シナリオ詳細
<NF決戦>恐怖の二枚刃! 剪刀バッタ軍曹
オープニング
●
もしも悪の大王が現れて
世界征服を企んだら
ぼくらは どうする
もしも悪の怪人が現れて
ぼくらの街をじゅうりんしたら
きみは どうする
さあ 蹴散らすんだ
僕等のヒーロー パンドラエイト
悪の怪人 ぶっとばしすすめ
ジャンプ!
光と共に
キック!
風と駆け抜け
アクセルカレイドぶっぱなせ!
行け!
倒せ!
やっつけろ!
ぼくらのヒーロー パンドラエイト!
●
それはチョークで書かれた、ひどくつたない絵だった。
かろうじて人型をしている。
頭には二本の触覚らしきもの。手はハサミの様。
大きな目はぐるぐると塗りつぶされていた。
目を回しているようにも見え、身体には絆創膏らしきものがいくつか貼られている。
見ようによっては、どこか痛々しげな表情も垣間見え――
「怪人が好きなのかい?」
ふと。後ろから声がする。
小さな作者が振り返ると、一人の男が居た。
物静かでどこか愁いを帯びた壮年の紳士だった。
作者はマーケットの片隅で、所在なさげに母を待っている少女である。
六歳程に見える。おおかた母は買い物にでも行っているのであろう。
「うん」
知らない人についていってはいけないとか。
悪い人がいたら大声を出しなさいとか。
そういった教育は一通り受けている、少しおとなしい少女だった。
「変わっているね」
苦笑いをする男に、少女は頬を膨らませた。
「かわいそうじゃん。負けてばっかで。怪人」
「……そうだね」
男はほんの一瞬だけ言葉を詰まらせる。
「どうして怪人は負けるの?」
まるで決まっているかのように怪人は負ける。
ヒーローに倒される定めを、背負わされでもしているかのように。
少女には論理立てた説明は出来なかったが、とにかくそれが気にくわないらしい。
「ねえどうして勝てないの?」
唐突な少女の問いに、男は答えることが出来なかった。
「これあげる」
受け取ったのは、小さなお守りで。
「君は……」
男は拳を握り、唇を噛んだ。
――負けないで!
言葉を聞き終える間もなく、男はその場から消えていた。
「コニー! 誰? 今の人は!」
ダメじゃない。いつも言ってるでしょ!
知らない人には――
●
イレギュラーズが現場に駆けつけたとき、そいつは居た。
「来たな、パンドラエイト!」
朗々たる叫び。
さながら練達のヒーロー劇を思わせる場面展開に、イレギュラーズは苦笑を禁じ得なかった。
この日イレギュラーズが受けた依頼内容は次のようなものである。
曰く悪の秘密結社ネオ・フォボスが幻想支配を目論んでいる。
彼等はクローン怪人を次々に作り出し、幻想の人々を脅かしていた。
イレギュラーズは去る夏の日、ローレットのサマーフェスティバルへ乱入した怪人達を撃退したのだが。
怪人が持っていた日焼け止めには、なんとネオフォボス秘密基地の住所が書かれていたのだった。
コンプライアンスの良さが仇となったのか。
ついに幻想国王『放蕩王』フォルデルマン三世からネオフォボス討伐の大規模依頼が舞い込むに至る。
こうしてイレギュラーズは悪の総帥ナンイドナイトメアを倒すため、ネオフォボス秘密基地に攻め込んだのである。
地下の秘密基地へ至る門の前に敵――剪刀バッタ軍曹が待ち構えていたのであった。
「パンドラエイト……いや、イレギュラーズよ」
突如、剪刀バッタ軍曹のトーンが落ち着いたものになる。
どうしたんだ。急に。
「怪人は、何のために生まれてくるのだと思う?」
いや、どうしたんだ。急に。
「我々は悪として生み出され、ヒーローに打倒される」
まあ。いやでも、どうしたんだ。急に。
「それは安心感を伴う、定型的なカタルシスであるのか」
ひとまずイレギュラーズは、訴えを聞いてやることにした。
「私は。私はね。人間が嫌いじゃあないんだ」
――悪が悪として事を為し、壮絶に散る。
それが人々の幸福に繋がるならば、私の生にも意味があったと言えるんじゃあないのか。
なあ。イレギュラーズ。
君が。もしも君が本当にヒーローであるならば。
私の生に、そんな意味をくれないか――
場に余りにそぐわぬいくらかの言葉を、ただ荒野の風が流し去り。
束の間の静寂を切り裂いたのは、やはりハサミの音で。
「なあんて、な!
ブワッハハハハハハ!!
我が名は!
剪刀バッタ軍曹でーーある!
