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シナリオ詳細

<YcarnationS>誰かの為に鐘は鳴る
<YcarnationS>誰かの為に鐘は鳴る

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●砂の都を確保せよ
「いよいよ大ごとになって来たのです!」
 『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)はギルドで声を張り上げる。コルクボードには鉛筆で殴り書きされた簡素な風景画が張られている。
「これが砂の都! かつて奴隷売買によって栄えて、既に砂へ沈んだと言われていた伝説の地なのです!」
 一大決戦を前に、ギルドの人員は騒がしく周囲を行き来している。ユリーカは背伸びして、イレギュラーズに向かってさらに大声を放った。
「これから戦場となる場所です。本当なら見取り図くらいは用意したいところだったのですが……これまで噂だけの場所だと考えられていたので、ラサの調査も及ばず、外から見た光景をこうしてスケッチするにとどまってしまったのですが……これを見て欲しいのです」
 ユリーカは絵の一点を指差す。高い塀から突き出した幾つかの建物の中、高い塔が立っていた。
「戦場ではより広い視界を確保することが何より大事なのです。皆さんには敵よりも早くこの物見塔に辿り着いて、この塔周辺の一帯を確保してほしいのですよ」
 羽ペンを取り出したユリーカは、塔に丸く印をつける。
「この物見塔の屋上には古い半鐘が見えるのです。ラサの傭兵の皆さんは、この半鐘の音を合図にして一気に突入し、物見塔周辺を制圧する手筈としているのです。かなり重要な役割なので、心して取り組んでもらいたいのですよ」

「当然敵方もこの塔の制圧は意識している筈なのです。競争になるはずなので、絶対負けないようにしてくださいね!」

●あの鐘を鳴らせ
 砂の都へそっと足を踏み入れた君達は、最も近くに見える塔へとひた走った。空から飛んでも近づけないのは確認済みだ。入口から地道に制圧していくしかない。
「行くぞ! この塔を押さえろ!」
 しかし、塔のどこかから男達の声が響く。ユリーカの言う通り、オラクル派の雇った傭兵達も、物見塔を押さえるべく動き出していたのである。このまま待ち構えていては先を越されてしまう。君達は目配せすると、入り組んだ廊下の中へと足を踏み入れた。

 砂の都で決戦へと挑む二組。そのどちらにも挑みかかろうと、するすると蛇の群れが塔に空いた穴の中から忍び込むのだった。

GMコメント

●目標
 オラクル派よりも早く物見塔の頂上にある半鐘を鳴らす事です。
 戦況の展開はその後も続きますが、シナリオとしては鐘が鳴る前後で終了となります。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●ロケーション
 物見塔で戦闘を行います。
 食堂や武器庫など、部屋が細かく分かれている一階、
 集団で寝泊まりし、時にはここで戦闘訓練などしていたと思われる広々とした二階、
 長い螺旋階段が続き、上に立つほど有利に立てる物見塔、
 半鐘が置かれている物見塔最上階にフロアが分かれています。
 建物全体に張り巡らされた紋様が結界の役割を果たしており、上空から接近する事は出来ません。

●敵
◎オラクル派傭兵×12
 オラクル派残党の傭兵です。砂の都での戦いでイニシアティブをとるべく、戦場の広い範囲を見渡せる物見塔を占拠しようとしています。そこそこ手練れの人間が多いので油断は出来ません。

・行動
→毒剣…出血毒の塗られた剣で攻撃します。斬りつけられると血が止まりにくくなります。
→短銃…銃で攻撃します。毒を受けるよりはマシかもしれません。

◇ザッハーク×12
 カノンに使役されている蛇型のモンスターです。ただ噛み付くだけでなく、毒液を飛ばしたり足に巻きつくようにして攻撃してきます。イレギュラーズだけでなく、傭兵に対しても構わず敵対するようです。

・行動
→噛み付き…噛み付いて攻撃します。ダメージを受けたついでに麻痺毒を受けます。
→毒吐き…離れた敵には毒を噴射して攻撃します。強力な毒は皮膚からも侵入します。
→巻きつき…モンスターの膂力は高く、巻きつかれると動くのも困難になります。

