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シナリオ詳細

虚栄の戯曲家

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ウィリアムの名を冠する者
 今、望んでいるものを手にして何の得があろうか。
 それは夢、瞬間の出来事で泡の様に消えてしまう。束の間の喜びでしかない。

 とある世界の有名な戯曲家の言葉だ。私は彼の事についてあまり詳しくは無いが、箔を付ける為に彼の名を冠して世間に売り込んだ。
 後々になって彼の言葉を識る内に考えさせられている。我々の現実と演劇の内なる世界の現実。大局的な視点で見れば所詮は泡沫(うたかた)の世に過ぎないのかもしれない。
 なればこそ、我々が富と名声を築き上げる事に何の意味があろうか。私は、文字で埋めるべき真白な台本を目の前にしてそれと同じ様に脳髄を空白に染めようと努力していた。






 ――ウィリアム君、来週の演劇は楽しみにしているよ。友人がキミの名を聞いて、是非とも見に行きたいと言っているんだ。

 安物の煙草を咥えながら頭を空っぽにしていると、パトロンとして出資してくれている裕福な貴族の顔と言葉が思い浮かんで来る。
 アァ、自信と才覚に満ち溢れたアノ御尊顔……嘸(さぞ)かし、金銭に困った事の無い恵まれた生活を送っているのだろう……私トハ違ッテ……。
 目眩がするほどに輝かしい富で着飾った彼。ソシテ、その眩しい光に縋り付くだけしか出来ない日陰者の私。この滑稽な比較が、そんな戯曲の一幕に成り得るのではなかろうか……。
 自嘲と言い訳の為にそう思いながら、震える手でペンを取って空白の台本を文字で埋め尽くそうとした。
 然し乍ら(しかしながら)、目の前にある現実がすぐにでも私の筆から「表現」という手法を消失させてしまう。

 それは滑稽な現実――私には作家の才能なんて無いという事である。

●ゴーストライディング
「皆さん、演劇作家さんから依頼なのです!」
『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)が何やら騒がしくしながら、これは新たなニュースだと依頼の内容と共に早口でイレギュラーズに伝えてきた。
 彼女曰く、戯曲家として有力貴族お抱えの『ウィリアム』という作家が自身の携わる演劇に出演してくれる役者を探しているそうだ。
 その様な依頼は役者を生業とする者達が集う劇団などに持ち込めば良いのではないか。その様な疑問が思い浮かぶが、この依頼の要点はそこにあるとユーリカは語る。
「この作家さんは自身が作品を書いた事など一度も無いそうなのです。彼は他の作家に作品を書かせ、自分の作品と偽って今の地位や名声を得たのだとか」
 つまりは、ゴーストライターを使っていたという事だろうか。その質問にユーリカは肯定する様に頷いた。
「ウィリアムさんは、役者となる人達が一定のルールに従って即興劇を演じて欲しいとの事なのです。それをウィリアムさんの作品だと銘打った上で」
 詐欺紛いの手伝いをされるのは些か癪な部分もあるが、正規の作家や役者を雇わずに守秘義務の強いローレットに頼み込んで来る時点で相当追い込まれてるのも伺える。
「どうせなら、ボク達もウィリアムさんの仕事に肖って役者としてデビューするのも一つの手立てなのです!」
 ローレットで働いていると役者として陽の当たる機会なんて滅多に無いですし。何処か寂しげにそう呟いた15歳の少女、ユーリカ・ユリカであった。

GMコメント

 期待はあらゆる苦悩の元。
 どうか、一つ。恵まれない我らにお目こぼしを。

■成功条件
1.「演劇にて観客から好評を得る事」
 好評を得るには下記の情報を参考に、それぞれの派閥が好む演技をワンシーンずつ挟むか、演技の方向性を全て一貫させた尖鋭的な演出をする必要があります。

■人物
ウィリアム:
 若い青年。商人の出自らしく、他人をやり込む口だけは巧かった様だ。
 しかし膨れ上がる名声の維持を出来なくなって、ローレットに駆け込んで来た。
 なお、ウィリアムという名前はペンネーム。

