PandoraPartyProject

シナリオ詳細

謎肉襲撃

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●領主の館にて
 燭台を手にした使用人が、寝室のドアをノックした。ややぼやけた返答が聞こえてから少しだけ間を置いて、ドアを開ける。
 室内にあるベッドの上では、小太りの男が上半身を起こしたところだった。年の頃は30くらいだろうか。人の良い顔をしている。
 使用人は男に向けて軽く頭を下げた、室内へと踏み出した。ベッドサイドでぴたりと止まりった後は、男へと封書を手渡す。
「緊急のご用件だと隅に記載してありましたので」
「ああ、そうか……」
 男はぼんやりした様子で封書を受け取り、次いで渡されたペーパーナイフで封を切る。そうして中に入っていた紙切れ一枚に目を通し、目を見開いた。
「ついに……にくが……」
「いかがなさいました?」
「……な、なんでもない」
 使用人の問いに男は慌て、手紙をくしゃくしゃに畳む。
「――そうですか。では、おやすみなさいませ」
 男は気付かない。使用人の片眉が上がったことに。
 そしてその夜、屋敷の台所で密やかな会議が行われたことに。

●ローレットにて
「とある領主館で働いている使用人さんたちからの依頼なのです!」
 薄桃色の封筒をぴらぴらと振って、『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)が。
「荷馬車を襲撃して、領主館に到着しないようにして欲しいとのことなのです。大丈夫です、これは悪いことではないのです! というのもですね――」
 ユリーカが、封筒から取り出した便せんに描かれた内容をかいつまんで話す。
 使用人たちが仕えている領主は、決して悪い人ではない。たまに変なものを食べたくなってしまうこと以外は。
 幼少の頃は変な果物を食べて腹を壊し、一週間ほど生死の境を彷徨ったことがあるらしい。隙あらば腹を壊しそうなものを食べようとするから、使用人一同は細心の注意を払ってきたという。
 しかし今回、領主は使用人たちを出し抜いて盗賊くずれの連中に依頼してしまったというのだ。何かよくわからない生物の『生肉』数種類を。
「それと、領主さんが受け取った手紙には輸送ルートについても記載があったそうなのです。使用人さんたちが受け取り時間とルートから割り出したベストな襲撃時間とポイントは『真夜中の草原』とのことなのです!」
 人目もなく、多少は派手に暴れても問題なさそうな場所だ。依頼としては『荷馬車の襲撃』なのだが、そんなことをされたら運び人たちは当然怒り狂って戦闘を仕掛けて来るだろうから、都合が良い。
 生肉を輸送している荷馬車は2台。荷馬車ひとつにつき御者含め4人が乗っているため、合計8人の盗賊くずれを相手にすることになる。
「お手紙には、こう書かれています。『荷馬車襲撃の際、圧倒的な強さを見せつければ彼らは肉を放置して逃げ出す可能性もあると私たちは踏んでいます。なぜなら、彼らは使用人の給与よりも高い前金を受け取っているからです』……だ、そうです。なんだかここ、筆圧が強いですね……」
 ちょっとしんみりしたユリーカは、ぱっと顔を上げる。
「そして、追伸があるのです! 『積み荷は自由にして構いません』とのことなのです! だったら……たとえば、道具を持ち込んでその場で肉を焼いて食べるとか! ……えっと、あの……もちろん、味や健康は保証できないのですが」
 と、ユリーカはそっと小声で付け足した。

GMコメント

謎肉輸送荷馬車を襲って運び人をこてんぱんにするお仕事です。こてんぱん次第で謎肉ゲットのチャンス!

