PandoraPartyProject

シナリオ詳細

甘い捕食者

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●好奇心は猫をも殺す
 森から漂う甘い香り。それに足を止めたのは、幼い少年と妹らしき少女。
 2人は顔を見合わせ、その小さな足で森へ踏み入った。昼でも明かりの差し込まぬ、薄暗い森の中へ。
「にいちゃ、こわい」
 妹の言葉に少年は大丈夫だ、と言い聞かせて手をしっかりと握る。
 少年とて恐怖心がなかったわけではない。けれど、それ以上に好奇心が勝ってしまったのだ。
 この先に何があるんだろう、この甘い匂いはどこから来ているんだろう、と。
「わぁっ!?」
 ふらふらと進んでいく少年と少女。ふと少年の丸い頬に何かの雫が落ちた。
 その感触に小さく飛び跳ねると、少年は恐る恐る頬に手を伸ばす。
「これ、なんだろ……」
「なんかあまいにおいー」
 指についたのはべとべととした液体。少年の指に鼻を近づけた少女が匂いを嗅ぎ、徐にぱくりと少年の指を口に含む。
「ちょ、食うなよ! 何かもわからないのに」
「? でもにいちゃ、これあまくておいしいよ」
 目を丸くする少年と、小首を傾げる少女。
 なおもパタパタと液体は上から降ってくる。

 彼らはまだ気づかない。
 静かに降りてきたソレが、彼らへ牙を剝いていることに。

●ローレットにて
 『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3p000003)がイレギュラーズ一同を見渡す。
「依頼は幼い子供のいた母親からなのです」
 発端は子供達が遊びに行ったまま帰ってこない事だった。
「大盗賊団の頭目さんがラサ地方から幻想に侵入したという噂も最近あって、最初は盗賊の仕業かと思ったのですよ。けれど、話を聞くとどうやら違うようなのです」
 遊びに行ったという場所からさほど離れていない場所で人喰い蜘蛛が発見されていた。
 薄暗い森の中で退治が難しく、森から蜘蛛が出てくることもなかったので退治の必要を迫られることもなかったのだという。
「その蜘蛛……グリュコーゼと呼ばれるらしいのですが、子供と大人で感じる匂いが違うのです」
 子供には菓子の如く甘い香りに。
 大人には顔を顰めるような悪臭に。
 そうして力の弱い子供だけをおびき寄せているのだろう。
「森の中は薄暗いので、必要な方にはカンテラをご用意します。早く退治しないとまた子供が被害に遭うかもしれないのです。早急に! なのですよ!」
 ユリーカのその言葉と同時、1人の男性がローレットに駆け込んでくる。

「助けてくれ! 子供が1人、人喰い蜘蛛の森に行っちまったんだ……!」

 イレギュラーズ達とユリーカは互いに顔を見合わせた。

GMコメント

●目的
 グリュコーゼ5体の討伐
 子供1人の保護

●情報確度
 B。子供の状態が不明。

●敵情報
・グリュコーゼ×5
 大型の人食い蜘蛛。黒い体を持つ。
 基本的な構造は普通の蜘蛛と変わらないが、捕食に特化するため口付近からも粘着質の糸を吐き出すことができ、鋭い牙を持つ。
 腹付近と口付近から出す粘着質の糸は匂いを放ち、嗅ぐ者の年齢によって匂いの感じ方が異なる性質を持つ。15歳程度までは甘く感じられるようだ。
 言葉は通じない。視覚が発達しており、夜目が効く。
 最近は獲物が少ないため腹が減っているらしく、好戦的である。
 遭遇当初はR4(超遠距離)相当の高さに登っている。

攻撃手段
・拘束
 粘着質の糸で対象者を拘束する。遠距離単体攻撃。BS呪縛付与。
・噛みつく
 鋭い牙で対象者へ噛みつく。至近距離単体攻撃。
・のしかかり
 基本的に地面から中距離~遠距離の高さにいる時のみ。高速で地面へ向かって落ち、対象者にのしかかる。遠距離単体攻撃。BS麻痺付与。
・特殊な糸の香り
 パッシブスキル扱い。グリュコーゼの出す粘着質の糸全般は特殊な香りを持っており、外見年齢16歳以上の場合はその悪臭から反応-15される。