観客:
 様々な貴族が入り乱れていますが、おおよその傾向は三種に別けられます。

『男性貴族』
 男性を筆頭にした派閥です。
 彼らはとにかく派手で華美な演出を好みます。
 例えば演技を大袈裟にしたり、或いは攻撃スキルでダメージ値が大きい値を出すなど、それらの演出が派手で華美と認識されます。

『女性貴族』
 女性を筆頭にした派閥です。
 彼女達は、穏やかなで清楚なものを好む性質にある様です。
 誠実な言葉で演技をしたり、回復スキルを効果的に使ったりするなど、それらが穏やかで清楚な演出と認識されます。

『年少貴族』
 世間や汚れた事を知らず、夢や希望に満ち溢れた世代です。
 彼らは冒険心に満ち溢れた、あるいは分かり易い勧善懲悪を好む様です。
 話の流れを正義が勝ち悪を打ち砕く様なものにしたり、各々の珍しいギフトを効果的に使ったりすれば興味を惹けるかもしれません。

■形式
 下記の情報を元に演劇が行われます。

『シーン1』王宮
 王宮には様々な役職が入り乱れますが、このシーンでは王様の役とそれに対面する役の二人宛てがわれます。
 話の内容の殆どはイレギュラーズに任せられますが、シーン3で剣闘試合が行われる様に話を作らねばなりません。

 このシーンは会話が主軸で、話術や演技に関わる非戦スキルが大きな役に立つでしょう。
 また、それ以外のスキルも使い方次第です。

『シーン2』社交界
 社交界の中、貴族や従者などの役柄二人がシーン1の剣闘試合の事を聞き及んで、自分の知り合い・配下を参加させる流れとなります。
 会話や演技の内容はイレギュラーズに任せられます。
 このシーンではある程度様々な物品が用意出来、ギフトを見せ合う環境に事欠かないかと思われます。

『シーン3』コロシアム
 騎士(戦士)役二人が、シーン1とシーン2の理由から剣闘試合を行うシーンです。
 怪我をしない様に模擬刀などが与えられますが、殺傷能力を持った武器で戦う事も可能です。
 殺傷能力を持った武器を使った演舞となるならば物珍しいゆえ観客の興味を惹くならば非常に効果的ですが、下手を打てば重傷を負う可能性はあるので気をつけねばなりません。
 どちらかが戦闘不能になった場合、観客全員が大きく盛り上げるか盛り下げるかは前後の流れ次第です。諸刃の手段。
 この場面では戦闘に関わるアクティブスキルとパッシブスキルが役立つと思われます。

 規定は上記6人ですが人数が7~8人の場合、ワイルドカードとしてどの場面でも自由に組み込めるでしょう。または、それらの枠を使ってイレギュラーズの判断でシーンを増やしても構いません。
 なお、ユーリカはどうしても女性役が必要だと判断した場合に組み込める事は出来ますが、彼女は演技が得意という訳ではありません。

  • 虚栄の戯曲家完了
  • GM名稗田 ケロ子
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年03月12日 21時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヨタカ・アストラルノヴァ(p3p000155)
楔断ちし者
シグ・ローデッド(p3p000483)
艦斬り
ジェームズ・バーンド・ワイズマン(p3p000523)
F●●kin'Hot!!!!!
アレフ(p3p000794)
純なる気配
スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
純白の聖乙女
クローネ・グラウヴォルケ(p3p002573)
幻灯グレイ
マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)
戦支柱
木枯 寒太郎(p3p004565)
特異運命座標

