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シナリオ詳細

<宇宙帝国戦記>戦艦救出作戦

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●『宇宙帝国戦記』 第二巻
 時は宇宙歴119年。
 人類はその生存圏を宇宙へと拡大させていた。
 地球から宇宙へと上がるための軌道エレベーターとオービタルリングを作り、スペースコロニーを建造し、さらには火星のテラフォーミングも完了させ、人類の繁栄は約束されたかに思われていた。
 ――だが、人型機動兵器パンドラを開発した『ネメシス帝国』が地球政府に反乱を起こし、その勢力を拡大。地球圏を除いた太陽系はネメシス帝国の版図となった。
 命運が尽きたかに思われた地球政府であったが、起死回生のP計画により4機の試作型パンドラの開発に成功。帝国の若きエースパイロット、シリウス大佐を撃退するに至った。
 こうして幕を開けた人型機動兵器パンドラを用いた戦争は人類にさらなる混迷をもたらすのだった――。

「艦長、本艦は順調に航行中。これならパンドラ引き渡しを受けるコロニーまで、予定通りに到着するかと」
 漆黒の宇宙を航行する純白の戦艦、地球政府の新造艦であるオリュンポス級戦艦『ゼウス』。そのブリッジでオペレーターの若者が艦長席に向かって報告した。
 その艦長席に座っている人物を見て驚かない軍人はいないだろう。艦長席には10代半ばほどの金髪の少女が座っていたのだ。普通なら子供が勝手に座っていい席ではないとブリッジを追い出されることは間違いない。
 しかし、青いジャケットに同色のフレアスカートという地球政府軍の制服を身に付けた少女の襟元には、軍の少佐の徽章が光っていた。紛うことなく彼女こそがこの艦で最も階級の高い士官にして、艦長なのであった。
 長い髪を人工重力になびかせた美しい顔立ちの少女は、青い瞳でブリッジ内を見回し、鈴の鳴るような可憐な声で告げる。
「ご苦労さまです、皆さん。あと一息ですが、くれぐれも油断しないようにしてください」
 少女の名は、リュラ・プレアデス。わずが16歳ながらも、その優れた戦術指揮能力でネメシス帝国のパンドラと互角に渡り合ってきた歴戦の艦長であった。
 現在、彼女は新造艦『ゼウス』の艦長として極秘任務を遂行中だ。それは地球政府が開発に成功した4機のパンドラの引き渡しを受け、その実戦投入をおこなうことである。
 戦艦『ゼウス』と4機のパンドラこそ、地球政府がネメシスに対抗するための希望の星なのだ。

「さて、そろそろ……でしょうか」
 リュラが呟くのと同時に、ブリッジに警報が鳴り響く。
「艦長!」
「わかっています。ネメシスのパンドラ部隊が警戒網にかかったのですね。数は10体程度といったところでしょうか。おそらくはシリウス大佐がこちらの動きを読んで配置した部隊ですね」
 オペレーターが状況を伝える前に、リュラがスラスラと状況を解説する。
 これから報告しようとしていたデータと寸分違わぬリュラの言葉に、オペレーターが絶句する。
「ええ、私がシリウス大佐の立場なら同じことをしますから、予想は難しくありません。――であれば、対策を打つことも簡単です」
「ということは、先程、研究所に向けて送った通信は……」
 リュラは、クルーを安心させるような柔らかな声音で優しく告げる。
「ええ、すでに研究所には4機のパンドラを援軍に送ってもらうように連絡をしてあります。援軍到達まであと10分。私たちは、その間だけ敵の攻撃を持ちこたえます。総員、第一種警戒態勢についてください」
「了解です、艦長!」
 警報で混乱しかけていたクルーたちが冷静さを取り戻し、対空砲や迎撃ミサイルの用意を始めた。
 そのクルーたちの動きを見て、リュラは冷静な表情のまま内心で呟いた。
(最善は尽くしましたが、ネメシスのパンドラ相手に持ちこたえられるかは五分五分ですね……。あとは4機のパンドラに希望を託すしかありません)

