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シナリオ詳細

<青海のバッカニア>太陽をとりもどせ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●太陽クジラよりの依頼
『ローレットの皆さん。大変お久しぶりです。あなたのおかげで、子どもたちもこんなに大きくなりました』
 夜の港が昼のように明るい。
 それもみな、港に浮かぶ球体のはなつ光のせいである。
 港の人々はその眩しさに、そして自らの脳に直接語りかけてくるその『生物』に驚き、ぽかんと口を開けて眺めていた。
 あなたは、その先頭に立っている。
『以前助けて頂いたばかりではありますが、またお願いを聞いてもらえますでしょうか』
 あなたは知っていてもいいし、知らなくてもい。
 この生物の名前は『太陽クジラ』。
 地熱を食べるモンスターである。

 国家や主義主張に関わらず受けた依頼は必ずこなすというのがローレットの条約である。
 それがたとえ人ならざるものであっても、ましてモンスターであっても、条件と『とある形で』報酬が定まった以上、これは立派な依頼であった。
 海を切り裂くように進む船の上。『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は資料をめくりながら説明を始めた。
「太陽クジラさんからの依頼は、家族を取り戻して欲しいというものなのです」
 以前ローレットはこの直径10メートルほどの発光球体生物『太陽クジラ』から依頼を受け、彼女の子供たちがいる海まで案内したことがあった。
 子供というのは母親同様直径2メートルほどの輝く球体で、普段海底に暮らし時折魚を食べに水面まで顔を出すことがあるという。
「けどその子供のひとりが、海面に出たさいに練達の密猟者に捕まってしまったのです」

 L&S株式会社。
 練達に拠点をもつ企業体である。
 彼らは混沌に存在する異常物体や奇妙な生物を幻想や海洋の貴族たちを対象に販売するという、いわゆる好事家専用のブローカーだった。
「おそらく太陽クジラの子供をどこかに売ってしまうつもりだと思うのです。
 一応今回の依頼内容はその奪還になるのですが……」
 ここで、ユリーカは報酬に関する資料をめくった。
「海洋王国の貴族連合からの通達なのです。『L&S株式会社の船は海洋王国領海での漁業ならびにモンスター・ハントを認められておらず、この撃退と鎮圧。場合によっては抹殺を求めるものである』……ということなのです」
 『大号令』によって外洋遠征が始まろうという今である。
 他国の船による邪魔はできる限り排除しておきたいというのが王国の考えであり、その意図と太陽クジラのお願いが利害の一致をお越し、今回まっとうな依頼として成立した次第である。
「なので、皆さんへの依頼は『太陽クジラの子供の奪還』に『L&S株式会社の撃退』が加えられることになるのです。みなさん、よろしくお願いするのです!」

GMコメント

●重要な備考
<青海のバッカニア>ではイレギュラーズ個人毎に特別な『海洋王国事業貢献値』をカウントします。
 この貢献値は参加関連シナリオの結果、キャラクターの活躍等により変動し、高い数字を持つキャラクターは外洋進出時に役割を受ける場合がある、優先シナリオが設定される可能性がある等、特別な結果を受ける可能性があります。『海洋王国事業貢献値』の状況は特設ページで公開されます。

■成功条件
・成功条件1:『太陽クジラの子供』の奪還と生存
・成功条件2:L&S株式会社の撃退
・オプションA:L&S株式会社に関わるスタッフすべての抹殺
 →このオプションを満たした場合、海洋名声に加えて『練達への悪名』が加算されることがあります
・オプションB:L&S株式会社に関わるスタッフすべての生存
・オプションC:???????との??

■L&S株式会社の戦力
 大型のクルーザーによって移動中のL&S株式会社に先回りし、海上にてL&S株式会社の武装チームと交戦。『太陽クジラの子供』を奪還します。
 L&S株式会社とは過去にちょっとだけ交戦したことがあり、その際の情報が蓄積されています。

・黒衣に覆面を被った忍者風の兵士
 短刀で武装しており非常に俊敏。回避能力が高く撃破が難しい。
・黒衣の白仮面の魔術師
 黒いビジネススーツと白い仮面をつけた魔術師。
 魔法陣を高速で起動し高威力の魔術を行使する。
・麻袋を頭に被った巨漢の戦士
 巨大なハンマーと自らの巨体を武器にした戦士。
 豊富なHPと防御技術による強引な攻めと守りが特徴。
・黒服の戦闘員たち
 拳銃で武装したビジネススーツの男たち。
 ここの戦闘力はあまり高くないが数がいる
 今回何人動員しているかはわからないが、極端に多いわけではないはず。
・謎のビジネスマン
 高級そうなメガネをかけ赤いビジネススーツをまとったビジネスマン。普段から黒服たちに守られている。
 L&S株式会社で商談を担当する人物であるらしく戦闘能力は不明。

