シナリオ詳細
<青海のバッカニア>私掠を行う義賊になれ?
オープニング
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海洋王国の国力は貧弱この上ない。
諸島部に存在するこの国は長い歴史の中で常に外圧に悩まされており、抜群の航海技術・海軍力で独立を保ってはきたものの、王国民、為政者は現状に常に不満を抱えて過ごしてきた。
そんな彼等が誇りでもある海軍力をもって、遥かな外洋の先にある新天地(ネオフロンティア)を求めるのはある種の必然だったと言える。
かくて繰り返されてきた海洋王国の大号令は、外洋征服という大事業の始まりを示す合図である。
実に22年ぶりの発動となった女王イザベラの命を受け、王国は沸き立ち、熱をもって動き出す。
過去、幾度跳ね返されたか知らない大号令だが、未だ国民は誰一人諦めてはいない。
海の民の矜持の如く、冒険心という剣を振るい、現状に決して甘んじぬという決意をもって。
それに何せ今回は――不可能を可能にする援軍……ローレットだっているのだから。
●
依頼で海洋へと訪れたイレギュラーズ達。
そこで待っていたのは、『海賊淑女』オリヴィア・ミラン(p3n000011)だった。
「すまないな。現状は海洋の依頼に引っ張りだこで」
忙しいイレギュラーズ達を労いながらも、オリヴィアは早速依頼の話に移る。
なんでも、とある海運業が営む貨物船から、私掠を行ってほしいというものだ。
「仲介人からの依頼が、おそらく依頼人はイザベラ女王の息のかかった貴族だ」
海洋王国の主要産業として、海賊は事実上黙認されているようなもの。
略奪した物資によって、貴族達は少なからず懐を温め、力をつけようとしているわけだ。
「乗組員は海賊の襲撃に備えて、武装しているはずだ」
気を抜けば、大怪我をしかねないので注意したい。
一通り説明したオリヴィアは、資料をメンバーへと手渡して。
「以上だ。検討を祈っているよ」
周囲に視線を走らせていた彼女は、そのまま去っていく。
程なくして、船の手配を済ませたイレギュラーズ達。
そんな彼らへと、『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)が接触してくる。
「皆さま、お疲れ様です」
実は彼女はオリヴィアから頼まれて、皆に話してほしいと改めて依頼に訪れたそうだ。
オリヴィアの話は表向きのもの。確かに、そのまま貨物船を襲撃して積み荷さえ奪えば依頼は完了である。
オリヴィアは依頼人から余計な詮索をされぬよう配慮し、裏の事情をアクアベルが請け負う形をとったのだ。
「実は、輸送を行うアガタ海運という会社、とある社員が幅を利かせていて、内部を牛耳っているようです」
デシという社員は出資先の息子らしく、立場を利用して積み荷を横流しし、自らの懐にその利益を入れているらしい。
横領を働くこの男を、アガタ社長は咎めることもできない。出資が止まれば、会社は立ち行かなくなってしまうからだ。
「この男性を懲らしめて、彼が横流しする予定だった分だけ積み荷を奪えば……」
義賊として立ち回ることで、心証が良くなる可能性もある。オリヴィアの依頼も完了できるし、一石二鳥となるだろう。
だが、相手の船からすれば、こちらは私掠を行う海賊船に変わりはない。
オリヴィアが受けた依頼もあり、下手にローレットだと素性を明かすこともできない。
この為、アガタ海運の社員達は全力で抵抗してくるものと思われる。
「私の話まで考慮するのであれば、それなりの作戦が必要になるかとは思います」
オリヴィアの依頼のみ遂行しても構わない。
――だが、できるなら、この不届き者に裁きを。
アクアベルはそう告げてから依頼の成功を願い、その場を離れていったのだった。
- <青海のバッカニア>私掠を行う義賊になれ?完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2019年12月04日 22時10分