●TIPS
・無闇にヘイトを取るのは考え物です。
・半鐘を合図に敵も味方も一気になだれ込みます。可能であれば鳴らした後もその場に踏みとどまるように。
・傭兵達は当初纏って一階に、蛇は各地に散在しています。

影絵です。要所確保のミッションです。宜しくお願いします。

  • <YcarnationS>誰かの為に鐘は鳴る完了
  • GM名影絵 企鵝
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年11月02日 22時30分
  • 参加人数 8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

シエラ・バレスティ(p3p000604)
白い稲妻
藤野 蛍(p3p003861)
学級委員の方
桜咲 珠緒(p3p004426)
司令官
グレン・ロジャース(p3p005709)
不沈要塞
華懿戸 竜祢(p3p006197)
応竜
カイト(p3p007128)
雨夜の惨劇
ウィリアム・ウォーラム(p3p007502)
軍医
銀星 啓(p3p007687)
超常研究家

リプレイ

●探り合い
 物見塔の裏口を蹴り開け、厨房から中へ侵入するイレギュラーズ。大剣を脇に構えて、シエラ・バレスティ(p3p000604)は真っ先に廊下へと先行する。
「よーし、気を引き締めていこう!」
 自らを鼓舞しながら、彼女は狼の耳をピクリと動かす。敵の声、足音が微かに聞こえた。壁にピタリと身を寄せた彼女の足下を、一匹のスカラベが走り抜けていく。藤野 蛍(p3p003861)の使役するファミリア―だ。モザイクのような視界だが、敵の存在を探るには十分だ。眼鏡をくいと動かし、蛍は得意げに笑う。
「ふふん、課題をこなすのはボクの得意分野よ。準備はいい?」
 蛍は桜咲 珠緒(p3p004426)をちらりと見遣る。大事な任務の時にはいつも一緒。大切な相棒である。
「状況把握と判断の速さが要求されますね。桜咲、全力回転で参りますよ」
 二人は軽く手を取り合うと、今日もその心を結び合う。
「よし、それじゃ行きましょ!」
 二冊の教書を武器へ変え、蛍は揚々と飛び出した。眼鏡のフレームを指先でついと撫で、魔力を込める。日干し煉瓦の分厚い壁の向こうを、彼女はじっと見つめた。大蛇が二匹、部屋の床をずるずると這い回って周囲を威嚇していた。少女は背後の珠緒に振り返った。
(食堂に蛇がいるみたい)
(傭兵のみならず、蛇も……と。単に傭兵との争奪戦になるかと思っていましたが、想像以上に複雑な状況のようですね)
 心奥で相棒と会話しつつ、珠緒は一枚の羊皮紙を取り出す。彼女が続々と伝えてくるイメージを受け取って、物見塔の見取り図をさらさらと記した。グレン・ロジャース(p3p005709)は、肩越しに珠緒の作る地図を覗き込む。
「なるほどなるほど? お嬢さん、アンタはこの戦況をどう視るんだい?」
「蛇は積極的に動く様子はないみたいですし、なるべく放っておきましょう。傭兵達は積極的に動いている気配がありますし、時間稼ぎだけは適宜行いつつ、私達も急いで上階を目指す方が良いかと」
 珠緒は迷わず応える。蛍から伝えられる情報を瞬間的な記憶能力でまとめ上げ、適切な状況判断を下す。部隊の統率は慣れたものである。グレンは盾の留め革を引き締め、背負った剣を抜き放つ。
「なるほどな。それじゃあ言われた通りにやるとしますか」
 廊下の角をそっと窺い、蛇が居ないのを確かめるとグレンはそのまま階段を目指して走る。隣に大剣を担ぐ華懿戸 竜祢(p3p006197)を伴って。彼は作戦の重要性を実感しつつ、敢えて軽薄な笑みを浮かべる。
「高台を得るメリットはデカいよな。この戦いの戦況を、つまり多くの命運を左右するわけか。仕損じる訳にはいかねぇな」
