PandoraPartyProject

シナリオ詳細

V-Shock!

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ネオン煌めく夜の街。
 路地裏に潜む雑居ビルの地下では、夜ごと夢のように、熱に浮かされた宴が開催されていた――。

「狂さまぁ~~~!」
「涙くん~~~!」
「翠くん私の王子さまぁ~!」
「ミカ様ミカ様ミカ様あああああああああああ」
 カジュアル、ゴスロリ、ギャル、セーラー服……多種多様な格好の女子(とごく一部の男子)が狭いフロアに詰め込まれ、情熱を向ける先――ステージの上には、黒を基調とした華やかな衣装に身を包み、楽器を手にした四人の男がいた。
 特筆すべきは彼らのその顔――ステージを見上げる女子達以上に濃い化粧だった。瞼を囲む黒のアイライン。幾重にも重ねられた付け睫毛。異様に細く短い眉。
 ――そう、ここはライブハウスであり、彼らはいわゆるヴィジュアル系バンドだった。
「愛しのラヴァーズ達に、一つお知らせをしなくてはならない」
 黒髪に眼帯、ファーとエナメルをふんだんに使用した衣装を纏うボーカルの黒薔薇帝(読み:くろばらのみかど/通称ミカ様)が低い声で告げると、ラヴァーズと呼ばれたファンである女子達が「なーにー?」と声を揃える。その声に頷き、大きく息を吸い込み黒薔薇帝(本名:山田志津男)。
「俺達、†黒薔薇ノ檻†(読み:ノワールローズジャイル)は……今日をもって解散する!」

 静寂。
 そして、響き渡る悲鳴。怒号。失神する女子達。

「おいおい、これは困ったぞ……」
 フロア後方で音響を担当するスタッフが、小声で呟き頭を抱える。横に貼られたライブハウスのスケジュール表には、数日後に控えるライブの出演者欄に「†黒薔薇ノ檻†」の文字が書かれていたのだった――。


「バンド、やる気ない?」
 突然そう告げた案内人のシーニィ・ズィーニィの手には、紙の束。
 一枚どうぞ、と差し出されたそれには、黒々しく華やかな衣装に身を包んだ男性と思われる4人組の写真と、いくつかの日付、場所が書かれている。
「『†黒薔薇ノ檻†』って、その世界では有名じゃないけど熱狂的なファンがついているバンドらしいんだけど。つい先日、解散を発表したらしくて」
 散々な名前に、もしかすると数名心の傷が開いたかもしれないことはさておき。解散とはいうものの、手元の紙から目に入った文字は数日後の日付と場所を指している。
「そう、なんだか突然の解散――ギターの狂が音楽性の違いで抜けるのと、ボーカルの黒薔薇帝が家業の建機レンタル会社を継ぐのと、ベースの翠がバンドのお金に手を付けたのと、ドラムの涙がファンの子と結婚するのとで急な話だったらしく、次のスケジュールがもう決まっているの」
 淡々と言うシーニィの言葉をどうにか咀嚼すると、つまりは突発的な解散、それによるスケジュールの穴。そこをどうにか埋める、それが今回の依頼ということだろう。
「そう大きくはないライブハウスだけど、チケットの売れ行きは上々。何組も出演するイベントでそう持ち時間も長くないから、そう構えなくても大丈夫よ」
 だがしかし、全員が演奏、しかもバンドに使うような楽器が得意だとは限らないわけで。不安げな顔をするイレギュラーズに、安心して、とシーニィが続ける。
「大丈夫、楽器は未経験でもこの世界なら念じれば弾けるから。それにヘアメイクと衣装は現場に行けばスタッフが協力してくれる手はずになっているわ」
 ここまで来たら、覚悟を決めるしかない。
 バンドマンになって――女子(と一部の男子)にキャーキャー言われるのだ!