- 参加人数8/8人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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海洋のとある港町。
依頼を受けたローレットのイレギュラーズ達は乗船の準備を整える。
「襲撃はともかくとして、今回の話、よく調べましたね」
元居た世界で巫女をしていた『水天』水瀬 冬佳(p3p006383)は、この1件についてそう語る。
「幻想貴族の坊ちゃんが横流しを企んだ品で、海洋貴族は私腹を肥やす、か……」
そこで、ウィーディー・シードラゴンの海種『黄昏き蒼の底』十夜 縁(p3p000099)が海を眺めて呟く。
「まったくもって、世の中ってのは上手く回ってるモンだ」
そんな世の中の金や物流についてはさておき、そうした情報があれば、やりようはいくらでもあると冬佳は考えて。
「依頼を上手く利用する……考えたものです」
「私掠の依頼ですのに義賊をやって欲しいとは、随分とおかしな話ですね」
冬佳が感心するが、『自称・旅人』ヘイゼル・ゴルトブーツ(p3p000149)は少しだけ首を傾げて。
「ですが、普通ではない方が面白そうなのですよ」
その後、ヘイゼルは楽しげに笑ってみせた。
「おー! 海賊義賊!」
仲間達の会話に合わせて、ワイルドな原始少女『おにくにくにく』リナリナ(p3p006258)が叫ぶ。
「悪党退治……」
2本の角を生やした鬼の少女、『玲瓏の壁』鬼桜 雪之丞(p3p002312)は無表情ながらも、どことなく楽しそうに見えた。
「ただの賊より、義賊というのは、面白そうです」
雪之丞もこの話に乗り気な様子だ。
そんな仲間達に対して、縁はどこ吹く風といった態度。
富にも名声にも興味のねぇおっさんは、今夜の飲み代が稼げりゃぁそれでよし、とのことだ。
「今回も適当にゆるーくやるとするかね」
縁は一歩引いた態度で、マイペースに紫煙を燻ぶらせていた。
その後、乗船までの僅かな間、雪之丞は事前にアルパレストの紹介状と情報網を用いて、商人周りにアガタ海運の積荷。合わせて、横流しされている品目の調査を行う。
海運の貨物船が幻想に向かってしまえば終わりなので、情報収集の時間はかなり制限される。
そんな中で、雪之丞はなんとか横流し予定の商品リストだけは仕入れたようで。
「やはり、高級海産物、真珠、サンゴといった海洋特産でかつ貴重な品を優先して横流ししているようですね」
元々、販売する予定の品を上増しして仕入れ、横流ししているスタンスのようだ。
その為、明らかにその分の品は別に分けられているはずだ。
「さて、義賊という柄でもないが、必要以上に悪評を広める趣味も無いしね」
金髪にゴーグルを装着した『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)も前向きな態度を示す。
仕事であれば特に問題ないが、幻想での信用を維持できるというなら手間を惜しまないと義賊としての活動に意欲を見せて。
「では、小悪党には私が海洋で活動するためにも痛い目にあってもらおうか」
「目一杯手加減しねえとなぁ、壊しちまわないか心配だぜ、HAHAHA!」
混沌の地でもボクサーの道を貫く『人類最古の兵器』郷田 貴道(p3p000401)にとっては、相手する社員を殺してしまわないようにすることが一番の問題なのだそうだ。
「準備はいいか?」
白熊の姿をした『海抜ゼロメートル地帯』エイヴァン=フルブス=グラキオールが仲間達へと確認をとる。
「なら、出港だ。ヨーソロー」
問題ないとの声を全員から聞き、エイヴァンが船を操縦して近海へと向かって出港していくのである。
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エイヴァンが舵を握り、イレギュラーズ達の乗る小型船が広い海へと波をかき分けて進みだす。
「貨物船を襲って、デシデシの横流し品のみを奪取! おー、義賊っぽい!」
海賊気取りなのか、眼帯を装着したリナリナ。
