シナリオ詳細
ジャック・オ・ランタンとトマトの精
オープニング
◆もともと南瓜ですらないらしいけどね
ここは人間と怪奇が共存する世界。
毎年ハロウィンのこの時期になると各家庭で掘られた南瓜に精霊が憑依して、お菓子を貰いに歩く子供達のランタンとして行動を共にするのが当たり前となっている。
そんな世界のとある町の一つ。誰もいない倉庫でごそごそと蠢く不穏な影。
「おい、準備は出来たか」
「トマ!」
「トマ!」
艶やかに赤く丸いフォルム。ジャック・オ・ランタンのように掘られた顔は実が柔らかすぎて子供が泣きそうだなという潰れた仕上がりになった何か。
「毎年、毎年毎年毎年この時期になると勝ち誇る奴らになり替わり、今年のハロウィンは俺達が主役になるぞ!」
「トマ!」
「トマ!」
ふわりと浮いた白い布の上で赤い頬を更に赤くして吠える声が、表から聞こえてくる子供達の笑い声に紛れて消えた。
◆夏野菜に思われがちだけど秋の方が味はベストだから
「ハロウィンに盛り上がる町にトマトの精が紛れ込んだッス」
表紙から何から真っ白に染まった分厚い本をぱらぱらと開いて、新人を名乗る境界案内人(ホライゾンシーカー)は集まったイレギュラーズへと静かに告げた。
トマト?とオウム返しに問う声にコクリと一つ頷いて。
「この世界には怪奇……精霊とかそういう類が普通に存在するんッスけどね。どうやら野菜も例外じゃないらしくてそれぞれにそういう意志の集合体があるッスよ」
世界はハロウィンまっただ中。本来ならカボチャの精が毎年幅を利かせて勝ち誇っているらしいのだが、今年はそれに不満を抱いていたとある野菜の精が下剋上に乗り出したようだ。
「それが、トマト」
「トマトッス。大きさはカボチャから見れば10分の1程度で、更に小さいミニトマトの精も部下として複数いるッス。強くはないんッスけど、トマトやミニトマトを投げつけて子供達の楽しいハロウィンを台無しにしようとしてるッス」
パタン、と本を閉じた境界案内が漸くイレギュラーズと目線を合わせた。
彼だか彼女だか分からないが、深海のように深い藍の瞳が笑うように細まる。
「アナタ達ならトマトの精を退治して、みんなの楽しいハロウィンを守る事が出来るはずッス。だから、よろしくお願いするッスよ」
- ジャック・オ・ランタンとトマトの精完了
- NM名桃缶
- 種別ライブノベル
- 難易度-
- 冒険終了日時2019年11月13日 22時45分
- 参加人数4/4人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 4 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(4人)
リプレイ
◆カボチャよりもトマト料理の方が遥かに多い
ここは人間と怪奇が共存する世界。
そんな世界のハロウィンで主役の座を得ているカボチャの精に打倒を掲げたトマトの精を退治するのが今回の依頼だ。
「わたしには、わかりませんの……注目を浴びるということは、食べられてしまう危険が高いということですのに、どうして、自分から存在感をアピールなさろうとするんですの!? トマトたちには、生物として大切なことを、思い出していただかなくては、なりませんの……!」
つるんとしたゼラチン質のしっぽ(食材適正)を持つ『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062) が優雅に宙を泳ぎながら拳を握る。
「私はトマトも好きだよ! 毎日トマトジュース飲んでるし!」
目と口の部分をくりぬいたカボチャ頭にマントを付けた姿で登場した『白い稲妻』シエラ・バレスティ(p3p000604)がじゅるりと唾を拭う仕草を見せれば、カボチャ頭に憑依しようとしていたカボチャの精がささーと逃げていく。
「ファントムナイト仕様のトマトってあるんすね。食べられたら一番だったんすけど、それが無理なら倒すっすよー」
熟したトマトを投げつけられて汚れることを危惧した『他造宝石』ジル・チタニイット(p3p000943) は今年用意したキョンシーの衣装を持参していた。
