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シナリオ詳細

幽霊騎士団の凱旋?

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●雷とともに
 女心と秋の空。この頃の天気はあっという間に崩れる。粗末なベッドに身を横たえていた男は、桶を返したように降り始めた雨に気づいて、彼はむくりと起き上がった。眠い目を擦りながら、彼はのろのろと家の外へ出た。
「こいつはひどい雨だ。……作物を収穫しといてよかったぜ」
 不意に分厚い雲を割く閃光が輝き、まもなく雷鳴が轟く。男は思わず飛び上がった。
「いけねえ、これは水路が溢れるかもしれねえ……」
 男は慌てて革の雨具を着込み、村の外へと飛び出す。嵐の晩には灌漑水路の水門を開く。そうしないと畑に水が溢れ、田んぼの土が流れてしまうのだ。他の村人達もぞろぞろと外へ飛び出してくる。
「やれやれ。みんな起きたか」
「そりゃそうだろ。あんな雷で起きねえって方が無理だ」
 村人達は適当に言葉を交わしながら水門を目指した。

 ふと、森が再び雷が落ちたように輝く。村人たちが振り返った瞬間、風が吹いて茂みが揺れ、その瞬間に青白い影がいくつも飛び出してきた。その影はやがて重装備の騎士達を象り、横隊を組んで突撃を始める。
「ひっ……!」
 突然現れた白い影を前に、思わず村人は震え上がる。蜘蛛の子を散らしたように走り、一斉に家の中へ飛び込む。そんな彼らは気にも留めず、騎士は縦横無尽に村を駆け巡った。家の外からこわごわ見つめて、男は思わず息を呑む。
「幽霊だ……幽霊の騎士だ……!」
 先頭に立って疾駆した一体の騎士は村の広場に立ち、旗付きの槍を高々と掲げるのであった。

●幽霊騎士を討伐せよ
「……というわけで、今回の任務は村に出現した幽霊の騎士の討伐なのです。近くの都市の議会から依頼が来たのですよ」
 コルクボードにおどろおどろしい騎士の落書きを貼り付け、『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は君たちに任務の説明を始める。
「お話によると、幽霊騎士の数はおおよそ100体、夜な夜な現れて村を走り回っているらしいのです。目を合わせると魂を吸われるとか、そういう噂は流れているのですが、議会の人によると、今のところ誰かが死んだとか、そういう話は出ていないようなのです。……いろいろと裏のありそうな依頼なので、実際に任務に赴く前に、現地の人にいろいろと確認してみるとよいのですよ」
 落書きを見て首を傾げていたユリーカだったが、やがてコルクボードから落書きをはがして君達へ差し出す。

「では、よろしくお願いするのですよ」

GMコメント

目標
 夜な夜な農村を駆け回る幽霊騎士団を排除する

情報精度
 情報精度はBです。情報に不正確な部分はありますが、それが直接的な危機に繋がることはないでしょう。

ロケーション
・農村
 練達にほど近い位置に存在する農村です。幽霊騎士が毎晩暴れるせいでおちおち眠れない日が続いています。
 →農村は平地になっており、光がよく通ります。
 →農民に聞いて回ると、度重なる襲撃に疲れ切っている人々の証言を聞くことができます。
・森林
 農村の南に存在する森。茂みは深く、人が隠れるにはぴったりの場所。
 →幽霊騎士が出る時には森がぼんやりと輝きます。農民たちには恐れの象徴となっているようです。
・小都市
 農村の北、街道沿いにある小さな都市。練達と幻想を行き来する人間がよく宿を取りに来るらしい。
 →最近二週間近くも滞在している練達の研究者がいるという話を聞くことができます。

エネミー
・幽霊騎士×100
 毎晩槍を掲げて突撃を繰り返す幽霊騎士の群れです。
→幽霊であるため、突進しても畑を踏み荒らしたりはしません。
→イレギュラーズの攻撃を全く受け付けません。イレギュラーズが攻撃を受けることもありません。

