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シナリオ詳細

<物語の娘>コーカス・サーカス・レース

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●走れ、アリス
「さぁさぁ、やってまいりましたコーカス・サーカス・レース!」

 ワシにオウムにフラミンゴ。キツネにイタチにオオカミ。
 集まった動物たちは皆がワイワイガヤガヤ。スタートと大きく書かれた白いテープの前で好き勝手に喋っています。
「レースの方法は簡単、ぐるりと涙池を一周してスタート地点に戻って来るだけ!」
「レースクイーンのドードー鳥さんが『勝手に女王を名乗って不敬罪』で首を撥ねられて絶滅しかけた時はどうなるかと思いましたが、無事に開催されて良かったですね。バター・フライさん」
「はい! さりげなく議会解散レースに名称変更をしようとしていた芋虫さんをキャタピラーで轢いて守ったかいがありました!」
「え?」
「それではコースの説明です!」
 フライドバターの羽を持つ蝶々がゆっくりと浮かび上がり、びしょ濡れのネズミが黒板にコースマップを貼りつけました。

 涙池周辺の景色や仲間とのお喋りを楽しみながら走る『遅刻確定白兎コース』。
 走れ糞虫ども! 貴様らの腑抜けた足をクソの前に鍛え直してやる!! という幻聴が聞こえてきそうな妨害障害何でもありの『ハートの女王式芋虫軍曹コース』。
 前者に参加する動物たちは笑顔を浮かべて楽しそうですが、後者への参加者からは殺伐とした戦場の兵士的気風が見えています。
 和気あいあいと弱肉強食が混在した愉快なスタート地点では、アリスの到着を今か今かと待ちわびるランナーや観客たちがどっと押しかけていました。
 
「果たして、我らがアリスはどのコースを選ぶのか。そしてどのようなレースを見せてくれるのでしょう!」
「実況は、鳥共の餌を見るような視線が痛い。羽ばたく激重カロリーことバター・フライ」
「解説は、獣共の餌を見るような視線が痛い。眠りネズミさんでは無い方、ビショ濡れネズミでお送りします」
「実況と解説が途中で途切れたらお察し下さい」
「レースが終わるまでボクたちが実況席に座っていたら奇跡みたい」


●物は言いよう
「あの、こんにちは。走ることは、おすきですか?」
 特異運命座標が境界図書館を散策していると一人の案内人がおずおずと声をかけてきた。
 肯、と返せば嬉しそうに顔をほころばせる。
「とても素敵な世界で不思議なレースをしているんですが、もっと盛り上がって欲しいと願っているんです。興味があったら参加してみませんか?」

NMコメント

・目標
 涙池を一周してスタート地点まで戻って来ること。
 
・世界
『黄金色の昼下がり』、通称『ワンダーランド』と呼ばれるカラフルな世界です。
 コーカス・レースが行われる周辺は騒々しく、おもちゃ箱をひっくり返したような有様です。

【サンプルプレイング】
白兎コース
湖の景色を楽しみながら走るよ。
同じ速度で走る動物や鳥が居たら話しかけてみようかな。
給水所というよりお茶会みたい。このケーキ、食べながら走ってもいいの?

芋虫コース
何人も、我が前を阻む敵は、許すまじ。
相手からの妨害は「エネミーサーチ」を使用して事前に察知。
返事はイエスしか許さん! 名前の前にはサーorレディをつけろアニマルども!

  • <物語の娘>コーカス・サーカス・レース完了
  • NM名駒米
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2019年11月18日 22時25分
  • 参加人数4/4人
  • 相談3日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)
無敵鉄板暴牛
アリシア・アンジェ・ネイリヴォーム(p3p000669)
双世ヲ駆ケル紅蓮ノ戦乙女
アウローラ=エレットローネ(p3p007207)
電子の海の精霊
回言 世界(p3p007315)
狂言回し

