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シナリオ詳細

<青海のバッカニア>湿地の卵にご用心

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●アルタ・マレーア
 五つ星レストラン『アルタ・マレーア』は海洋屈指のレストランである。
 かのガブリエル遊楽伯のお墨付きであり、わざわざ幻想から足を運ぶというほど。
 海洋王国の大号令で海洋が活気づいている今、アルタ・マレーアにも独特の熱気が伝わってきていた。
「これはダメ、なのだわ」
 スープをひとさじ口にして少女は言った。
「全体として味はまとまっているけれど、メインと合わせると塩気が強すぎるわ。次」
 シェフはがっくりと肩を落とす。
『美食家』カタリーナ・マエストリはアルタ・マレーアのオーナーの娘だ。若干11歳ながら、食に関しては天性の才能を持っている。近頃は彼女のお眼鏡にかなわなくては、アルタ・マレーアの店に並ぶことはない。
 そう。新メニューだ。
 現在、アルタ・マレーアで店内では恒例の新メニューの考案が行われていた。
 合間合間に水を飲みながら、驚くほど大量に並べられた料理をカタリーナはきっちりと平らげていく。小柄な体のどこにあれほどの量が入っているのだろう。
 ざっと食べ終わった。
「そうね……」
 1から再考するものが半分。見込みのあるものがいくつか。
 なかでも、ひときわにおいしかったのはカルボナーラ……か。
「このパスタは、とてもよくできているのだわ。……でも」
 何かが足りない。カタリーナは考え込む。
 普通のレストランであれば及第点だろう。だがしかし、ここはアルタ・マレーアなのだ。
(そう、コクがたりないのだわ)
 ひらめいた。
 カタリーナの頭に浮かんだのは、知る人ぞ知る、海洋のある島に生息する巨大な鳥だった。
(……)
 しかし、これは「実際には、店には出せない」だろう。なぜならそれは、保護指定動物の卵だからだ……。
 それでも。
 美食家として、食べたくはある。

●食材調達
「『アルタ・マレーア』って知ってるか? 海洋の有名なレストランなんだぜ! まあ、俺は食べたことないけど、いつか行ってみたいなー! 金ためてさ!」
『お騒がせ』キータ・ペテルソン(p3n000049)。どうやら「美食家」カタリーナ・マエストリのことをただの使いの少女と思っているようである。
 情報屋にしては節穴である。
「で、そこでロック鳥の卵を使うらしいんだ。五つ星レストランの求める幻の卵! 美味しいに決まってるよなー」
 ローレットにやってきたイレギュラーズたちは、めいめい、カタリーナの正体に気が付いていたり、いなかったりするだろう。
「……というわけなのだわ」
 カタリーナは目利きには自信がある。つまりは、あなたたちがこの奇妙な依頼を推敲するにふさわしい実力者であると確信していた。
 ふわりと巨大なリボンが波打つ。
「キャシーのレストランで、新作メニューを考案するのよ。目標は、ルフ島に生息する巨大な鳥……ロック鳥の卵の確保なのだわ。といってもロック鳥は、海洋では保護動物だから……ちょっと失敬するだけなのだわ。うん」

GMコメント

●注意事項
 この依頼は『悪属性依頼』です。
 成功した場合、『海洋』における名声がマイナスされます。
 又、失敗した場合の名声値の減少は0となります。

●目標
 船を駆り出し海洋の群島に赴き、ロック鳥の卵を確保せよ!
 保護指定動物の卵のため悪属性依頼だが、穏当に行こう。
 ロック鳥個体保存のために、卵は盗み出すのが望ましい。
 ロック鳥を殺さないように注意しよう。また、卵は割れないように気をつけること。

●場所
ルフ島……海洋のはるかな島々の一つ。ロック鳥が生息している。
     島は殆どが湿地で、足をとられやすい。小舟を浮かべることも可能だろう。隠れやすい草地もある。

●登場
ロック鳥
 ルフ島にのみ生息する、体長3mほどの鳥。湿地を好んで仲間と巣を作り、今の時期には卵を孵そうとしている。ずっと巣にいるわけではなく、狩りに行ったりもする。周囲を警戒する役割の個体がいるようだ。
 卵を奪うと、それはもう、恐ろしい勢いで追いかけてくる。
 基本的に卵を奪った人間を狙うのだが、頭は良くないため、動くものを追いかける。
 鳴き声を上げて群れが集まったら、手の付けられないことになる。そうなる前に素早く脱出しよう。