TIPS(PL情報)
・鋭敏な感覚を持つ者ならば、幽霊騎士が幽霊ではないことに容易に気が付くかもしれません。

  • 幽霊騎士団の凱旋?完了
  • GM名影絵 企鵝
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2019年11月18日 22時25分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

レオン・カルラ(p3p000250)
名無しの人形師と
シフト・シフター・シフティング(p3p000418)
白亜の抑圧
ジェイク・夜乃(p3p001103)
『幻狼』灰色狼
ニーニア・リーカー(p3p002058)
辻ポストガール
オジョ・ウ・サン(p3p007227)
戒めを解く者
チェルシー・ミストルフィン(p3p007243)
トリックコントローラー
メリー・フローラ・アベル(p3p007440)
虚無堕ち魔法少女
イクスエータ・グニコール(p3p007733)
気ままな旅行者

リプレイ

●ホントに幽霊?
 小麦や秋野菜の収穫を終え、冬支度の始まった農村。その畦道を、両手に二つの人形を抱えた子供が歩いている。男の子の人形の名前はレオン、女の子の方はカルラ。レオン・カルラ(p3p000250)は、幽霊騒ぎの起きた村を子供の手の内から見渡していた。
「えっと……幽霊さん達がいるみたいだけど、お話を聞いた感じだと変な感じ」
『本当に幽霊さんかなぁ? とにかく、村の人たちのためにも頑張らないとね』
 人形が頷き合うと、子供は畑の雑草を毟っている村の少年達に眼をやった。彼らもどこか眠そうにしている。
「もしもし、そこの人」
『ねぇねぇ、そこの人』
 少年達の眼には、レオン達の姿は珍しい大道芸と見える。眠い目を擦りながらも次々近寄ってきた。
「何それ?」
 物珍しさに集まってきた少年達に、レオンは尋ねる。
「ねぇねぇ、最近村で変わったこととか、不思議なことってなかった?」
「うーん……」
 少年達が首を傾げている間に、小さな牧羊犬が村の中を軽快に駆けていく。鼻を鳴らしながら、犬は村の端から端へと走っていく。ジェイク・太刀川(p3p001103)はその背中を眼で追いながら、そばの村人へ話しかけた。
「なあ、この村に騎士団が滞在していたことはあるのか?」
「騎士団? ないない。この辺は交通の便も良くないし。もっと南の街道をみんな通るんじゃないのかね」
「いや、最近の事じゃない。昔々に何か騎士団にまつわるような逸話は無かったかってことだ」
「そんならもっとないよ。昔からこの村はあの街のお膝元だからね。貴族達に納められた事なんかないのさ」
 村人は肩を竦める。あれは一体何なんだとか、夕べも眠れなかっただの、ぶつぶつ文句を言っている。ジェイクはその呟きもメモに留めながら、さらに尋ねる。
「はあん……じゃあ、幽霊騎士団が光と共に現れるって話だが、他に何か気づいた点はあるか? 例えば妙な音や匂いがしたとか」
「いや……わかんねえな。それより、あんたらはあれを何とかしてくれんのか?」
「安心しな。今晩にでも、幽霊騎士団を俺達が退治してやる」
 言うと、ジェイクはにやりと笑った。

