PandoraPartyProject

シナリオ詳細

最期にいる場所は

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●絶対より絶対的な存在
 例えば、ある皇帝は死を克服するために永遠の生を得られる薬を求めた。
 例えば、ある絶世の美女は一刻も長く生きられるべく乙女の生き血を啜ったという。
 例えば、ある王は永遠の命と安息が得られるという土地を求め、多くの兵士を派遣した。

 古来より、死を忌避し、永遠の生を求める者は多かった。それは死を知らぬが故に恐れることに由来すると我々は考えた。
 だが死を克服することはあり得ない。それは生命の理を捻じ曲げ、歪めることに他ならない。だから我々は、死に希望を抱かせるための方法を検討した。死を得体の知れないものとし続けるのではなく、死を、必ず通過する一種のイベントとして淡々と受け止めさせようとしたのだ
 
 様々な方法を検討し、実験した結果、我々は各人が理想とする「死」の風景を再現することに成功した。
 そして多くの人から理想とする「死の風景」を再現し、それを資料として蓄積した。だが、まだ足りない。もっともっとデータを蓄積する必要がある。
 どうすればいいだろうか。我々は常に悩んでいた。

●未来のことが分からないからこそ
「というわけで、皆さんには死んでほしいんだ」
 集められた先で境界案内人が放った言葉に貴方たちは一瞬耳を疑い、そして踵を返そうとした。死んでほしいと言われる依頼があってたまるか。
「ああ、ごめんごめん、少し表現が悪かった。 正確には『理想となる死の直前の光景を体験して欲しい』んだ」
 言葉の端折り方が最悪である。誰かが不満を言った。
「これから行く場所では、死を恐れないようにするための研究をしている。具体的には、理想的な死の光景を体験させることで、少しでも『得体のしれないもの』という認識を和らげようとしているみたいだね」
 案内人は悪びれず、立て板に水を流すように依頼内容を語る。
「……え? いくら体験しても『偽物の死』であって実際に死ぬときにはその光景のまま死ねるわけではない、って? そうだよ。だけど死ぬという感覚がどういうものなのかはなんとなくわかるでしょ」
 それは何もわからないよりきっと数段マシということさ、と案内人は呟いた。その考え方に同意しているかどうかは誰にもわからない。
「というわけで、皆が思い浮かべる「理想的な死に際」を再現してもらって欲しいんだ。向こうでは皆は元々死なないけど、死を疑似体験するのは貴重だと思うからね」
 境界案内人はそう言って貴方たちを見送った。

NMコメント

 初めまして、NMの澪と申します。よろしくお願いします。

・目的
「理想的な死」を体験する
 プレイングに各人が思う理想的な死について記載をしてください。
 
 例
 愛する人に看取られて眠るように死ぬ
 戦いの最中に敵に討たれる
 探求の途半ばに何か答えを得て、満足の内に事切れる
 
 最後に見る景色、考え、感情など色々あると思いますが、プレイングの中に詰め込んでいただければと思います。

 リプレイは皆さんが異界の研究者に紹介され、装置(ヘッドギアのようなものを装着したベッド)に横になるところから始まります。

 それでは、皆さんの最期の1ページを描けることをお待ちしております。

  • 最期にいる場所は完了
  • NM名
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2019年10月22日 22時45分
  • 参加人数4/4人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ノリア・ソーリア(p3p000062)
半透明の人魚
ブーケ ガルニ(p3p002361)
兎身創痍
ノースポール(p3p004381)
差し伸べる翼
御月・藍(p3p007675)
エメラルドメイド

リプレイ

●一度喪って、またその手に
 見慣れない機械を頭につけてベッドに横たわった『白金のひとつ星』ノースポール(p3p004381)が次に見たのはどこかの村。素朴な風景はかつて自分が一度喪った故郷に似ていて、しかしどこか違って写る。
 街並みの風景はどこも長閑で、笑顔にあふれている。時間をかけて自分が、正確には自分と愛する人とで築き上げてきたこの光景。
 かつてのように蹂躙されることはないとわかっていても、村を守る役割は捨てることができない。
「こんにちは! いい天気ですね!」
「おお、ポーちゃん。今日も元気だねえ」
 挨拶をすると、笑顔で挨拶が返ってくる。なんでもない他愛のないことが、とても尊くて愛おしい。この平穏がずっと続くのなら、私は何だってできる、何だってやり遂げて見せる!
 そう思いながらノースポールは絵に描いたような平和な村を、村人の温かい視線を浴びながら警邏していくのだ。

