なら狂気の行動だな!!」
 戦局は自分達が圧倒的優位だと判断するリュグナー。だが何事か、キューブの中から撃ち出されたものが彼の横を掠めて、回復魔術を詠唱していたグレイルや愛無に飛来した。
「…………!!」
 幸い、飛来してきた弾丸を咄嗟にナイフで防いだ。致命傷は避けたが、その衝撃で間接が外れかける。
 ――武器を捨てなさい。さもなくば排除します。ノイズ混じりの警告音が、イレギュラーズに向けて発せられる。
 そしてガトリングがやたらめったら乱射され、イレギュラーズは各々遮蔽物に逃げ込んだ。
 明らかに過剰な武器で殺しにかかってきながら、武装解除を促すロボットに妙な不気味さを感じるイレギュラーズ。
「……もっとマシな名前付けられなかったんッスかね……」
 クローネはそう口にしながらも、月指す鉄針――化生殺しの杭を生成した。
 掃射が止んで、遮蔽物の横に回り込もうとするロボット。
 クローネはお互いの射線が通った瞬間、ロケット砲が向けられているのも構わず杭を撃ち放った。
 ほぼ同時にロケットが射出され、化生殺しの杭と交差する。クローネは命中を確認する暇もなく、間髪入れずその場から飛び退いた。
 元居た地点が爆発し、視界は噴煙で塞がれる。
「……やった、ッス?」
 静寂。次弾が飛んでくる事を予想してイレギュラーズも静かに構えていたが、数秒経ってもその気配がない。
 煙が晴れ、そこにあったのは杭に突き貫かれて完全に機能を停止していたロボットの姿であった。
「さあさあ、帰ってゆっくりしようか」
 ルーキスはファミリアを呼び戻してから、自分を庇って怪我を負ったルナールに肩を貸した。
「……うむ、帰ったらゆっくりルーキスのマフィンが食いたい」

●戦闘報告
 後日、自主的なレポートを提出しに来たイレギュラーズ。
「……えぇっと、女技術者さん……これ……」
 受け取る為に面会に来た女技術者は、消沈しきっていた。傑作と思っていた自信作が倒されたらそうもなる。
 こういう時どうすればいいんだろうとグレイルは悩む。女性相手だから抱き締めて落ち着かせるわけにもいかない。かといって慰める言葉も思いつかない。
 同席していた愛無も思う所あったのか、ハッキリと言い放った。
「確かハスラー、といったか……正直、フェアとも思えぬ戦いだった。会社としては、僕らが勝てば問題なかったのだろう」
 女技術者はバッと顔を上げる。
「そうだ! お互いにとって不公平だったのだ!! 開発費があればもっと良いAIを使ってやれたし、君達もあぁいう理由で地図の公開を断られるべきでなかった!!!」
 彼女も不服な部分があったのだろう。だがそうやって一頻り喚いたかと思うと、落ち着いた口調でイレギュラーズに礼を述べた。
「レポートまで頂けて感謝する。確か君は練達出身だったな。大いに、参考にさせてもらおう」
「いえ……」
 自分の在籍していた学校にアレが配備される所を想像して、怖くなったとは言えないグレイル。
 ハスラーはそれを理解してか否か、退席の際に少々得意げに言ってみせた。
「我が子に限らず、ロボットの開発がもっと進めば一般人や傭兵も怪我する事がなくなるだろう。私はその為に頑張るぞ! あーっはっはっは!!!」
 グレイルと愛無は騒がしく去る彼女を見送りながら、微笑ましさと共に何処かむなしさを感じた。
「……そうなると、いいんだけどね……」
「しかし傭兵が不要なれば、僕も生きていけぬゆえに」
 ハスラーの夢が現実となるかどうかは定かではない。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 大変お待たせしました。ロボットについて、テストは成功したようです。
 依頼お疲れ様でした。
 

PAGETOPPAGEBOTTOM