「眼帯! ここ重要!」
そこを強調するリナリナはその義賊を成立させるには、無茶でもスマートな手口も絶対必要だと語る。
「被害をデシデシ集中。それ以外の被害出来るだけ抑える。コレ重要!」
その為に、メンバー達がそれぞれの準備、最終確認を行う中、縁はすでにハイセンスを活かして目的の貨物船が通る海路に当たりをつける。
「……私掠、私掠なぁ」
海上をぼんやりと眺める縁がふと呟く。
昔に想いを馳せた彼は、商船に忍び込んで派手にやったことも……。
「いや、そんな記憶はねぇ、ねぇったらねぇ」
そんな縁の話は置いといて、縁は海を行くものに目を止める。
「あれだな、『アガタ海運』」
小さい会社であるが、船体に会社名を入れるのは普通だ。縁はそれを逃さない。
「……ばれないように、風下から近づきたいところだな」
エイヴァンは取り舵に船を移動させ、大きく迂回させる。
できるなら、乗船まで気づかれない方がいいと彼も感じていたが、さすがにそこまで海運社員も無能ではなかったらしい。
『そこ、所属を名乗りなさい!』
拡声器らしきもので女社長らしき相手がこちらへと呼び掛けてくるが、メンバーは関係なしに近づく。
だが、こちらの船はまだ気づかれていない。
誰よりも早く、ヘイゼルが貨物船へと風上から低空飛行で接近していたからだ。
「撃て!」
アガタ社長の声が響き、砲弾が発射される。
ヘイゼルはそれをさらりと躱して貨物船上へと乗り移り、赤い魔力糸を蜘蛛の巣のように張り巡らせる。
「な、なんだ、これは!?」
そうして、ヘイゼルは甲板にいた社員3人を捕え、その注意を強く引いていく。
船員を全員制圧すれば、横流し品奪取は簡単ではある。
でも、それは義賊の行為ではないとリナリナは考えて。
「リナリナ、フォローに動くゾッ!」
ジェットパックで空を飛ぶ彼女は、ピンポイントでデシデシこと、デシ=モンタネールなるアガタ海運を牛耳る平社員のみを確保し、戦いを中断させることを考える。
そこで、貴道もまた上空から急着地し、その巨体で貨物船を揺らす。
「HAHAHA、ハローエブリワン!」
豪快に笑う貴道へと放たれる砲弾。
それをまともに浴びてなお、彼はなお笑顔を浮かべて。
「悪いが今日のミーはヒーローじゃないぜ、死にたくないなら黙って俯いてな!」
凄みをきかせた貴道は社員達の戦意を削り、メンタル面でのダメージを狙う。
そして、貴道は船で預かった縄梯子とロープを小型船の外へと垂らす。
すると、そこからそれを託したエイヴァンを始め、小型船に控えていたメンバーが乗り込んでくる。
「まずは、社長とデシの位置の確認だな」
エイヴァンは前線には出てこないこの両者を探すのは、さほど難しくないと考える。いるなら、船橋と船倉だろう。
「降伏を要求します。積み荷を渡してもらいましょう」
雪之丞が社員達へと自分達の主張を告げる。
当然、仕事として飲めぬ社員達は、サーベルやライフル銃を手にし、メンバー達へと突きつけてくる。
「まずは制圧ですね」
「そうだね。海賊らしく、積み荷を奪いに来たんだからね」
冬佳、ゼフィラはこの展開を予測しており、私掠を行うべく迎撃を開始する。
そして、ゆっくりと梯子を上ってくる男が1人。
「か弱い一般魚のおっさんには荷が重そうだし、船番がてら見物するってのは……ナシかい?」
襲撃する船を接舷してなお、やる気を見せない縁は大儀そうに貨物船へと乗り移ってくる。
「どうも、邪魔するぜ。こんな天気のいい日に真面目に働いてるとは、揃いも揃って勤勉だねぇ」
欠伸すらしながら、縁はこの場の社員達へと呼び掛ける。
『皆、積み荷を守るのよ!』
社員の呼びかけと同時に、海運社員達は全力で積荷を守るべく、海賊に扮したイレギュラーズ達へと応戦してくるのである。
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海運貨物船を襲撃するイレギュラーズ。
メンバー達はそれぞれ、船上を立ち回って制圧に乗り出す。
「我々の船を壊されても困るのでね。悪いが、壊させてもらうよ?」