 こうして、戦艦『ゼウス』の決死の防衛戦が始まるのだった。

●境界図書館
「やあ、みんな。よく集まってくれたね。今回、救って欲しい物語はこの本なんだ」
 境界図書館に集まったイレギュラーズたちに、『ホライゾン・シーカー』を名乗るカストル・ジェミニが『宇宙帝国戦記』というタイトルの本を持って声をかけた。
「この本の世界――宇宙歴世界では、悪の帝国ネメシスが地球という惑星の政府を武力侵略していてね。ネメシスが開発した人型機動兵器パンドラに対抗して、地球政府も4機の試作型パンドラを作って対抗を始めたところなんだ」
 だが、それはまだ小さな反抗の狼煙に過ぎない、とカストルは言う。
 このままでは、ネメシス帝国の圧倒的な兵力の前に希望の火が消されてしまうと。
「特に鍵を握るのが、この戦艦『ゼウス』の艦長の女の子。リュラ・プレアデスさ。彼女と戦艦『ゼウス』は、地球政府がネメシスに対抗するのに必要不可欠な存在。だけど、このままじゃ――」
 奮戦虚しく、リュラと『ゼウス』は星の海に沈んでしまうのだという。
「そこでみんなには、この本の中に入って『ゼウス』の救援に向かう4機の試作型パンドラのパイロット――この本の主人公になってもらいたいんだ。みんなが主人公になれば、きっとリュラと『ゼウス』を救うことができるはずさ」
 本に入れば、主人公補正として人型機動兵器パンドラの操縦方法が自然と頭にはいってくる。
 また、本に入る時にイメージした機体に乗ることになるのだという。そのためにも、きちんと機体の外見や装備、性能をイメージしておく必要がある。
「本に入ると、すでに援軍として『ゼウス』の近くまで到着したところから物語が始まるよ。ただ、『ゼウス』はネメシス帝国のパンドラ10機くらいに包囲されて攻撃を受けているんだ。そう簡単には沈まないけど、急いで敵パンドラを倒した方がいいね」
 『ゼウス』を攻撃しているのは、近接型装備と砲撃型装備の『ヴェルデ』という量産型パンドラだ。名のあるパイロットは乗っていないので、一体一体は大して強くないが、数が多いことが厄介だ。
 効率よく敵を排除していったり、戦艦を守る盾になるなどの行動で、『ゼウス』を守り抜く必要があるだろう。
「あ、そうそう。『ゼウス』の艦長のリュラちゃんだけど、すっごく美少女だから、ぜひ助けてあげてほしいな。彼女を助けるのは、みんなにしかできないことなんだ。頼んだよ」
 そう言うとカストルが持つ本が光を放ち、イレギュラーズたちが吸い込まれていくのだった。

NMコメント

 オープニングをご覧いただき、どうもありがとうございます。ノベルマスターの草薙大神です。
 本ライブノベルの内容を一言で説明しますと、『SF世界で巨大ロボットに乗って、帝国軍の巨大ロボットに襲われている美少女を助けよう』です。要は機動な戦士の世界観のようなものだと思ってください。ちょこっと機動な戦艦も入ってますが。
 皆様には、本の中に入ってパンドラというロボットのパイロットになっていただきます。そして主人公として、美少女ヒロインを助けてください!
 リプレイの雰囲気やサンプルアクションは、前作『パンドラ大地に立つ』もご参考にしてください。

 なお、判定はライブノベルのルールに従ったものになりますのでご注意ください。つまり、判定には戦闘ルールは適用されず基本的に成功となり、プレイングで記述いただいた内容を最大限反映できるようにリプレイを執筆させていただきます。クラスやスキル、戦闘ルールなどは気にせず、『こういう風に活躍したい』という内容に力を入れて確定でプレイングを書いていただいて大丈夫です。
 また、本ライブノベル特有のルールとして、皆様が乗るパンドラ(基本は全高20メートル程度の人型兵器)をプレイングで自由に設定していただけます。後述のサンプルを参考に、かっこいいパンドラを設定してみてください。全力でかっこよく描写させていただきます。
 それでは、どうぞよろしくお願いします。

【サンプルプレイング1:兵士A】
機体名:ヴェルデ(近接型)
コンセプト:近距離での対艦戦を想定した装備をした量産型パンドラ。
デザイン:目立った特徴を持たない量産型の機体。頭部カメラはモノアイ。
機体カラー:緑
機体特性:バランス型
戦法:機動力で戦艦の対空砲火をかいくぐり、バズーカとヒートアックスで船体を破壊する。
武装:バズーカ、ヒートアックス、シールド、手榴弾、バルカン
「ここで敵艦を落として俺も出世してみせる!」
敵艦の対空砲は機動力を生かして回避。ミサイルはバルカンで迎撃する。
多少の攻撃では、この『ヴェルデ』のシールドは破れない!
バズーカを撃ちながら接近して、船体にヒートアックスを叩き込む!
「ブリッジさえ潰しちまえば俺達の勝ちだ!」

