シナリオ詳細
誇り高き獣人の国と巨人の戦い
オープニング
●獣人の国
わう、わぅ、あぉーん。
にゃあ、みゃぁ、にゃぉーん。
鳥の淑女は高い空をお澄まし顔で飛び回り、ピー、チチチ。
獣と獣人が助け合い寄り添って生きる国『牙と尾』が大パニックを起こしている!
というのも、(どったんどったん)
「ひゃー! 巨人が視えた!」
そう! 山のようにでっかい巨人が突然どこかからふらりとやってきて、「獣は臭いし煩いな、どおれ潰してやろうかい」と喧嘩を吹っかけてきたのだ。
「ひゃー! 岩が飛んできた!」
説明している間にも巨人が楽しそうにひょいひょい大岩摘まみ上げ、どすんどすんと投げてくる!
「ハッハッハ! 弱い者虐めは楽しいな!」
「おいらは逃げるぞ、どいておくれ!」
小さな兎族の臆病小僧がトテトテと道を走り、おおきな体の半象人が奥さんの手を取りドタドタ逃げていく。
「坊、母さんの言うこときくんだぞ。強い男になれ」
狼獣人の家の中、これから逃げるわよと母に手を引かれる坊ちゃんに、父はそう言い槍を取る。
「あなた、あんなに大きな巨人ですよ。そんな槍なんて刺さりっこありません」
母狼は蒼褪めておろおろ。まだ幼い坊ちゃんは父と母の真ん中でぼんやりと、ああ今日はなんだか特別な日なんだと空気の違いを感じたもんさ。
「槍が折れても俺には牙がある、爪がある」
よく視れば父の持つ槍先が幽かに震えているのである。
「おっとう」
「坊、これは武者震いという。覚えておけよ」
父は勇ましく牙を見せて笑って背を向ける。
「覚えておけよ、俺のことを」
逃げていく獣人達と逆の方向に走り出す者達がいる。父はそれに混ざった。
山のように大きく、虫ケラを弄び潰すがごとく嘲笑う恐ろしい巨人。熊の獣人、猫の獣人、鳥の獣人、狼の獣人……他にもいろいろな種類の勇士たちが、巨人と比べれば余りにもちっぽけに視えるその身体に決死の覚悟と闘志と誇りを宿して。
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
咆哮した。
茜色に染まる夕暮れの空が残酷なほど美しく、ああ、昨日までと何も変わらないとでもいうようにその日も太陽は沈んでいくのだ。
●戦いへの道
「さて、この一冊だけど」
カストル・ジェミニが『牙と尾』を開いてページに視線を落としている。
「巨人は大きくて頑丈だ。獣人達ももちろん、頑張るけれど結果は悲劇に終わってしまうんだ」
カストルは血のように赤い瞳を哀し気に瞬かせた。
「悲劇も美しいものだけれど、どうだろう。ハッピーエンドに導いてやろうという人は、いるかな」
優しい指先が坊やの描写をそっと撫でるような仕草を見せた。
「君たちは強い。巨人相手でも……倒せるだろう?」
時刻は夕暮れ時。
街を背後に庇い、獣人達を守って戦うことになる。
街の外に出ればフィールドはひらけた草原。
巨人は1体。
「頼んだよ、特異運命座標達」
カストルはそう言って頭を下げたのだった。
- 誇り高き獣人の国と巨人の戦い完了
- NM名remo
- 種別ライブノベル
- 難易度-
- 冒険終了日時2019年11月29日 23時35分
- 参加人数4/4人
- 相談2日
- 参加費100RC
参加者 : 4 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(4人)
リプレイ
繋がった手が温い。
美咲・マクスウェル(p3p005192)は普段通りに状況を把握しようと視線を巡らせる。
「おお」
快活な声放ち、軍服の青年が狼耳をピンッとさせて拳を握る。
「天を衝く威容、聞いた通りの巨人ですね!」
日車・迅(p3p007500)が眼を輝かせた。
「良いですね、とても良い。未曾有の危機ではありますが、なればこそ命が輝くというもの! 見事に乗り越えて勝利の歌を歌うとしましょう! 巨人の首級は挙げた事がありませんので楽しみです!」
尻尾が元気に揺れる。この国に余りに馴染む姿に美咲は「現地の獣人も戦意が高いんだね」と一瞬思い。
「ってよく視たら現地の人じゃないし」
迅が仲間だと気付いたのだった。
そんな美咲にくすくす笑い、友は握っていた手を放して駆けだした。
太陽が地上すれすれに降りている。
故国が為に駆ける獣人達はせめて彼らの同胞が逃げる時間を稼ごうと息を巻く。
ズシン。
地を揺らし巨人が一歩進めば獣人達が右往左往し、なんとか進行を止めようと武器を突き立てる。全く痛くも痒くもないというのに何度も必死に繰り返し、戯れに足を遊ばせれば容易に吹き飛び勝手に大怪我をして苦しんで。
巨人は嗤う。