すでに、船上空にファミリアーとした海鳥を飛ばせているゼフィラは真っ先に大砲を狙い、闇の光で照らして真っ先に無力化していく。
(デシは……船倉かな)
甲板にいる社員は皆、日に焼けている。先程聞こえた声からゼフィラはそう判断する。
社員達は皆、イレギュラーズ達へと切りかかり、発砲してくる。
空中を歩くヘイゼルは自らの巣にかかった社員を含め、帆の上に立つなどして敵の混乱をはかる。
その上で、社員達の攻撃によって傷つく仲間を、彼女は調和の力で癒していく。
「なに、無茶なことは言わねぇさ。今夜の飲み代にも困ってる哀れなおっさんに、余ってる積み荷をちっとばかりわけちゃくれねぇかい?」
縁は自らのギフト「水底の心」を使い、名乗りを上げながら呼びかける。
『バカ言わないで!』
「海賊などに渡せるわけがないだろう!」
アガタ社長とデシの声が同時に聞こえる。先程の予想通りに1人は船橋から、1人は船倉からだ。
「おいでませおいでませ。刃は此処に。敵は此方へ」
霊気を込めて硬質化した手で、雪之丞は拍手を打ち鳴らす。
それに、大砲を壊され、砲手を含めて社員達が集まってくる。
「以前よりも、精度を上げた技をお見せします」
雪之丞は魔刀を手に、社員達のサーベルも銃弾も防いで見せていた。
その雪之丞の抑えから漏れた社員はエイヴァンが相手する。
流氷押し寄せる大波のような彼の一撃に、社員達は恐れすら抱いて膝をつく。
そんな中、冬佳、リナリナは船倉へと向かう。
冬佳が汚れなき一閃で邪魔な女社員を切り払うと、その穴にリナリナが突撃していく。
「デシデシ、他の船員より色白で細身! コレ、普段から船内に居るってこと!」
それを鋭く見抜いていたリナリナは船倉に突撃し、眼帯を外す。
闇に慣らした側の目で視界が確保出来、薄暗い船内に飛び込んでも支障が無いと彼女は胸を張る。
「海賊の知恵、すごい!」
「何っ……!?」
積荷の管理をしていたデシ目がけ、リナリナは特攻していくのである。
甲板の戦いはほぼ一方的。
攻撃手段、その操り方は知っていても、戦いのエキスパートであるイレギュラーズ達に海運会社社員がかなうはずもない。
防御態勢をとる雪之丞が引き寄せていた社員を拳で張り倒し、縁もまた飄々と刃や銃弾を避けつつ腹に拳を叩きつけて気絶させる。
貴道はデシが甲板にいれば、顎を砕いて余計なことを喋れないようにしようと考えていたが、その必要はないらしい。
「HAHAHA!」
一瞬だけ心拍数を高め、貴道は身体能力を最高潮よりたったの0.0001%だけ上昇させる。
そして、直後に振るわれた拳圧。
「ひいいいいっ!!」
それを浴びただけで、目の前の社員は両手を上げてしまっていた。
仲間達の異常はゼフィラが号令を発して、万全の状態に戻していく。誰も問題がなければ、彼女も威嚇術で社員を無力化してしまう。
少しずつ深まる仲間の傷は社員を混乱させていたヘイゼルが癒していく……が、それも程なく必要なくなったようだ。
「おー! コイツの命が惜しかったら抵抗禁止!! 武装解除!!」
「あ、あひぃ……」
強引に、船倉からデシの腕を引っ張ってきたリナリナ。
手早くパンチとキックを浴びてボコボコにしたデシの首へと、リナリナは短刀を突きつけ、大声で社員達へと要求する。
「人質を解放するまで動くな!!」
その間、清浄なる神水を触媒としてイレギュラーズへと癒しを振りまいていた冬佳は、倒れた社員達にも1人1人視線を向ける。
「そろそろ、頃合いでしょうか」
一行はデシを捕え、半数以上の社員が気を失っている状況。
組技で社員1人を気絶させていたエイヴァンは、社員達の士気が下がったところで、呼びかけを行う。
「降伏をしてもらおう」
船橋からこちらを見下ろして拳銃を発砲させていたアガサ社長に、エイヴァンは取引を求める。
アガサが拳銃をしまったのを見た縁は早々と自分の小型船へと戻り、紫煙を燻ぶらせ始めていたのだった。
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程なくして、アガサ社長が甲板へと姿を現す。