NMコメント

「ライブ」ノベルだしライブがやりたい、その衝動で書きました。

・目標
 †黒薔薇ノ檻†の代役として、30分のステージを成功させる。

・舞台
 都会の地下にあるライブハウスです。
 定員300人程度の会場はほぼ満員。
 ステージの高さは1メートルほど、最前列の柵とは10センチほどの隙間しかありません。

「弾きたい」と思えば楽器が共鳴して音を奏でてくれるので、演奏スキル等は不要(スキルありだと超絶テクに!)、攻撃スキルもパフォーマンスの一環として安全に使用できます。
 どう見ても女子な人も「女形なんだろうな」ですんなり受け入れてもらえるようです。

・客層
 ギャル(最前列で次のバンドを待っておりダルそう。綺麗な顔が好き)
 セーラー服(ノリノリ。ステージ上から自分宛に反応が貰えるとすぐに好きになる)
 カジュアル(端の方で控えめに見ている。ノリやすい曲が好き)
 ゴスロリ(前の方でもみくちゃにされている。耽美な設定に弱い)
 メンズ(後方で腕を組んでいる。俺は見た目じゃなく音を聞きに来た!!)

 その他、いそうだなと思うお客さんはきっといます。

・プレイングの書き方
 担当楽器
 ステージネーム
 ステージでのパフォーマンス
 お客さまへのアプローチ

 辺りを軸に、自由にやりたいことを書いてみてください。
 パートは被っても変な楽器でもOK!
 バンド名や曲名、こんな曲をやりたい等もありましたら是非。特にバンド名は、折角なので参加者の皆さんで相談してみるのも楽しいかもしれません。

・サンプルプレイング
あたしはセツナ、今日は†刹那†だね!
黒×ピンクのフリフリで、女形のギターをやるよ!
登場からくるっと回って、フレンジーステップも活かしたかわいいポーズ。
そうだ、壁際の男の人、実は強がってるだけでウィンクでめろめろにならないかな?

 気楽に気軽に、バンドマンになってみてくださいね。
 なお、ヴィジュアル系なら任せて!な方はプレイング内で専門用語を使って頂いても構いません。その熱意、受け取ります。
 それでは、どうぞよろしくお願い致します。

  • V-Shock!完了
  • NM名飯酒盃おさけ
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2019年12月06日 22時40分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

鹿ノ子(p3p007279)
琥珀のとなり
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)
私の航海誌
伊達 千尋(p3p007569)
Go To HeLL!

リプレイ

●混沌ノ宴†
 一面にサインが書かれ、ステッカーが貼られたライブハウスの楽屋。壁一枚隔てた先では、今まさに前の出番のバンドがクライマックスを迎えている。
 そこに控える、四人の特異運命座標――否、『†混沌ノ愚者†』のメンバー。
「楽器を弾くのは初心者なんだが……本当に大丈夫なんだろうか」
『付与の魔術師』回言 世界(p3p007315)ことドラムのSEKAIが血糊の着いた白衣に眼帯で不安を零せば、『Punch Rapper』』伊達 千尋(p3p007569)ことリコーダーの堕天-Cがその背中を叩き、スーツの胸元からリコーダーを光らせニンマリと笑う。
「オイオイ、何言ってんだよSEKAI。俺達は最強のCRAZY BOYだぜ?」
「私はボーイではないですし、ヴィジュアル系も詳しくないですが……女子にキャーキャー言われにきました。バンドマンってモテますかね!?」
『虹を齧って歩こう』ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)ことベース(一説にはベースのファンが一番熱狂的と言われるのでチョイスが大正解)のWithが欲望を露にする。
 編み上げ多用の黒エナメル衣装を身に纏うその胸元は、女性であることを包み隠さない――女形を良しとせず、真っ向から女性としてステージに臨む証だった。
「モテてやるッスよ、今日が僕達『†混沌ノ愚者†』の幕開けッス!」
『花紅柳緑』鹿ノ子(p3p007279)こと彼の悪夢――KANO様が鮮やかなツートンカラーのツインテールを揺らし和テイストのロリィタ服の袖を捲り拳を握れば、メンバーも力強く頷いて答え――互いの拳を合わせる。
 スタッフが彼らに出番だと声をかけ――四人はステージへと、歩き出す。

●胸ニ刻メ†
「ねえ次のバンドって何?」
「動員の多さ的にトリがギルパンだよね、ノワロが解散したから代わりに出る――なんだっけ、混沌がどうの」
 ステージ最前列の柵にもたれ掛かり、前のバンドからの転換中に友人の問いにギルパン(ギルティ・パンツァーの略)ファンのギャルが答えた瞬間――フロアライトが落とされ、音もなく幕が開く。
(ギルパン最前の為にここにいるけど、さっさと終わらないかなー)
 そう嘆くのはギャルだけでなく、フロアに集まる大半が見知らぬバンドに大した興味を持っていなかったのであった。
 そんなアウェイな状況に鳴り響く入場BGM。