 一方、農村そばに囲われた都市。市場に集まってきた市民達の中を、全身機械の大柄な鉄騎種、シフト・シフター・シフティング(p3p000418)がのしのしと練り歩いていた。集音マイクの感度は既に最大レベル、辺りの人々の会話を掻き集めていた。
「本機は実害が無ければ、放置して良いと考えるが……精神疲労及び現象に慣れた頃合いの襲撃など、危険を考慮されたし。原因究明に努める、である」
 与えられた任務内容を再確認しつつ、シフティングは街角の噂に耳を傾けながら歩く。村で起きてる事件には、どうやら興味が無いらしい。彼は市場を離れ、全身を屈めて器用に宿屋の扉を潜る。
「忙しいところ、申し訳ない。一つ尋ねたいところがあるのだが」
「どういたしましたか?」
「さる筋の情報において、この都市に先日から練達出身の研究者がここに滞在しているという情報を掴んでいる。これは確かか?」
「ええ、まあ……」
 宿屋の女主人はこくりと頷く。シフティングは右腕にキーボード端末を展開すると、素早くメモを打ち込み始める。
「それならば確認したいことがあるのだが……」
 彼が女主人に聞き込みしている間に、メリー・フローラ・アベル(p3p007440)は宿屋の階段を軽やかに駆け上る。前日から宿屋で部屋を取っておいたのである。鍵を回して部屋に飛び込んだ彼女は、さっそくベッドに寝転ぶ。
「ウーン……あんまり柔らかくないわね。ナシだわ」
 さっそく我儘を呟きながら、指先で小さな魔法陣を描いてハツカネズミを呼び出す。彼女は窓の桟にそれを放った。鼠はちょろちょろと桟を渡り、隣の部屋の窓を覗き込む。
「見つけた!」
 鼠の視界はぼやけ気味だ。しかし中で誰がいるかくらいは分かる。窓からは何かを弄っている研究者の様子が見えた。彼は何やら部屋の机に向かって何かを弄っている。
「ふーん。何してるのかな……」
 彼女が考えこむ部屋の下、宿屋前の通りをイクスェータ・グニコール(p3p007733)が歩いていく。
「不気味な幽霊騎士、はた迷惑ではありますが……上手いこと観光地に仕立て上げられれば、ワタシの楽しみも増えるし、事件も解決してWIN‐WINですね。では、初めてのお仕事、頑張りますよーっ!」
 意気込むイクスェータ。現在彼は殆ど無一文、この仕事を成功させないといよいよ生存が危ういのだ。彼はすれ違った男を咄嗟に捕まえ、手帳を開いた。
「すいません、ちょっとお話聞かせて貰ってもよいですか?」
「はあ」
「この辺で練達っぽい見た目の人間を見かけませんでしたか?」
 獲物へ食いつく獣のように詰め寄る。男は軽く仰け反った。
「……あー、うん。見たよ。白衣ってのかい? それを着たヤツが夜毎に街をウロチョロするんだ」

 探索の手は森へも伸びる。ニーニア・リーカー(p3p002058)はフクロウの翼を折り畳み、枯れ葉が付きっぱなしの藪を掻き分け森の中を見渡していた。
「うーん……100体も出てきてるんだよね? そんな大勢が走り回ってるのに、みんなが怯えて眠れないくらいで、畑が踏み荒らされたとか、そんな風に実害が出た報告がないのは不自然だよね?」
 背後をぴょんぴょんと飛び跳ねるオジョ・ウ・サン(p3p007227)に振り返って尋ねる。サンはぴょんと高く飛び上がった。
「100体モー! す、すごいコトデスヨ……? 100体……オナカイッパイになれソウデスネ!」
 サンの興味は食べる事ばかり。思わずニーニアは眼を瞬かせてしまった。
「幽霊を食べるの?」
「食べ方は分からないデス! デモ食べてミタイ!」
「う、うん……」
 ニーニアは苦笑しつつ、足下を見つめる。冬が近づき、冷たく固くなった土には足音が残りやすい。シカのような足跡に混じって、明らかに人の靴跡が混じっている。
「よーし……」
 彼女はポシェットから茶色や緑の塗料を取り出すと、枯草や藪に軽く塗りつけていく。誰かが通れば、間違いなく服について汚れる事だろう。隣ではサンもひっきりなしに鼻をひくつかせている。
「クンクン、クンクン……」
 サンの嗅覚は敏感だ。食べ物の匂いも、そうでない匂いも敏感にかぎ分ける。すると感じる、僅かな鉄臭さと人間の匂い。
「感じるデス! これはオボエテオクデスヨ!」