【サンプルプレイング2:兵士B】
機体名:ヴェルデ(砲撃型)
コンセプト:遠距離からの対艦戦を想定した装備をした量産型パンドラ。
デザイン:背面に砲撃専用ユニットを装備した量産型の機体。頭部カメラはモノアイ。
機体カラー:緑
機体特性:重砲撃型(武装は多いが、装甲は薄く機動力も低い)
戦法:戦艦から距離を取って、ミサイルやロケットランチャー、榴弾砲といった遠距離砲撃で戦艦を破壊する。
武装(機体によって装備している兵装は異なる):ロケットランチャー、ミサイルランチャー、榴弾砲、ヒートアックス、バルカン
「砲撃機各機は散開して敵艦を包囲後、砲撃開始!」
敵艦に近づいて砲台の注意を引くのは近接部隊に任せて、俺達砲撃部隊は散開して遠距離から敵艦に砲撃を叩き込む。
遠距離ミサイルやロケットランチャー、榴弾砲といった遠距離兵器で敵艦の装甲を削っていく。
「砲撃部隊で包囲してるから、どの方向に逃げても無駄だ!」

【サンプルプレイング3:リュラ】
機体名:オリュンポス級戦艦『ゼウス』
コンセプト:試作型パンドラ試験運用艦
デザイン:左右両舷が前方に張り出した形状をした戦艦。両舷部はパンドラの発進カタパルトになっている。ブリッジは戦艦中央上部。
カラーリング:白を基調として、赤と青でアクセントが入っている
機体特性:重砲撃型戦艦(主砲は調整中のため使用不可)
武装:対空ミサイル、対空砲、閃光弾、主砲(使用不可)
「味方の援軍が来るまで、何としてももたせてみせます」
この数のパンドラが相手では、正面からの戦闘は無理ですね。
味方のパンドラが来るまで耐え抜くことだけを考えましょう。
「1番から10番発射筒までミサイル発射。5秒後に閃光弾を撃ってください。それから11番から20番発射筒一斉射。開けた穴から包囲を突破します」

  • <宇宙帝国戦記>戦艦救出作戦完了
  • NM名草薙大神
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2019年11月11日 22時25分
  • 参加人数4/4人
  • 相談4日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ノリア・ソーリア(p3p000062)
半透明の人魚
レオン・カルラ(p3p000250)
名無しの人形師と
シャスラ(p3p003217)
電ノ悪神
新道 風牙(p3p005012)
よをつむぐもの

リプレイ


「艦長、本艦右舷に被弾!」
「迎撃ミサイルを発射。対空砲はパターンBで自動射撃をお願いします」
 漆黒の宇宙を駆ける純白の艦。地球政府の新造戦艦『ゼウス』のブリッジで、若干16歳の艦長リュラ・プレアデスが冷静に指示を出す。
 今、『ゼウス』を襲っているのは、地球政府と対立するネメシス帝国が開発した人型機動兵器パンドラの部隊である。
「本艦側面より敵ミサイル多数! 迎撃、間に合いません!」
「――! 総員、ショックに備えてください!」
 リュラが目をつぶり艦長席で身を固くするが――。

 『ゼウス』にミサイルの衝撃が響くことはなかった。敵のミサイルは『ゼウス』に到達する前に爆発していたのだ。
「皆様、ご無事でしょうか?」
 ミサイル群から『ゼウス』を守ったのは、『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)が乗る純白のパンドラ『ベラタ』だった。『ベラタ』の下半身に足はなく、長い尾のようなものが垂れ下がった構造をしている。まるで人魚であるノリアの姿を模したかのような機体。その尾の部分は反応装甲を纏った防御幕となっていて非常に高い防御力を有していた。
 『ゼウス』の側面に飛び込んだ『ベラタ』は、敵ミサイルに向かって尾を展開。ミサイルを受け止めたのである。ミサイルの直撃を受けた尾は反応装甲によりミサイルの衝撃を相殺し、装甲の一部は弾けたものの尾そのものは無傷であった。
「危険な機体ですが……弱肉強食の中で生き残るために役目を果たしますの」
 『ゼウス』を守るように真空の海を泳ぐ『ベラタ』のコックピットでノリアが呟いた。