「ただいま、ルー!」
 家に帰ったノースポールを迎えるのは、愛すべき旦那様と二人の子供、そして、
「……シチューだ!」
 どうしようもなく食欲をそそるミルクの甘い香り。お腹ぺこぺこ~!と言って早速ダイニングテーブルに腰掛ける彼女の前には、純白の水面に浮かぶ大量の野菜とお肉が湯気を上げて彼女を待っている。全員が席についたところで恵みに感謝を捧げてから、
「いただきますっ!」
 何にも代えがたい幸福の時間が訪れる。

「村はずれのお婆ちゃんの家、もうすぐカボチャの収穫時期だって」
 夜になってその日の見回りの成果を楽しそうに話すノースポール。既に子供たちは眠りにつき、貴重な二人きりの時間。彼女はそれをいつもその日あった出来事を伝えるために費やしている。夫も子供たちの様子や仕事のことを楽しそうに語ってくれる。
 二人だけの時間はいつも限られたもので、だけれどもいつも新鮮で時の針は瞬く間に何回転もしてしまう。やがてどちらともなく欠伸をして、寝るか、と互いに言い合うのだ。
「お休み、ルーク。 大好きだよ」
 彼女はそう言って、頬に軽くキスをする。お返しに彼女もキスを受け取ってから、二人で仲良くベッドに入り、目を閉じる。

 そうして彼女は沢山の「ポラリス」を胸に抱えながら静かに息を引き取るのだ。その指は愛する者の指に絡みつく。まるで邂逅を待ち望むかの如く。

●英雄は未だ還らず
『星月の詠み手』御月・藍(p3p007675)の目の前には、荒廃を極めた戦場が広がっている。
 多くの仲間が数多の敵に立ち向かうべく武器を手に取り、雌雄を決する戦へと乗り込む。仲間の一人が群れを相手に獅子奮迅の活躍を遂げ、そして一瞬の隙をつかれて撃たれる。別の仲間が癒しの力で前線へと押し戻す。御月もまた、そうした仲間と共に戦陣を駆けていた。
 
 この戦火が終息したら、世界はどんな方向に進むのだろうか。エメラルドグリーンに輝くコアの奥深くにそんな疑問が宿る。御月はそれを見たいと思った。知りたいと思った。この先、仲間達が文字通り一から築く世界を具に捉えたい。その思いで手にした武器に力を込め、一体、また一体と機能停止に追い込んでいく。
「おい御月、へばってんじゃねえだろうなあ!」
「問題ありません。 まだ、動けます」
 仲間の叱咤激励に返す余裕を見せつつ、彼女はそれでも体力の底を少しずつ感じ始めてもいた。敵の数はかなり減らしているとはいえ、まだ自分たちより多い。
 無謀にも近い戦いをどれだけ繰り返して来ただろうか。体力も限界に近い。だが必死に敵を薙ぎ払ってきた結果、残るは首魁唯一人。死力を尽くして一人、また一人とその懐に飛び込んでいく。仲間が攻撃を加える度にその体がぐらつくが、倒れこむには至らない。
「御月、行け! とどめを刺せ!」
 誰かの叫びに弾かれるように、御月は駆けた。駆けて、仲間の援護を受けて、疲労の余り落としかけた武器を再び力強く握り直し。
「これで! とどめですっ!」
 渾身の一撃をその身に叩きつけた。

 確かな感触があった。二つ。自分の攻撃が敵に致命傷を与えたという確信と、その逆。
 エメラルドの核が強烈な一撃を受けひび割れていた。警告音が脳内で響く。だが、それすらが遠い。
不調なテレビのようにぶれる視界の中で、誰かが御月を抱き起し、死ぬなと言ってくれる。その声も酷く遠い中、実感できることが一つ。
(ああ……死ぬとはこういうことなのですか)
 願わくば、この後の世界を見たかった。我儘が通るなら一緒に明日を創りたかったが、それは叶わない。だが未来のために自分を犠牲にするのは、彼女にとって悪い気分ではなかった。
「あ……りが、とう……。ごめん、な……さ、い……」
 それが英雄の最期の言葉だった。

●自然の摂理
 一方、『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)は理想の死、というものを想起することができなかった。無理からぬことである。道行く人にいきなり「貴方はどう死にたいですか?」と聞かれて淀みなく答えられる人が一体どれだけいるだろうか。
(そんなもの、さっぱり、想像もつきませんの)
 想像できるとすれば、それは「らしい」最期しかなく――。