イレギュラーズ……もとい、海賊達が社員達に代わる代わる告げる。
「さて、大勢は決したようですが……」
まずは、ヘイゼルがアガサ社長を見据えて。
「見ての通り、我々は別に貴方方の命が欲しい訳では無いのですよ」
全員が無事であることは、アガサ社長も部下から確認している。
それだけに、彼女はこちらの動きに違和感を覚えていたようだ。
部下の戦いに援護射撃はしていたが、ここまで前に出てこなかったのがその証拠。命が危ういと感じたなら、率先して守りに動いていたはずだ。
それに、顔を晴らしながらも睨みつけるデシだけは、冬佳がしっかりと縛り付けていて。
また、リナリナが今にもデシが海へと突き落としそうな体勢をとっている。
「詳しい事は聞かないでください」
「…………?」
冬佳がはっきりとそう伝える状況に、アガサは違和感を拭えず。
(こちらの事情を察していただければいいのですが)
できるだけ、これ見よがしに視線を走らせる冬佳。
通行料に関しては仲間達が伝えるかと感じ、彼女はそれ以上何も言わない。
「欲しいのは積み荷。それも全部とは言いませんよ、此方の船に積める量は少ないです」
「ミー達も鬼じゃねえからな、何も全部持っていこうなんてつもりはねえ。あるだろ、渡しても良いようなもんがよ?」
ヘイゼルに続き、貴道もまたアガサのみに呼びかける。
社員達は何か口を開こうとするが、アガサは首を振り、その主張を許さない。
「積荷全てとは言いません。この船は、本来の荷より余分に積んであるのでは?」
雪之丞が視線を鋭くして、アガサへと言い放つ。
「横に流す積荷だけ頂ければ、引き下がりますよ」
「っざけんなごら、勝手に俺の積み荷を奪うなど許すわけがないだぶべえええええええええええええ!!」
冬佳が氷の刃で不浄なるものを祓う一撃を。
同時に、短刀を手にしたままのリナリナが急所を蹴りつけてデシを悶絶させ、気絶させてしまう。
少しだけ、そこでアガサ社長が吹き出していたのは気のせいだろうか。
「……何のことかしら?」
若干むせつつ、彼女はしらを切る素振りをする。
「とぼけるのですか? 調べはついているのですよ」
雪之丞がそこで、ウニ、カニといった高級海産物、真珠、サンゴを中心に、調べた横流し品目を列挙していく。
「行った人物の名も、出しましょうか」
「いや、結構よ」
彼女はデシから視線を反らす。答えを示しているのは明らかだ。
「それでしたら、其方も命を賭けるほどのものでは無いでしょう?」
ヘイゼルの言葉に黙り込むアガタ社長へ、エイヴァンが小声で囁きかける。
「これはチャンスだ。どちらにとっても、そんな話ではないとは思うがな」
「……………………」
長い沈黙。
その間、逡巡していたアガタ社長が口を開く。
「社員に……社員に、これ以上、気概は加えないって約束してもらえるかしら」
「ああ、大人しくしていたら、船員にも手出しはしない」
エイヴァンはその要求を呑む。
どうやら察してもらえたかと、貴道はこちらの期待通りの行動をとってくれたことに笑みを浮かべる。
「よし、では運びだそう」
エイヴァンは船倉へと仲間達と向かう。
仲間達がデシがのしてしまっているこの状況は少しばかり厄介な状況ではある。
デシが起きているのであれば、彼の反応を見てどれが横流し品なのか確認できるとエイヴァンは考えていたのだが……。
そこで、ゼフィラが船内の社長のデスクと棚を漁り、貿易の資料を手に戻ってくる。
「リスト、発見したよ」
社長にもゼフィラの言葉は聞こえているはずだが、俯いたまま動かない。
ゼフィラはその間も、上空に飛ばした使い魔によって、無力化した社員達の様子はしっかりと見張らせていた。
リストと照らし合わせれば、余剰分の荷物はすぐわかる。
「ふむ、大漁だね。ま、積みきれる分だけを貰うことにしようか」
ゼフィラがリストを見ながら、メンバー達へと積み込むべき荷物を確認し、自分達が乗ってきた小型船へと積み込んでいく。
それも程なく終了し、黙ってそれを見ていたアガサ社長へと雪之丞が忠告する。