「ああ。そして、向こう側もこの物見塔の重要性には気付いていたというわけか」
 竜祢はくつくつと笑い始める。敵もまた勝利を求めて奮闘している。それを肌で感じた彼女は、その翡翠のような瞳を爛々と輝かせた。
「……実に素晴らしい。両者とも確固たる信念のもとにぶつかり合う、輝きのぶつかり合い! 是非ともこの眼で見届けさせて貰おうじゃないか!」
 その身に収まらない情動を口に表す竜祢。狂気すら孕んだその表情を横で見遣り、ウィリアム・ウォーラム(p3p007502)は思わず肩を縮めた。
「見届けるのはいいが、いかにも強そうな嬢ちゃんは戦うだけ戦ってくれよ? おじさんは戦いってなると壁代わりになるくらいしかする事ないからな」
「わかっている、わかっている。私も任務を引き受けた身だ。ローレットに与する者として、塔をみすみす譲り渡すつもりは無い」
 竜祢は頷くと、大剣を素早く抜き放った。
「行くぞ。頃合いを見て私は先行し、二階へ続く階段を押さえる。お前も来るな?」
「当然だ!」
 前衛二人組は盾に大剣を構える。戦いの準備は万全だ。
「やれやれ、頼もしい限りだねえ……」
 ウィリアムは背中を見て溜め息を吐くと、ぴたりと閉じられた扉の鍵穴を覗き込む。傭兵を成敗するような剣の腕は無いものの、年月を重ねて磨いた経験は嘘をつかない。
「こっちだ。物見塔なんてのは、大体どんな部屋を通っても上階まで辿り着けるように出来てるもんだからな」
 部屋に誰もいない事を確かめると、ウィリアムは鍵を開く。仲間達を中へ招き入れると、素早く鍵を掛けた。
「成功すれば報酬も出るし、人身売買なんざやってる奴らの鼻も明かせるんだ。一等賞を狙わない手はねェよな」
「肉体労働は手前の本分ではないのだがな。それに、ここの砂塵は手前の身によく染みよう……」
 外骨格の指先をこめかみに当てて、銀星 啓(p3p007687)は周囲を見渡す。灰色の瞳がくすんだ光を放って、壁の向こう側さえ見通していた。古びた武器庫の中で、二人の傭兵が壁に飾られた武器を漁っている。その部屋の先には階段も見えた。啓は外骨格に刻まれた幾何学模様をなぞり始めた。
「まあ気兼ねなく人間に術式試験を行えると思えば悪くは無いな。早急に終わらせる」
 幾何学模様が光を放ち、傭兵達が背を向けた隙に偽りの壁を作り出す。シエラは得意げに笑みを浮かべると、早速武器庫に足を踏み入れ、幻影の中に身を隠す。
「人を売り買いする程の器の人達とは思えないなー! きっとここで恥さらしの傭兵として情けなぁーく背中から斬られて死んじゃうんだろうなー!」
 シエラは二人の傭兵の背後目掛けて叫ぶ。彼らは眼を剥いて振り返った。しかし姿は見えない。銃を抜いて剣を構え、武器庫の中をぎょろぎょろと見渡す。
「どこだ!」
「怒った? ならこのシエラ・バレスティにかかってこーい!」
 シエラは素早く飛び出すと、傭兵を袈裟懸けに斬りつけた。二対一で彼女が悠々と立ち回っている隙に、カイト(p3p007128)は部屋に罠を仕掛け始めた。滑る油を撒き散らし、朽ちた水瓶を叩き割って破片をばら撒く。丁度その時、扉を蹴破った一人の傭兵が中へと飛び込んで来る。
「お前ら……!」
 剣を抜き放っていきり立った男だが、カイトのばら撒いた油に足を滑らせ、水瓶の破片で作られた撒き菱に背中から落ちる。犬のようにぎゃんと喚いた男を見下ろし、カイトはぎらりと牙を剥き出した。
「目指すところが同じな以上、追い掛けっこにマトモに興じてやる暇はねーんでなァ?」
 右手を突き出し、その掌から光弾を放つ。直撃した男は部屋の彼方へ吹っ飛び、奥の部屋へと叩き込まれる。部屋を這いずる大蛇が、男へと襲い掛かった。その姿を見届け、カイトは右手を振るった。
「さあ、さっさと行こうや」