「こちら機体名クサナギ、パイロットのフウガ・シンドーからゼウス艦長へ。救援にきた! 安心しろ、もう大丈夫だ!」
 『ゼウス』へと接近する機体から通信が入る。近づいてきたのはスマートで鋭利なフォルムをした白いパンドラ。全身に8本の大型剣を装着した高速型近接戦闘用の機体『クサナギ』である。
 『クサナギ』のパイロットである『帰ってきた牙』新道 風牙(p3p005012)の通信に、『ゼウス』のクルーたちから歓声があがった。艦を守ってくれた『ベラタ』に、通信をくれた『クサナギ』。そしてレーダーには後続の二機のパンドラの反応もある。待ちわびた援軍――4機のパンドラの到着だ。
「こちら『ゼウス』艦長のリュラ少佐です。援軍ありがとうございます。今、みなさんに敵の情報をお送りします」
 リュラは内心で安堵の息を吐きながらも、表面上は毅然とした態度で応じる。まだ戦闘は継続中だ。ブリッジクルーの緊張感を維持するためにも、ここは冷静に対応しなければならない。
 『ゼウス』のオペレーターから、4機のパンドラに周囲の敵情報が送信された。

「こちらは『xh-A/000』、シャスラだ。敵パンドラの情報を受信した。人同士の争いはいつの時代も、どの世界でもあるが……なにかを遂行する意思を消さないために、微力ながら手を貸そう」
 『ゼウス』からの情報を受けて返信したのは、竜を模した頭部に下半身は四脚という神話上の生物ケンタウロスのような機体『xh-A/000』のパイロット『電ノ悪神』シャスラ(p3p003217)である。
 竜兵槍とシールドを構えた銀色と黒色をベースとした機体は、重装甲で鈍重ながらもスラスターによる高速機動を可能にしている。
「足のないパンドラの次は、四脚のパンドラ……!? このようなパンドラ、ネメシスの機体には見たことがありません……」
 『ベラタ』に続いて『xh-A/000』の常識破りの機体形状を見たリュラが絶句する。
 それもそのはず。『ベラタ』が取り外して余った脚部パーツを追加装備することで完成したのが『xh-A/000』なのだ。このような経緯で作成された機体など他にはないだろう。

「みんな遊んでるね、カルラ」
『そうね。私たちも混ぜてもらわなくちゃ、レオン』
 『ゼウス』の前に、真紅の魔女人形のようなパンドラが到着する。円錐形の鍔あり帽子をかぶったような頭部に、その身に纏ったマントが印象的な機体。その名は『プーペイ』だ。通信から聞こえてきた声は、コックピットに座る黒髪の子供『名無しの人形師と』レオン・カルラ(p3p000250)が操る二体の人形、レオンとカルラのもの。名のない子供は黙して語らない。
『さぁ、それじゃあ』
「ああ、星の幕を開けて」
「舞台を始めようか』
 レオンとカルラが楽しそうに声を合わせると、『プーペイ』はその身に纏ったABCマントを大きく翻した。

 ――役者は揃った。ここから地球政府の反撃開始だ。


「これより本艦もパンドラ各機の援護に入ります。左舷、重力アンカー射出! 急速反転!」
「了解しました、艦長!」
 リュラの指示の元、『ゼウス』が重力アンカーを撃ち出す。空間に固定されたアンカーにより戦艦の船尾がスライドし急速回頭。その艦首を帝国のパンドラたちに向けた。
「パンドラ各機へ。本艦のリニアカタパルトを自由にお使いください」

「ありがたい、使わせてもらう」
 シャスラの駆る『xh-A/000』が『ゼウス』前部甲板にある電磁式リニアカタパルトに機体を乗せる。
 リニアカタパルトによる推力を得つつ、射出の瞬間に四脚の脚力で船体を蹴った『xh-A/000』。さらに自身のスラスターも全開にすることで宇宙空間を弾丸の如く飛翔する。目指すは敵陣奥深く。砲撃型の敵パンドラ『ヴェルデ』たちだ。
 『xh-A/000』の急速接近に驚いた『ヴェルデ』がロケットランチャーや榴弾砲を放ってくるが、『xh-A/000』が持つ重装甲のシールドを破ることはできない。
 シャスラの『xh-A/000』はそのまま『ヴェルデ』の一体に突撃し騎兵槍を突き立てる。
 『xh-A/000』は、爆散する『ヴェルデ』の機体を蹴り、また次の獲物へと跳躍していくのだった。