 ――ドッドパッ、ドッドッドパッ。

 静かな打ち込み音の中、まず現れたのはドラムスティックを手にした世界。
「SEKAIだ――この一日に、伝説を刻み込んでみせよう」
 センターのスタンドマイクにクールに言い放ち、白衣を翻しドラムセットへ向かう背中に、「血糊白衣……ッ」と小さくゴスロリ女子が零し胸を押さえる。
 続いて登場したのは、編み上げニーハイブーツのヒールをカツカツと鳴らすウィズィニャラァム。
 細身ながらしっかり鍛えられた脚がホットパンツとブーツの合間から覗き、ギャルが「中々いい身体じゃない」と顔を上げ――胸元の谷間に、眉を顰める。
(女かよ、絶対コイツ周りの男食い散らかしてるわー)
 そんな萎えたギャルの表情を目に留めると、ウィンクをひとつ。
「ヒッ!」
 明らかな狙い撃ちに、漏れる声――どうして、相手は女なのに!
 つよレズことウィズィニャラァム、初撃スマッシュヒットに内心ガッツポーズ。
「今のはWith! そして僕は”彼の悪夢”ッス! KANO様と呼ぶがいいッス!」
 黒×赤、ボーダーニーソ、ツインテールとポイントを解り切った鹿ノ子がボリューミィなパニエの仕込まれたスカートを跳ねさせ登場すれば、そのカリスマ性はフロアの気持ちをぐっと掴む。
 セーラー女子がその名乗りに「KANO様ぁ~!」と咲いて(V形用語:\(^o^)/のポーズでかわいく愛を叫ぶ)と、「もっともっと、ッスよ!」と鹿ノ子も満足気に微笑み返す。
 きっとボーカルだろう――そう誰もが思ったが、鹿ノ子は上手で真っ赤なギターを装着しチューニングを開始。
 残ったボーカルへの期待が高まる中、センターへとゆっくりやってきたのは――。
 一世を風靡した男達を彷彿とさせる、ワインレッドのスーツを身に纏い、髪をセンター分けにして固めた――トレンディな千尋。
「えっ」
 壁際で様子を見ていたカジュアル女子が困惑する後方で、懐かし気に頷くメンズ。世代がドンピシャのようだ。
「俺達は『†混沌ノ愚者†』……そして俺は『堕天-C-』。
 今夜限りのステージだが……
 お前らを混沌(ケイオス)の渦に飲み込んでやるぜェェェ!!」
 頭上にハテナが浮かんだままのフロアを、千尋の叫びに合わせて他三人が楽器を鳴らし引き戻すと、千尋はスタンドマイクの位置を調整し――リコーダーでエモーショナルなイントロを奏で始めた。

 掴みの一曲目『ガラクタセカイ』は、まずはバンドの力量を見せつける――そんな、静かな入りから開けたサビの曲。フロアはまだ様子見しつつも、ゆらゆらと音に合わせ身体を揺らす。
 後方壁際で腕を組み、踵でリズムを刻むメンズはすぐに気付く――このバンド、腕がいい。(粗削りながら魂を感じるリコーダーは……数々の賞を総ナメにしてきたな。ギターはリフのキレがいい。それに何より、リズム隊のブレがない。俺には判る、その瞬間前に出すべき楽器をすっと支え、調和を取っている! 緊張で走りがちなテンポもそれとなく戻すよう誘導――あのドラムは、職人だ。ベースも、女と侮っていたが……)
 世界の堅実な演奏は、耳の肥えたメンズに届き――その頷きを目にし、全力で応えようと演奏を進める。
(さっきのは顔がちょっと良かったから! ……この演奏してる顔もめっちゃイケメンじゃんやば、いやでも女だし――えっ何このベースの指捌き、この音――アタシの心の壁、壊されちゃう……!)
 頑ななギャルの心の壁を無視し、その心にウィズィニャラァムの演奏が刺されば――。
 曲終わりに初めてマイクを持ち、汗で貼り付く前髪を掻き上げながら低めの声でそっと、精一杯背伸びして前方で埋もれるゴスロリを見つめ、ウィズィニャラァムが言う。