■戦闘までの流れ
 L&S株式会社はクルーザーによって移動しているため、まずは船で接近してこれを止める必要があります。
 呼びかけるんでも直接船を叩きつけるんでも構いません。得意なやり方を選んでください。
 あとは相手の船に乗り込み戦闘開始です。
 野ざらしにしてはいないと思いますが『太陽クジラの子供』がうっかり巻き込まれないように注意して戦いましょう。

■■■アドリブ度■■■
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用ください。

  • <青海のバッカニア>太陽をとりもどせ完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年12月10日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
シャルレィス・スクァリオ(p3p000332)
蒼銀一閃
デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)
共にあれ
イリス・アトラクトス(p3p000883)
光鱗の姫
アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)
無限円舞
グリムペイン・ダカタール(p3p002887)
わるいおおかみさん
ロゼット=テイ(p3p004150)
砂漠に燈る智恵
ジェラルド・ジェンキンス・ネフェルタ(p3p007230)
戦場の医師

リプレイ

●太陽を覚えている
 ゆらめく空と乱反射する海。
 まるでいつまでも続く真昼のような航海を、『黄昏き蒼の底』十夜 縁(p3p000099)は覚えている。
 当時と同じ酒を飲み、船の舵をとりながら独りごちた。
「会うのはこれで……三度目か。もうすっかりローレットのお得意様だな。
 乗りかかった――あぁいや、“吐き出させた”船のついでだ、こうなりゃとことん付き合ってやるさね」
 太陽クジラになじみが深くとも、深くなくとも、依頼された以上はきっちり形にしてみせるのがローレットという組織である。
 船のベンチに腰掛けて、『月光』ロゼット=テイ(p3p004150)はゆらめく波の向こう側を見やる。
(太陽クジラさん、やっぱり光ってるから太陽なのかな……。モンスターらしいけれど、ああして脳内に直接喋る種類は珍しいな。まあ、どんな存在であれ普通家族がさらわれたら悲しいだろうなあ……)
 と、おもいしもの。
「未知の生き物を色々したい気持ちもわからないでもないけどね。
 でも、人道はとても大事なものだと思うのだよね。だから子供は、救い出してやりたいなあ」
「フハハ、しかしあれは、一体何を指して鯨と銘打ったのだろうねえ」
 『わるいおおかみさん』グリムペイン・ダカタール(p3p002887)はいろいろな物語にある『くじら』を思い浮かべてみた。
 海に住まう者にとって、巨大な生物はイコールでくじらであるという文化が、一部にはあるらしい。21世紀地球で例えるなら、ゾウガメというネーミングセンスがそれに近い。
「ともかく……わるい子にはお仕置きが要るものと相場は決まっている。
 怖いものが来て恐ろしい目に遭っても知らないよ」
 事件をおさらいしよう。
 『太陽くじら』というかわった生物から受けたこの依頼は、L&S株式会社という練達企業にさらわれた子供くじらの救出である。
 L&S株式会社とは貴族等富裕層を対象に異常存在を販売するいわゆる闇商人だ。
 彼らの仕入れ手段はものによって様々だが、太陽くじらのコミュニケーション能力や生態系がろくに知られていない事実と考えるに、単純に珍しい生物を捕獲して売ろうとしているだけのようにもとれる。
 モンスターの捕獲販売は別に禁じられているわけではないが、海洋王国的に禁じたい行為であるのは間違いないだろう。
 彼らの意図はともかくとして、船を止める理由と取り返す理由、そして大義はローレット側にあると言っていい。
 問題となるのは彼らの保有戦力である。
 (海洋王国で勝手に捕獲した自覚があるのか)十分な戦力を船に有しており、それらをまずは排除しなければならない。
「太陽クジラか。なんにせよ違法な漁なら確り取り締まらなきゃならねぇな。
 太陽クジラの子供も親と離され捕まって辛い思いをしているだろう。早いとこ母親の所に返してやらないとな」
 『戦場の医師』ジェラルド・ジェンキンス・ネフェルタ(p3p007230)も腕を組み、そんな風に会話に参加する。
 彼らの目的はいま、依頼達成と『子を想う母への感情』で一致していた。

