PandoraPartyProject

シナリオ詳細

カナリアだけでは飽き足らぬ

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●束縛を知らず育った女
「……それ、何ていう飾り?」
 いつも通り異世界でお勤めを果たした特異運命座標を前にして、
 ロベリアは労をねぎらうより先に、ひとつの疑問を口にした。

 あらゆる世界、あらゆる国を渡り歩く彼らは出会うたびに色々な道具を持っている。
 そのひとつひとつに疑問を持って好奇心を振りかざすほど、ロベリア・カーネイジは幼くない。
 けれど目に留まったそれだけは、どうしても気になって仕方がなかった。

――アネモネ・バードケージ――

 帰らぬ鳥を待ち続ける、黄金の鳥籠。

 飾りではなく籠なのだと特異運命座標に説明を受ければ、彼女は瞳を大きく見開いて、
「まぁ。それは、それは――」
 と大層驚いたように口元に手を当ててつぶやいた。
「好きなものを閉じ込めて自分のものにするなんて……混沌という世界は面白い文化をお持ちなのですね」
 他の世界にもあるものだと教えられると、彼女は鳥籠に目を奪われたまま話に耳を傾ける。

 聞けば聞くほど"奥ゆかしい"と彼女は思った。
「私でしたら、欲しいものと自分以外の全てを滅して《私だけのもの》にしますのに!」

 かつての世界で彼女が冠した称号は『解放の聖女』ロベリア・カーネイジ。
 神子の私と愛しい《あなた》。それ以外のすべてに生命(いのち)からの解放を――!
 歪んだ愛の果てにうち滅ぼされ、元居た世界から追放された者。
 それがロベリアという女だった。

●縛る自由を楽しんで
 彼女が鳥籠というものを知ってから数日後。
「依頼主は私です」
 新たな依頼と聞いて集まってきた特異運命座標の前で、ロベリアは分厚い本を取り出した。
 ふっと表紙に息を吹きかけ埃をはらい、丁寧にページを捲る。
「<鳥籠図鑑>……この世界には無数の木々が生い茂り、果実の代わりに鳥籠を実らせるの」
 挿絵には、確かに大きな樹木と細かな枝葉。その先に実る鳥籠たちが描かれている。
「これだけ沢山あれば、素敵な鳥籠を見つける事ができるでしょう。
 その中から一人ひとつ、私が好みそうな鳥籠を見つけて贈ってください」

 大きく私情を挟んだ依頼だが、これは異世界を救う術にもなり得る仕事だ。
<鳥籠図鑑>では、ある日突然、鳥籠に入れるべき鳥の姿が消えてしまったらしい。
 宿主を失った樹木たちが弱りはじめ、ゆるやかに世界は衰退をはじめている。
 だから特異運命座標が魅力的な鳥籠を見つけ出すことで、その存在が呼び水となるようになれば――宿主が鳥であれ何であれ、世界は活力を取り戻すのだ。

「それでは参りましょう」
 郷に入っては郷に従え。特異運命座標が慣れ親しんだ"気に入った相手をモノにする方法"があるならば、それをなぞるのも境界案内人の礼儀というものでしょう。
 いつかまた、出会うであろう《あなた》のために――。

NMコメント

 今日も貴方の旅路に乾杯! ノベルマスターの芳董(ほうとう)です。
 子供の頃、鳥の止まり木付きのゲームコントローラーが欲しくてたまりませんでした。

●目的
 ロベリアが満足しそうな鳥籠を用意してプレゼントする。

●登場人物
『境界案内人』ロベリア・カーネイジ
 元々住んでいた世界を大罪で追われた聖女。
 その顔や立ち居振る舞いはどこぞの聖女に通ずるものがありますが、関係性は不明です。
 特異運命座標が持っている鳥籠という道具に興味を持ち、それにまつわる世界を探してきました。

●世界
<鳥籠図鑑>と呼ばれる世界。無数の木々が生い茂り、たわわに実った鳥籠が採れる世界です。
 しかし鳥籠の中に収めるべきはずの鳥の姿が見えなくなってしまい、衰退しはじめています。

●鳥かごの選び方
 ただ一口に"鳥籠"といっても、色々なアレンジがあります。

・籠を形成する檻はどんな材質で出来ているか?
・鳥籠にはどんな飾りがついているか?
・鳥籠の中にはどんな物が入っているか?…etc.

