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シナリオ詳細

<YcarnationS>砂上の牢獄

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●砂はなお欲深く
 ラサの大商人オラクルーー『ザントマン』との戦いはイレギュラーズの大勝に終わった。
 だが、新たな『ザントマン』として台頭するかのように現れた魔種『カノン』により、『グリムルート』をつけた幻想種達は次々と姿を消し、彼女の元へと集結しつつあった。
 イレギュラーズ、ラサのディルク派、オラクル派の敗残者、そしてカノン率いる幻想種、魔種、魔物の混成軍。
 数多の思惑を飲み込むかのように、『砂の都』はその口を開けて待っている。

●それは予想外の
 『砂の都』へ向かおうとするイレギュラーズの前に現れたその姿に、一同はーー特に『猫派』錫蘭 ルフナ(p3p004350)の表情は、その気持ちを察するにあまりある。
「僕は正直、とても腹を立てているんだ」
 問わず語りにそんなことを口にした錫蘭 ディンブラ(ルフナの兄だ)に、一同はどこかよそよそしげにへえ、と応じた。
「話は聞いたよ。オラクルも、今回の魔種も幻想種なんだろう? とんでもない話だ。僕のところから奪っていった子達が助かる前にやらかすなんて、輪をかけて許せない」
 彼が『その主犯がカノン・フル・フォーレである』と聞いたらどんな顔をするやら。いいか、教えるなよ。
「そんなわけだから、多分僕のところの子も助けなきゃいけない。持ってるんでしょ、情報。さっさと助けに行こう」
 イレギュラーズが握手のために手を差し伸べれば、多分……幻想種以外なら鼻で笑って取り合わないだろう。
 そういう人物なのだ。
 なお、余談だが。
 隊列後方に居た『蒼ノ鶫』ドロッセル=グリュンバウム(p3n000119)は訳もわからず、「きょうだいは仲良しが一番ですよね」とか、ほざいていたとか。

●砂牢の囚人
「あ……あれって……その」
 重ねて余談だが、ドロッセルは初陣である。あと、箱入り娘だ。
 故に、魔物というものの知識が浅く。目の前に現れた砂の魔物の威容に怯えていたようにも見えた。
 だが、違う。彼女の指さした先には、幻想種の顔が露出していたのだ。
「なんて酷いことを。同じ幻想種のやることかい?!」
 ディンブラは、同じ里の子供ではないにしろ、流石に看過出来なかった様子だった。
 本題は、続けて出てきた彼の里の住人達なのだが……。

GMコメント

 そういう人なんだと思います。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●成功条件
 幻想種すべての戦闘不能(不殺なしでも、戦闘不能後の追撃がなきゃ死にません)
 『幻想の砂鎧』全撃破

●幻想種×5
 ディンブラの里から連れ去られた幻想種。全員『グリムルート』着用。グリムルートを壊しても戦闘不能まで戦います(弱体化はします)。
 物理スキルに耐性(防無、弱点物理スキル→防技半減で判定、通常物理スキルは防技1.5倍判定)
 神秘による回復、レンジ2〜4(範、扇、単)攻撃がメイン。窒息系、喪失持ちスキルを使用。
 レンジ2以内で連続5ターン以上戦闘した場合、狂気の呼び声の対象になるおそれがあります。

●幻想の砂鎧×3
 幻想種を包んだ大柄な砂のゴーレム。体高2.3mほど。HPと防技高め。
 撃破時、幻想種は無傷で救出可。
 ディンブラの里の子ではない。
・ダブルラリアット(物至範:暗闇、不運)
・サンドバインド(物中単、足止め系BS)
・その他、主に接近戦重視。

● 錫蘭 ディンブラ
 『猫派』錫蘭 ルフナ(p3p004350)さんの兄。詳しくは『ユリーカ・レポート(ザントマン編)』をご参照ください。
 遠距離攻撃と中程度の回復スキルが使えます。
 幻想種以外あまり興味ありませんが、利害が一致しているので協力してくれるでしょう。

● 『蒼ノ鶫』ドロッセル=グリュンバウム
 友軍です。
 ルーキーですが、通常レンジ2のスリングショット(水着ではない)などで支援に回ります。プレイングに指示があれば対応します。