 一方こちらは豪華旅船『ビッグドリーム号』。
 海洋王国でだいぶ沢山の戦果を上げたことでいまや有名人となった『大いなる者』デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)の船である。
 今日も上機嫌に船を運転している。
「太陽クジラのお母さん、子供たちの事、きっとすっごく心配だよね。絶対助けてあげなくちゃ!」
 シャルレィスは片手半剣『蒼嵐』の柄をトンとたたくと、この先の戦いについてイメージを巡らせた。
 L&S株式会社の戦力のうち、数だけそろえている黒服たちはそれほど脅威にならないだろう。効率よく散らして、注意すべき相手のためにリソースを温存しておくのが得策だ。
 そして注意すべきは魔術師、戦士、忍者……といった所だ。できればダメージソースになりそうな魔術師を優先して、倒しづらい忍者を後回しにしたいところだが、思い通りの順番で攻撃させてくれるかは、少し疑問だった。
 シャルレィス本人で例えるなら、自分が前衛にでて敵に殴りかかる際、ダメージソースになるが耐久力の低いデイジーを先に倒されては困るし、できることなら敵もそうしたいだろう。
 なのでこちらは味方と連携してヘイトコントロールを図ったり味方をかばったりといった工夫を必ずする。それはつまり、敵も同じことができるしするだろうということだ。
 こうなった場合、どうやって相手の陣形を崩すか。もしくはこちらの得意を”押しつける”かが重要になってくる。
「うーん……想ったんだけど、これって国際問題なんだよね? いちおう」
 考えを遮るように、『光鱗の姫』イリス・アトラクトス(p3p000883)が船の手すりによりかかってつぶやいた。
 依頼人が太陽くじらなので普通に拉致被害の奪還依頼に見えるが、国際的にみれば密漁とその拿捕である。
「対処しないと組み易しとみて増えたりするのよね。子供の密猟とか後味悪いし……頑張ろう」
「そうだね。向こうからしたら時期が悪かった、としか言いようがないけど」
 『黒陽炎』アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)が肩にかけていた布をひらりと広げる。
「まあ彼等のお得意様に恨みを買うのもリスクはあるし。ここは穏便に帰ってもらいましょう」
 肝心な方針を、そういえば述べていなかった。
 アンナたちはL&S株式会社に物理的制裁を加えるつもり……では、ない。
 あくまで武力によって『交渉可能な状況』を作成し、可及的穏便に太陽クジラの返還を求めるつもりでいた。
 これをただの『恫喝』としないために、出せるカードもいくらかあるが……それは、そのときになってのお楽しみとしておこう。
「みなのものー。M&M? の船が見えてきたのじゃ。総員戦闘態勢なのじゃー!」
 船を加速させ、自らも戦闘の姿勢をとるデイジー。
 見れば、敵戦力が目視確認可能な距離まで船は近づいていた。
 相手に届くくらいに大声をはるアンナ。
「『そこの船、とまりなさい! ここは海洋王国の領海です!』」
 すると、L&Sの船は逃げるように加速を始めた。
「あっ逃げたよあの船!」
「追うのじゃー!」

●ボートチェイス
 海面をえぐる水しぶき。
 L&S株式会社のクルーザーから書けだした黒いスーツにサングラスの男たちは、それぞれ拳銃を構えて十夜たちの船へと射撃を開始した。
「練達から遥々稼ぎにきたところ悪いがね、お前さん方はここいらじゃ招かれざる客ってことになってるらしい。俺としちゃぁその船に閉じ込めてるやつを返してくれりゃぁそれでいいんだが……どうする?
 強者揃い(俺以外)のイレギュラーズと一戦交える気はあるかい?」
 なんて言いながら、十夜は巧みな操船技術で複雑に蛇行。射撃の狙いをつけにくくしながらもL&S船側面に追いつき始めた。
「回り込んで脚を止めとくから、あとはうまくやってくれや。か弱い運転手のおっさんは船で休憩させてもらうから」
「そうはいくか。報酬分は働いてもらうぞ」
 ジェラルドは軍服の腰ベルトに固定しておいた薬瓶を複数本抜くと、自らの周囲に治癒魔術の薬剤を散布し始めた。
「止まれ! お前ら海域侵略だぞ! 分かってやってんだよな! そうなると実力排除だぞ!」
 警告はした、とでも言うように呼びかけると、十夜の運転によってL&S船の前方へと回り込み、無理矢理船をぶつけにかかる。
 強制ブレーキのかかった船に、デイジーたちの船が近づいていく。