「次の曲、いきます――‬『君を守ると誓う』」

 スゥ……と手を組みお祈りポーズのまま背中から倒れていくゴスロリを、隣の友人が救っていた。

 王子様が男なんて誰が決めた、私が貴女を守るの――そんな泣きのバラードで攻めれば、ここからは上がる一方のボルテージ。
「それじゃあ次の曲行くッスよ! 次の曲は、皆で盛り上がれる振り付けがあるッスから、僕の真似をしてくださいねー!」
 鹿ノ子はとっておきの『浪漫★キャンディ』で、フリ講座を交えて一緒に盛り上がろうと画策していた。
「みーぎ、ひだり、まーわしてジャンプ! はい手扇子!」(V系用語:両手を扇子のようにひらひらさせる)
 パッと見て真似できる簡単なフリを手本にすれば、フロアも真似てどんどん一つに。
 終盤、ポップな雰囲気から一気に激しくなれば、上手に下手に煽りながら、舞うがごとくツインテールと和袖を靡かせる。ギターソロでは中央のお立ち台に上がり、ウィズィニャラァムと背中合わせに演奏し――終われば、ギリギリまで顔を近づけ笑い合う姿に一段と声があがる。
 煽りに合わせて観客が逆ダイ(V形用語:前に勢いよく飛び込んでいく動き)をすれば、セーラー女子を指さし親指を立て笑い、セーラー女子は飛び跳ね咲いて応えた。

「待たせたな……次はこれだ!」
 世界の軽快なスネアドラムで始まったのは、千尋渾身の『SOREARU』。
 後半ながら全く衰えない千尋のリコーダー、そしてキレのいいジェスチャーに合わせ鹿ノ子とウィズィニャラァムもぴったり合ったリズムで体を揺らす。
「横断歩道を渡る時、白い線だけ踏んでいく! これは?」
「SOREARU!」
 いつの間にか装着していたヘッドセットマイクで日常あるあるを歌えば、手にしたリコーダーをマイク代わりに客席へ、そして耳に手をやれば返ってきたのは軽快な合いの手。
「クゥー、痺れるゥー! そこの壁際のアナタ、あるあるカモン! セイ!」
 千尋が楽し気に合いの手を入れた壁際のカジュアル女子に問いかけ、リコーダーソロ(シンキングタイム)を入れていく。
 しばしの後、カジュアル女子から発された
「後ろから友達だと思って声掛けたら、全然違う人だったー!」
 には、満場一致で「SOREARU!」が返ってきたのだった――。

 そしてとうとう持ち時間も残り僅か。
「ラスト!」
 ウィズィニャラァムの煽りに乗る楽器。
 声をあげ応えるフロア。
「暴れていくッスよ――『空操パンドラ』! 頭はなんのために付いてるか知ってるッスかー? 振るためにあるんスよ!」
 鹿ノ子の声と同時に始まった世界のドラムカウントから、フロア中に広がるヘッドバンキングの海。
 モッシュにダイブに大わらわなラスト曲が終わり――。
 フロアへと拍手を送りながら捌ける世界。
 最前のギャルにピックを手渡しして頭を手荒に撫でるウィズィニャラァム。
 ピックをばら撒き「また遊ぼうッスよ!」と笑顔で捌ける鹿ノ子。
 そして――。
「俺達が、†混沌ノ愚者†だァー!」
 千尋の捌け際のシャウトには、大歓声が返ってきたのだった――。

●伝説ノ夜†
 ――余談として。
 熱烈な要望により行われた終演後のツーショット撮影会。
 そこにはセーラー服女子とハートを作る鹿ノ子――KANO様、ギャルとゴスロリそれぞれの肩を抱きイケメン顔でガチ恋沼に突き落とすウィズィニャラァム――With、「お前のビート……俺に届いたぜ」とメンズと握手をする世界――SEKAI、『堕天-C-』Tシャツを着たカジュアル女子と拳を高く掲げる堕天-C――千尋と、ライブハウス設立以降最高の売上を叩き出したのだった。

 なお、千尋自作の『堕天-C』Tシャツが完売したかは――彼の名誉の為、ここには記載しない。

成否

成功

状態異常

なし

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