リプレイ

●輝くもの必ずしも金ならず
「……まったく、頭の痛い話だ」
 劇が始まり、照明が灯された。
 舞台には王族らしい華美な衣装を身に纏った王――『堕ちた光』アレフ(p3p000794)――が玉座に座り、眉間を抑えていた。
 傍らには、王女らしく青と白と基調にしたドレスで着飾ったハーモニアの少女が控えている。王女『サイネリア』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)だ。
 戯曲の最中は観客は静かにするのが常である。しかし、彼らをひと目見て観客達は小さくザワついた。
 何も、不相応な役者が出てきたと驚いた訳ではない。むしろ逆である。彼らの立ち振る舞いは、その役どころに相応しい一種のカリスマ性を帯びている。まるで、背筋にゾッとするモノを感じる様な……。

 何処の役者さんかしら? 嗚呼、あの目鼻立ち……見て。今、私を見てくださったわ。
 あの女は、きっと貴族の生まれに違いない。名は何と申すか知っておるか?

 観客の貴族達が口々に話し合う。雇い主の貴族と共に鑑賞していたウィリアムは「掴みは上々」とほくそ笑んだ。
 反面、当の役者達にとっては心穏やかでない事もある。原因は彼らに注がれる好奇の目……妙齢の男女の貴族からは卑しい視線が入り混じっているのもヒシヒシと感じた。幼い子供達が、憧憬の眼差しで自分達を見ているのが反比例して尚更だ。
 出来る限り穏やかに立ち振る舞っていようとしてたスティアだが、少し嫌なモノを感じて息を呑む。
 アレフは、溜飲を下げる様に息を吐いた。
 王は吟遊詩人が謁見に来たと聞いた様子で、その沈鬱な表情は一旦鳴りを潜める。
 仮面を付けた吟遊詩人の男が舞台の袖から現れて、観客達の視線は彼にも注がれる。吟遊詩人役である彼の名は、『蒼焔のVirtuose』ヨタカ・アストラルノヴァ(p3p000155) だ。
 彼もまた様々な好気の目が向けられるが、彼はそれらが何でもない風に演技を続け、王の前に傅いた。
「そなたのリュートの音色は世界の理を奏でるかの様な物と聞く。此度耳にしてみたくてな」
 重く威厳の籠もった、しかし透き通る様な声色を吟遊詩人に向けた。
 それに合わせてスティアもスカートの裾をつまみ、優雅に一礼を述べようとする。
「本日は父のためにご足労、あ。ありがとうございます」
 スティアの第一声が、思わず上擦った。それはやはり、観客達の多くの視線に寄る所が大きい。
 観客席からクスクスと小さく音が鳴ったが、すかさずアレフが言葉を発する。
「――おもてをあげよ」
 彼が言葉にした途端、観客席すらもしんと静まり返った。この王の声には、それだけの力があるのだろう。
 顔を上げた吟遊詩人が、言葉にする。
「この度は王宮への招待、誠にありがとうございます……表情が曇っておりますが、如何なされたのでしょうか?」
 吟遊詩人の言葉に王女は少々驚いた仕草を見せ、王は興味を示した様に言葉を返した。
「ほう、解るか? そなたは人の心の音さえ、その耳に届くのやも知れぬ」
 恭しく頷く吟遊詩人。それを受けて、王もまた沈鬱な表情に戻って悩みを吐露し始めた。
「……今、この国は貴族達が大きな二つの派閥に別れておる。貴族の義務を果たそうとする者。そして自らの利権をうまく活用しようとする者達だ。だが……最近、その争いが活発でな。余は何を為すべきか、それを考えていたのだよ」
 王と共に、悩ましげな顔色をする王女。吟遊詩人は王の言葉を聞き終えた後、彼は丁重に言葉を返す。
「私が異国の地で見た事をお話致しましょう」

 そうして、携えていたリュートを持ち替えて弾き初める。その甘美な音に加えて、物語りを始めた。
 とある国王の家臣達は、民衆の声を聞く者と自身を肥す者、両者はいつも対立しておりました。
 反発し合う家臣達に国は傾き、国王も頭を痛めていました。
 それを心配に思った王の側近は良い事を思いつきました。
 家臣達の力ある部下が決闘をし、負けた方が身を引く事。国の為、国王の為に此処に居るのならば力と力でそれを示してみよと……。