●TO・DO(すること)
・ルフ島へGO
 船を出す。ローレット貸出可、持ち込みも可能だ。
 ある程度の道具は用意してくれている。
 島付近は霧の濃い場所なので、迷わないように注意。
・上陸したら、卵を確保
 こっそりと卵を確保しよう。気が付かれる前に、できる限り集めよう。卵は大人一抱えほどの大きさだ。3つは欲しい、とのこと。
・逃げる
 しばらくは執念深く追いかけてくるだろう。船に戻ろう。
・実食
 海鮮パスタを実食。

●カタリーナの悩み
 この幻のパスタにぴったりな名前は何かしら?
 案があったら提案してみるのもいいかもしれない。

●重要な備考
<青海のバッカニア>ではイレギュラーズ個人毎に特別な『海洋王国事業貢献値』をカウントします。
 この貢献値は参加関連シナリオの結果、キャラクターの活躍等により変動し、高い数字を持つキャラクターは外洋進出時に役割を受ける場合がある、優先シナリオが設定される可能性がある等、特別な結果を受ける可能性があります。『海洋王国事業貢献値』の状況は特設ページで公開されます。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • <青海のバッカニア>湿地の卵にご用心完了
  • GM名布川
  • 種別通常(悪)
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年12月07日 22時30分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

レイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)
騎兵隊一番翼
エマ(p3p000257)
こそどろ
デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)
共にあれ
シエラ・バレスティ(p3p000604)
バレスティ流剣士
シラス(p3p004421)
竜剣
プラック・クラケーン(p3p006804)
昔日の青年
ニル=ヴァレンタイン(p3p007509)
引き篭もり魔王
ゼファー(p3p007625)
祝福の風

リプレイ

●卵を求めて
 目指すは禁断の美味。ロック鳥の卵である。
「卵を盗んで食べるお仕事! まさに悪!」
『滅牙』シエラ・バレスティ(p3p000604)はピンと尻尾を立てた。
「しかし混沌は弱肉強食……全ては美食の為に!」
「食いもんの話ってのは業が深いぜ。たかが卵にここまでやるか」
『ラド・バウD級闘士』シラス(p3p004421)は息をつき、帽子を被りなおした。
「まあ、だからこそ俺らの出番があるんだけどな」
「折角産んだ卵が盗まれる鳥側は溜まったものではないじゃろうのう?」
『夢想の魔王』ニル=ヴァレンタイン(p3p007509)はどこか面白そうな様子だ。ローレットから受け取ったマントを、しゅるりと羽織る。
「まぁ、妾も味は気になるのじゃが……」
 背負子とロープで、用意は万全。
「美食を求めての大冒険。中々に心躍る雰囲気はあるのだけども……、地味に危ない橋を渡る展開になるなんてねぇ……?」
 ゼファー(p3p007625)は後悔を振り切るように頭を横に振った。
「いやいや、美味しいお零れを頂く為にも此処は折れずに行こうじゃない。頑張れ私!!」
「うむ、酒は良いものぞ」
 ニルがにやりと笑う。
「ひひひひ……。グルメというのも時に罪深いものなのですね」
 どこからかひょっこりと現れた『こそどろ』エマ(p3p000257)はひきつった笑みを浮かべた。
「わ、びっくりした」
 と、ゼファー。
「こういうのは私の得意分野です。大船に乗ったつもりでいてくださいよ」
「お主ならば上手く身も隠せそうじゃな」
『大いなる者』デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)は感心した。
「悪事に加担すんのは気が進まねぇけどよ。誰かが困ってるつーんなら、話は別だよなぁ」
『幸運と勇気』プラック・クラケーン(p3p006804)は一瞬だけ悩んだ表情を見せたが、すぐに気持ちの良い笑みにとって代わる。
「まっ、糞野郎を殴んのも一応は悪事だし、普段やる事と大して変わんねーか」
「食への欲求と言うのは計り知れない。まぁ加担している時点で悪い奴……なのは間違いないが」
『流麗の翼』レイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)は、海洋国を取り巻く動きを感じつつあった。
「偽善ではあるが、ロック鳥をいたずらに傷つけることは避けるようにしよう」
「おっきな鳥さんが相手、希少な生き物だから倒さない様にしなきゃ」
 シエラは空を飛ぶ海鳥を見上げる。
 ロック鳥はどれほど大きいのだろう?
「んじゃ、一丁、ド派手に行きますか!」
「うむ。運搬係と囮係に別れロック鳥を殺さぬように卵をこっそり失敬するのじゃ」
 プラックの号令に、デイジーが続く。
 仲間たちが声を合わせた。