リプレイ

●Chapter1
 風船で浮かぶゾウやキリン。
「すごいや、ワンダーランド!」
 見たこともない動物たちに『無敵鉄砲暴象』リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガーの瞳が輝きます。
「白兎コースのほのぼのした空気も楽しそうだけれど」
 両方のコースを見比べて、うんと一声。
「いざ! 出陣デス!」
 スタート地点へ駆けて行くリュカシスの後ろ姿を動物たちはハラハラと見つめていました。
「こんにちは。本日はお日柄も良く!」
 元気の良い挨拶に猛獣達が振り返ります。
 まだ子供だ。芋虫コースは早くないか?
 そんな囁きにもリュカシスは動じません。堂々とスタートラインの前列に立ちます。
「ボクは鉄の種族! あなたは?」
 ひと際巨体の鷲が羽根を広げました。
「ワシは叫び鷲。此度の参戦を歓迎するぞ。鉄のアリス」
「それでは走者、位置について」
 スタートフラッガーのリスが震えながら旗を下げました。
「よーい、ファイアー!」 
 かけ声と同時にスタートラインが爆発しました。
 立ち込める土煙の中から巨大な動物達の一軍が現れます。それはさながらヌーの大群のようでした。
「デストロイ!」
 サイのお尻が小柄な走者を襲います。観客は悲鳴をあげました。それはそうでしょう。小さなアリスは避けようともしていないのですから。
「妨害上等!」
 サイが空を飛びました。
 自分の五倍はあろう巨体を弾き飛ばしたリュカシスの姿に観客は大興奮です。
「鉄のアリス、すごい」
「力こそパワー! デス!」
「止まる事無き黒騎一迅、暴走戦車! 子牛達の進路に今新たな一頁が加わった!」
「力とパワーは同じ意味では?」
 実況と解説が揉めている間にも小柄な体躯を生かしたリュカシスは動物の間を駆け抜けます。
「やるではない、かっ!?」
 ゴールまであと少しという所で叫び鷲が落ちました。
 どうやら潜んでいた狙撃手にスナイプされたようです。
 ゴールテープは目前。けれども、とリュカシスはドングリ弾をかいくぐり鷲の元へと駆け寄りました。
「儂を置いて、先にいけ」
 いいえ、とリュカシスは首を振ります。
 ゴールするのも大切だけど、楽しい気持ちでゴールに行けることはもっと大切!
「だって楽しさの代名詞、サーカスの名を冠するレースですからね」
 肩を貸しての同着一位。
 動物たちは拍手で彼らの健闘を讃えました。涙池の水位も少し上がっています。後続の動物たちもリュカシスの勇気ある行為を讃えました。
「鉄のアリス。否、戦友(とも)よ」
 サイとハイタッチしていたリュカシスの元に叫び鷲がやってきました。
「貴君こそ芋虫コースの一等である」
 抱擁と共にリュカシスの胸に贈られた黄金色の勲章。
「ありがとう、戦友たち! きっとまた一緒にレースをしようね!」

●Chapter2
「戦闘依頼で動く事は多々有れどマラソンは久しぶりになるわね」
「赤のアリスは芋虫コースに行かないの?」
『黒焔の薔薇』アリシア・アンジェ・ネイリヴォームの周囲にはキラキラ光るコウモリが集まっています。
「たしかに勝負事の様な気がするし妨害障害何でも有りで楽しそうだけど、今回はのんびり完走を目指すわ」
「赤のアリスはこっちで走るって!」
「わー!」
 アリシアと一緒に走れるとだけあって白兎コースは大盛り上がり。
「それに、クラス通り『死神』になるのはね?」
 唇からぽとんと零れた呟きが聞こえたのは蒼褪めた芋虫コースの動物達だけでした。
「始まる前に白兎コースのルールを聞いておきたいんだけど」
「ルールはないよ」
「走る場所も自由! 飽きたら、そこがゴール」
「いつでもスタート地点に戻れるんだよ」
「そう。思った以上にゆる、自由なコースなのね」
 楽しげな小動物の心情を思いやって、アリシアは優しい言葉に言い直しました。
「そろそろ、行くよ~。よーい、どーんっ!」
 ぽんっと小さな金色花火が開きます。
 歓声があがり、動物たちが続々と出発を始めました。
 昼下がりとあって涙池は穏やかな陽射しに包まれていました。
 連なった柳の木が爽やかな風に揺れ、水面が黄金色の細波を立てています。
 湖面にはビスケットで出来たボートが浮かび、走るアリシア達に向かってオールを振っていました。
「この世界には初めて来たけど、既に目新しい事が有って楽しいわね」
 湖上を泳ぐボートと並走しながらアリシアは目を細めました。
「給水所が見えて来たよ~」
 そこは大きな噴水がある公園でした。
 水の代わりに硝子が吹き上がり、その上でクッキー、スコーンにノー・バースディケーキが器用にバランスを取っています。
 アリシアの元に「メニュー表」と書かれた蝶々が飛んできました。メニューには苺水、溶けたキャラメル、ターキーの肉汁なんてものもあります。
「飲み物はとっておきたいわね。紅茶にしようかしら」
 勿忘草色のティーセット達がシャボン玉に包まれやってきます。ティーソーサーの上には食べてと言わんばかりに自己主張をしているビスケットが乗っていました。
「悪戯っ子ね。お菓子はちょっとだけよ」
 ビスケットをつまみあげながらアリシアは笑いました。
「走っている最中にお腹を壊してしまうかもしれないから」
 お菓子をつまみ、お喋りをしながらスタート地点へ戻ってきたアリシア。「お疲れ様」を聞いた動物たちが「お疲れ様パーティー」を開こうと騒ぐまで、あと数時間です。