●成功条件
 領主の手に謎肉が渡らないようにすること。

●戦闘時の地形
 真夜中の草原です。障害物などはありません。星がよく見えます。

●敵の情報
 謎肉運び人(元盗賊)×8
 全員が同じ程度の強さです。ボス格の者はいません。
 身軽で素早いですが、耐久力はそれほどありません。
 ナイフを用いた攻撃や、あまり洗練されていない格闘術を使用してきます。
 イレギュラーズが圧倒的な強さを見せれば、我が身かわいさに謎肉を放置して逃げ出すことでしょう。

●謎肉について
 無事に盗賊くずれの連中を追い払えれば、謎肉を入手してあれこれするシーンを描写します。
 謎肉については、プレイングで自由に指定していただいて構いません。見た目や色はもちろん、苦かったり酸っぱかったり、口の中でスパークしてもOKです。肉は複数種類あるので、人それぞれ反応が違っても『別の肉を食べた』ということで。
 その場での調理もご自由に。
※原則、謎肉のアイテム授与はありません。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • 謎肉襲撃完了
  • GM名雨音瑛
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年11月17日 22時25分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アラン・アークライト(p3p000365)
太陽の勇者
フィーゼ・クロイツ(p3p004320)
穿天の魔槍姫
リナリナ(p3p006258)
湖宝 卵丸(p3p006737)
蒼蘭海賊団団長
リウィルディア=エスカ=ノルン(p3p006761)
女神の希望
ルチア・アフラニア(p3p006865)
「Concordia」船長
カイト(p3p007128)
雨夜の映し身
桐神 きり(p3p007718)

リプレイ

●領主と使用人と謎肉と
 冷たい風が、夜の草原を吹き抜けてゆく。赤いポニーテールを風に揺らされるがまま、『斜陽』ルチア・アフラニア(p3p006865)は口を開いた。
「領主の手に謎肉が渡らないようにするために、ここを通る荷馬車を襲う――そういう依頼、だったわね」
 けれど、とルチアは続ける。
「よくもまあ、何の肉かすらよく分からないものに大金を積めたものよね。これもまた、貴族の嗜みなのかもしれないけれど」
「それでも、領主さんを心配する使用人さん達の気持ち、よくわかるから……海の男として卵丸、放っておけないんだからなっ!」
 美少女――ではなく、美少年の『湖賊』湖宝 卵丸(p3p006737)は拳を握りしめた。草原も見ようによっては海だ、本人に海要素がなくとも多分大丈夫。
「……誰も言わないみたいだから、俺が言わせてもらおうか」
 咳払いひとつ、『雨夜の惨劇』カイト(p3p007128)は共に仕事をするイレギュラーズたちを見渡した。
「領主駄目だろ、得体の知れない肉を率先して試したがるとかさ!? しかも盗賊にそういうの依頼するとか!? 冷静に考えろ、普通に考えても駄目だろ!?」
「ですよね、問題は肉ですよね!!」
 と、全力でうなずくのは桐神 きり(p3p007718)。今回集った者たちの中では最も年少者に見えるが、そこはそれイレギュラーズの一人、なかなかにしっかりしているようだ。そう思案したカイトが安堵した様子で息を吐くと、
「楽しみですよね、肉! しっかり確保しましょうね!」
 きりがそんな反応をするものだから、カイトはがっくりと肩を落とした。
「謎肉、だっけ? どんなものかまったく見当もつかないけど、こんな依頼が届くくらいだからロクなモノじゃないのは確かだ。盗賊くずれの運び人もそんなに強くないってことだから、まあ、気楽に行って……無事に終わったら少しくらい食べてもいい、よね?」
 小声で付け足す『星依御子』リウィルディア=エスカ=ノルン(p3p006761)。『黒曜魔弓の魔人』フィーゼ・クロイツ(p3p004320)は、その言葉を聞き逃さなかった。
「そこは問題ないんじゃない? 積み荷の肉は好きにしていいって依頼人たちも手紙で言ってたし」
 元いた世界で食べるものに困った時は、それこそ謎肉のようなものを食べていたというフィーゼだ。今回は謎肉そのものよりも、領主の好むものとしての興味の方が強い。
 つまり、と『おにくにくにく』リナリナ(p3p006258)が剣を掲げた。
「仕事の内容、肉強奪! 何てよい響きの言葉っ!! ……でも領主、ちょっと気の毒」
 肩を落としたリナリナは、次の瞬間勢いよく首を振る。
「いや、悪いの、領主の方! 使用人の目を盗んで買った肉、領主、食べちゃダメらしい! だから、心を鬼にして肉強奪!」
「本当は謎肉が欲しいだけ……ってことはないよね?」
「ちがう!! 卵丸、リナリナの本心指摘する、禁止!!」
 卵丸の問いに、さきほどよりも強く首を振るリナリナ。
「――おっと、おしゃべりはそこまでだ。どうやらおいでなすったようだ。……えっ何みんな肉を食べる気で来たの!?」
 少し遅れたツッコミを交えつつ、カイトは道の向こうを指差した。並の視力であればうっすら視認できるほどの形を、カイトはしっかりと捉えている。
「そのようですね、人数は……4人ずつの二台、情報どおり合計8人です! えっカイトさん肉食べないですか!?」
 馬を駆る者と荷車に乗る者を赤い人型で把握するきりが、驚きの声を上げる。
「……えっ!? ほんとに食べるの!?」
「……えっ!? ほんとに食べないんです!?」
 戸惑う二人を横目に、『勇者の使命』アラン・アークライト(p3p000365)は踏み出した。
「肉を食うかどうか、そして勇者に相応しい仕事かはさておくとして」
 そうして異形の器官蠢く大剣を手に口の端を吊り上げ、
「賊どもボコボコにして肉を奪えやいいんだろ? ――いっちょ、やってやるぜクソ野郎!!」
 星明かりの下、アランは吼えた。