●子供について
 10歳程度の少女。大人しい性格で甘い物が好き。茶色の髪を三つ編みにしている。
 既に犠牲となった兄妹同様、遊びに行くと言って帰ってきていない。
 森へ入る姿が見られている。

●場所
 森の中の少し進んだ場所。
 時刻は昼であるが、中距離より先は見えなくなる程度に薄暗い。
 ユリーカの調査により、地面に敗れた服と思しき布と黒く乾いた血痕が落ちていたことが確認されている。まだ敵が近くにいると考えられることから持って帰ってきていない。
 木々は視界を遮るものとなるが、根っこはさして移動の邪魔にならない地形である。

●ご挨拶
 初めまして、或いは再びお目にかかれまして幸いです。愁です。
 大人な方は悪臭から身を守る術を考えてください。俺は気合で行くぜ! というものそれはそれでOKです。BS付与されても解除方法のアイディアがあればとりあえず書いてみて下さい。有効であれば採用されるでしょう。
 あとはうっかり腕とか持っていかれないよう気をつけてください。
 それではよろしくお願い致します。

  • 甘い捕食者完了
  • GM名
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年03月13日 21時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

シェリー(p3p000008)
泡沫の夢
レイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)
騎兵隊一番翼
オフェリア(p3p000641)
主無き侍従
善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)
レジーナ・カームバンクル
恋歌 鼎(p3p000741)
尋常一様
イース・ライブスシェード(p3p001388)
ニーマンズ
クロジンデ・エーベルヴァイン(p3p001736)
受付嬢(休息)
ヴィクター・ランバート(p3p002402)
殲機

リプレイ

●痕跡を辿って
「ユリーカの情報にあったのはこの辺りかな」
 破れた布と血痕のあった場所へ赴いたイレギュラーズ一同。『放浪カラス』レイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)は辺りを見回し、ハーブを仕込んだスカーフを首まで下げる。
「……臭いが」
「思ったより強くないですね」
 レイヴンの言葉に続いたのは『泡沫の夢』シェリー(p3p000008)。
 平常心を持って悪臭を耐えようとしていた彼女であるが、想定よりひどい悪臭というわけでもない。
「糸からいつまでも同じ強さで臭いが出ているとは思えません。臭いが弱いということは、ずっと前に吐かれたものなのでしょう」
 獲物を狩るため。自らにより近いほど、新しい糸ほど強く臭いを出す。
 この場の状況からしても、その予想はあながち外れていないと思わせる。
「血痕とは、これのことでしょうか」
 周りを調べていた『主無き侍従』オフェリア(p3p000641)がカンテラを地面にかざし、皆がいる方向を振り向いた。
 その足元にあったのは、黒ずみ乾ききった液体の跡。
「恐らくね。ただ……これはどちらのだろう」
 先に犠牲になった子供達か。迷い込んでしまった子供か。
 一定時間の経過があったことは判別がつくが、それが誰のものであるかはわかりようがない。
「凄いタイミングで追加事項が来るものだよねー」
 『Esper Gift』クロジンデ・エーベルヴァイン(p3p001736)はそう呟き、手に持っていたたいまつで周りの地面を見てみる。
 足跡などが残っていればそれから推測もできようが、残念ながら血痕以外には何も残っていない。
(急ぎで子供の保護も追加……まー、報酬詰めるのは見つけてきてからかなー)
 それが生きているかは、わからないけれど。
「……自然界では人間も普通に捕食の対象なんだと実感するわね」
「全くだ。自然の仕組みには敬意を表したいところだけど、食べられる側になるとゾッとしないね」
 血痕から目を離さず、『レジーナ・カームバンクル』善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)がぽつりと呟く。それに答えたのは『尋常一様』恋歌 鼎(p3p000741)だ。
 2人ともファミリアーで鳥を使役し森の中を飛ばせているが、今のところ子供にも敵にも遭遇する気配はない。
「これは確かに子供も引き寄せられてしまいそうだよね」
「あー……削除済みの人は甘い匂いなんだねー」
 鼎の言葉にクロジンデが視線を向ける。その顔は鼻から口まで、濡れた布で覆われていた。
 話には聞いていたが、実際の反応を見ると不思議な気分である。
「あちらの方が悪臭は強いようだ」
 周囲を歩きまわったレイヴンが顔を顰め、スカーフを口元に戻して戻ってくる。
 一同はにおいを辿り、さらに森の奥へ足を踏み入れた。