●船出と作戦会議と
「船、あるかな?」
 シエラはきょろきょろと港を見回した。ローレットが手配をしてくれているはずだ。
「うむ、そっちではないぞ」
 デイジーが仲間たちを手招きする。
 そこにあったのは豪華な客船だ。ビッグドリーム号。クラーク家が所有する小型の豪華旅船だ。
「わぁ、乗っていいの?」
「助かるわ」
 シエラが跳ね、ゼファーが礼を言った。
「苦しゅうない」
 デイジーは胸を張る。
「ふむ、ふかふかじゃのう」
 ニルは満足げにしつらえられた椅子に腰かける。
「行きも帰りも困らなさそうだ。ありがとう」
 シラスはほっとした表情を浮かべた。
「眺めも良いものだね」
 レイヴンは大海原を眺める。
「操縦は俺が!」
 海洋の諸島で育ったプラックは、航海術の心得を持っている。舵を握り、風に向ける。
(卵を巡っての大冒険、か。まるで……)
 海賊みたいじゃねぇか。
 プラックは、浮かんだ考えを振り払う。……海賊は嫌いだ。帰ってこなかった父も。

 今回の作戦は、囮と運搬役、二つに分かれることだ。
「役割分担だな。卵の運搬を引き受ける者とロック鳥の注意を引き受ける者。俺はその後者」
 シラスは、仲間たちを見回した。
「とにかく運搬係がロック鳥に目をつけられるリスクを下げていきたい」
「じゃん! どう、これ」
 シエラがローブを広げると、ローブの下に、背負子ときらきらと光るアクセサリーを装備していた。
「いいわね。それで気が引けそう。私は運搬役として卵の持ち出しを頑張りましょう!」
 ゼファーは、くるりと回ってザックを指し示した。
「女子としては残念なんだけど力仕事は得意だわ!」
「強いのっていいと思うの」
 シエラは頷いた。
「ええ。私なんかは力がありませんから……こそこそしてますよ」
 エマは豪華な船のどこに身を置けばよいか分からないようで、せわしなく居心地悪そうに見える。
「私の仕事は上陸してからです」
「ここからでも、少し霧が濃いね」
 レイヴンは外に目をやった。
 僅かな岩場を目印に、海図と現在地を照らし合わせる。目印は目に見えるものだけではない。風。星の位置。プラックには道が見えている。
「見えて来ましたよ! 皆さん!」
 プラックが声をあげた。
 あれぞロック鳥の住まうルフ島である。
「妾は一足先に上陸するのじゃ」
 デイジーは片手を伸ばし、ファミリア―を呼び出す。ウィッチクラフトによる御業は、自然な動作の一部として行われる。

●ロック鳥の島
「よっと」
 最後に船を降りたプラックが背負子を背負ってマントを羽織る。Silver Bullet-改。思い出のあるものだが、プラックが多く語ることはない。
「どうやら近くにはいないようじゃのう。もう少し奥じゃ」
「ふむ……」
 ニルはふわりと飛び、遠くに目を凝らした。
「妾は上から行こうかえ」
「念には念を込めておきたいっすからね」
 奥へと進みながら、プラックは木々に目印をつけていた。霧が濃い上に、足場が悪い。囮と運搬役に分かれて行動するため、はぐれても戻ってこれるようにしなくてはならない。
「それじゃあ、行こう」
 シエラはマジカルクロスを羽織り、浮力を得る。
「気を付けて」
 レイヴンが囮役を見送った。エマは、……すでに気配を消している。