●襲撃
「よし、まずは卵丸に任せて! 行くよ、ドスコイマンモス!」
 卵丸が軽やかに騎乗した生き物が、馬車の行く手を遮る。
「踏みつぶされたくなかったら、その荷物置いていって貰うんだからなっ!」
『ドスコーイ! ドスコーイ!』
「ひいっ、何だ!?」
「わかんねぇ、とにかく避けろ!!」
『ドスコーイ!』
 荷馬車は速度を落とし、ドスコイマンモスの横を抜けてゆく。
「……ええと。ツッコミはいったん放棄して、と。まずは一台、やるか」
 ドスコイマンモスをバイザー越しに眺め、カイト一台の荷馬車、それより少し上に狙いをつけた。
 降り注ぐ凍てつく雨でほとんど停止した馬車目がけて、アランが突撃する。振り回す大剣は荷車を破壊――するのではなく、荒れ狂う風の領域を作り出した。
「さぁ、逃げたほうがいいぜ。謎の肉の前に、お前らの肉が丸焦げになるかもなァ!!!」
 大破した荷車から転がり出てきた者は、ひどく慌てた様子だ。
「ま、丸焦げ!? なんだ、誰だ!?」
「よくわからねぇが、襲われてるのは確かだ! ひとまず応戦して積み荷を護るぞ!」
 出て来た盗賊たちが、手近なところにいたアランへ斬りかかった。
 ため息一つ、歌声を響かせるルチア。アランの傷が瞬く間に癒える。
「無駄よ、そんな攻撃は一切効かないわ」
 無論、その言葉はナイフを振り回す連中に向けられている。
 圧倒的な強さを見せつければ逃走する可能性があるという話だ。しかし彼女いわく自身は「手弱女」。強さを見せつけるのは他の者に任せ、ひたすらに支援をするつもりだ。
 さて、もう一台の馬車は先に襲撃された一台を見遣りながらもどうにか離脱しようとしていた。
「くそっ、こんなの聞いてねぇぞ!」
「聞いていたらどうしていたというのかしら。素直に肉を差し出してくれる?」
 魔弓・黒翼月姫を構えていたフィーゼが呟いた。よろめきながら道を行く馬車、その車輪に狙いを定めて射出する。矢ではなく、黒い雷を纏った赤紫の大槍を。
 そのようなものに貫かれた前輪は当然のごとく大破し、荷車の部分が大きく傾いた。
「もいっちょオマケですよ!」
 全ての力を籠めて放たれるきりの砲が、後輪を破壊する。
 草原に、運び人の怒声と馬の嘶きが響いた。
「これで荷物を運ぶのはほぼほぼ不可能になったわね。それとも、自分達で持って運ぶ?」
 魔弓を構えたまま、フィーゼが問いかける。
「ふざけやがって……そう簡単に渡すかよ! それなりの金がかかってんだからなぁ!」
 幸か不幸か、自分たちがこれから相手にする者がどのような存在なのか、運び人たちはまだ理解していないらしい。
「命と金と、どっちが大事かよく考えて決めるんだよ」
 呆れ顔のリウィルディアは呪いの力を帯びた歌声で出迎える。わずかに怯んだ運び人たちのすぐ前で、地面を割らんばかりの蹴りが叩き込まれた。続けて発生する爆発も含め、リナリナの仕業だ。
「おー! リナリナの肉……じゃなくて領主の肉、寄越せ!!」
「どこから漏れたか知らんが、渡すわけにはいかねぇなぁ! やるぞ、お前たち!」
「おお!」
 抜いたナイフを掲げ、運び人たちはイレギュラーズに襲い掛かった。

