シナリオ詳細
ゴリラをプロデュース。
オープニング
●理由(ワケ)あってバナナ!
言霊というものがある。言葉には力があり、霊が宿るというのだ。
その力は個につけられる《名前》においても効力を発揮する。
なぜ、そう名付けられたのか。
なぜ、その漢字が使われているのか。
呼ばれるほどに人々は、その名の通り素晴らしくあれと人生を歩むものである。
だからもっと、真面目に考えなければいけなかったのだ――彼らの名前を。
「あぁ、なんて事だ……!」
観客席からあがる悲鳴に、プロデューサーはぺたりとその場で膝をついた。
逃げ惑う人々。その足元にはバナナの皮が散らばっており、ある者は滑り、またある者は現実逃避に「えへへ、銀テが落ちてるぅ」と虚ろな笑みで回収している。
ドムドムドムドム!!
ドスドスドドスドス!!
ステージの上で重なり響きあうドラミング。
ころがるトラック用の大きなタイヤ。
壇上の上で暴れる四匹のゴリラによって、その日のライブステージは幕を下ろす事になった。
●名は体(たい)を表しすぎる世界
「サイリウムをご存じ?」
拘束衣を彷彿とさせる装束を身に纏い、足を封じた女性――『境界案内人(ホライゾンシーカー)』ロベリア・カーネイジはクツリと喉奥で笑った。
「アイドルの応援に欠かせない物なのだとか。
それが一本も振られないステージでパフォーマンスをする事は、さぞ苦痛だったでしょうね」
――その絶望が続くままに、放置するのも一興ですが。
本気と冗談半々の顔で彼女がテーブルへ差し出したのは、ホログラムPP加工の星がきらめく薄い本。
いわゆる同人誌に似た一冊だった。
「この物語は、偶像……つまりアイドルを創り出す事ができる世界らしいのですが、
本の主役であるプロデューサーが、徹夜明けのテンションでアイドル達に適当な名前を付けてしまった結果、全員がゴリラになってしまったそうなのです」
名前を付けられてゴリラになる世界。
そんな世界にアクセスしてしまって大丈夫なのか?
戸惑うイレギュラーズ達を他所に、ロベリアは異世界へ渡る準備を始めた。
「それでは皆様、ご武運を」
- ゴリラをプロデュース。完了
- NM名芳董
- 種別ライブノベル
- 難易度-
- 冒険終了日時2019年10月19日 22時05分
- 参加人数4/4人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 4 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(4人)
リプレイ
●名は体(たい)を表しすぎる世界『偶像創生-アイドルヘヴン-』
この異世界を訪ねる前から、ユニット名は決めていた。
その名も《ライハ48》!!
「行けるのです! これで世界一のアイドル目指せるのです!」
『希望の花』ココル・コロ(p3p004963) は確信する。皆で決めたこの名こそ、次世代のアイドル達に相応しいと。
「がちでぱないえぐめの特典商法で売り上げに貢献しようっておもう、たぶん」
幼馴染の『妖精騎士』セティア・レイス(p3p002263)もローテンションで商魂を燃やす。握手券や生写真。魅惑のグッズで射幸心を狙い撃つ!
「いや待てふざけるな!」
そこへ異を唱えたのは『トルバドール』ライハ・ネーゼス(p3p004933)だが、気になるのは売り方ではなく。
「なぜ私の名前が使われて……? あと48はどこから!?」
「語感がいいからです!」
記憶に残る名前、大事である。
だが、ライハはまだ食い下がる。助けを求めて『蝶かげろい』カレン・クルーツォ(p3p002272)を見た。
「いい名ね、アイドルらしくて。女の子は誰だってシンデレラになりたいもの。
それはメスゴリラであったって同じよ」
「いや、話の論点はそこではなく、ユニット名に私の……」
「想ってあげるのよ。混沌の中心で愛を叫ぶゴリラ達を!」
「その前に私も思いたまえ! おのれ3人とも、謀ったな――ッ!!?」
「なんか大変そうですねぇ」
――と、ここで野外から声がかかる。彼の名はジョーク・グッドマン。
パーティーはすでに、異世界の事務所に転送されていたのだった。
●
「つまり、私のプロデュースをサポートしに来たと?」
閑休話題。説明を受けたジョークPは目を見開く。
「えぇ。女性ユニットととしてこれから世にドラミング響かせるあなた達を、理由(ワケ)あってプロデュースするわ。私の事はカレンPって呼んで頂戴」
前のめりなカレンを筆頭に、自己紹介をする面々。
「頼もしいです。僕はジョークPと申します。そして隣のスペースにいるのが……」
ゴリラと名付けられた故に、世界の法則によってゴリラ化したアイドルの魂達だ。
「そもそも何でこの子達の名前をゴリラにしたのです?」
「力強いパフォーマンスを売りにしたくて」
「ABCDなのは?」
「合体してキングになるかもって」
「君はアイドルに何を求めているのだね」
てへ★
可愛く舌を出しても許されないぞジョークP。現にゴリラ達は、ドラミングで彼を威嚇している。
いつ威嚇が攻撃に転じても可笑しくはない一触即発の空気。その中で、最初にアイドルの群れへ歩み寄ったのはセティアだ。
「だめなPのせいでゴリラの姿になってしまった、可哀そうなゴリラ。
つらかったよね。……アイドル、したかったよね」
ぎゅっ。
差し伸べた手が、群れのうちの一匹――ゴリラAを優しく抱きしめる。
「わたし知ってる。貴女がドラミング得意なのは、本当はリズム感がいいから」
アイドルはダンスも大事だ。その才能をセティアは信じて伸ばすと決めた。その信頼を、ゴリラAは本能で感じ取る。
世界の法則が残酷ならば、それすら利用すればいい。新たな名を与え、体を創り変えるのだ。
本当に最強可愛い名前にすれば、絶対最強可愛いアイドルになる。
だからわたしは、貴方にあげる。
魂を導く儚い花。戦い果てた戦士を導く夜だけに咲く花レイスリウムのお姫様の名前。
――わたし自身の名前。
「あなたの輝けるアイドルの名は【セティア】!!」
込められた願いが、想いが。光の粒子となって魂を包み、その身を創り変える。
背には妖精の名に恥じぬ神秘の翅(はね)を。眼差しには姫の品性を。
転生。顕現。今ここに史上最強の フ ェ ア リ ー ゴ リ ラ が 誕 生 し た !!