 観客達は、そのリュートの演奏に聞き惚れる。その音色はゆっくりとしたものであるのに、感情が沸き立つ様な代物だ。
 演奏が終わり静まり返ったステージ。
「まあ素敵な歌だわ」
 王女の賞賛を受けて吟遊詩人が礼儀正しくが傅くと、一拍置いて彼は笑みを浮かべながら独り言の様に呟いた。
「おや、今のこの国と同じ状態ではございませんか。面白い事もあるものだ」
 王は何事か考えた様に固く目を瞑り押し黙る。
「私も興味があります」
 王女がその眼を爛々と輝かせながら王にねだった。暫くして、王は目を開く。
「良かろう! そなたの言、確かにこの王が聞き届けたり!」
 王は大仰に腕を振るい、観客席へと視線を向ける。
「これより、触れを出せ! 我が名にて各派閥より代表者を決め、御前試合を行う事を宣言する!」
 王女は、その言葉を聞いて上品に笑う。そうして、彼女は吟遊詩人に感謝を表した。
「……感謝するぞ。吟遊詩人」
 王も続け、言葉を述べる。
「いいえ、私はなにもしておりません。歌をお贈りしたまでですので……」
 吟遊詩人は、ステージの照明が消えて場面が切り分けられる「暗転幕」までが傅いていた。

 次の場面が始まるまでに、貴族達は声を潜めながら感想を言い合った。この手の芸術には付き物で賛否両論。ウィリアムは針の筵に立たされている様な気分である。
 思わず隣に居る貴族の顔色を伺う。お抱えの貴族の面持ちは――満悦といった様子であった。今の場面がえらく、気に入った様だ。
「どうしたウィリアム。王女様が初々しいのを気にしてるのか? お主の魂胆通り、あれも演技の一つだろう。容姿や声の雰囲気に似合い、なかなか愛嬌があるものだ。他の観客を見ろ。女はその愛嬌に嫉妬し、男ドモは惚れ惚れしている。戯曲は観客の反応も一興。ハハハ……」
 横目に見返されながらそう言われ、ウィリアムは冷や汗を一つ掻いた。

●汝の顔、常に我の如くならん
「私の名前はメーヴィン。この国の二大貴族と呼ばれ、騎士としても名高い父の元に生まれたノブレスオブリージュ。我らは強き者、弱きを守りその責務を果たそう。亡き父のためにも」
 ふと、宵闇の舞台に女性の声が響いた。
 一拍置いてステージの照明が再び灯り、見た目高価そうなテーブルや食器が並べられた場面。どうやら貴族の社交界らしい。
 照らされた舞台に立っていたのは、病的なまでに青白い肌と細い手足を持った少女である。役者は『落ちぶれ吸血鬼』クローネ・グラウヴォルケ(p3p002573)だ。
 彼女のその姿は照明の加減も相俟って、異様に目立った。いいや、映えたという方が正しかろう。
 対面している女性は、先程名乗りを挙げていた女性だろうか。その貴族役は、『桃巫女狐』リアナル・マギサ・メーヴィン(p3p002906)である。
「負けた方が身を引く。よろしいですね?」
 突っかかる様に口にする対面の女性。二人は睨み合っていた。
「……いいわ……どちらが貴族として相応しいか……見せてあげましょう……」
 そう呟いて、ワイングラスに注がれた赤い水を一口。彼女もまた、貴族らしい礼儀作法に富んだ仕草を見せている。その立ち振ち舞いは、そう意識してか何処か悪役然としたものだ。
 対面の女性、メーヴィンは傍に控えていた従者らしき男――『KnowlEdge』シグ・ローデッド(p3p000483)――に目をやる。彼は賛同する様に頷いた。
 ここでまた、一旦場面は切り替わるべく暗転する。
 様々な視線を一身に感じていたクローネは、溜まっていた息を静かに吐き出した。