このハサミで貴様等をズタズタに引き裂いてくれるわ!!」
- <NF決戦>恐怖の二枚刃! 剪刀バッタ軍曹完了
- GM名pipi
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2019年10月22日 22時50分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
サポートNPC一覧(1人)
リプレイ
●
魔種を滅ぼす勇者達のことを人はイレギュラーズと呼ぶ。
だが彼等には大いなる秘密があった。
――stand ready.
モータの駆動音と共にローレットの屋根が割れ、ロケットの姿が顕となる。
――3,2,1,0.
轟音と共に昇るロケットは山を越え谷を越え、事件の現場にやって来る。
着地するヒーロー達。八人のヒーロー。パンドラエイトだ。
慌て憤る怪人は戦闘員をけしかけてくる。
八人の勇者は敵もやっつけ、苦しむ人々を救うのだ。
練達で流行る子供向けの特撮ドラマである。
だがこの荒野に作られたものが撮影セットでなく、本物の秘密基地だとしたら。
根城にしているのが本当の悪であるとしたら。
それらが魔種の手によるものだとしたならば――
――語ることも騙ることも許されぬ、満月に揺れる緋の尾。
涼やかな瞳に情熱を隠して優美なターンに外套が翻る。
「パンドラレッド」
大岩の上、鞘走りの音色。
「とうッ!」
風を切る魔剣蒼嵐。
「鋭き刃は守る為! 蒼き疾風パンドラブルー!!」
くるりとまわってきらりと光る。
愛らしい猫の手ポーズにウィンクが決まった。
「八百の怪人を爆散させたバンドライエロー! お前が八百一人目となるにゃん♪」
ふわりと風、なびく豊かな髪とスカート。
みずみずしい肢体に妖艶を纏い。
「不幸なんてなんのその! 魅惑の桃色神秘! パンドラピンクなのデスぅ♪」
「夜よりも尚気高き黒……それがこの俺!」
「わしが! わし達が! パンドラブラック!!」
「パンドラブラック壱号!」
「わしは弐号」
「このレザーの光沢を恐れぬのならかかってこい!」
紫煙燻らせ。レンズの向こう、鋭い瞳には知性の煌めき。
壮年は苦みを湛えて。
「パンドラシルバー」
深い声音を乗せた兄貴風が吹き抜ける。
細剣を抜き、ラッサンブレ、サリューェ。輝く凍気を刀身へ纏わせて。
「パンドラパープル!」
そして――あれは、なんだ!?
鳥か、飛行種か、それともUFOか!?
大壺蛸天から舞い降りたのは。
「勿論、妾なのじゃ!」
其は大いなる者。
「今宵の月は血に飢えておる……天に月・海に幸・人に愛! 悪いやつらは許さないのじゃ!
パンドラムーンゴールド! 月が代わりにおしおきなのじゃ!!」
月が! だいじょうぶ。『が』だから安全。ヨシ!
――説明しよう!
パンドラムーンゴールドとは、所謂戦隊物の追加戦士枠で登場したなんかすごい戦士だぞ!
かくして九人の戦士達は岩山に立ち――
パンドラエイト?
「ノンノンノン……今日は特別! 追加戦士のアルテナちゃんだ! 我ら! 九人揃って!」
「「パ ン ド ラ ナ イ ン !」」
爆発――続く轟音。
「ブワッハハ!!」
怪人が腕を振り上げ、先端の巨大なハサミをジャキジャキと鳴らした。
「来たなパンドラエ……ナイン!!」
――説明しよう!
ローレットは通常八名単位で仕事を行うことが多いとされる。
この日、たまたま九名だったのは、オープニングを書いた者が忘れていたからに他ならない!
「我が名は!
剪刀バッタ軍曹でーーある!
このハサミで貴様等をズタズタに引き裂いてくれるわ!!」
控えていた無数の戦闘員が、甲高い鬨を上げて迫り来る。
さすがは敵の本拠地である。
大地を覆わんばかりの敵に対して、パンドラナインは僅か九名。
その戦力差は、余りにも多勢に無勢。
一体どうなってしまうのか!