「何か変なのが生まれてないかーー!!?」
うなるツッコミ、光るセンス。騒がしさの中、ココルは自分の推しを観察していた。
もさり。ひと口バナナを食べ、眉間に僅かな皺を刻めるゴリラB。その小さな変化を彼女は見逃さない。
「ゴリラBさんはグルメなのです。だからきっと、家庭的でママみ溢れる感じ……そう。
グループに一人は居るお姉さんキャラなのです!」
溢れんばかりの包容力で、ガッシガシとお客さんの心を鷲づかむお姉さんポジション。
その重要性はゴリラBの魂にも深く刻まれている。不味いバナナでかげった瞳に光が宿った。
「貴女はきっと素敵なママゴリラになれる。強く願って!
貴女の名前は――【ココルママ】!!!」
カッッツ!!
ゴリラBの身体へ雷の如く、激しいエネルギーが降り注ぐ。
まばゆい光が過ぎた後、見えたその姿はまさに‟母性”。純白の三角巾を頭に被り、その身に割烹着を纏う。そして、その手にはマヨネーズが握られていた。
「っは!! 邪念が入って、マヨがちっちしちゃったのです!」
「ココルさん、それ以上言ってはダメよ」
禁忌の名を紡ぎかけたココルは、カレンの制止で事無きを得た。何はともあれ、こうしてまた一匹、アイドルの魂は生まれ変わったのだ。
そう――包容力の化身、ゴリドル・ココルママに!!
●
「皆ちゃんと向き合ってるわね」
後方で腕を組みながら幼馴染コンビの活躍を見ていたカレンが、ついに動いた。
彼女の推しはゴリラD。歯並びの綺麗な女の子だが、今は何やら怯えている。
その理由を、カレンはすぐに悟った。急成長した仲間達を見たら、優しいあの子はこう思うでしょう。自分が足を引っ張るかもしれないと。
だからこそ笑顔で接し、その手を取って優しく握った。
「歯並びが最高にキュートな貴方。……知ってる?能ある鷹は爪を隠す。
なら能あるゴリラは?そう、前歯を隠すのよ」
不安に満ちたゴリラDの心。その隙間にカレンPは潜り込み、じんわりとほぐしていく。
「貴女は誰よりも素敵なゴリラよ。
ゴリラに遜色ないしメスゴリラとか言う奴なんて、ぶん殴ってやりなさい。
Pも手伝うわ。何だったら血祭りにあげてウッホホ祭り開催しましょ」
名前が必要ね。いつまでもゴリDとか声優の相性みたいに呼ぶのも可哀想だもの。
だから貴女は――【カレン】!
「Pと同じ名前だって?何を言うの、Pの前に着くべきは推しアイドルの名前。
だから、カレンPである私の推しであるゴリD、あなたは紛れもなくカレンなのよ!!」
新たな名を受け取ったゴリドル・カレン。しかし彼女の姿に変化はない。ありのままの自分を、カレンPが認めてくれたのだから。
●
一方、ライハはゴリラCとの付き合い方に苦戦していた。
「そういえば君は、鳴き声が素晴らしいのだとか。
ふむ、これでも私は吟遊詩人の身。歌唱の指導をしようではないか」
いや待て。ゴリラなら言語が通じる訳がないのでは? ドラミング文化に私の言葉が通じるのか?
現にゴリラCはこちらの話を聞いていない。――というより、ツンとそっぽを向いているような。
「いや……諦めてはならない。
たとえ彼女の喉がうほうほで構成されていても、別に喋れない訳ではないのだから。
ここがなんとかして腕の見せ所というヤツだろう。帰りたい」
「ライハさん、最後に本音もれてる」
限りなく前向きに見える後ろ向きな発言にツッコむセティア。二人のコントじみた会話を阻害するように、うほほな美声が事務所に響く。
ゴリラCだ。鋭く、力強い旋律。それはまるで、私は他の娘と違う。助けなんか必要ない!