 そんな彼女達二人からは少し距離を置いて、チェルシー・ミストルフィン(p3p007243)はすっかりハッスルしていた。刃の片翼を大きく広げて、彼女は森を駆け抜ける。
「これは呪い! 呪いなんだわ! 私はこの呪い、全身で受け切って見せるわよ!」
 ギルドで依頼を聞いた時点で、彼女はすっかりこの事件を嘗て死んだ騎士達の呪いだと思い込んでいた。森の中を走り抜けて大気を胸いっぱいに吸い込むが、どうにも呪いらしき雰囲気はない。
「……おかしいですわ。呪いらしき雰囲気が……ん?」
 何かを踏んづけたチェルシーは、屈んでそれを拾い上げる。
「実包の紙片……かしら?」
 匂いを嗅ぐと、かすかに火薬の匂いがする。チェルシーはしばらく腕組みして考えこんでいた。

●幽霊の正体
 夕刻。イレギュラーズは村外れに集結していた。昼間に集めた情報を交換し合うためである。村に異変はないこと、街にやってきた研究者は夜毎に宿を出てうろうろしていること、森では足跡や火薬の痕が見つかったこと。それらの情報を掻き集めた彼らは、程無く一つの結論に達した。
「……よし。まあだいたい結論は出たな。そんじゃあ、今晩中に決着付けちまうとするか」
 ジェイクの言葉を合図に、イレギュラーズは素早く動き出した。迷惑なヤツにはきっちり落とし前をつけてやるのだ。

 ぴょんぴょんと飛び跳ねながら、オジョウサンは森へと戻ってくる。深紅の弦をするりと伸ばし、木にぶら下がってウツボカズラに擬態する。
「オジョウサンは通りすがりのウツボカズラデスヨ……」
 ぐうと小さくお腹が鳴る。このままでは近くを通られた時にばれてしまう。こんなこともあろうかと、サンは素早く袋の中からお菓子を取り出す。
「おやつは持ってきたデス、フフリ」
 砂糖菓子をバリバリと口に頬張りながら、サンはじっと動かない。そんな彼女の様子を茂みから確かめ、チェルシーは溜め息をつく。
「やれやれ。本当に今晩で片付いてしまうのかしら……」
 呪いではないという結論になって、チェルシーは既に落胆しつつあった。折角呪いを受けて全身金縛りに遭うのかもしれないと思ったのに、とんだ肩透かしである。
「全く、一カ月でも戦えるように準備を整えてきたってのに!」
 藪を刈って森を切り開き、テントを張って警報機の準備も整えている。ついでに鹿も一匹仕留めて、昼の間を使って下準備も終えた。食糧の準備も万端なのだ。
「仕方ない。待つわ」
 焼いた肉を切り分け、彼女は口へと放り込むのであった。

 一方、メリーは脱兎の如く駆け抜け、街の宿屋へ駆け戻っていた。すでに隣の部屋に籠っていた研究者はその姿を消している。鼠にずっと張り込ませていたから、すでに確認済みだ。
「チャンス!」
 小声で呟いたメリーは、素早く部屋を飛び出し、誰もいない事を確かめると隣の部屋のドアノブに手を掛けた。ちょっと呪文を唱えてやると、すぐに鍵が外れた。メリーはするりと部屋へ足を滑り込ませる。中には火薬のツンとした臭いが立ちこめている。そしてデスクには、小さな映写機のような道具が無造作に置かれていた。
「何かしら」
 手にしたメリーはスイッチらしき部分をぽちりと押す。その瞬間、うっすらと光が放たれ、幽霊騎士が一体飛び出し辺りを駆け巡るのであった。
「へえ……」

 メリーが興味津々で部屋を物色しているとは知らず、一人の男が黒い外套を着込んで街道を歩く。更にその後を数メートル離して、イクスェータがこそこそと研究者を尾行していた。足音を忍ばせるのは基本中の基本の技である。気配を消して彼を追うくらいは造作も無かった。
(これは確実に村の方角へ向かっていますね……)
 十中八九彼が犯人であるが、今捕まえてしらを切られてはどうしようもない。逸る気持ちは押さえて、彼が尻尾を出すまではじっと耐え忍ぶのだ。