同じくタオルや着替えを用意してきた『付与の魔術師』回言 世界(p3p007315)。
「まあなんだ……カボチャ一色になるイベントに関して、確かに他の野菜としては面白くない所があるのかもしれん……。だが、イベントを楽しんでる人たちに迷惑を掛ける必要はない筈だ」
境界案内人からの依頼を受けてこの世界に降り立った四人は、事前の情報通りトマトの精が隠れているという倉庫の前にやってきていた。
ハロウィンを楽しむ声は後方に遠く響いてはいるが周囲に人影も気配もない。
「悪いがそっちが暴れる気ならこちらも実力行使でいくぞ」
世界の言葉と共にそれぞれ戦闘態勢に入った四人の前で倉庫の扉が勢いよく開き、今まさに町中に突撃しようとしていたトマトの精たちが躍り出てきた。
◆トマトは食べ物です良い子は投げないでください
「なんだ貴様らは!」
暗闇の中に浮かぶトマトの精が思いがけない敵対者に驚いて威嚇の声を上げる。原理は分からないが言葉と共に動く口から柔らかい中身が飛び出して、纏った白いマントを汚している。
「トマ!」
その周囲を囲むように浮かぶミニトマトの精もまた白いマントを纏っているが、ペンで書かれた顔のどこから声が出ているのかは謎である。
明らかに戦闘態勢を取っている四人に警戒するトマトの精たちだが、ある一点に気づいてハッと表情を変えた。気がした。
「ふはははー! 我こそがカボチャ王! トマト風情が我らカボチャ族に勝てる道理が無かろうー!」
ドンと効果音がつきそうなポーズでその姿を前面に押し出すシエラ。
カボチャを打倒とするトマトの精たちにはそれはまさしく倒すべきラスボスが今目の前に現れたと同じ事。
「く、くそー! やれ!同胞たち! 俺たちの恐ろしさを思い知らせてやるのだ!」
「トマ!」
「トマ!」
「当たらぬ! 当たらぬぞー! へぶっ!?」
次々と投げつけられる青いミニトマトを華麗に回避し距離を詰めるシエラだったが、その内の一つが思いがけずくり抜いたカボチャ頭の穴から飛び込んできた。
それなりの勢いで投げられた青いミニトマトは当たれば結構痛い。
思わず地面を転がるシエラ。
その間にミスティッククロアで魔力を増幅したジルが射程距離へと移動する。
だが仲間が攻撃するよりも先にノリアが両手を広げてその身を晒した。
危険を承知で敢えて隙を見せ、傷つけたくないと、死地に赴くようなことはしてほしくないと訴える。
「皆に、忘れさられているうちに、誰にも食べられてしまう心配のない、とおい場所を探しにゆきましょう」
その為ならば透き通った美しいしっぽに高級天然海塩をかけて、食材になりたいと願うことがどんなに痛ましいかを理解してほしいとまで考えて。
だが、トマトの精たちはその訴えに動揺を見せるも、すぐに攻撃の姿勢を取る。
「俺たちは自らの加護を持つ食材が愛され、主食とされるのならば本望だ!」
投げつけられる青いミニトマト。
ぎゅっと目を閉じたノリアの前に割り込んだ世界がその内の一つをパシリとキャッチする。
「こればかりは価値観の違いだな」
そう言ってキャッチした青いミニトマトをミニトマトの精へと投げ返した。
「トマ!」
それは簡単に回避されてしまったが、思わぬ攻撃に動揺を見せたミニトマトの精に向けて続けざまに持参したトマトを投げつける。
「ああ! もったいない!」
復活したシエラが声を上げるが、畳みかけるように攻撃を開始するのはジルだ。
「毒トマトになっちゃえーっす!」
投げつけたSPOが宙を泳ぐミニトマトの一体に命中して地面に落ちる。
猛毒に蝕まれたトマトはさすがに食べられないと、シエラは【孤月連斬】で次々とミニトマトの精を打ち倒しカゴに回収していく。
「た、食べるんですか? 食べるんですね!?」
説得が通じないと分かったノリアが思わず自慢のしっぽを隠す。
シエラがじゅるりと唾を拭う仕草に戦慄する横でジルが飛んでくる青いミニトマトを盾でガードしていた。
「ギャー、顔は駄目っす!口に入りそうっすから!」
騒ぎながらもしっかり顔をガードして、攻撃が止んだ隙を見てその後ろから世界がトマトを投げつけミニトマトの精を撃ち落とす。
こんな祭りがあったような? とノリアが首を傾げる先で、気づけば最後の一体となったトマトの精が真っ赤な顔を怒りでさらに真っ赤に染めていた。