「ハハ、ハ! ……?」
硝子が割れるような音が続けて鳴る。巨人が前進せんと上げようとした足が――上げられぬ。
「凍り付け!」
「ぬ?」
見れば足元がいつの間にか氷漬けになっているではないか。原因と思われる冷気爆ぜさせる蒼い蝙蝠弾を放つは日向 葵(p3p000366)。
「悲劇ってのも確かに悪くはねぇけど、変えれるモンなら変えたいっスね」
「ほう、そんな技があるのか」
面白い技だ、と巨人が興味深そうに呟いた。
葵は冷静に戦場の位置関係を把握し、味方のサポートをすべく蒼蝙蝠を追加する。どれ、掌撃を喰らわせてやろうと巨人が手を伸ばそうとした時、眩い光が注意を引いた。
「とーう!」
愛らしくも勇ましい声ひとつ、結界が街を守るべく展開されていく。術者ヒィロ=エヒト(p3p002503)は狐尾をふわふわ揺らして声を上げた。
「さあここからはボクが、ボク達が相手だ! 弱い者虐めしかできない、図体だけの弱虫なんて軽く捻り潰してやるから、かかってきなよ!」
小さな指がちょいちょいと招くように煽りを入れている。
「なんだ、ぬしら」
今までの小さき者とは何かが違う。
そんな存在が4人、気付けば周囲に集まっていた。
「あ、貴方達は!?」
決死の覚悟で巨人に向かおうとしていた獣人達が眼を見開いている。
「危険です、逃げてくださ、」
言いかけた一人が言葉を呑み込む。
彼らを庇うよう立つヒィロが夕陽に紅く騎士甲冑を染め上げ、ちろりと振り返り、くしゃりと人懐こい笑顔を見せたから。
「気高き獣人の勇士さん! キミ達の誇りと覚悟、見せてもらったよ!」
声はよく通り、人々の心に届く。ヒィロは前を向き、すらりと剣を抜いた。一目で上質とわかる剣身が落陽を照り返して煌いた。
「その牙や爪に、こんな木偶の坊は相応しくないよね。ここはボク達に任せて、愛しい人達を守ってあげて!」
「僕達は討伐に来たんです!」
迅が眼を爛々とさせ、八重歯を見せて笑う。
「こんなの日常茶飯事だから」
美咲がふわりと笑み、
「大丈夫、オレ達は巨人を倒せるっスよ」
葵がボールを撫でながらオッドアイに自信を見せる。
穹の青領域を徐々に追いやり、耀く陽は周囲に煌々とした黄金を見せつけながら燃えるような朱い色で世界を染めていた。
「ヒィロの作った隙は絶対無駄にしない」
美咲の眼が凶悪な力を発揮する。
(一方的な力で他者を踏みつけるものは、いずれ同様の報いを受ける。それは必ずしも純粋な武力によるとは限らないけれど)
「理解するべきよ。傲慢が罪とされるのは何故かをね」
巨人がびくりと巨体を揺らして苦痛の声あげ、忌々し気な目を美咲に向けた。宝石めいた妖麗な瞳。それが苦痛を齎したのだと巨人にはわかり、殺意に殺意を返さんと吠え猛け――弾かれたように叫喚する。
「ッ!?」
美咲に気を取られた一瞬で巨人のアキレス腱にビリリと衝撃が奔ったのだ。足元を視た巨人は驚愕を余儀なくされた。いつの間にか距離を詰めて跳びあがり拳を放っていた迅が巨人の足の甲に着地しながら素早く腕を振りかぶりもう一打。今度は親指の爪を目掛けて。
「ただの拳だと!?」
「堅いですね!」
声はやんちゃな少年のよう。思い切り拳を叩きこめば、爪が割れて滂沱と血が流れ出す。
「効いている!!」
「見ろ、巨人が悲鳴をあげている!」
獣人達が歓声をあげ、戦場の空気が変わっていく。
「おのれ、調子に乗るなよ!」
巨人が怒り狂って地団太を踏めば迅は軽やかに跳んで距離を稼ぎ、油断なく姿勢を低くする。
(少しでも皆さんの援護を)
狙えるなら首を――狼の瞳が煌めき、隣をヒィロが駆けていく。
「やっぱ巨人ってだけあって結構デカイな……勝てない道理はねぇけど、油断は禁物っス」
敵の懐に果敢に飛び込むヒィロと迅を支援しながら葵が味方に声をかけている。その耳朶にヒィロの声が届く。
「さぁ、楽しい楽しい殴り合いの始まりだよ!」
「オオ! 潰してやろうぞ!」
巨人が戦意を釣られた様子で腕を低くスイングしている。豪快な一撃をヒィロは膝を折り畳み、耳をぺたんと倒して避ける――衝撃が頭上を通り過ぎていく。数秒反応が遅ければ頭が持っていかれていただろう衝撃に、しかしヒィロが恐れ慄く事はない。
「ふっ!」
振り下ろした腕を足場に迅が巨体を駆けあがり、巨大な喉仏に渾身の拳を繰り出した。苦しみ暴れる巨人がバランスを崩して膝をつく。大地が悲鳴をあげるように鳴動する中、味方の攻撃が連続で叩き込まれていく。
「獣人さん方は、下がって確実に生き延びてね。経緯はどうあれ、私たちは、あなた方が残って勝者となることを望んでいるから」
美咲が獣人達を下がらせている。