 一方その頃、L&Sのクルーザー内部では。
「どうやら、邪魔が入ったようですね」
 ビジネススーツとめがねといういかにも戦闘に適さないような格好をした男が、特殊捕獲ゲージの前で足を組んで座っていた。
「我々の出番が?」
 目元だけがかろうじて見える仮面をつけたサイバネティックスーツをまとった忍者が視線だけを向けてくる。
「いえ、いいでしょう。『あれら』にまずは対処させます。それでも無理なら、出てください。
 あの程度で排除できる敵ならわざわざ持ち場を離れる価値はない。排除できない敵ならあれらはいてもいなくてもかわらない」

 船がぶつかったことで、拳銃をもった黒服たちが次々に射撃を仕掛けてくる。
 対して、ダカタールは透視能力を用いてクルーザー内部を観察。
 太陽クジラとその周りで待機する魔術師たちを発見した。
「小手調べというわけか。ハハハ」
 ダカタールは『足先と踵の削ぎ落し』を発生させた。
 距離を無視して生まれた斬撃が黒服たちへ浴びせられていく。
「できる限り殺すなという話だったな?」
「殺すより生かすほうが難しい。難しいことには価値がある。道理だな」
 ロゼットは小さく助走をつけると懐にはいったカードの効果で浮遊。矢鱈に銃撃を続ける黒服へ飛びかかると、着地と同時に聖光を叩きつけた。
 顔面にフラッシュをくらって倒れる黒服。
 戦闘不能にはなったが、まだびくびくとけいれんしているあたり生きてはいるらしい。
「到着じゃー!」
 デイジーが船後ろ半分をターゲットにして『月球結界』を展開。
 球状の結界が生まれ、閉じ込められた黒服たちに無数の光の槍が突き刺さっていく。
「みなのものー、かかれー!」
 なんか楽しくなったのか、船長ごっこのノリで指を指すデイジー。
「「あいあいさー!」」
 シャルレィスとイリスはノリにのっかって助走ジャンプ。
 デイジーが弱らせた黒服たちめがけてダブルフライングキックをたたき込んだ。
 同時に蹴り飛ばされ、船室への階段を転げ落ちていく黒服たち。
 シャルレィスは振り向きざまに剣を抜き、至近距離から銃で撃とうとする黒服の手首を剣の柄で打ち付けた。
 狙う、構える、引き金を引く。この動作は訓練された人間にとってはあくびが出るほど遅いものだ。
 イリスにとってもそれは同様だったようで、『名乗り口上』で黒服を2~3人ほど引きつけると三叉槍の回転によって銃弾を反射。弾切れになって予備弾倉に手を伸ばしたところを蹴飛ばして海に転落させた。
「二人とも、伏せて」
 宙を舞う黒い布。
 海にもえる陽炎のようにゆらめくそれを、黒服たちは注視せざるを得なかった。
 つい振り返り、つい至近距離にあっても距離をとらず銃撃をしかけようとしてしまう。
 アンナはそれを予期していたように再び垂直に跳躍すると、彼らの射撃をまとめて回避した。
 黒服の頭をつかみ布でしめおとしてから、アンナはデイジーの船を振り返った。
「デイジー、自分の船ごと足場を動かしてL&Sの船にヒットアンドアウェイをかけられる? 私とイリスで敵の主力を二人ほど挟んで足止めするから。
 シャルレィスたちは船で追いかけられないように操縦席を占拠して」
「ほほう?」
「ちょっと面白そう。やってみるね」
 船室へ飛び込もう……とした、そのとき。
 階段を駆け上がってL&Sの主力たちが飛び出してきた。