●戦場
 『砂の都』外縁部西。
 比較的遺跡が露出しており、砂に足を取られることはありません。

 面倒なのもまた一興。
 よろしくお願いします。

  • <YcarnationS>砂上の牢獄完了
  • GM名ふみの
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年11月04日 22時40分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)
安寧を願う者
リリー・シャルラハ(p3p000955)
自在の名手
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
錫蘭 ルフナ(p3p004350)
澱の森の仔
フラン・ヴィラネル(p3p006816)
ノームの愛娘
雪村 沙月(p3p007273)
月下美人
エルス・ティーネ(p3p007325)
祝福(グリュック)
ルミナ(p3p007640)

リプレイ

●信念と矜持
「ディン兄、猫みたいに神出鬼没だね……うん、別にいいんだけどさ」
「里の子達を助けるのが目的だからね。ルフナくんが危ない目に自分から遭いにいくのはちょっと、理解できないし信じられないけど」
 『猫派』錫蘭 ルフナ(p3p004350)の呆れたような声は、兄であるディンブラに向けて。ディンブラはその皮肉を分かっていながら構わない、と鷹揚に頷いてみせた。器が大きいというよりは、単純に弟との再会を喜んでいるだけかもしれない。
「ディンブラさんの里の子をさらうなんて許せない! 許さない! 絶対助けるよ!」
「砂の都にて遺跡探索ならば浪漫があったのでしょうが……」
 『繋ぐ命』フラン・ヴィラネル(p3p006816)は強い憤りに拳を震わせ、『ほのあかり』クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)はこの状況が、おおよそ『砂の都』に訪れるのには最悪のシチュエーションであることに顔を伏せ肩を落とす。
 歴史ある建造物、その残骸へと足を踏み入れるのが、探求の為ではなく各々の怒りと想いをぶつける闘争の場であるということ。それは、酷くむなしいものだ。
「んー……こんなところでまちうけるんだから、なにかねらってるのかな? ここにしかいないいきものをつかう、とか。すながほしい、とか」
「拐った幻想種にその目的の為の番兵をやらせるだなんて、悪趣味ですこと……」
 『小さな騎兵』リトル・リリー(p3p000955)の素朴な疑問に、『祈る暴走特急』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)は困った話だとばかりに手を振って応じる。あまり考えたくない、とか。理解の範疇外である、そう言うように。だが、そうはいっても両者はそれなり以上に賢しい者等である。考えうる限りの最悪が目の前に現れることを重々承知していた。
「ご兄弟が揃ったのに、そのうえで……その、厄介事を起こす? のですか?」
「厄介事を起こしたのはあちらが先、ということでしょうね。相手を殺しにいけないとなると難しいでしょうか」
 状況理解がいまひとつ十分でないドロッセルは、ルミナ(p3p007640)から指摘を受け、なるほど? と分かっているようないないような、浮ついた返答をした。初陣の少女は今までの騒ぎを知らぬはずもなかろうが、話のつながりを今ひとつ理解していないように見える。
「ドロッセルさんは私たちと一緒に、幻想種への対処と味方への回復をお願いします」
「戦えなくなった幻想種が居たら、安全な所へ運んでね!」
 クラリーチェとフランは、そんな彼女をフォローするように明確な指針を伝えた。それでやっと、ドロッセルは当を得たような表情になった。なったが、直後にその表情が凍りつく。
 見た。見てしまったのだ、『それ』を。
「幻想種を核にゴーレムですか……なんと酷いことをするのでしょう」
 『九月の舞姫』雪村 沙月(p3p007273)は愕然とした表情でそれを見た。人の悪意というやつを承知している彼女であっても、そうも容易く人の業を見せつけられれば動揺だってする。幻想種を核として取り込んだ砂の魔物。ディンブラの里に現れた類の敵とはまた違うが、悪意のほどが段違いだ。
「連れ去られた上にこうして倒れるまで戦わされるなんて……絶対救い出してあげましょ!」
「余所者の言葉に何の重みも感じないけどね。あれは酷く許されないものだ」
 『氷結』Erstine・Winstein(p3p007325)は砂の鎧を睨みつけ、油断なく周囲から現れた幻想種達を見る。ディンブラは周囲の彼ら彼女らが里の子らであることを見て取り、嫌悪を隠しもしない。
「ぱぱっと倒して、お家に帰してあげましょう! 倒して引っ張り戻して帰す! シンプルでいいですわー!」
 ヴァレーリヤの発想というか論調というか、実に彼女らしさに溢れた言葉は、しかしイレギュラーズ達にはとても好評である模様。
「少々手荒な方法になってしまうのが心苦しいですが。長引かせることなく済ませるべく、最善を尽くしましょう」
「うん……リリーもがんばる」
「望まずして連れ出されるなんて全く笑えないしね。あ、僕は外に出ることを選んだ側だからね、ディン兄目が怖い」
 クラリーチェとリリーも言葉こそ違えど好戦的なノリで得物を構え、ルフナも『望まれない出奔』を回避すべく、最優先で幻想種を倒すことを決意する。
 ……そんなルフナをぎらついた目で見ているディンブラが一番怖いって、多分それ何十回となくルフナが言っている。