●鐘を高らかに
 啓は背後の部屋へ両腕を翳し、その腕に刻まれた幾何学模様を輝かせる。景色が僅かに歪み、偽りの階段を作り出す。ウィリアムが素早く鍵を掛け、イレギュラーズは本物の階段を目指す。背後から数人の怒号が微かに響き渡った。壁越しにその姿を確かめ、啓は仏頂面のまま呟いた。
「傭兵諸君、己らには手前の術式試験に付き合ってもらう。拒否権は無い」
「おお、怖い怖い。お前が味方で良かったぜ」
 中年と老人がやり取りしている間に、竜祢とグレンは先頭切って二階へ続く階段へと踏み込んだ。七人の傭兵が、今まさに階段を駆け登ろうとしているところだった。竜祢は笑みを浮かべる。
「おっと、せっかちな奴らがいるな」
 気付いた傭兵達。二人が素早く銃を抜いて竜祢へ弾丸を撃ち下ろした。竜祢は大剣を担いで一足飛びに肉薄した。剣を振り抜き、二人纏めて横薙ぎにする。盾を構えたまま仰け反った彼らを見下ろし、竜祢はグレンへ目を遣る。
「行きたまえ。物見塔まで辿り着かれると面倒だ」
 グレンは盾を突き出すように構えて、大広間へ続く階段を一足飛びに駆け登る。先駆けて二階へ上っていた傭兵達は、しかし大広間に陣取っていた蛇の群れに襲われすっかり足が止まっていた。グレンは不敵に笑い、彼方に見える物見塔への入り口に向かって駆け出す。
「はっ! 沈む船、崩れる砂城に乗る気分はどーだい?」
 彼の挑発を聞いて振り返った傭兵達は、咄嗟に足下の蛇を蹴りつけた。そのまま彼らは素早く目配せする。
「行くぞお前ら!」
「突破できるものならしてみな。だが目の前にいるのはバリケードなんて目じゃねぇぞ」
 噛み付く蛇を躱しながら、傭兵達は立ちはだかるグレンへ迫った。グレンは盾を構えて大見得を切る。
「敵を阻む鉄壁の盾、『要塞』の名は伊達じゃねぇぜ!」
 グレンの後を追うように、イレギュラーズの面々が一斉に二階へと踏み込む。彼らの姿を認めた大蛇達が、鎌首をもたげ、舌を鳴らしながらカイトへと這い寄っていく。
「ずるずるとめんどくさそうな奴らが寄ってきやがるもんだ」
 カイトは鉄の拳を床へ叩きつけ、青い衝撃波を蛇へと飛ばす。蛇の群れは宙を舞い、傭兵達の背後へと墜落する。蛇は鎌首をもたげると、傭兵達の背中目掛けて飛び掛かった。一人が腕を噛み付かれ、振り絞るような悲鳴を上げる。しかし、傭兵達はそんな仲間に構う事無く、グレンの防御を突破すべく押し寄せた。その姿を認めたシエラは、咄嗟に窓枠を乗り越える。
「塔の上空に結界があるってだけなら、壁伝いに飛んじゃえば……!」
 屋根に立ったシエラは、そのまま空気を蹴って飛び上がろうとする。しかしその瞬間、見えない壁に頭を打ち付けてしまった。目の前に火花が散り、彼女は悲鳴を上げる。
「いったぁー……外からじゃ結局鐘には近づけないのか……」
 痺れる頭を押さえながら、彼女は二階の練兵場へと舞い戻る。飛び掛かってきた蛇を蹴り飛ばし、今度は練兵場にて宙を舞う。大剣を構え、螺旋階段の入り口に立って傭兵達へ刃を向けた。
「さあ、私も相手になってあげる!」
 物見塔の入り口を巡る戦いは混迷の様相を呈し始めた。カノンに使役されたコブラは鎌首をもたげ、傭兵にもイレギュラーズにも構わず毒液を吐きかけてくる。一階で啓に幻惑されていた傭兵達も二階へと合流し、剣を抜き放って物見塔の入口へと押し寄せてきた。
「毒なんて俺に効くかよ! 勝ちたきゃ正々堂々正面からかかってきな!」
 グレンは剣の腹で傭兵の刃を逸らす。しかし、傭兵はいきなり二人がかりで彼の懐へ突っ込み、彼を扉の脇へと押しやった。
「お前等だけでも行ってこい!」
 傭兵は駆け付けた仲間へ叫ぶ。グレンが彼らを押しのけるよりも先に、三人が物見塔の中へと足を踏み入れた。竜祢は傭兵の襟首を引っ掴むと、大蛇の方へと放り投げた。彼女は剣を構え、蛍と珠緒を見遣った。
「お前達も行け。奴らを押さえて鐘を鳴らせ」
「任せて大丈夫?」
 足元に噛み付こうとする大蛇を切り払いつつ、蛍は尋ねる。竜祢は力強く頷くと、傭兵を見据え朗々と叫んだ。
「さあかかってこい! 仲間を三人通してそれで満足というわけではないだろう? 私達を倒して、この砦を完全に制圧してみせろ! お前達の輝きの程を見せてみろ!」