 見つけた鳥籠に手を加えて飾り付けてもいいですし、
 中に収めるものは鳥以外を目的としたものでも問題ありません。

 また、鳥籠を一人一つ持ち寄ってもいいですし、皆で協力して一つの鳥籠をプレゼントするのも面白いかもしれません。

 心のこもった鳥籠を贈れば、ロベリアもきっと喜ぶはずです。

 それでは、よろしくお願いいたします!

  • カナリアだけでは飽き足らぬ完了
  • NM名芳董
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2019年12月06日 22時25分
  • 参加人数4/4人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ツリー・ロド(p3p000319)
ロストプライド
アウローラ=エレットローネ(p3p007207)
電子の海の精霊
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
茅野・華綾(p3p007676)
折れぬ華

リプレイ


 空を自由に飛ぶ鳥が幸せとは限らない。外敵の脅威に震え、誰に声をかけられる事もない一生かもしれない。
 故にこの檻は"愛"なのだ。
 譲れない何かを守るため、大きく包む鋼鉄の愛。
「ようこそ皆様、<鳥籠図鑑>へ」
『境界案内人』ロベリアが両手を広げて示した先には、無数の木々とたわわに実った鳥籠達。あたりに薄い霧が立ち込め全容を知るには至らないが、とても不思議な光景だ。近くに生っている籠に触れ、『電子の海の精霊』アウローラ=エレットローネ(p3p007207)は感嘆の声をあげた。
「鳥籠が実る木なんて何だか不思議だねー」
 青から薄桃、そして黄色へ。感情のままに彼女の髪は鮮やかに移ろいゆく。
 その隣では虚ろな目の妖精が手元の鎖を揺らしてぼんやりと遠くを見ている――ように見えるのだが。その実、本体は鎖の先で妖しく刃を光らせている黒い鎌。『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319) である。
「ふむふむ、鳥籠が実る木ね……必要なら俺の鍛冶スキルで複数の鳥籠を繋げたりできるかな?」
 色々と吟味してみるかと意気込むサイズとは対照的に、白衣のポケットへ手を突っ込み気だるげにしている男がいる。彼は『付与の魔術師』回言 世界(p3p007315) といった。
「今回は鳥籠ねえ……。折角だし変わった物を探してみるか」
 最初の頃は元居た世界から他に飛ばされて大層驚いたものだが、今やそれが懐かしいとさえ感じてしまう。経験を重ねた余裕だろう。ロベリアの方へ振り返ると、
「まあ……趣味全開で選ぶだろうから気に入るかはわからんがな」
 と肩を竦めてみせた。世界が月のように穏やかなる静なら、こちらは太陽。否、日輪のように輝ける動。
「ロベリア様、お任せください! この茅野華綾が素敵な鳥籠を用意致しましょう!」
 ピシッとブーツの踵を揃え、『折れぬ華』茅野・華綾(p3p007676) は明快な声で言い切った。
「鳥籠を採るとは、これはまた不思議な世界で御座いますね」
 祖国鳳圏で戦いに明け暮れていたならば、消して見る事叶わなかった世界。
 これもまた、特異運命座標に定められたからこその奇跡かもしれない。そう思うと胸躍らずにはいられないのだ。
「ふふ、見聞を広める為にも、わたくしも堪能してしましょうかね」
「そう、大事なのは楽しむ事よ」
 ロベリアは微笑む。4人の個性を楽しみながら。
「ありきたりな鳥籠ではつまらないもの。どんなに時間をかけてもいいわ」