●好きとかきらいとか
「変なゴーレムさん、あたしが相手だよ!」
 鈍重な砂鎧が動くよりずっと早く、フランは間合いへと踏み込み、高らかに宣言する。声による注目のみならず、その音程に秘めた衝撃は砂鎧のうち2体を巻き込み、あからさまに動きを鈍くさせた。
「こちらでもお受けしましょう、貴方達の暴力を!」
 ルミナは残った個体へと声を張り上げ、トンファーを胸の高さに持ち上げて構える。本体側にガラス玉よろしくはめ込まれた目が明滅し、彼女ら2人を明確な敵として認識する。
 初動としては十二分。後方で歩を止めたヴァレーリヤが、油断なく2人と3体の挙動を見据える。
「私は皆様を癒やしますから、存分に暴れて下さいませ!」
「ヴァレーリヤ先輩、頼りになるー!」
 フランは鈍重な一撃をしっかりと受け止め、受け流しつつ声を張る。連続して振り回される砂の腕は決して弱い打撃ではないが、彼女が本気になって守りに入れば、たとえ3体相手にしようと優秀な治癒術師の一手で癒え切る範囲に収められよう。
 ルミナとて、混沌に降りて日の浅い身とは思えぬほどに巧みな動きで砂鎧の猛攻を凌ぐ。軽傷、というには重い打撃だが、自己修復能力と体捌きの巧みさで、被害を大きく減じている。
「傷つけたい訳では無いのだけれど……ごめんなさいね」
 Erstineは氷の旋風を放ち、射程に収めた幻想種達の動きを制限せんと試みる。そうでなくとも相応に強力な攻撃だ。風圧に耐えきれず後退した数名は、背後から唐突に現れた式符の群れと封印術式、強力な呪いの波長に巻き込まれる羽目になる。オマケとばかりに降り注ぐ光は、後退した幻想種全員を巻き込み、降り注ぎ、更に大きく吹き飛ばす。
「たぶんまだ、しんでない……だいじょうぶだよね?」
「手荒になりましたが、まだ息はありますね。それどころか、戦えそうな方がまだいるのが……」
「倒れない程度に加減したつもりなんだけど……ちょっとディン兄!?」
 式符を手にしたリリーと術式を放ち残心の姿勢をとったクラリーチェが心配そうに見やる中、ルフナはディンブラの――最後の範囲術式に声を上げる。以前の戦いで見たのと同種なら、危険きわまりない筈だが。
「大丈夫だよ、僕の里の子達はあの程度で倒れたりしない。そもそも痛みを感じない術を使ったから倒れても痛みで死んだり悶えたりしないはずだよ」
 ディンブラの表情がどうにもこうにも嗜虐的にしか見えないのは明らかに問題なのだが、多分にルフナ達の気の所為である。
「……では、この一撃を与えても耐えて頂けますね」
 沙月はErstineの初手に巻き込まれなかった幻想種に狙いを定めると、柔らかな所作から強烈な打撃を放つ。治癒術に専念していた手合いも巻き込んだ一撃は、倒れるまでには至らずとも、相応の衝撃を与えたことは確かだった。
「グリムルートを狙うとなると、やはり容易ではなさそうですね」
「気絶させた後で確実に壊したほうがいいのかしらね? 砂の鎧の方はそもそも狙える場所にないし」
 2人はあわよくばグリムルートの破壊も進めたいと考えてはいたが、乱戦状態にある現状で固執するほどではない、という割り切りができていた。
 数だけでいえば自陣有利。相手方の治癒術と物理攻撃への耐性は極めて厄介だが、それを承知の上で一同は戦いに赴いている。そうでなければ、この程度の苦戦で済む筈がない。
「くっ……通さない、ここから、先へは……」
 ディンブラ含め、イレギュラーズが気を抜いていた、油断していたということは一切ない。
 過剰ですらある戦力での制圧劇は、間違いなく彼らの優勢を演出していた……相応の手傷は負っているが。
 それでもなお立ち上がり、強力な術式を向けてきた里の子等の鍛え方が少々、過剰と言えただけだ。
「危ない!」
 だが、彼らにとって不幸だったのは全くのノーマークだったドロッセルが捨て身じみた勢いで衝術を放って術者を弾き飛ばし、身動きとれないところへ毒撃を追加で放って動きを止め、戦闘領域外まで引きずっていったことにある。
 正確には彼女の攻撃で気絶したのではなく、リリーの式符による持続効果によるものだが……。
「加減しすぎも考えものだね、ルフナくん」
「それ、今言う事じゃないよね!? 僕が治療に専念するから全力で倒しに行くよ、ほら皆も早くして!」
 目の前で起きた出来事に呆然としている暇は……まあ、あんまりなかった。砂鎧を抑えている面々の負担も考えると、本当に。