「短いシーンだな」
 ウィリアムの隣に居る貴族は、少し怪訝そうにした。
「次のシーンで大舞台、という訳か。子供達も期待しているし、これはキミや役者にとっては重圧か?」
 この幕間において言い合われた話は、とかく青白い肌を持った少女の噂で持ち切りだった。

 羨ましいわ。あそこまで白い肌。礼儀も正しく、やはり役者達は何処かの貴族がお忍びで演じているのかしら?
 嗚呼、見たかあの少女の姿を。髪も素肌も、銀色に輝いて見えた。私の妻もあの様に細ければ……。

 その容姿と共に、役者らしからぬ礼儀作法を宿した“演技”は好意的に受け入れられている。道化の様に鼻の下を伸ばしている男性貴族もチラホラ見掛けられる。
 このまま上手く行ってくれよ。ウィリアムは、五指を合わせながら心の内で苦慮した。

●得んとする者は全てなげうつべし
 舞台照明が途切れているというのに、ステージの真ん中に橙赤の炎が灯った。
 人の頭を一回りか二回り大きくした様なガラス球に包まれたそれに、観客の皆が目を惹かれる。
『ご機嫌麗しゅうメーヴィン嬢。陛下の前で膝を付く覚悟はできていらっしゃるかな?』
 劇場に全体に届く様に調律された耳に響く声。直後、舞台を映し出す様にして一斉に照明が灯された。
 ステージに映し出されて真っ先に目に入るのは、機械――いや、奇怪な頭部、ガラス灯を持った異型の人間『“燃えた”男』ジェームズ・バーンド・ワイズマン(p3p000523)である。子供達はその姿だけでも興味深けだ。
 異型の人間は貴族少女の付き人か。それらしい服装や振る舞いもあって尚更そう見える。
 対面には、女性貴族メーヴィン。相手が二人なのに対し、此方は一人にしか見えない。
『一人しか見当たらないが、お付きの従者は逃げ出したかい?』
 ガラス球の付き人が、大袈裟な仕草で挑発する様に言ってのける。嘲笑う彼の言葉の後、すぐメーヴィンの従者が彼女の影から這い出る様に登場した。光源の具合か、はたまた魔術の一つでも上手く使ったのか。
 ともかくとして、「役者は揃った」訳だ。王が小さく手をあげ、決闘の合図を述べた。
「始めよ」
 王の許可が降りるとすぐに、四人は相対する者へと戦いを組み始めた。貴族二人は術式による遠距離攻撃主体、配下二人は剣による近距離戦主体といった具合である。
 意外と目聡い観客達は光の照り返しなどで、従者が持つ刀剣は模造刀である事を把握する。劇なのだから、まぁそれは普通の事であろう。
 皆がそう思って見ているとガラス球の付き人の放ったレイピアの一閃が、従者の肌を掠めた。作り上げられた傷跡からは、薄ら血が滲む。観戦していた王女、いいや、スティアも不安そうに顔を曇らせる。
 血糊を使ってないところを見ると、それはまさしく真剣だった。殺傷能力を持った武器ではないか! それを見抜いた幾らかの観客達は、色めき立った
 前衛後衛の併せた攻防に息をつく間もなく殺陣は行われるが、シグは事前にクイックアップを使っていた御陰であろう。ジェームズの猛攻に合わせてどうにか躱し続ける事が出来た。
「邪なる者よ。……正義に勝てると思うのか?」
 隙を突いた従者の模造刀が付き人の脳天を捉えかけた寸前、何者かが突然割って入って彼の剣を弾き飛ばした。
「何者か!」
 矢をつがえながら、メーヴィンが咄嗟に声にする。割って入ってきた人物は、笠を目深く被った異国の風体。タイミングからして、メーヴィン達の味方でない事は明らかだ。
 刺客役の『特異運命座標』木枯 寒太郎(p3p004565)は、流し目を観客に向けながら紅を塗った唇を軽く歪めて妖艶に笑みを作る。
 刺客の突然の乱入にも、蒼白の貴族少女とその付き人は躊躇う事なく攻撃を続けた。
『おや、主人を守る騎士は一人限りとは決めていなかったと思うが?』
「こんな、卑怯よ!」
 メーヴィンが相手を批難するが、その手が休められる事は無い。
「……狡い……? そうかしら? ……試合の前から既に戦いは始まっていたということよ……」
「ごめんなすって、兄さん方。アタシも仕事なもんでござんしてね、卑怯も正道てぇお話で」