 光の乏しい海の中、ノリアは油断なく遊泳を続けていた。食物連鎖が絶対的なルールとして存在する中では、油断は即最悪の結果に繋がる。それは理解するまでもない絶対の掟だが、油断しなければ捕食されない、というわけではない。
 ノリアの背後から彼女の身の丈の何倍も大きな魚が突如現れた。鋸のような歯は光が殆どないにも関わらずそのおぞましい威容をこれでもかと見せつけてきて、慌てて逃げるノリアを執拗に追いかける。
(助けて、誰か助けて!)
 助けを求めてみるも応える声はなし。必死に鰭を動かし、捕食者から逃れようとするが、体躯も速度も向こうの方が上。その距離はあっという間に縮まっていく。
(あ、あそこ……なら)
 見えたのは海底にある岩場。あの中に入れば逃げ切れると判断したノリアは全精力を振り絞る。
 もうすぐ、もう少しで身を隠せる。念のためにと後ろを確認したノリアの視界に入るのは、
「あ……」
 今まさに上下から迫ってくる牙の列。
 
 痛みはなかった。一瞬、魚の牙は自分を捉えることはできなかったのだと安堵した。だが絶望というものは得てして安堵の後にやってくる。安堵した分、より増幅され凶悪になって。
 巨大魚の歯はノリアの尾鰭をその本体から引き千切っていた。海原に一筋の赤い煙がたなびくのと、その牙にぼろ雑巾のようにゆらゆらと舞う存在に気付いて初めて、ノリアは自分が尾鰭を失ったこと。そしてもう自由に泳ぐことができないことを悟った。
 それはつまり。
「あ……ああ……」
 迫りくる死の恐怖から逃げられないということもまた、意味していて。
 もう一度迫る凶器はだが彼女の命を奪わず、残酷に弄ぶ。その身を食い破り、体をすり潰し、そして溶かしていく。
 余りにも惨たらしく、だが大海原では連日のように繰り広げられる光景。
●殺害方法三点セット
「なあ、俺を殺してくれへんか?」
『兎身創痍』ブーケ ガルニ(p3p002361)は願う。普通なら即刻断ると言われる案件だが、ここは理想的な死を具現化する場所。その特性をこれ以上ないほどブーケは理解していた。
 頼まれた友人も二つ返事で「いいぞ」と快諾する。契約成立である。
 しかしここでブーケはある難問にぶつかる。殺してほしいとは言ったものの、「どう殺してほしい」かまでは決めてなかった。そこで悩んだ挙句、「今ここで理想の殺害方法を選ぶ」ことにした。発想がぶっ飛んでいる。
(苦しまんのは堪忍やし……どれにしよっかな~)
 おやつを選ぶような感覚で三つの殺害方法をチョイスする。撲殺、絞殺、そして刺殺の三点セット。
 まず撲殺。何かをリセットする時に使うあのハンマーに似たものが、兎の脳天をかち割る。
 鈍い痛み、明滅する星のような瞬き。それと共に血溜りが出来上がっていく。どく、どく、と脈打つ感覚があやふやな境界線の上に立っている感覚を与えてくれる。
 だが、何かが違う。
「ほんなら、次や次」
 傷なんてなかったとでも言わんばかりに立ち上がり、次の殺害方法を試すブーケ。実際に傷が癒えたその痩身に、今度は短刀が突き立てられる。鈍く光る冷たい刃が肉を切り裂き、内臓を抉る。焼印を押し付けられたかのように熱を帯びる傷口と、奪われるように冷えていく手足。
「せやけど、これもアカンなあ。次」
 再び傷が癒え、今度は手がブーケの首を締め上げる。ギリギリと少しずつ呼吸を奪われる中で、彼は確信する。
(これや、これ! 最高やん)
 息苦しい。暴れるように体内が沸騰する。体の自由が奪われる。支配されるのにも似た感覚。そのどれもがブーケの脳髄を溶かし、興奮と快楽に染めていく。惜しむらくは、自分を見つめる友人の顔が機械のように無機質なこと。
(こ、れが……)
 もし、自分を殺めることに対する苦悶が滲み出ていたら文句なかった。その表情と、瞳に映る自分の表情を焼き付けて死ねれば、きっと相手は絶対に自分のことを忘れない。
 ある者は「歪んでいる」と蔑むかもしれない。だがブーケにとってはこれこそ「愛」や「友情」と名付けられるモノの理想形なのだ。
「かん、に、んな……」
 今際の際に発したその言葉は、何に対する謝罪の意だったのか。
 その意味を理解できるものはもう、いない。

●目が覚めて、生きる
 こうして4人は、それぞれの体験を終えた。震える者、満足する者、記憶しようとする者、寝て起きたかのように伸びをする者。
 彼等の体験は記録され、膨大な記録の一として研究に活用されるのだろう。彼等の目標に向かって。
「お疲れ様、ありがとう」
 別れ際、境界案内人のそんな言葉を背に受けて、今日も彼らはそれぞれの人生を進んでいく。
 太陽の光が、とても眩しかった。

成否

成功

状態異常

なし

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