●揺れる光と煌めく銀糸
 ふらふら、ふらふら。
 覚束ない足取りの子供が1人、森を彷徨い歩く。

 ふらふら、ふらふら。……ぱたり。
 木の上から何かが降ってくる。それを見上げた子供は、同時に白い糸に襲われた。
 悲鳴すら上げずに倒れる子供。その体を糸は逃がさまいと拘束する。
「ギ、ギ……ギ」
 頭上からそれを見ていたグリュコーゼ達は獲物を捕らえたと確信し、ゆっくりと地面へ降りてきた。
 だが。
「…………!?」
 グリュコーゼ達に動揺が走る。
 糸で確かに絡めとった筈の子供は、まるで最初からいなかったかのように姿を消してしまっていた。
 おかしいと感じ始めたグリュコーゼ達の1体に怨霊の塊がぶつけられる。
「人気者だね、君達は。こんなにも死霊が集まって風穴開けたいってね」
 死霊弓を放った鼎の脇をレイヴンのマジックフラワーが飛んでいく。しかし敵に気づいたグリュコーゼ達は素早く木の枝へと移動してしまっていた。
 敵の存在を事前に知ることができたのは『殲機』ヴィクター・ランバート(p3p002402)とレジーナの瞳がその熱源をいち早く感知できたからに他ならない。不意打ちで1体に攻撃を加えられたことを良しとすべきか。
 イレギュラーズ達が敵を見上げる中、ファミリアーがカンテラを咥え、枝にかけていくと――。
「……なるほど」
 『ニーマンズ』イース・ライブスシェード(p3p001388)はハーブを噛みながら瞳を眇めた。
 それは大きな、とても大きな蜘蛛の巣であった。飛ぶ生き物は巣で捕らえ、地上を走る生き物は自らで捕らえていたということなのであろう。
 グリュコーゼ達が一斉に糸を吐きかける。それを回避しようとしたイレギュラーズ達は、しかし鼎とクロジンデが囚われた。
 たいまつが手元から落ち、クロジンデは拾おうとするものの糸の拘束がそれを許さない。
「オフェリア様、鼎様とクロジンデ様が」
「任せてください」
 幻惑のステップを踏んで避けたシェリーの言葉に、オフェリアが聖なる光を放つ。弾かれるように糸が切れ、拘束の溶けた鼎は素早く立ち上がった。
「ありがとう、オフェリア君」
「これが役目ですから」
「記憶回路の人、ありがとー」
 クロジンデも同様に拘束を解かれ、たいまつを拾い上げる。
 そこへ降りかかるはやはり糸。全員回避とはならぬも、糸に囚われかけたオフェリアは糸の付着したマントを素早く脱ぎ捨てて事なきを得た。
 直後、シェリーに向かって1体が落下してくる。しかしやはりそれは幻惑の残した中身のない外見。
「私はこちらですよ」
 ふわり、ふわり。
 軽やかなステップを踏みながらシェリーは敵の視線を引き付ける。うろうろと左右へ体を向けるグリュコーゼに、レイヴンの魔弾が被弾した。
 ギギ、という悲鳴と共に足が1本吹き飛ぶ。標的をシェリーからレイヴンへ変えたグリュコーゼは、糸を吐き出し枝にぶら下がるとレイヴンへ向かって飛びかかった。
 庇うようにかざした腕に噛みつかれ、レイヴンは顔を歪める。腕を振って振り飛ばそうとするが、敵もそうされまいと尚深く噛みついた。
 加勢に向かおうとしたシェリーは、足が動かない事にはっと見下ろす。片足に粘着質の糸が張り付き、地面へ縫い留められていて。
「! しまっ……」
 ぱっと顔を上げると、既にグリュコーゼは眼前に。
 その牙はシェリーの喉元へ――。
「シェリーさん!」
 その間に入ってきたのは、カンテラの光を受けて煌めく金髪の影。
 サイズだけでは押しとどめられず、肩に噛みつかれて顔を歪めるオフェリア。