 従者達の攻防をすり抜けて、刺客はメーヴィンへと浴びせ蹴りを食らわせようと飛びかかる。
 それは危うく当たりそうになるものの、弓矢を放り出してまで身を投げ出して咄嗟に避ける。
 好機を見て他の二人が追撃が加えようとしたところで、従者が素早く駆け寄ってメーヴィンを庇う様に牽制して三対二の睨み合いの様相を作り上げた。
「お嬢。……敵が卑怯なる手に出た以上、こちらにも手加減は不要。……聖剣は、いつも貴方の傍に」
 力強く頷く貴族令嬢メーヴィン。彼女が従者へ手を翳した瞬間、彼の身は剣へと成り代わる。
『その輝き、まさか?!』
 ガラス球の付き人は、驚いた様に声をあげた。蒼白の貴族少女も、同じ様に戸惑っている。
 変身のギミックについて子供の貴族達を中心にその様な考察が行われるが、答えを得る前に目の前の劇は進むのである。
 たじろいでいる二人を余所に、刺客が先んじて格闘による殺陣を仕掛けた。
 魔術を込めた剣閃によって宙に火花が散る。刺客も自らの手足を上手く使って、剣先を逸らす。お互いに攻撃を何合か交わしたところで、刺客の方が先程と同じ様に蹴りを食らわせようと派手に飛びかかっていく。
「お嬢、今だ!」
 シグにそう指示され、リアナルは手に持った剣の平な部分を木枯へと叩きつける様に振る。
 剣が触れる寸前、シグは衝術を発動して木枯の身を舞台の端まで弾き飛ばした。
 シグの気遣いもあって無事に受け身を取れた事から、大した怪我をせずに済んだ木枯である。しかしこれは劇。それで意識を失ったかの様にばったりと倒れ伏した。
 観客の子供達は、悪役の刺客を倒した事で喜んでいた。しかし男性貴族達は、手心が加えられたのを見抜いたのか何処か不満そうである。これは演劇であって殺し合いではないのに、観客というのは我儘なものである。
 それらを認識しながら、ジェームズは内心で一計案じながら貴族令嬢を庇う様に再び前へと歩み出た。
 暫くの殺陣を置いて、レイピアの一撃をメーヴィンが払い除ける。そのまま剣撃の一閃を演じようとした。
 ジェームズは目聡い観客の目を眩ませる意味合いも含め、剣撃に合わせて自らに焔式の魔術を喰らわせるのである。有らん限り、派手に燃え盛ろうと。
 血飛沫と悲鳴が上がる代わりに、彼の身から業火が噴出し燃え盛る音が沸き立った。事前に自身の衣服や大道具は耐火素材を仕込んでおいたものの、それでも自身へのダメージは耐え難いものである。
 そうしてそのまま衝術の影響で吹き飛んだ。観客達は唖然とした後、劇中だというのに思わずこれには短い喝采を送る。
『お嬢様……申し訳ありません……』
 壊れかけのラジオの様な機械音で蒼白の貴族少女に向けた声を絞り出しながら、ガラス球の付き人もといジェームズはぐたりとその場に倒れ込んだ。
 クローネは、戸惑いの表情を見せながら急ぎ彼の元に駆け寄った。
「誰か彼を治療して! お願い!」
 スティアは心配そうな顔をしながら高見から駆け足で下り、ジェームズにSPD、回復薬のポーションを傷口に塗布し始めた。
 二人とも真に迫る演技である。――少なくとも、観客にはそう見えた。
 治療を行って何とかジェームズの容態が安定し、スティアと仲間達は安堵した。
 そうして、刺客や他の者達の治療にも移る。
「アタシみてぇな氏素性のわからねぇもんにまで……温情賜り、痛み入りやす」
 メーヴィンは彼の格闘術を称えながらも、卑怯は良くないと蒼白の貴族少女の手を取りながら諭す。
 一連の光景を見定めた王は、言葉を発した。
「素晴らしい試合であった! 勝者を称え、敗者には卿らもまた我が国の大事な民だ。この国をより良くする為に、この私に仕えてくれるか?」
 王の勅を受け、登場人物達が王への礼を取る。
 その後、蒼白の貴族令嬢はメーヴィンに向けた台詞を述べて立ち去っていく。
「……私達の負けね……いいわ……犯罪組織からは一旦、手を引いてあげる……貴方達が正義の貴族だっていうのなら……あの王女様を悲しませない様にしなさい……」
 その言葉は、何処かしらジェームズにも言い含めるものがあった。ジェームズ自身もそれを感じて、木枯に肩を貸されて舞台から立ち去る間、苦笑していた。