「同胞たちをよくも!」
白いマントを振り乱し、熟した美味しそうなトマトを連続で投げつけてくるトマトの精。
ジルが盾を使ってガードするが、ダメージはなくとも飛び散ったトマトが服の端や靴を汚していく。
「あれがボストマト! バレスティ流に調理してくれるわー!!」
勢い良く飛びかかるシエラ。
天敵とも言えるカボチャ頭が迫り、慌てて熟したトマトを向けるトマトの精。
「へぼっ!?」
べちゃり、と音を立ててトマトの潰れる音がした。だらだらと流れ落ちる柔らかな実と種がカボチャ頭を伝って落ちていく。
「うふ、ふふふふふ」
まるでカボチャ頭が赤い涙を流しているような光景は小さい子供ならばちょっとしたトラウマになりそうなホラー感満載だ。
思わずヒィ! と悲鳴を上げたトマトの精に対して両手に武器を持ちながらふらふらと近づくシエラ。
「きっと私たち、仲良くなれるヨ……」
「無理ですごめんなさい!」
全力で謝りながらもトマトを投げつけ接近を阻害するトマトの精に世界とジルがサイドから攻撃を仕掛ける。
「服のシミはあとから頑張って取るっす。……取れる筈っす!」
「どこかの場所ではトマトを投げ合うような祭りとかあるらしいからな、そういうトマトが主役になるものを流行らせればお前たちもデカい顔ができる日ができるだろ」
恐怖の為か乱れ飛ぶトマトの被害を受けながらもトマトの精に二人の攻撃が見舞われる。
まるで魂が抜けるように力を失ったトマトはそのまま地面に落ちて動かなくなった。
◆ハッピーハロウィン
「うぅ、トマトだらけです。しっぽが、トマトまみれになって、まるで、血だらけ幽霊ですけれど……それが、「トマトとのれそれのスープ」として映ってしまったとしたら……食べられてしまいますの!」
「何それ美味しそう!」
「食べないでくださいね!?」
自慢のしっぽがトマトスープで煮込んだゼラチン質のなんちゃら料理のようになったノリアにじっと注がれるシエラの熱い視線。
まあまあと世界が宥めて持参したタオルを渡す横でジルもトマトに汚れた衣装を着替えていく。
トマト退治が終わればお待ちかねのハロウィンタイム。
盛り上がる町中へと繰り出せば、大人も子供もみんな仮装を施してお菓子を配っては仲良く頬張っている。
「トマトにもカボチャにも悪いが……俺にとってハロウィンの主役は菓子なんでな。全力で集めさせてもらう」
「トリックオアトリート、もといトリートオアトリートっすよ!」
ぴょーんぴょーんとキョンシーになりきって輪の中に飛び込んでいくジルの後を追って、3人もそれぞれこの世界の一夜を満喫していった。
成否
成功
状態異常
なし
NMコメント
新人NMの桃缶です。
せっかくのハロウィンなのでハロウィンシナリオをご用意しました。
◆成功条件
トマトの精を退治する
◆エネミー情報
トマトの精×1
艶々と美味しそうな柔らかな実に無理やりナイフを入れたせいでちょっとホラーちっくな顔が出来上がったトマトです
てるてる坊主のような姿で宙に浮いています
ミニトマトに比べれば大きいですが南瓜に比べれば遥かに小さいです
部下に自分を守らせながらトマトを投げつけてきます
攻撃:熟れたトマト(攻撃力はありませんが当たるとべちゃってなります)
ミニトマトの精×8
小さすぎて顔を掘れず、とりあえず油性ペンで顔が描かれたミニトマトです
てるてる坊主のような姿で宙に浮いています
とても小さいので攻撃が当たりにくい反面、当たれば一撃で倒れます
攻撃:まだ青いミニトマト(当たれば地味に痛いです)
どちらも強さでいえばレベル1のイレギュラーズでも十分相手出来る程度です
故に、戦略よりもいかに格好良く戦うかを楽しめるものとなっています
◆場所
ハロウィンで盛り上がる町の中にある人気のない倉庫です
周囲に人影はなく、倉庫から出てきたトマトの精と鉢合わせになりますが人払いの心配はありません
彼はイレギュラーズの姿を見ると襲ってきます
戦闘終了後は町中へ行ってお菓子を貰う事ができるでしょう
以上となります
みなさま、よいハロウィンをお過ごしください
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