 仲間達に背後を任せ、蛍と珠緒のコンビは物見塔へと足を踏み入れる。既に三人の傭兵が螺旋階段を半分ほども登ろうとしていた。このまま追いかけていても埒が明かない。蛍は早口で呪文を唱えると、空を蹴って一直線に螺旋階段を駆け登っていく。
「死中に活在り!」
 鋭く叫んだ蛍は、勝利の方程式が刻まれた刃を最後尾の男へ叩きつける。乱闘上等の一撃を喰らい、傭兵達は慌てて振り返った。
「委員長が調子に乗んなよ!」
 どこぞの不良じみたセリフを吐かされながら、傭兵達が一斉に蛍へ斬りかかる。故事が刻み付けられた盾でその一撃を受け止めると、彼女は眼を三角にして一喝する。
「奴隷商売なんて許さないんだからね!」
 轟くような彼女の叫びに気圧され、よろめいた男達が螺旋階段から転げ落ちていく。蛍は階段を軽やかに駆け下り、三人の頭上を取って刃を向けた。
「決してこの先には行かせないよ!」
 傭兵達は肩を押さえながら起き上がると、喇叭銃を抜いて次々蛍へ撃ちかける。蛍は盾を突き出すが、ばら撒かれた小さな鉛弾は彼女の肩口や太ももを切り裂いた。珠緒は素早く指揮棒を振るい、親友へ治癒の力を与えた。
「桜咲達はここでこの方々の足止めです」
 斬りかかってきた男の刃を、指揮棒の先で受け止め、何とかやり過ごす。その背後をすり抜け、ウィリアムと啓が螺旋階段をばたばたと登っていく。タクトを掲げて天使の歌を奏でながら、珠緒は二人を見上げた。
「鐘はお任せしましたよ、ウィリアムさん、啓さん」
「おう、任せとけって」
 ウィリアムは白い歯を見せて手をひらひらさせる。傭兵は顔を顰め、銃口を天井へ突き上げた。
「させるかっての!」
 ばら撒かれる鉛の弾丸。ウィリアムは咄嗟に振り返ると、指輪の嵌まった右手を突き出す。魔法陣が突如広がり、弾丸を真正面から受け止めた。ウィリアムはほっと息を吐くと、つかつかと階段を上る啓へと振り返った。
「俺もここで押さえる。ちょっと行ってちょっと鳴らしてくれや」
「仕方ない。資料も十分に取れた事だ。終わらせて来るとしよう」
 啓は溜め息を吐くと、下界で続く喧騒を余所に螺旋階段を上る。物見塔を登り切った彼は、天井に吊るされた緑青塗れの半鐘を見つめる。突風が吹き抜け、砂塵が啓に襲い掛かる。砂の都に響く鬨の声が、微かに響き渡った。
「誰も鐘を鳴らしに行こうとしないとはな。……荒事をしなくて済むなら、それはそれで好都合か」
 半ば朽ちかけた槌を拾い上げた啓は、鐘に向かって何度も叩きつけた。