●警告
 運び人たちの戦闘能力は、大したことはなかった。
 ただし、彼らが身軽で素早いということを除いての話だが。
 想定より少し長引いている戦闘の中、ルチアは運び人の繰り出した拳を受けた。しかし、防備を固めていたルチアにとって型がなっていないその攻撃はあまり意味を成さない。
「まだ戦うつもり? そっちが疲弊するのが先だと思うけど」
「……くそっ! わけわからねぇ肉より命の方が大事だ、俺は抜けさせてもらうぜ!」
「賢い判断ね。――さて、攻撃はあなたに任せたわ」
 逃げ去る者へと一言だけ告げたルチアは、アランに向き直って声援を送る。
「――だってよ。あっちはああ言ってるが、てめぇはまだやるのか?」
 アランは炎を大剣に纏い、運び人を薙いだ。確かな痛みを与えることはあれど、命までは奪わない一撃だ。腹部を押さえて呻く運び人の肩を、フィーゼの放った槍が穿つ。
「叩きのめされたいのなら、遠慮無く叩きのめしてあげるけど」
「駄目だ、俺らじゃ敵わねぇよ!」
「お、おい!?」
 さらに離脱していく仲間を見て、運び人の一人は慌て始めた。
「おー! 失せろ! 失せろ! お前も、失せろ!」
 空中で一回転、リナリナが轟音とともに地面へと着地する。発生する爆発は既に何度か見せているものだし、一度も命中してはいない。リナリナ自身も、運び人に命中させるつもりは当然、ない。圧倒的な強さを見せつけるのが目的だからだ。
 かといって直撃を喰らえばどうなるかくらい、誰だって予想がつく。運び人のひとりが、ナイフを投げ捨てた。
「お、俺も抜けさせてもらう!!」
「仲間はどんどん逃げていくみたいだよ、君はどうする?」
 自身の傷を癒しながら、リウィルディアは問いかけた。
「へ、へへっ! に、人数が減れば、ひとりあたりが貰える金も増えるからなぁ!」
 そのままナイフを振り回した運び人は、きりの腕へとナイフを突き立てた。きりが倒れた――かと思いきやゾンビさながらの動きで起き上がり、レイピアを振りかぶる。
「肉だぁ……肉を寄越せぇ……!」
 一撃、運び人の二の腕を貫くきり。
「ッ……! おい、こんなんじゃ割にあわねぇぜ! 俺も抜けるからな!」
 そうして残った半分の顔に、不安が滲み始めた。8対8が8対4になっただけではないということを、彼らは本能的に理解したようだ。
 ドスコイマンモスから降りた卵丸は、ジェットパックで草原を滑るように飛行しながらひとりの背後へと回り込んだ。
「あんまり抵抗するようだったら、命は保証できないんだよね……命が惜しかったら、全員今すぐこの場を去るんだぞ!」
 運び人の首元で、ドリルが呻りを上げる。勝てる見込みのない相手にそんなことをされようものなら、僅かに残った闘志は完全に消え去るというものだ。
「ひぇっ!? 去る、去ります!!」
 両手を挙げてそのまま走り去ってゆく運び人を一度だけ見て、カイトはゆっくりと息を吐いた。
「――何でだろうなぁ、お前らの不運は『此処を通ったから』だけじゃねぇ。様々な事象が積み重なって――この『岐路』に辿り着いちまった。さて、『引き返すか』『参列するか』――」
 妙に演技めいた態度でにやりと笑い、魔力を収束させ始めるカイト。
「何にって? ……お前らの不幸で残酷な結末って奴にさ」
 収束しきった魔力はひとつの弾丸となり、一人の運び人の頬をかすめていく。
「今のは警告だ。……次は当たるかどうか、俺にもわからないぞ?」
 数秒の沈黙の後、運び人の一人が口を開いた。
「……どうする」
「そんなん、決まってるだろ」
「だな」
 三人は顔を見合わせ、うなずく。
「「「逃げるぞッ!」」」
 そんなわけで、草原には破壊された荷馬車二つとイレギュラーズ8人が残された。
 もちろん謎肉も。