●最後にものを言うのは
 ルミナは自らに迫る砂鎧の一撃を屈んで躱すと、そこから下段を狙い、次いで中、上段へと流れるように打撃を繋いでいく。砂の密度が薄い位置を確実に貫いた連撃は、ルミナが与えうる限りの最大効率を以て砂鎧を攻め立てる。
「あたし達を無視できるなんて思わないでよね!」
「簡単に倒せると思ってるならその思い違いを改めることですわ!」
 フランとヴァレーリヤは互いをカバーしつつ、ルミナが無事であることを最優先として行動していた。戦闘経験の巧拙はそのまま継戦能力の長短に直結する、彼女らはそれを理解しているが故に、作戦の鍵となる仲間を脱落させることなく(そして願わくば、戦いを忌避させることなく)乗り切ろうとしていたのだ。
 そして、その献身は正しくルミナ自身の行動を成果として現れている。恐れから解放された拳足は、着実に砂鎧が一体を縫い止め、打ち崩し始めているのだ。
「……ここ!」
 ルミナは隆起した砂を飛び越え、砂鎧の腕へと踵を叩き込む。そのまま逆さ吊りの姿勢から捻りを加えて打ち込まれたトンファー連撃、4連。横回転を着地の縦回転に繋いだルミナが砂漠を踏みしめた後、そのままタックル宜しく前進する。攻撃する為? 否。崩れ落ちる砂鎧から放り出された幻想種をキャッチする為である――!