●鷹狩り戦法
 忍者刀による複雑な斬撃を、アンナは取るようにかわし、時として水晶剣によって打ち払っていく。
 その横を戦士が抜けようとしても、素早く左右に移動し続けるアンナの俊敏さによってうかつに動けない。
 一方でイリスはアンナと強力してそれぞれの敵の死角をつくようにぴょんぴょんと飛び回ってみせる。
 戦術において死角というのはつくためというより『警戒させるため』にあるといえる。死角に回り込まれると立ち位置を変えざるをえず、それを二人で交互にやられると動き続けなければならなくなる。
 立ち回りのうまさというのは、こういう場面にでるものだ。
 そしてイリスとアンナの働きは、実にイレギュラーズ4~5人分。このあと得られる結果によってはそれ以上に相当する。
 『名乗り口上』で釘付けにするには命中精度がやや不安。しかしマーク・ブロックによって強制的に足止めする分には、二人のハイ・ウォールが非常に効くのだ。
 そこへ加えて。
「かばわれては面倒だ。いやらしい戦法で申し訳ない」
 忍者たちの保護をもとめて自分から近づこうとした魔術師に、ロゼットのショウ・ザ・インパクトがクリーンヒット。毛皮の豊かなにくきゅうハンドによる掌底が、魔術師を十夜の船まで吹き飛ばした。
「おっとまずいぞこれは」
「だろう?」
「降参するなら今のうちだぞ?」
 転がった魔術師が咄嗟に魔術障壁を展開。
 その上から突き刺すようにダカタールが『足先と踵の削ぎ落し』を、十夜が『拳闘』を打ち込んでいく。
 不殺攻撃の難しいところは、相手がその攻撃で倒れるかどうか判断がつかないところにある。
 ので、敵の体力が測定できないならある程度のところで不殺攻撃に限定して打ち込み続けなくてはならい。
 もちろんその分コストが無駄撃ちされることになるので不利なのだが……こうして戦闘の余裕が出ればその限りではない。
 要するに囲んで棒で殴れる状況こそが不殺に適しているのだ。
「殺すなよ。然るべき場所で裁いて貰うためにも死なれちゃ困るんでな」
 ジェラルドは増強薬を自分で服用すると、とめにはいろうとした黒服の襟と腕を掴んで投げ落とした。いわゆるマーシャルアーツというやつである。
「一方的に削り殺されるいたさとこわさをあじわうのじゃー」
 その一方で、デイジーは船を一定ペースでターンさせつづけ、L&S船の側面に近づいた時だけ一方的に中距離攻撃をたたき込むというなかなかズルい攻撃をし続けていた。もちろんこれは敵の位置が確実に固定され続けていないと成立しないので、アンナ&イリスのWWブロックがあってこそだ。
「私到着!」
 船室へと滑り込んでくるシャルレィス。
 ちらりと太陽くじらの様子を見ると、こちらに銃を向けるビジネススーツの男へと身構えた。
「話を聞く気は?」
「”まだ”ありませんね」
 引き金を引いただけで無数の青白い魔術弾が放たれ、ホーミングしてシャルレィスへと打ち込まれていく。
 シャルレィスはそれを剣でいなすように防御するが、すべてかわしきるには相手の攻撃が鋭すぎる。
「けど――こういうときこそ!」
 ギラリとシャルレィスの目の色がかわった。
 ホーミングする球の間を複雑にすり抜けていく。
 剣を振り抜いたシャルレィスの後方で、追って巻き起こった風の斬撃がスーツの男を切り裂いた。

●ネゴシエート
「経済的なあれこれとかよく分からないしなぁ。
 事業に誘うのにメリットってあるのかなぁ」
「さあ。妾には関係ない話なのじゃ」
 イリスのつぶやきに適当な返事をしつつ、デイジーは黒服たちをロープで拘束していった。
 その作業を手伝うロゼットとダカタール。
 シャルレィスとジェラルドは太陽くじらの子供をゲージごと確保し、デイジーの船へと運び込んでいた。
「怖かったよね、心細かったよね…ごめん。
 でも、もうすぐお母さんの所に帰れるからね」
「そうだ。もう大丈夫だ。すぐ母親の所へ戻してやるからな」
 その様子を眺めながらたばこをふかす十夜。
 クルーザーに残されたL&Sのスタッフたちは、太陽クジラへの対応にどうやら疑問をもっていたようだ。
 ブリッジを押してめがねの位置を直すスーツの男。
「はじめは商品を横取りして利益を得ようとしているのかと思いましたが……違うようですね。あれはもとから誰かのペットだったのですか?」
「ちがうわ。母親から取り戻すように頼まれたのよ」
「……ほう、興味深い。あのモンスターは人間と平和的なコミュニケーションをとるのですか」
 こきりと首を鳴らすアンナ。
「あなたたちを生かしておく理由も無いのだけど。大号令と外洋遠征が終わるまで大人しくするなら帰しても良いわ」
「初戦は口約束。破るかもしれませんよ」
「破らないでしょう? だって、外洋は未知の世界。より多くの商材があるはずよ。生き延びる時間に価値があるはず」
「なるほど……我々が少々外洋にちょっかいをかけようとも、ローレットには無関係ということですか。悪くありませんが、そちらのメリットがない。どうやら商談は苦手なようだ」
 いつのまにか拘束を自力で解いていたスーツの男は、懐からプラスチック製の名刺を取り出してアンナへと出してきた。
「私は凜堂 重隆(りんどう しげたか)と申します。『メリット』の借りは、いずれお返ししましょう」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――練達闇商人『L&S株式会社』へのコネクションを手に入れました
 ――同組織に借りを作りました

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