「私? 私の事は、気にしなくていいし、忘れていいよ……『見てるだけ』だから」
前線から一時退いてくる迅に追い縋る手に魔眼で血花を咲かせ、手を振る美女は、確かに『見ているだけ』だ。その眼が凄まじい魔力を使っているのだと獣人達は理解して、ごくりと喉を鳴らすのであった。
「後ろには行かせねぇっス」
逆の手を葵のボールが強かに打ち据え、ヒィロが挑発して気を引いている。
「怪我人の撤退を手伝ってくれる?」
「もちろんです!」
尻尾をぱたぱた振り、迅が負傷した獣人に肩を貸し。
「巨人殿もなかなか強いのですが……僕ならともかく、先輩方は倒せないでしょう」
勝利を確信し、陽だまりのような声に獣人達が励まされ、顔を明るくする。
「ぐう、押されているだと」
そんなはずは、と首を振りながら巨人が立ち上がろうとしている。
「態勢を整える暇は与えないっス」
葵が強烈なシュートを撃ち、邪魔をする。鋭い弾丸のようにボールが飛び巨人を激しく打ち据えれば余りの威力に巨人が唸り、獣人達が眼を瞠る。
「あんな小さなボールが!」
「なんという剛の者よ」
見れば巨人までもが称賛の眼差しをしているのだ。
「むう、敵ながら見事だ」
小さな者にこんな力があるとは。巨人は今や完全に自分の生命の危機を知る――この者達は、己を凌駕し得る! と。
葵が眉をあげる。
「こっちは図体がデカくて偉そうなヤツならもっとスゲェの知ってるんスよ。ただの弱いものイジメするようなのに負けるかってんだ」
バウンドして戻ったボールを胸でトラップし、再び放てば白銀の流れ星めいた痛撃がどよめきを生む。
「人の命をオモチャみてぇに扱って」
呟き、葵が走り込む。疾走の速度を乗せ強靭な左で回し蹴りを打ち、跳びあがる。命中したボールの跳ね返りを宙で確りと捉えて――オーバーヘッドシュート!
「覚悟しろ! 当たると痛ェっスよ!」
一際大きな悲鳴があがり、人々が手を叩き湧き上がる。
しかし、まだ倒れることはない。
「あんな図体してるだけあって、なかなかの体力馬鹿みたい」
肩で息をしながらヒィロが最前線で重い一撃をかいくぐる。避けた一撃が大地を砕き、無数の石礫が襲い掛かって頬に傷を創って血を流し。けれど、その傷が一瞬で塞がり、消えていく。
負傷を事前に予測した美咲が治癒の力を用意していたのだ。
(治癒の使い手がいる限りキリがない。だが、届かぬ)
巨人が歯噛みする。軽装な美咲は一撃で葬る事ができそうだ。巨人は何度も狙おうとした。だがその都度邪魔が入る。
――連携している。
――それが、厄介なのだ。
徐々に疲労が蓄積し、ひと呼吸ごとに体の動きが鈍くなっていく。敵も味方もだ。
(だけど)
「ボクは絶対あきらめないよ! だって力強い仲間達が、とっても頼もしくて大好きな美咲さんがいてくれるから!」
仲間を庇い負った傷は一つ二つではない。だが、その傷も仲間が癒してくれる。凛然と立つヒィロに巨人が絶望の目を向ける――こんなに小さな体。なのに、どんなに傷を負わせても倒れない!
「ボク、この街の物語の終わり方知ってるよ! 誇りと優しさに溢れた獣人達は、いつまでも幸せに暮らしましたとさ、って!」
一際烈しい戦気を全身から放ち、呼ぶは友の名。
「ね、美咲さん!」
(ボク達の物語も、きっと……)
こくりと頷き、美咲が魔眼の力を放った。
「いくら巨人といっても、1人じゃ私たちには……いや、束になっても敵わないだろうね。その性質で群れても、手を取りあえる同士でいるとは、とても思えないもの」
断末魔が戦場に木霊する。大地を揺らし、巨人はズズンと倒れて動かぬものとなった。
「っしゃ、これで一先ずは解決っスか……」
「他にお怪我をなさった方はいませんか!」
葵が呟く背後で迅が元気いっぱい戦場を駆けている。
太陽が地平線に呑み込まれていく。
獣人達はその戦いを歴史書に残し、救国の勇者の話を永遠に語り継ぐのであった。
成否
成功
状態異常
なし
NMコメント
おはようございます。remoです。
初めましての方も、そうでない方もどうぞよろしくお願いいたします。
今回は純戦ライブノベルです。巨人はおおきいです。思いっきり格好良くやっつけてください。プレイングは自由にのびのび書いてくださって大丈夫です。何書いたらいいかわかんない時は「武器はこれ、こういう戦闘スタイル、台詞はこんなかっちょいい台詞言っちゃるぜ~いえーい」とか書いて下さったら嬉しいです。
キャラクター様の個性やプレイヤー様の自由な発想を発揮する機会になれば、幸いでございます。
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