●Chapter3
「電子のアリス、髪の毛がお空の色!」
「お目々は海辺の夕焼け!」
 観客席に手を振る『電子の海の精霊』アウローラ=エレットローネの周りでオウムが囀ります。
「マラソンも体力トレーニングになるし、ゆっくりでも頑張って走りきりたいなー」
「電子のアリスはどのコースを走るの?」
 スタート地点へと向かうアウローラの後ろを燕尾服姿のペンギンたちが追いかけます。
「アウローラちゃんは景色も楽しみたいから、白兎コースでゆっくり走るつもりだよー」
「そうなんだ」
 ペンギンの子が残念そうに俯きました。
「どうしたの?」
「アリスは白兎さんより足が速いって聞いたの」
 ペンギンの子は内緒話を打ち明けるように足をもじもじとさせています。
「だから見てみたいなって」
「じゃあ、アウローラちゃん。スタートダッシュはちょっと頑張るね!」
 アウローラの輝く笑顔にペンギンの子たちは嬉しそうに翼を動かしました。
 もし彼らが追装着型エンジンスラスターの存在を知っていたら。このお話の内容はもっと変わっていたでしょう。
「よーい、ドン!」
 スタートの花火があがった時、アウローラの姿はどこにもありませんでした。
 動物達はキョロキョロと辺りを探します。
「これは一体どういう事でしょう」
「1km先に元気に跳ねるアリスの姿が見えますね。どうやら彼女は、残像すら残らない速さで走ったようです」
「おおーっ」
 自然と湧きおこる拍手の中、実況のバター・フライが言いました。
「それは生物が出してもいい速度ですか?」
「アリスに不可能はありません」
「なるほど」
 リミッター・イズ・ノーライフ。
 ツッコミ・イズ・不在。
「アリスはやーい!」
 アウローラ目がけて、ペンギンの群れが一斉に突撃していきます。
「一緒に走ってもいい~?」
「いいよー!」
 灰色の羽毛に囲まれた湖の畔は、のんびりとした時間を刻み始めました。

●Chapter4
「さてと」
「ぴよぴよ」
 柔らかい芝生の上で『付与の魔術師』回言 世界は大きく伸びをしました。
「俺は白兎コースでのんびりと楽勝に走って……ん?」
 巨大な鶏が一直線に向かってきます。
「黒髪のアリス、こんな所にいたのか! 早くしないとレースがはじまるぞ!」
「ま、まてまて! お前は芋虫コースの参加者じゃないか? 俺はこっちじゃない! あぁぁぁ」
 抵抗空しく、世界は鶏とヒヨコの群れに流されていきました。
 悲鳴は芋虫コースのスタート地点に埋没し、逃げたくても分厚い筋肉と羽毛の壁が行く手を阻みます。
「こうなりゃ、やれるだけやってやる!」
 半ばやけっぱちで叫んで前方を睨みつけました。
「ファイアー!」
 合図と共に地面が爆散し、世界の地獄が幕をあけました。
「な、なんだ。この軍隊の訓練でありそうなアスレチックの数々は」
 二時間経過。ぜぇぜぇと鳴る肺を友に駆け抜けた蜘蛛の巣トンネル奇襲の旅。
 果たして今後、このジャングル・サバイバル・トレーニングが生きる事はあるのでしょうか。
「死ぬ。いやもう死んでる……」
 泡だった沼の中から世界は何とか這い出しました。そして背後を見て、思わず呻いてしまいました。
「くそっ! くそっ! すでに脱落しかけてる奴もいやがる!」
 泥の海から突き出た大量の黄色い尻。力尽きたヒヨコの群れは、さながら地獄絵図でした。
「そうはさせるか!」
 ランナーズ・ハイならぬサバイバル・ハイ。
 世界は黄色い尻を掴み、大根のように沼からヒヨコを引っこ抜きました。
「こ、ここまでピヨ……」
「まだだ! 俺が苦しんでる以上、他の奴もまだまだ同じように苦しんでもらう!」
 癒しの光に包まれ、ヒヨコがうっすらと瞼を開きます。
「まさか息子の仇に助けられるとは」
「いま生後何日目か聞いていいか?」
「アリス、なぜ同胞を助けるピヨ? 控えめに言って、我等は貴様の体力を千は削ったはずピヨ」
「そんなの、俺にも分んねぇよ。どうしてこうなったんだか」
 本当なら白兎コースでのんびり走っていたんだがなぁ。
 遠くを見る世界の声は聞こえません。ヒヨコたちは世界の影にそっと頭を垂れました。
「戦場の天使」
「メリークリスマス」
「主は来ませり」
 足元にヒヨコが密集するというハプニングを乗り越え、ゴールテープを切った世界は崩れ落ちました。
「完走おめでとう!」
 歓声も精神的疲労の極地にいる世界には聞こえません。
「もうできれば一生走りたくない」
「ぴよぴよ」
 片頬を地面につけながら呟く黒い目に、光はありませんでした。

成否

成功

状態異常

なし

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