 村では、ニーニアがその上空高くへ飛び上がって辺りの様子を窺っていた。既に陽は森の彼方に傾いていたが、梟は夜目が利く。東から差し込む月明りだけでも、村の様子ははっきりと見えていた。
 そんな彼女を村から見上げるレオンとカルラ。村の子供達は彼らをぐるりと取り囲んでいた。
「ねえねえ、また来るの?」
 子供達の誰かが尋ねると、レオン達三人は一斉に頷く。
「今まで被害はなかったし」
『平気だと思うけどね』
 話している間にも陽は沈み、今日の夜が訪れる。村人が篝火に火を灯すと、人形に埋め込まれた翡翠の眼がきらりと輝いた。
『でも、自分たちで見てわかることも』
「あるんじゃないかな」
 その時、森の方角で不意に稲妻のような光が閃き、鈍い音が弾ける。村人達は大人も子供も縮こまる。その瞬間、するすると白い影が飛び出してきた。その影は次々に分裂し、やがて大きな騎士達の波となって村へと押し寄せてくる。
「来た!」
 村人達は叫ぶ。レオンとカルラは幽霊の群れへ向き直ると、背後の子どもは小さく目を伏せる。思念を騎士達へと向けるが、反応は一向に返ってこない。全くのがらんどうだ。彼らは一斉に首を傾げる。
「本当に」
『幽霊さん?』
 ニーニアは一気に急降下すると、手紙型の手裏剣を擲つ。しかし、騎士はその姿が僅かにブレるだけだ。
「止まって! どうしてこの村を襲うの?」
 尋ねてみるが、もちろん返事は無い。ニーニアは自分の中で確信を深めると、素早く光の放たれた森へ目掛けて飛んでいった。

 シフトも輝きを合図に森の中で活動を開始した。赤外線カメラを起動すれば、暗闇の中でも問題なく動ける。彼は足下の枯れ葉を掻き分けながら、光の放たれた方角へ向けてのしのしと歩いていく。
「彼らには高い技術力がある。もし研究者が本件にかかわっているならば、おそらくは……」

 牧羊犬が今度は森の中を疾駆する。彼から齎される感覚も頼りにしながら、ジェイクは己の感覚を研ぎ澄ませて暗い森の中を走っていた。
(逃がすかよ。幽霊騒ぎは今日で終わりにしてやるぜ)
 弾けた火薬の臭いが強くなる。茂みを掻き分けると、一人の痩せた男が森の中に蹲り、映写機のハンドルを夢中でぐるぐると回し続けていた。ジェイクが身構えると、男を挟んで向こう側から、イクスェータが素早く飛び出す。
「ここであったが百年目ですよ! 大人しくしてください!」
「うわっ!」
 男は素っ頓狂な声を上げ、咄嗟にポケットから筒状の何かを投げつける。その瞬間、紫色の煙が辺りを満たし、周囲の視界を奪い去る。ジェイクは慌てて煙幕から飛び出した。
「おい! 逃げんなよ!」

 森がいきなり騒がしくなり、慌ててチェルシーは走り出す。彼女にとっては面白くない展開だったが。
「もう! 結局幽霊じゃないって事ね!」
 煙幕からこそこそと忍び出てきた男を視界に捉えると、彼女は翼の剣を一本抜いてその手に構える。
「待ちなさい! 一体此処で何をしていたのよ!」
「お前達こそ、何なんだいきなり! 寄って集って!」
「心当たりは山ほどあるでしょ!」
「くそっ……」
 男はチェルシーに向かっても煙幕を投げつける。再び紫の煙が辺りを覆い尽くし、チェルシーの視界を覆い尽くす。男はその隙に逃げだそうとするが、彼はすっかり足下がお留守になっていた。
「疑似餌チャン! 爆発デス!」
 オジョウサンが叫んだ瞬間、足下で何かが爆ぜ散る。宙へと高々舞い上げられた男は、きゅうと鳴いてそのまま気絶してしまった。