 探して。貴方の思う最高の一挺を。


 アウローラが最初に気にしたのは、鳥籠の大きさだった。
「大き過ぎても小さ過ぎても微妙だと思うし、丁度いいサイズの鳥籠を頑張って見つけようかな」
 ロベリアが持ち運べるくらいの大きさで、軽い物がいいだろう。思い至ってはや一時間。これがなかなか難しい!
 天然モノの鳥籠はいずれも個性があり、実りたてで掌に乗るくらい小さい物もあれば、大きくなりすぎて地面に転がっている物もある。
「あーあ、戸がひしゃげちゃってるよ。これって果実でいう"熟しすぎ"なのかな?」
"鳥籠が熟れる"とは面妖な話だ。彼女が首を傾げていると、近くの木が揺れサイズが鎌首を現した。
「いい鳥籠は見つかった?」
「ううん。アウローラちゃんは収穫ゼロだよ。そういうサイズはどうなの?」
 彼女が視線をサイズの手元に落とすと、鎌を持っていない方の手には幾つかの鳥籠が抱えられている。
「大漁みたいだね! でも、そんなにいっぱい贈るつもり?」
「贈るのはひとつだよ。どうするかは……後でのお楽しみ」
 どうやらサイズは、どんな鳥籠を贈るかイメージを固めきれているようだ。
(こっちは全然、決まってないのに!)
 出遅れた焦りから、探すペースを上げようと彼女は足早に歩き出す。サイズはその背中を見送りかけ、ある事を思い出した。
「キミ、そっちは確か――」
「きゃああああぁーーー!?」
「崖が……って、遅かったか」

 生きてるかー? と心配そうなサイズの声が降ってくる。
「あいたた……。だ、大丈夫だよ!」
 運悪く崖から足を踏み外した先で、彼女は木の枝に引っかかり事なきを得ていた。
 頭上から金属の音がする。どうやらサイズが鎖を垂らして引っ張り上げてくれるようだ。アウローラが安堵の息をつくと……彼女の目の前に、小さな"夕日"が降り立った。


「はて。どういう事で御座いましょう」
 一方その頃、華綾は別の悩みで鳥籠を選びきれずにいた。ひとつ木を見つけては枝葉を見上げ、次を探して再び歩き出す。その最中に見知った人物を見かけ、思わず様子を覗き込んだ。
「うーむ……なんとか出来たが、元の依頼から何か逸脱してるような?」
「世界様、どうかなされたのですか?」
 呼ばれた彼の両手には、ガスバーナーと空気入れのポンプ。
ーーますます意味が分からない。
「本当に、どうかなされたのですか?」
「待て、そんな疑惑めいた目で見るな。これには少し事情があってだな……」
 何か説明しかけた世界のすぐ隣には、立派な鳥籠が置かれている。その煌びやかさに華綾は思わず目を丸くした。
「まぁ、立派な鳥籠で御座いますね! いったいどこでこのように綺麗なものを?」
「どこって、この木で一番良さそうなやつを採ったんだよ」
 指し示された木の幹を見上げて、華綾は実った鳥籠の方へ近づいてみる。暫くじーっと眺めた後、また同じ木の別の鳥籠へ視線を滑らせ、
「こちらも……あちらもなのですね」
 と心底不思議そうにぽつりと漏らす。
「どうかしたのか?」
「いえ、私にはこの木に実っている鳥籠が、世界様が採ったと仰る物とは別の物に見えておりますので」
 かといって、世界が嘘をついている風でもない。彼は確かにいい加減なところもあるが、騙すおうな人柄でもなさそうだからだ。華綾はポケットを漁ると白手袋をぐいっと両手にはめて、疑惑の木に実っている鳥籠へと手を伸ばす。
 籠の下側を掴んで軽く揺らすと、ぷちっと捥げる音がした。刹那。
「なっ!?」
 目の前で華綾が手にしている鳥籠は、先ほどまで世界が見ていた物とは確かに別の鳥籠へと変貌していた。
「どういう事なんだ、これは」
「わたくしにも皆目見当つきませぬが、これがこの世界のルールなのでしょう」
 まるでこの世界に漂う白霧に化かされたような気分だ。華綾と世界は顔を見合わせ、再び同じ木を驚き混じりに見上げたのだった。