 こうして、幕は降りる。
 途端、巻き起こるのは観客達の拍手喝采であった。

●幕外
「それにしても自分に術を放つなんて度胸がありますねぇ、旦那」
「ふふふ。そうでもしなきゃ、あの貴族達は満足しないさ。しかし『敵の為に火を吹く怒りも、加熱し過ぎては自分が火傷する』っては本当だね」
 楽屋で皆と身支度をしながら、軽く言いのけるジェームズ。そうであっても疲弊したのかどうにもガラス球に灯った炎は弱々しい。
「本当に心配したんッスよ……劇で死人が出るとか冗談じゃないッス……」
「……裏から見ていて、燃え尽きるかと思った」
 ジェームズは仲間達の言葉に不敵に笑いながら面目無さそうに仕草を取る。
 ともかくとして、ウィリアムの依頼通り無事に戯曲は終わったのだ。
 皆は一先ず楽屋から立ち去ろうとした。しかし何事か、貴族の何人かがドアに張り付かんばかりにして自分達を待ち構えていたではないか。
「あぁ! 役者さんの人が出てきたわ! 王様、是非ともわたくしと握手をしてくださらないかしら!!」
「わぁ、剣に変身した人だ! ね、ね。もう一回変身してみせてよ!」
「キミ達がウィリアムに雇われた役者か! なぁ、また機会があれば是非とも公演を……」

 どうやら、貴族達の中でも熱心な者達が駆け付けて来た様である。
 イレギュラーズの一人が、その場に混じっていたウィリアムを睨む。
「イイヤ、私は止めたんだがね。彼ら、聞いちゃくれなくて。……はは、どうか“夢”を続けさせてはくれまいか?」
 彼は冷や汗を垂らしながら、弁明を述べた。

成否

成功

MVP

ジェームズ・バーンド・ワイズマン(p3p000523)
F●●kin'Hot!!!!!

状態異常

ジェームズ・バーンド・ワイズマン(p3p000523)[重傷]
F●●kin'Hot!!!!!

あとがき

 稗田 ケロ子です。諸事情により提出が遅れて申し訳ありません。
 判定で所々危うい形になりかけましたが、各々のスキルやギフトによる影響、そしてそれらを使うプレイングでカバー出来た様です。見事。
 特に影響力が大きかった御二人には貴族達の噂の的という体で称号を。身を挺して貢献したジェームズさんにはMVPを。
 描写外の話としては貴族達の熱心なファン、追っかけの様なものが出来たかもしれませんが、少なくともウィリアムの依頼は達成したのでどう対応したか各々のロールプレイにお任せします。

『堕ちた光』アレフ(p3p000794)⇒称号『金色(こんじき)の王』
『“燃えた”男』ジェームズ・バーンド・ワイズマン(p3p000523)⇒称号『ガスライト』

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