「あなたは……ちょっとつよくしてもだいじょうぶ、だよね?」
 リリーは幻想種の一体に手をのばすと、呪力を集中させることで相手に苛烈な打撃を与えに行く。体力こそ十分に残されているが、全身に刻まれた毒や動きの乱れ、火傷の跡は癒えきっていないとみえ、彼女の放った呪術はそこを起点として深手を与えたのである。
「あれだけの打撃を受けて立っていられるとは……一気に眠らせて差し上げないと、徒に苦しむだけでしょうか」
 リリーの呪術を耐えきった幻想種は、まだ戦えるとばかりに身構える。沙月はそんな相手を一気に沈めるべく一足で間合いに踏み込み、そのまま脇を通り抜け、数歩ほど歩き過ぎた。
 何が起きたのか、と振り返ろうとした幻想種はそのまま膝を屈し、泥のようにぐったりと倒れ込む。息はある。一瞬の間に叩き込んだ一撃が、幻想種の意識を刈り取ったのだ。
「大丈夫……ですよね?」
「はい、芯はずらしましたので。……それと、これも」
 心配そうに見るクラリーチェの前で、沙月はグリムルートを握り壊し、幻想種の首から剥ぎ取る。力技甚だしいが、これでひとまず安心ということだ。
「……それで、砂鎧に対しては加減を考えなくてもいいわよね?」
「大丈夫でしょ。息切れするなら言ってよね、こっちで魔力は確保するから」
 確認するように問うErstineに、ルフナは雑に返答する。魔力は潤沢そうな一同をして問題が起きるとも思えないが、そこは念の為、である。
「ヴァレーリヤ先輩! 里の皆は大丈夫みたいだよ! あたしが抑えてるから、やっちゃって!」
 戦局が勝利へと大きく動いたことを、フランは砂鎧越しに確認していた。すでにルミナが一体を倒し、残り2体もフランの足止めで動きに精彩を欠いている。今ここに、確実な勝機が転がっているのは確かだ。
「主よ、慈悲深き天の王よ。彼の者を破滅の毒より救い給え――」
「お邪魔な砂は消し去ってあげるわ……!」
 ヴァレーリヤのメイスに確かな力が宿る。真っ直ぐ砂鎧に向けられたそれは先端が力の奔流で揺らめき、放たれる威力の程を物語る。
 それが放たれるより早く、Erstineの放った氷の旋風が砂鎧の動きを止める。
「――毒の名は激情。毒の名は狂乱。どうか彼の者に一時の安息を。永き眠りのその前に」
 衝撃が砂鎧のうち一体を穿つ。ヴァレーリヤによって大きく後退したそれに、背後からリリーの放った蛇が食らいつき、クラリーチェの術式が技能を封じる。
 崩れ落ちる砂鎧をよそに、ドロッセルの放ったスリングストーンに虚を突かれた砂鎧へと沙月が一気に打撃を放ち、ダメ押しとばかりにルミナが連撃を叩き込む。
 時間にすれば、最後の攻防は寸毫の間であっただろう。だが、全員がひとつの生き物であるかのように有機的に連携を遂げた戦いは、確かな成果となって幻想種達を救うに至ったのである。

「ディン兄は……兄様は。僕が外に出ても、あの子たちが出ても、追いかけてきてくれたよね」
「ルフナくんもあの子達も、僕の大事な子達だからね。……本当なら外の世界なんて知ってほしくはなかったよ」
 戦闘が終わり、グリムルートから解き放たれた幻想種達はイレギュラーズにより介抱されていた。十分以上の魔力を用いた彼らの消耗は並ではなく、暫くの療養が必要だろう、とディンブラは言っていた。
 ルフナと2人で話す機会を設けたのは、偏に仲間達の配慮でもある。
「外の世界を知って、閉じた里を重んずる兄様は偏執狂なんじゃないかって思ってたけど。
 今回の騒動の発端を考えたら、その、ええと、うん、ちょっとだけ嬉しかったりしなくもなくもない……かも」
「僕達は幻想種だ。外の連中とは生きる時間が違う。けど同じ悪意で傷つき、同じ傷で死ぬんだ。わかるね、ルフナくん。イレギュラーズになった君だって同じことだ」
 素直に兄の善意を喜んだルフナ。しかし、ディンブラはゆっくり諭すようにルフナに語りかける。
 すわ連れ戻す気か、と彼を知らぬ面々は色めきだったかもしれない。だが、一度会っている者達は微動だにせず。
「僕はね、彼らを里から出す気はない。でも……そうだね。『出たい』と言った時は考えてあげるよ」
 その言葉にルフナが顔を上げるより早く、ディンブラに横合いからフランが飛びついていたのは、なんというか。気が早い、としか言いようがなかった。

成否

成功

MVP

フラン・ヴィラネル(p3p006816)
ノームの愛娘

状態異常

なし

あとがき

 まあそんな感じで、こう。固いのには固いのをぶつけんだよ! みたいな2~3年前のホラー映画かな? みたいな展開でした。判定してる側としても凄くホラーな数字の動きなんですがなにこれ?
 MVPは砂鎧相手に微動だにしなかった貴女に。少しのパンドラはご愛嬌さ。そうに違いない。

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