●肉だけBBQ、生食もあるよ
 破壊した馬車の中を遠慮なしに探ると、個別に包装された肉がごろごろ出て来た。
「何の肉だよ、本当に……冷凍謎肉にして処分するかしねぇと――」
 そう言いかけて包みに手を伸ばしたカイトであったが、包みをといて品定めし始めたルチアを見て動きを止めた。
「美食家のはずの貴族が食べたがる肉よ? 処分するには勿体ないわ。それに……正直、興味があるの。ああ、私はこれにするわ」
 ルチアが手にしたんのは、比較的普通の肉に近いもの。だが、なぜが運ぶたびにぷるんぷるん揺れている。
「それじゃあ私は……」
 赤と紫のマーブル、肉というには心配になるほどの青色をしたもの、一周してむしろ普通の肉にも逐一驚きながら、きりは黒い肉を手にした。
「こ、この真っ黒いやつを食べてみましょうかね! アランさんはどれにします?」
「そうだな……折角だから、俺はこの黄色の斑点があるやつにするか」


 そんなこんなで塩胡椒を振りかけて炙り終えたルチアは、香りだけは高級肉を一口、囓った。
「……どうやら、スパイスという名の文明は勝利できたようね。歯ごたえが、こう……ぶるんぶるんだけど」
「なるほど、では見た目だけならスパイシーっぽいこの黒肉にも期待できますね……はむ……。こ、これはッ!? 甘い、甘いですよ!? まるでフルーツみたいな……!」
 これはこれで美味しいと、夢中になって食べるきりだ。
「こっちも味は悪くねェが……うーん、なんか、色が……うーん……俺も塩とかコショウを持ってくればよかったな」
 ルチアの方を見ながら、アランは加熱した肉を食べ進める。それでも生で食べていたのなら死んでいただろうから、加熱できただけでもよしとして。
「はー、食った食った! ごちそうさま、っと――!?」
 立ち上がり、勇者は青い顔で腹部を押さえた。
「ゆ、勇者としては余計な仕事まで、しちまった気がするな。俺はこれ、で、失礼する、ぜ?」
「お疲れさま、アラン君。……さて、これは期待外れみたいだね」
 アランの異変に気付いてかどうか、リウィルディアは自身が食べた肉に不満そうな視線を向けた。味も問題無く、特段の変化も起きなかったのだ。それなら、と焼いてニ、三口、意識が混濁し始めた。当初の苦みと酸味に慣れて食べ終えた頃には、陶酔に似た感覚がリウィルディアを満たしていた。その不思議な感覚を認識した後、ふらりと倒れ、柔らかな草の上に身体を横たえたのだった。
 今のところ生還者2、犠牲者2。
「あなたもどれか食べてみたら?」
「そうです、カイトさんも食べましょう! なんなら選んであげますよ!」
「いや、その、あの……わかった、わかったから。自分で選ぶから!」
 生還者のルチアときりが笑顔で勧めてくるものだから、カイトは慌てて手近な包みを掴んだ。中には半透明の、肉。肉?
 先ほどの状況を見るに、生でも焼いても駄目なときは駄目。ならばいっそ生で、とカイトは半透明肉を前に口を開いた。
「それでは覚悟して……いただきまブシャア!」
 カイトの口を、透明の水が伝う。歯を立てた瞬間、肉は弾けて水になったのだ。