「行くぞクサナギ! オレとお前とで、この戦争を止めるんだ!」
 『xh-A/000』の突撃によって混乱した砲撃型『ヴェルデ』の陣形の中に飛び込んできたのは、リニアカタパルトで一気に距離を詰めた『クサナギ』だ。風牙は日々の鍛錬によって自らの身体に叩き込んだ足さばきと重心移動をパンドラの操縦に応用し、すれ違いざまに大型剣で『ヴェルデ』を一刀両断した。
「コックピットは外しておいた。救援を待て」
 上半身と下半身が泣き別れになった『ヴェルデ』を残し、機体を反転。『クサナギ』は次の敵を目指して加速する。飛来する砲撃は機動力を生かして回避し、8本の大剣――手足に各1本、背中に翼状に4本――を次々と振り回し、『ヴェルデ』たちを戦闘不能にしていく。
 8本の剣で荒れ狂う様子は、『クサナギ』という機体名の由来となった神剣を持っていた怪物を彷彿とさせるものだった。

「敵の遠距離型パンドラの壊滅を確認!」
 『xh-A/000』と『クサナギ』の活躍で遠距離型『ヴェルデ』を撃破したことを伝えるオペレーターだが、次の瞬間に顔色が変わる。
「か、艦長! 敵近接型パンドラがデブリの影から出現! 迎撃、間に合いません!」
「……いえ、みなさんなら、きっとなんとかしてくれます」
 リュラはじっとモニターを見つめる。そこに映るのはバズーカを構える『ヴェルデ』たちの姿。一斉に発射されたバズーカは『ゼウス』に直撃する――その寸前で、白く輝く帯によって守られた。

「ふう、あぶないところでしたの……」
 『ゼウス』を守った『ベラタ』の操縦席でノリアが息を吐く。敵の砲撃を防ぐため、機体の尾に当たる防御幕を間一髪で割り込ませたのだ。
 『ベラタ』の防御幕には多数のスラスターが付いていて自由自在に動かすことができる。その反面、操縦するノリアの負担は大きいものだった。特に爆発反応装甲が飛散する角度まで考慮に入れなければ、反応装甲の破片が『ゼウス』のブリッジに直撃するような事態を引き起こしかねない。そうならないのは、ノリアの卓越した操縦センスと被食者としての覚悟ゆえだろう。
 『ゼウス』を撃沈させるには『ベラタ』が邪魔だと気付いたのか、近接型『ヴェルデ』たちはヒートアックスを構えて『ベラタ』――その上半身に殺到してくる。
「……あっ、機体本体は狙わないでほしいですの……そこは、最大の、弱点ですの!」
 下半身の防御幕こそ無敵の防御性能を持つ『ベラタ』だが、上半身の防御力は低い。
 そこを狙ってヒートアックスを振り下ろしてきた『ヴェルデ』が――蜘蛛の巣に絡まったかのように動きを止めたかと思うと、その『糸』で機体をバラバラにされていた。

「おっと、僕たちを忘れてもらっちゃ困るね。ねえ、カルラ」
『そうね、仲間はずれは寂しいわ、レオン』
 『ヴェルデ』をバラバラにした『糸』――高振動ワイヤーを操っているのは、レオン・カルラの乗る『プーペイ』だ。パペットマスターにして糸使いである彼にとって、高振動ワイヤーを自在に操作するのは朝飯前だ。
 『プーペイ』の操るワイヤーが迫り、『ヴェルデ』たちは逃げるように距離を取った。しかし、一体多数の戦闘を想定して造られた『プーペイ』に死角はない。
 遠隔操作型機動砲台が多方向から『ヴェルデ』たちに襲いかかる。それを必死に避けたり、盾で防いだりする『ヴェルデ』たち。しかし、その行為も無駄に終わる。遠隔操作型小型反射板により反射されたビームが予測不能な方向から『ヴェルデ』たちを貫いていったのだ。
 射撃が止んだ時、そこに敵機は残っていなかった。


「みなさん、救援どうもありがとうございます。本艦のクルーを代表してお礼を申し上げます」
 『ゼウス』からパンドラ各機に向けられた通信で、リュラは深々と頭を下げ、感謝の言葉を送った。
 イレギュラーズたちが間に合っていなければ、リュラと『ゼウス』は星の海の藻屑と消えていたことだろう。
 ――今、確かに歴史が動いたのだった。

成否

成功

状態異常

なし

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