「こちらに巣があると言っておるのう」
 デイジーはウサギを見送った。動物と意思の疎通は慣れたものだ。
 デイジーの小鳥が、ロック鳥の巣の方向を示して飛んでいく。
 深い湿地が広がっている。
「この先じゃな」
 小鳥を通じて、巣の方向を見定める。
 この戦場こそ、盗賊の本領発揮である。エマは忍び足で湿地を攻略していく。長い草地を選んで歩く。エマが進みやすい道を見つけて、後続が追いかける。
 といっても、エマにしか通れないような道もいくつかあるので、迂回しつつだが。
 あたりは深い霧に包まれている。
「長靴を用意して良かったのう」
 デイジーは足元を見て言った。新月のマントに身を包み、目立たぬように身をひそめる。
「野生動物相手ですからね、人間以上に気を張らねば」
 エマは忍び足で進む。
「ふむ……流石はエマ。イーリンが一目置くベテランのシーフなだけあるな……」
 レイヴンは感心した。エマは物音一つ立てないのだ。
「……えひひ……そちらもなかなかのものですよぉ……」
 今なら動いているからかろうじて分かるが、レイヴンも、エマも。そこにいるとわかっていないと気が付けないだろう。
(私の仕事は、あの大きな卵を運ぶこと……)
 ゼファーはやや後続で待機する。
 ニルが離れて上空を飛んでいるのが見えた。
「にしても、あの大きさなのに最低3つとは、ちと欲張りではないかや?」
 ピタリとエマが止まった。
 姿勢を変え、四つん這いになる。水の中に入り、進んでいく。水草に紛れて静止する。
「よろしくね」
 ゼファーが祈るような気持ちで声をかける。
 見張りの鳥がいる。これ以上は近づけない。このままでも1個はとれるだろうが、目標はそんなに少なくはない。
 ……あとは、隙があれば。

●隙が無い? ならば作ればいい
 シエラは耳を立て、周囲を警戒しながら進む。その後ろをシラス、プラックが付いていく。
「囮班でも、なるべく気配は抑えねぇと……」
 シラスは身を低くして進んでいく。
 そこには、ロック鳥がいた。仲間も近くにいる。
「いくよ……!」
 シエラはアシストバッグから吹き矢を取り出した。こんなこともあろうかと!
 吹き矢をロック鳥の近くに吹き付ける。異変に気が付いたロック鳥が起き上がり、首を伸ばしてこちらにやってくる。
 ロック鳥は警戒の声を出し始めていた。
「来いよ、鳥! ビビってんじゃねぇ、っすっぞ、ゴラァ!!」
 プラックが怒鳴る。ロック鳥も起き上がり、次々にけたたましい音を立てる。
「ハードでロックにキメっぜ!」
 プラックはぶんと頭を振った。リーゼントが揺れる。
「勝負だゴラァ!」
「よし! バレスティ忍法・睡魔の術!」
 即興で煙幕を叩きつけるシエラ。辺りはスモークをたいたように、もくもくとした煙に包まれる。
 シエラはマントを脱ぎ棄てた。
 きらきらとしたアクセサリーが揺れる。
 まるでライブのワンシーン。ロック鳥たちは絶叫をあげた。

●奪取&ダッシュ
「……」
 エマが素早く巣に忍び寄り、卵を確保する。流石の早業だ。
「ゼファーさん、ふたぁつ、いけますか?」
「まかせて」
 ロック鳥がけたたましく鳴いている。長居はできないようだ。ゼファーに二つ渡して、自分も一つ。幸いにも気が付かれてはいない。とっとと退散しよう。
「うむ、デカい。普段、見ておる普通の卵の何倍あるんじゃろうか……?」
 仲間の動きに合わせてニルは翼を広げ、卵へと舞い降りる。
「大切な卵をすまぬのう?」
 ひょいとまるで鶏の卵を回収するような、そんな軽い気持ちだ。12000年生きてもいれば、存在の格が違うのである。
 鳴き声を上げ、どすどすと音を響かせながら、ロック鳥がこちらへやってくる。