「謎肉! 謎肉! 謎肉! ナ・ゾ・ニ・ク!!」
 カイトの背後で聞こえる謎肉ソングを歌うのは、リナリナだ。切り分けて串に刺し、火が通るのを待っているらしい。肉自体は普通の食用肉に見えるため、何が謎なのかがむしろ謎、という意味で謎肉だ。リナリナが期待の眼差しを送る中、ポンッと音がして肉が弾けた。
「ぬうぉっ!? 何だコレ、ポップコーンみたいに膨らんだゾッ!! これ、たぶん食べ頃! いただきまーす!!」
 さくっとした食感はまさにポップコーン。しかし味は深みのある肉そのもの、膨らんだ部分にはこれでもかと匂いが閉じ込められているものだから、リナリナは一気に食べ進める。
「ぷはー、ウマイなコレ! 凄すぎるゾッ!」
「そっちのは当たりみたいね。さて、私のは……」
 フィーゼが選んだのは、一言で言えば『腐った肉』だ。緑と紫が手を取り合う断面は、腐ってますとアピールしているようなもの。おまけに腐臭と思しき刺激臭まで放っている、というのにフィーゼは躊躇も遠慮も無く口にした。それから咀嚼、数回。
「……見た目と臭いさえ目を瞑れば、普通に美味しいのねこれ。醗酵、というか熟成? させたものなんだろうけど……」
 そこかの世界で似たような食べ物がある、と聞いたことを思い出すフィーゼ。覚えているのはやたら臭いがヤバいということだけで、名前は忘れてしまったのだが。
「ねぇ、これ一口食べてみない? 見た目と臭いがアレだけど、ほんのりした甘味があるから意外に美味しいわよ?」
 ふと思い立って、フィーゼは卵丸に肉を勧めてみた。一瞬尻込みした卵丸だったが、すぐにはっとして差し出された肉を手に取る。
「……べっ、別に卵丸、怖がってなんか、いないんだからなっ!」
 言いつつ、恐る恐る肉を口にする卵丸。直後、少年の顔に満面の笑みが広がった。
「……わぁ、美味しい、美味しいよ、あっ……」
 だがすぐに赤面し、それを誤魔化すようにごそごそと調理を始める。
「お、お礼に卵丸も腕によりをかけたんだぞ……」
 恥ずかしそうに差し出される一皿は、そこらに生えていた大きな葉を皿にした卵丸お手製肉塊料理(銀色に光る球体)だ。
 だというのにフィーゼは怯みもせず受け取り、しかも食べる。
「ありがと、なかなか美味しいわ」
「おかわり、ないのか! 卵丸のマンモでもいいぞ!」
 ポップコーン肉を食べ終えたリナリナが、一番近いところにあった肉に目をつけた。卵丸は慌ててドスコイマンモスを庇うように立つ。
「いや待ってリナリナ、卵丸のドスコイマンモスはお肉じゃないからっ、ほら、あっちにまだ少し肉があるからっ!」

 夜の色が薄れ、朝が顔を見せ始めた頃――草原には、破壊された荷馬車と何かを焼いた跡だけが残されていた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

おつかれさまでした。
肉って本当に美味しいですよね。

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