 敵の離れた瞬間にサイズを振るうと、足元を一閃されたグリュコーゼはがくりと体勢を崩した。そこへ追撃をするのは増幅した魔力を放つ、クロジンデのマギシュート。
 それはグリュコーゼの胴体に穴を開け、その命を絶った。
 レイヴンの方を見れば、レジーナやイース達が加勢をしたようで。止めをさす前に上へと逃げられてしまったが、カンテラの傍に陣取るその姿は元気とは言い難い。
 勿論、同じだけの手傷をこちらも負わされているようだが。
 仲間が倒されてしまったから故か、元々そういった狩りをしているのか。
 グリュコーゼ達は糸を吐くばかりで一向に降りてこない。囚われた者はオフェリアによって助け出され、射程の長い攻撃も枝から枝へと回避され当たる確率としては良くない。
 敵も味方も、手傷を負わされながらも決め手に欠けていた。
 イースが回避した隙に木に体当たりをかけてみるが、伊達に背の高い木ではない。幹もそこそこ太く、確かに揺れてはいるが不十分だ。
 レイヴンの持つグリモワールが妖しく光り、放ったマギシュートはカンテラの傍にいたグリュコーゼへ。
 カンテラの光が揺れ、枝ごとグリュコーゼが落下する。
 先に落ちてきたのは枝先にかかっていたカンテラだ。落ちた火種を咄嗟に鼎が踏んで消す。
 次いで落ちてくるはずのグリュコーゼを睨みつけていたレイヴンは、至近距離まで落ちてきたところではっと目を見開いた。
「シャァァアアア!!」
 落下中に糸を吐いて移動したか。レイヴンの頭上へ移動していたグリュコーゼはそのままの勢いでレイヴンにのしかかる。
「っ……!」
 のしかかられた勢いと、地面に体を強打したことでレイヴンの視界がブラックアウトする。
 レジーナの射撃にグリュコーゼはレイヴンの上から枝の下へと回避すると、糸のしなる勢いのままレジーナの近くまで移動する。
 持っている武器では近すぎて攻撃ができない。レジーナはライフルを抱えて全力で移動を始める。
 そこへ何度目かの糸を吐く攻撃。
「わっ」
 イースの上半身に糸が降りかかり、体勢を崩して地面へ倒れ込む。
 そこへ間髪入れず振ってきたのは糸を吐いたのと別のグリュコーゼ。
 糸に囚われたイースは、のしかかられたことにより距離の近づいたグリュコーゼへ自由な足で蹴り上げる。
「ギシャアアアァァ」
 叫び声を上げたグリュコーゼはそのままイースへ食らいついた。
 このまま捕食してしまおうとでもいうのか。噛みつかれたイースは痛みに顔を歪める。
「イース君!」
 鼎がグリュコーゼに向かって青の衝撃派を放った。それはイースの上から吹き飛ばしてしまうほどでなくても、標的を鼎へと変えさせる。
 しかし、枝へ糸を伸ばしたグリュコーゼは不自然にその動きを止めた。
「同じことはさせないわ」
 ゆっくりとグリュコーゼの体がイースの横へ転がる。その胴体から上がる、小さな煙。
 その遥か後ろから、超遠距離で狙撃したレジーナは弾をリロードした。
 地上の敵を仲間が相手取る間、木の上にいるグリュコーゼを牽制するのはヴィクターだ。
 その精密な射撃は1体に当たり、敵の悲鳴とも怒声ともつかぬ叫び声が上がる。スナイパーの放つ銀の弾丸はグリュコーゼに少なくないダメージを与えた。
 クロジンデの追撃を躱し、グリュコーゼは枝から枝へ、明かりのある場所からない場所へと移動を繰り返す。
「狙いづらいねー」
「それでも、私の役割は変わらない」
 目をこらすクロジンデの隣でヴィクターがライフルを構えた。
 その目が捉えるのはグリュコーゼ、その熱源。
 闇の中を銀の弾丸が煌めいた。