●塔を守れ!
 頭上から高らかに響き渡る鐘の音。錆びついてもなお荘厳に響き渡るその音色を聞きながら、蛍は小さく笑みを浮かべた。
「とりあえず第一段階クリアね。それじゃもう一踏ん張り、頑張りましょ!」
 この鐘は勝利の音ではない。ラサ軍が地の利を得たという合図に過ぎないのだ。この場を守り続けなければ意味がないのだ。剣を振り被る傭兵を叩き伏せ、蛍は鋭く言い放つ。
「しつこいよ! そろそろ降参したら?」
「くそっ! くそ……」
 蛍が立ちはだかり、珠緒が彼女の受けた生傷を癒す。彼女達のしぶといコンビネーションを前に、物見塔の三人は既に限界へ達していた。彼らは膝をついたまま項垂れ、武器をその場に放り出す。それを見届けた珠緒は、使役ロボットに取り押さえさせつつ、羊皮紙へ印をつけていく。
「これで三人を確保ですね。後は大広間に残っている六人ですが……」
「ボク達も戻ろう!」
 珠緒は頷くと、大広間へと素早く後退した。

 その頃、物見塔の二階では、生き残っている傭兵達による猛攻がしぶとく続けられていた。喇叭銃から放たれた鉄釘の束が、一人と切り結んでいたシエラの背中に突き刺さる。ぐらついたところを、男がさらに袈裟懸けに斬りつけた。シエラは崩れ、その場に膝をつく。
「くそっ! 思い知ったかよ!」
 男は苦々しげに言い放つ。しかし、シエラは不意にその姿を白変させ、ゆらりと立ち上がる。
「……私はあなた方傭兵に死を与えます。速やかなる心肺停止こそが、あなた方に求められる価値です」
「こいつ……」
 息を呑んだ男は咄嗟に剣を振り薙ぐ。しかしシエラは刃を飛び越え、裁きの雷宿る刃でバッサリと斬り捨てた。肩から驟雨のように血を噴き出しながら、男はその場に倒れ込む。血の臭いが漂い始めた広間を見渡し、グレンは傭兵達に問いかける。
「既に物見塔は俺達が押さえた。これ以上戦ってもお前達は俺達の守りを破れやしない。これ以上の抵抗はやめて、大人しく降参したらどうだ?」
「……そんなわけにいくか。今下で戦ってるのは俺達の仲間だ。俺達だけ降るってわけにゃいかねえんだ」
 傭兵の一人はそう言い放って武器を構える。彼の顔を食い入るように眺めた竜祢は、ふいにくつくつと笑い始めた。牙を剥き出し、男の前へと躍り出る。
「くくっ。素晴らしい。仲間の為に折れず戦い続けるか。敵ながら天晴な輝きだ。来たまえ。もっと私にその輝きを見せてくれたまえよ!」

 階下で戦いが続く一方、鐘の音に合わせて開かれた二つの門から、一斉に傭兵達が飛び込んできた。片や黒い装いに身を包み、片やラサの紋章を旗印に掲げている。互いに曲刀を構えて突進し、喇叭銃を撃ち込む彼らの姿を、ウィリアムはじっと見下ろす。
「こいつは派手な戦いになるなぁ……また大仕事になりそうだ」
 ウィリアムはその場に屈み込むと、鞄を開いて軍医としての装備を確かめ始める。カイトはその隣に立つと、オラクル派の傭兵達を睨んだ。
「なるほどなぁ。こんだけ高い所から見下ろせりゃあ、負けるわけがねえよな」
 カイトは牙を剥くと、ゴーグルを下ろして掌を向ける。敵の傭兵へ狙いを定めると、雨粒の如く輝くレーザーを放つ。やがてそれは悪魔のように形を変じ、オラクル派傭兵へと襲い掛かった。撃ち込まれた兵士は、その場にひっくり返る。その隙にラサ側の傭兵が一気に前線を押し込んでいった。啓はそんな戦場を変わらずの仏頂面で観察を続けていた。
「やれやれ。一通りの仕事は終わったと思ったが……」
 外骨格の模様をなぞる。幻影の兵士が浮かび上がり、戦場の傭兵達へ次々と襲い掛かっていった。
「もう一実験しておこう」



 イレギュラーズ達は物見塔で奮戦を続ける。その戦いぶりに応えるように、ラサの傭兵達もオラクル派に対して勇猛に立ち回り、勝利を引き寄せていくのだった。

 おわり

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

影絵です。今回はご参加ありがとうございました。
もうしばらく戦いは続きましたが、無事に皆さん切り抜けられました。物見塔からの援護で、この場の戦いも有利に運ぶ事となったでしょう。


ではまた、ご縁がありましたらご参加ください。

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