「あらあら、まぁ!」
 並べられた5つの鳥籠の前を、ロベリアはゆっくり鑑賞しながら宙を滑った。
 最初に目を奪われたのは、鮮烈な青の薔薇が咲いた銀色の鳥籠だ。
「とっても綺麗ね。薔薇のツルが籠に絡んで、芸術作品のようですわ」
「実際に俺が作ったからね」
 気に入った銀の鳥籠に、別の鳥籠の青い薔薇を外して移してみたのだという。鍛冶の出来るサイズだからこそ実現出来た離れ業だ。

「じゃあこっちの甘ァい香りの鳥籠は? 2つありますのね」
 あちこちに宝玉が散りばめられていて、見る者の目を引く派手な鳥籠が2つ。ひとつは木から世界が選んで採ったものだ。
「最初は菓子が好きだから、飴細工の鳥籠を探したんだ。ただ、流石に見つからなくてな。
 いいと思った鳥籠を参考に、もう一つ自分で作っちまったんだよ」

 このパーティー、誰も彼もが匠である。

 驚きの事実に、ロベリアはそっと舌を出して鳥籠の柵をぺろりと舐めた。優しい甘さが口の中にじんわり広がり、思わず目を細める。
「素敵ね。鳥籠で美味しい思いが出来るなんて思ってもみませんでしたわ」
「喜んで貰えたんならよかった。残りの2つも凄いぞ。なぁ華綾」
"……どうにもこの鳥籠しか見つかりませぬが、ロベリア様はお気に召して下さるのでしょうかね?"
 この鑑賞会の前、華綾は自分が採ってきた物を見て、ぽつりと不安を零していた。どうやら世界は、それを気にかけているようだ。
(世界様、お人よしで御座いますね)
 道を作って貰えたならば、恥ずる事なく堂々と。
「こちらが何の花かご存意でしょうか?」
 彼女が掲げたのは、植物の茎でできた鳥籠だ。示された紅の花は蠱惑的な魅力を帯びていた。ロベリアが「初めて見ましたわ」と首を緩く振ると、華綾は話を続ける。
「彼岸花……茎に毒を持つ植物で御座います。これが茎で出来ているという事は、この鳥籠は毒を持っているのかもしれません。
 この毒を待ってすれば、鳥籠の中の小鳥を守れましょうが、それと同時に小鳥自身も毒で苦しむ事となりましょう。
 小鳥を守りたくも、傷付けてしまうとは、なんとも……」
「なんとも、美しい鳥籠ね」
 お世辞のない素直な感想だった。華綾がロベリアの顔を見ると、彼女は目尻を緩ませる。
「毒のある花は好きよ。私のロベリアという名も毒花から取って名乗っているものですもの」

 彼岸花の花言葉は「あなただけを愛する」「悲しい別れ」そして、「再会」
(わたくしは、友に、家族に会えるので御座いましょうか……)
 受け入れて貰えた安堵感から、華綾は望郷の思いに気が逸れかける。それも今は詮なき事……と、ただ静かに目を伏せた。

「最後はアウローラちゃんのだね!」
 こだわり抜かれたほど良い大きさの鳥籠が、持ってみてとロベリアの前にぶら下がる。
「これは木の鳥籠かしら?」
「運びやすさも大事だからね」
 ホワイトオークのシンプルな白い鳥籠に、ターコイズブルーの装飾がよく映える。花や木の実、葉っぱを模したそれは、まるで青空のよう。
ーーまさか。
 揺れた籠の中に鮮やかな夕日を見えた気がして、ロベリアは目を見開いた。よくよく見れば、それはこの世から消えたと言われていた、オレンジ色の籠の鳥。
「ローラーカナリアっていう鳥だよ。気に入ってくれた?」

「えぇ、えぇ。気に入りましたとも」
 ロベリアが手を叩くと、辺りに漂う霧が晴れた。見上げた空には鉄格子。

ーー鳥籠図鑑。この異世界こそが彼女の愛であり、ひとつの鳥籠だったのだ。

成否

成功

状態異常

なし

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