「精々、会社を乗っ取られぬように」
「…………」
「弱みを見せれば、食い尽くされるだけです」
アガタ社長は何も反応しない。
その間にも積み込み作業は進み、最終確認を行ったゼフィラが目を覚まし始めていたアガタ海運社員達へと告げる。
「では諸君、追ってこよう等とは考えないでくれよ?」
そして、最後までデシを捕えていたリナリナがデシデシを海へと突き飛ばしてから、自らの船へと戻る。
「ぐわあああっ、がっ、がばっ、がぼっ!!」
突然、海に叩き落とされたデシを、社員達が助けに当たる。
離れていく海賊船を目視しながら、アガタ社長が社員達へと指示を出す。
「デシを回収後、幻想の港へ。予定よりはまだ時間があるからゆっくりしていいわ」
一息ついて船橋へと戻るアガタ社長は、小さな笑みを浮かべていたのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
リプレイ、公開中です。
MVPは横領を働く社員の居場所を最初から突き止めていたあなたへ。
無事、義賊としての活動完了、オリヴィアの依頼も完了です。
ご参加、ありがとうございました!
GMコメント
イレギュラーズの皆様、こんにちは。なちゅいです。
仲介人の依頼を受け、貨物船の積み荷の私掠を願います。
●重要な備考
<青海のバッカニア>ではイレギュラーズ個人毎に特別な『海洋王国事業貢献値』をカウントします。
この貢献値は参加関連シナリオの結果、キャラクターの活躍等により変動し、高い数字を持つキャラクターは外洋進出時に役割を受ける場合がある、優先シナリオが設定される可能性がある等、特別な結果を受ける可能性があります。
『海洋王国事業貢献値』の状況は特設ページで公開されます。
●敵……アガタ海運
幻想にて、海運業を営む小さな会社です。
主に積み荷の輸送をメインとして活動しており、
社員全員が人間種(カオスシード)です。
○社長……アガタ
スタイルがよく、万人受けする人の良さが印象的な
ウェーブヘア、30代女性です。
ある程度荒事にも長けており、
拳銃とシミターを使った攻撃を得意としています。
○社員……15名(男性12名、女性3名)
実務メインで活動する日に焼けた社員達です。
多くは幻想出身者。力仕事とあって多くは男性です。
年齢は10代後半から30代。
海賊などに備えて武装しており、
サーベル、ライフル銃を使う他、
船に備え付けた大砲なども使用します。
●状況
仲介者の依頼から、私掠を行っていただくよう願います。
依頼者は女王イザベラの息がかかった貴族と思われ、
海洋の名は出さずに私掠することを義務付けられます。
貨物船は2~30人程が乗れる大型の船です。
こちらも小型船を用意してから相手の船を襲撃し、
海運社員らを武力で脅すなどして奪い取るのが手っ取り早いですが、相手も荒事に対する備えは万全です。
リザルトとして、幻想の悪名が少しだけ付与されますので、予めご了承くださいませ。
……と、ここまでは表向きの話です。
社員の中にデシ=モンタネールという20代の男がおります(戦力は他社員と同等程度です)。
やや肌の色が白く、他の社員に比べれば線が細い印象を受けます。
どうやら、会社の出資元となっている貴族の息子らしく、
立場を利用して常日頃から積み荷を横流しするなど、横領を働いています。
アガタ社長も分かっていながら、出資を止められるわけにもいかず、黙認するしかない状況のようです。
そいつの横流し予定分の積み荷のみ奪えば、義賊として活動することも可能です。
ただ、オリヴィアの依頼もあり、あくまで私掠船を装う必要があります。
そんな中でうまくこのデシだけを懲らしめる状況を作れば、幻想の悪名分が名声へと変わります。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
それでは、よろしくお願いいたします。
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