「悪臭が立ち込めてるな」
 イースはハーブを噛んでもごまかしきれない臭いに顔を顰めた。
 戦闘開始から今まで、グリュコーゼの吐いた糸はなかなかに強い匂いを放っている。シェリーが血痕のあった場所で言っていた予想は外れていなかったという事だ。
 射撃攻撃をくらったグリュコーゼが逃げるように上の枝へ糸を伸ばす。しかしその糸は途中で速度を弱め、枝まで行きつくことなくひょろりと垂れ下がった。
「上まで行かれると面倒だからねー」
 クロジンデの放ったマジックロープがグリュコーゼへ絡みつき、その動きを鈍らせる。
 イースの放った弾丸は、吸い込まれるようにグリュコーゼの胴体へ。
 枝にぶら下がっていた1体を、ヴィクターがライフルでもって何度目かで命中させ撃ち落とす。
 そのまま近い場所にいたイースにのしかかろうとするも、横へ転がって回避され。
「獲物を誘うはずが獲物になる。良くあることだね」
 鼎の言葉と共にイレギュラーズ一同が地上へ落下したグリュコーゼを取り囲んだ。

 そう、気が付けば残っていたのは自分1体きり。
 多勢に無勢。いかに抵抗しようとも、グリュコーゼに勝ち目は残されていなかった。

●迷子の子供
「……見つかりませんね」
 シェリーが耳をすませ、周囲を見回す。
「でも、交戦中に迷い込んでこなくてよかったです」
 犠牲者は増やしたくありませんでしたから、と同じように見回すオフェリア。
「けれど、こんなに探しているのに見つからないなんて」
「結構広いよね。この森」
 レジーナと鼎のファミリアーも別の場所を探しているが、生憎とそれらしき姿はないようだ。
「マップは大分広がっている」
 そう告げるのはヴィクター。ギフト《不安定なレーダーマップ》のおかげでヴィクターの脳裏には今まで歩いた場所や痕跡のマッピングが完了している。
 一同は未だ子供の姿を見つけられないながらも、ヴィクターから告げられる未探索地域を歩くことによって、比較的効率よく探索を行えていた。
「そっか、ありがとー」
 クロジンデの自然会話が終わったらしい。皆が揃って視線を向ける。
 視線を集めたクロジンデはついと指先を左の方へ向けた。
「この先に草むらがあるみたいー。そっちに小さい人間が向かっていったって、この木が教えてくれたんだー」
「行ってみようか」
 鼎の言葉に皆が頷き、足早に移動を始める。
 そこは木の枝が伸びてこなかった場所のようだった。日差しが降り注ぎ、さわさわと草が揺れている。
 その中に。
「……寝ているな」
 イースの呟きがその場に零れ落ちる。
 茶色の髪を三つ編みにした少女がすうすうと、日差しの中で微睡んでいた。その手には白い花が握られている。
「無事のようね」
 安堵の声をあげるレジーナ。オフェリアが少女の肩を小さく揺らして起こす。
 それを少し離れた場所で見ながら、ヴィクターは覆面を取って小さく眉を寄せた。
 それは『疑問』という脳波の揺らぎ。
「……何故子供は一人で森へと行った。原因が解明されなければ別の子供、ないしその子供はいつまでも森へと行くのではないか?」
 その事に関してよく考えるなり、言い聞かせるなりすべきは大人だ。
「花を握ってるみたいだし、プレゼントじゃないかなー。誰に渡すかわからないけどー」
 その隣でクロジンデがのんびりとした声を出す。
 グリュコーゼは討伐され、子供の保護も完了。
 依頼人の大人達に提言するのも、報酬の話を詰めるのも、子供が親と再会できた後に。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お疲れさまでした。臭い消しにハーブが大活躍でしたね。
 またご縁がございましたらよろしくお願い致します。

PAGETOPPAGEBOTTOM