●ピンチ!
「えひひ、どうします?」
「ヘタに動かずに物陰に身を潜めましょう。待ってる間に仲間が気を惹いてくれたら儲けもの!」
「同感ですよ……」
 エマとゼファーは草地で静止する。ニルは、素早く飛び去るほうを選んだ。後ほど、とこちらを一瞥し、不敵に笑う。
 ロック鳥はニルを追いかける。
 囮役のなかでも最後まで身を潜めて居たシラスは、鳥の気を引くために石を放りなげた。
「こっちだ」
 シラスは姿を現した。背負子をマントで包んでいる。
 卵が、ない!
 それに気が付いたロック鳥たちは怒っている。いつになく怒っている。徒党を組み、イレギュラーズたちを追いかけようとする。
 そちらには卵を持った仲間がいる。
「ぐ、止むをえん」
 レイヴンは、その場で大きく上昇した。ロック鳥の目を引くように、高く高く。
 デコイロール・プロボック。羽音をあげ、卵を抱えているかのようにゆっくりと上昇する。怒りの攻撃をひょいと避け、衆目を集める。
「こっちの飛行は、あのHades-EXの鬼畜弾幕も避けきった……って、君らに言っても仕方ないか!」
 戦うつもりはない。
 飛翼をはためかせたレイヴンの姿は美しい。ひらりひらりと、攻撃をかわした。

●遁走
 島のあちこちから鳥が集まってくる。
 シラスは逃げ回りながらハイ・ヒールで傷を癒していた。仲間が十分に逃げ切ったところで、シラスはかごを下ろし、マントを背負いなおした。
 シラスは囮。何も持ってはいないのだ。
 ロック鳥はかごの方に注目していた。かごをつついた。
「こんなこともあろうかとぉぉぉぉおーーーー!!」
 ちょうど、煙幕を張っているシエラとおちあった。プラックが道に印をつけていてくれて良かったと言えるだろう。必死の中道を逃げるのはたいへんだ。
 と、そこへ、レイヴンが降りてきた。
「……とはいえ、そりゃ必死にもなるよね。後味は多少悪い……あたたた!」
「大丈夫か」
 シラスが手当てする。
「うむうむ、予定調和といったところかのう」
 ニルは加速して、森の中を素早く飛んでいった。
 BGMが途絶える。あちらも上手くまいたのだろう。
「っせい!」
 プラックが戻ってきていた。
「よし、逃げ切ろうか」
 レイヴンは風を切り、道をたどる。

 藪の中、薄暗いとはいえ、なおも幕が下りたように暗くなった。デイジーの月球結界だ。
 威を封ずる月光の結界。
 それは、イレギュラーズを隠す助けになる。
「妾たちの”道”はこちらじゃのう」
「ああ!」
 プラックが川に飛び込んだ。D.G.Oのまばゆい光があたりを包み込む。でいじー・ぐれーと・わんぱん。理不尽なほどにまばゆく、そして殺意のない攻撃だ。
「ではのう」
 デイジーは、ロック鳥の最後の渾身の一撃を逃れて川に飛び来んだ。プラックと共に、泳ぎ去っていく。
 このまままっすぐだ。

「こっちね」
「ひひひ……ラクできましたねぇ」
 ゼファーとエマの道のりは順当そのものだ。行きの道は騒がしかったので、足場を確認しながら船へと戻った。
「ふぅい!」
「何とかなったようじゃの」
 続いて、プラックとデイジーが合流する。
「うむ」
 ニルもまた舞い戻ってきた。
「やれやれ」
 そして、レイヴン。
 最後は、シエラとシラスである。
「間に合った!」
 シエラをシラスが引き上げる。
「よし、出すぞ!」
 プラックが舵を旋回させる。