と実力を誇示しているようで。
「―――」
ライハはその歌声から、彼女の気持ちを汲み取った。
「なるほど。確かに美声だ。だが、それでは喉を傷めてしまう」
目には目を、歌には歌を。紡ぎ返された歌声は、次元が違う。圧倒的な歌唱力にゴリラCが目を見開く。
「歌唱に必要なのは喉だけで歌おうとしない事。腹だ。腹式の力を身に着けるのだ」
真似しだしたゴリラCの背に近づいて、姿勢のレクチャーも加えるライハ。近づく一人と一匹の距離。ストイックな指導。それでいて、
「ふむ。そういえば名前か。
これしかあるまい。君の名前は――【ライハ】だ」
自分の名前を与える優しさ。
――キュン♡
「おい、今なにか凄い音が聞こえたぞ」
「見て! 名前を与えられたゴリドルのライハさんの姿が!」
全身の黒い体毛が――ライハの髪と同じ色に染まってゆく!!
「あなた色に染まる(物理)というやつね。ダメよアイドルとのスキャンダルは」
「なぜ私は怒られているんだ……?」
たらし込んだ事実はとも角、ライハの指導を見ていた他のゴリドル達も、自分磨きに俄然やる気だ。各々が担当Pの指導を受け、才能が花開く――。
「皆さん、ありがとうございました! 名前だけでなく稽古まで……!」
全てを終えたゴリラ達の成長は目覚ましく、見ていたジョークPも心を入れ替えたようだった。
「これからは、ちゃんとメンバーと向き合ってくださいです」
ココルの念押しに、彼は笑顔を見せる。
「勿論。アイドルとプロデューサーは一心同体。僕も頑張ります。この――
メ ス ゴ リ ラ 達 と!」
●
警察は本日4時頃、メディアに対し、アイドルグループ《ライハ48》のメンバー、カレン容疑者を暴力容疑で逮捕した事を明らかにしました。警察の調査によると、カレン容疑者は被害者の男性ジョーク・グッドマン氏(26)を血祭りにあげてウッホホ祭りをしたとの情報です。
調べに対しカレン容疑者は「うほっ! うほほ。うほうほ!」と容疑を否認していますが、ジョーク氏は未だ意識不明です。
《ライハ48》といえばつい先日、同グループのメンバー、ココルママさんが子供向けの人気番組『うほスタ!』でバナナの味くらべコーナーのレギュラーに大抜擢されたばかり。他2匹の活躍もすさまじく、今後の彼女たちの活躍に各界からの注目が集まっています。
さて、次のニュースです。都内の動物園にパンダの赤ちゃんが――
成否
成功
状態異常
なし
NMコメント
今日も貴方の旅路に乾杯!ノベルマスターの芳董(ほうとう)です。
初めてのライブノベルでアイドル活動はじめてみました。どうぞ宜しくお願いいたします!
●目的
異世界にあるアイドル事務所に乗り込み、
4つのアイドルの魂にアイドルらしい名前と、アイドルユニット名をつける
●世界『偶像創生-アイドルヘヴン-』
現代日本とほぼ変わらない世界です。違う所といえば、
どんな服装や外見の異世界の人間も驚かずにすんなり受け入れてしまう事と、
《プロデューサー検定》で資格を得たプロデューサーが、無から偶像を作り上げる能力を持っている事くらいです。
本の登場人物
ジョーク・グッドマン(26歳/男性)
弱小アイドル芸能事務所『ゲンセキプロダクション』に所属する、
《アイドル検定2級》の資格を持つプロデューサー。最大4人までのアイドルを創り出す事ができる。
こげ茶色の髪に慈愛が滲む緑色の目を持った優しそうな青年。超ド級の粗忽者。
ゴリラA
性別不明。名前に合わせた姿を取る性質を持つ、アイドルの魂。
ジョーク氏によって生み出された。ドラミングが得意。
ゴリラB
性別不明。名前に合わせた姿を取る性質を持つ、アイドルの魂。
ジョーク氏によって生み出された。バナナの味にうるさい。
ゴリラC
性別不明。名前に合わせた姿を取る性質を持つ、アイドルの魂。
ジョーク氏によって生み出された。鳴き声がきれい。
ゴリラD
性別不明。名前に合わせた姿を取る性質を持つ、アイドルの魂。
ジョーク氏によって生み出された。歯並びがいい。
●その他
名付けのポイントとして、男性アイドルユニットと女性アイドルユニット、どちらにするか決めると進めやすいかもしれません。
また、どんなアイドルになって欲しいかプレイングで理想を書けば、アイドルの魂達にその願いが反映される場合もあります。
『境界案内人』ロベリア・カーネイジは呼ばれれば顔を出しますが、大したサポートは出来ません。
それでは、よろしくお願い致します!
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