 眼を回している男の目の前に、ニーニアがするりと舞い降りる。その顔を見つめて、彼女は小さく肩を竦めた。
「なるほど。彼が下手人だね」
 シフトが茂みを掻き分けて姿を現し、取り出したロープで気絶したままの男をぐるぐる巻きにする。
「目標、捕縛完了。これで事件は解決、であるな」

●悪戯の始末
 翌朝、森から引っ立ててきた研究者を、シフトは村人達の前に突き出す。男はよろよろと畦道に倒れこんだ。
「全ての事件は彼が引き起こしていたものである。ほら、君も言うべき言葉があるであろう」
「悪戯して申し訳ありませんでした」
 ひれ伏す男。縛る縄を引っ張りながら、チェルシーは眉根を寄せる。
「ほら。反省が足りないわ。何日も村人を困らせた罪は重いのよ」
 適当に男を詰りつつも、チェルシーはやっぱり溜め息を零す。結局ただの練達技術であったことに、落胆の色を隠せずにいた。
「ああ。理想のご主人様が現れる時はいつになるのかしらね……」

 地面に伏せる男を横目に、ニーニアはギルドへ送る依頼報告書を認めていた。封筒に納めた彼女は、自分の鞄へそっと収める。
「幽霊騒ぎの正体も分かったことだし、これで一件落着かな」
 その隣で、子供はレオンとカルラに語り合わせる。
「やっぱり研究者だったね」
『めーたんてーに掛かれば造作も無いわね』
 二つの人形はこくりと頷く。
「でも、何でこんなことしたのかな?」

「じゃあ、とりあえず、そういうわけで……」
 一通り謝り倒した男は、立ち上がってそそくさとその場を立ち去ろうとする。しかし、ジェイクはそんな男の肩をがっちりと捕まえた。
「ひえっ」
「まあ待てよ。ただ謝って終わりってのも無いだろ? その技術を使って、この村の発展に力を貸せや。俺達の言う通りにすれば、悪いようにはしないぜ?」
 ジェイクは肩に乗せた手の力を強めて威圧する。男はただでさえ青白い顔を更に青くした。
「そ、そんなことを言われても、俺の専門は映像技術だぞ。農業なんて専門外だし……」
「それなら、その映像技術を使って村おこしの祭りでも一つ開いたらいかがですかね?」
「祭り?」
 イクスェータが朗らかに言うと、研究者も、村人達も一斉に首を傾げる。彼はにこやかな笑みのまま早口で語り始めた。
「ええそうです。幽霊騎士を作れるなら、もっと可愛げのあるものも作れるでしょう? それを使って、この村でちょっとした祭りを開けばいいんですよ。そしたらいろんな人が物見遊山にやってきてきっと盛り上がりますよ! 勿論ワタシ自身がそれを見て楽しみたいのですが!」
「はぁ……」
 彼らはしばらく顔を見合わせていた。

 そんな村の様子を、オジョウサンは森の際からじっと窺っていた。村に出ていくと驚かれるからと、彼女は遠慮したのである。しかし、結局サンは今までおやつしか食べてない。
「アレ……で、ユーレイ……は……?」
 お腹がぐうと森に鳴り響いた。

 イクスェータが祭りの良さを熱弁する姿を見つめながら、メリーはこっそりとその手に小さなプロジェクターを載せる。持っていれば何かに使えるかもしれない。
「……貰っとこっと」
 にやりと笑みを浮かべると、メリーはポケットにプロジェクターを滑り込ませたのであった。



 かくして、村を騒がした幽霊騎士騒動は幕を下ろしたのである……

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

影絵です。この度はご参加ありがとうございました。

悪戯してるというのはPL情報を見れば丸わかりかなと思いますが、ちゃんとPC情報に落とし込まれていたのでよかったなと思います。

ではまた、ご参加いただければと思います。

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