 ロック鳥たちは、さすがに海までは追ってこれない。
 けたたましい声が遠ざかってゆく。

●実食! 海鮮パスタ
「キャシー、戻ったのじゃー」
 デイジーの顔を見て、ぱあっとカタリーナの顔が明るくなる。
「いち、にい、さん……よん! ご!? 今までに、こんなにいっぺんに卵を持ち帰った人はいないのだわ」
 デイジーは感嘆した。
「無抵抗でいるのもなかなか大変だ」
 レイヴンが乱れた翼を船の上で整える。
「けど、一匹も殺さなかった。ロック鳥たちもみんな無事だぜ」
 シラスが少しだけ誇らしそうな顔をする。
「まあ、卵はいただいてきたわけだけど」
 このくらいならロック鳥たちの生態も乱れないだろう。
「ありがとうなのだわ! ってことは、またいずれ作れるわね。これで、料理が作れるのよ!」
「で、この料理に合うワインは出てこないかや?」
 ニルにとって、酒はたしなみだ。
「飲み物だって料理の一部。もちろんご用意するのだわ」
「一体どんな味なんだろう……恐ろしくも楽しみ!」
 シエラはわくわくと椅子に座っている。
「さてさて、苦労に見合った味なら良いのだけど」
 重労働のあとだ。ゼファーは楽しみに待っていた。
「普通の卵とは違うってんなら、当然味の深さ的なのも違うのかしらねぇ」
「なんにせよ、仕事終わりの飯は美味いもんだな」
 シラスはふうと息をついた。無事に終わって何よりだ。

●いざ、実食
 そして、しばらくの間があって……。
「できたのだわ!」
 厨房から次々と運ばれてきたのは、ロック鳥の卵を使ったパスタである。
 ナイフを入れれば、黄身がどろりと溶け出し、濃厚な味わいが口の中に広がった。
「ん、おいしーい!」
 シエラが頬を押さえる。
「うーん、しばらくは食べおさめか。安定的な提供は現実的ではないだろうからね」
 それだけが惜しい。レイヴン味わうように小さく口に運んだ。
「うむうむ、苦労した分とても美味しいのじゃ」
「うむ」
 ニルとデイジーは微笑む。
「美味いな」
 シラスは簡潔に感想を述べる。
「マジで美味え! いや、美味しいっす! お代わりってできんのかな……」
 プラックはきらきらと目を輝かせている。
「ありがとう。うーん。問題はタイトルなのだわ……なんといえばいいのかしら」
「料理の名前かや……?  ええと、妾はネーミングセンス皆無なんじゃが……」
 ニルは考え込む仕草をする。
「うーむ、じゃあ……命名『ファントムパスタ』で……」
「メニューに存在しないパスタ。まさにファントムだ」
 レイヴンが微笑む。
「アンタは、何がいいと思う?」
 フォークを、奇妙な持ち方で持っていたエマは、無言でパスタを食べていたところだった。話を振られて、慌てて飲みこむ。
「あぁ、パスタの名前ですか? うーん……。ロックバード・アラビアータ……とかでいいんじゃないですかね」
「なるほど、怒りのパスタ、じゃのう」
 デイジーはにやりと笑う。
「ロック鳥、怒ってたから……えひひひ……」
「なるほど……なるほど。アラビアータは別にあるし……でも。捨てがたいのだわ。そうなのだわ! こんなアレンジはどうかしら」
 即興で、カタリーナはトウガラシスパイスを足す。
「これは! 癖になる辛さ、ですね。えひひ」
「ロック鳥やルフ島の名前は出すと怒られそうじゃしのー」
 デイジーは考え込む仕草を見せる。
「カルボナーラ・デ・ナスコンディーノでどうじゃ?」
「こっそり隠れん坊のカルボナーラ……ね!」
 カタリーナは顔を輝かせる。
「なるほどね。”隠れん坊”してとってきたもの。ぴったりじゃない? それじゃあ、これは……」
 ゼファーはノンアルコールのカクテルを口にし、グラスを掲げる。海の色をしている。
「ボン・モーマンなんてどーかしら。幸福なひととき、とかそんなんよ」
 こうして、アルタ・マレーアの、表には出ないメニューが一つ増えた。
 幸福なひとときは過ぎていく。

成否

成功

MVP

エマ(p3p000257)
こそどろ

状態異常

シエラ・バレスティ(p3p000604)[重傷]
バレスティ流剣士
プラック・クラケーン(p3p006804)[重傷]
昔日の青年

あとがき

アルタ・マレーアからの依頼、達成です。お疲れ様でした!
機会がありましたら、また一緒に冒険いたしましょう。そして美味しいものを食べましょう。
海洋にお立ち寄りの際は、ぜひともアルタ・マレーアへ。

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