●
甲高い叫びを上げながら、戦闘員がじりじりと迫ってくる。
イレギュラーズ一行は一歩も退くことなく。
緋色の影が先陣を切る。軽やかなステップはアパショナータの高みへ。
飛びかかる戦闘員が次々に跳ね飛ばされて往く。
「ヒーローノリは恥ずかしいけどね」
なぜって。つまり――『実はヴィランのパンドラレッド』ヴォルペ(p3p007135)は笑う――そういう訳だ。
特撮。パンドラナインが置かれた状況は、ある種奇っ怪だ。
戦場では不合理極まる闘争が繰り広げられているが。あえて世界を救う特異運命座標の定めと比較するならば、あるいは全てがそんなものやもしれぬ。
敵の親玉『剪刀バッタ軍曹』は、威勢の良い名乗りを上げたあとは、部下達に任せきりで仁王立ちをしている。
王道は知らぬが――『ダンディズムのパンドラシルバー』ジョージ・キングマン(p3p007332は眉間に皺を刻んだ。戦闘員を無視して親玉を狙うのは、おそらく『ヒーローらしくは無い』のだろう。
踏み出すジョージの型は無形。
躍りかかる戦闘員に拳の裏をたたき込み、次なる敵へ蹴りを見舞う。
何人にも縛られることなき、無法の流儀《デスペラード》――海洋式格闘術、基礎の壱。海鳴。
「パンドラブラック弐号!」
敵陣のただ中で今一度名乗りを上げた『謎のパンドラブラック弐号』カンベエ(p3p007540)の元へ、戦闘員が殺到する。
次々に繰り出される拳蹴の猛襲に、さしもの剣侠とて――
「ウハッハハ!」
笑い飛ばし、されど鋭い視線は敵を射貫いたまま。
「わしのやることはこれ以外に御座いません!」
鯉口を切り、後の先が敵を一刀に打ち倒す。
イレギュラーズ――パンドラナインの猛攻は苛烈を極め、しかし敵の勢いもまた止まる所を知らず。
側転しながら迫ってくる数名の戦闘員を前に、『風のパンドラブルー』シャルレィス・スクァリオ(p3p000332)は剣を上段に構えた。
拳をいなし、蹴りをかわし。
「行くよ!」
蒼嵐から放たれる鋼の暴風が敵陣を荒れ狂い、戦闘員達を跳ね飛ばす。
「ヒィー!」
「ヒィー!!」
ドミノ倒しのように崩れる戦闘員の中から、更に数体がバク転で迫る。
蹴りを払い、殴りを受け止め、ラリアットをかわし。
「はは、いいね。けどそれじゃおにーさんには届かない」
「ウォラァ!」
戦闘員が見せた隙に『喧嘩上等パンドラブラック壱号』伊達 千尋(p3p007569)が拳をたたき込む。
顔面を痛打した敵がもんどり打って倒れ、いきり立ったもう一人へ千尋は強烈な蹴りを見舞った。
この世界のケンカに余り馴染んでいないとは言うが。なかなかどうして、通用するものだ。
「くらえっ! 妾のムーンパワー!」
青を歌う冷たい月が呼び覚ます――絶望。
放つ『大いなるパンドラムーンゴールド』デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)は楽しげに。
「マジカル・ディスペアー・ブルーなのじゃー!」
戦闘員がブっ飛んだ。
――説明しよう!
マジカル・ディスペアー・ブルーとは攻撃集中と全力攻撃で威力を高めたすごいマジカルな必殺技だ!
「いっくにゃー!」
くるりと身を翻した『怪人を八百人爆散させたバンドライエロー』シュリエ(p3p004298)の周囲に、きらきら光が舞う。
「ちょろちょろとうるさいにゃ! 纏めて吹っ飛ぶにゃー!」
無数の光弾が驟雨の如く敵陣をなぎ払う。
イレギュラーズは猛攻を続けていた。
個々の戦闘員は脆弱だが、圧倒的な数は徐々にイレギュラーズを傷つけつつあった。
「フフフ、それでは行きましょー!」
幼さを残す嫋やかな肢体は香るほど艶やかに。
妖艶な笑みにカメラがフォーカスし、『魅惑のパンドラピンク』村昌 美弥妃(p3p005148)が魔性を解き放ち。
艶やかな力がパンドラナインの傷を暖かく包み込む。
口元の赤を指で拭い捨て、千尋が口角をつり上げた。まだやれるなら。
男の子として生まれたからには、マジでいっぺん言ってみたかったセリフがある。
「ここは任せて先に行け!」
ってさ!
男子たるものイキりたおしてみせやがれ!
「ウォラァ! 『悠久-UQ-』ナメんじゃねえぞコラァ!!」
CM!
●
それは幾ばくか前の出来事であった。
現場にたどり着いたイレギュラーズ一行を待ち受けていた怪人『剪刀バッタ軍曹』は、己が存在意義を不意に問うたのである。
一瞬の静寂の後――怪人は高笑いをあげ臨戦態勢に入ったのだが。
「待たれよ!」
止めたのはカンベエだ。
命の奪い合いはどこでも――今でも起こっている。
だからこそ尊重されねばならぬものもあるのだ。
眼前の敵を何も知らずして斬るなど、カンベエに出来よう筈もない。
少なくとも、この剪刀バッタ軍曹という敵なれば。
「お互い急ぐ戦でも御座いません。どうです、膝を交えて話など。わしも素で話したい」
国を知らぬ。己を知らぬ。男カンベエ。身一つでここへ来た。
「ヌウッ、なんだと!?」
怪人は声を張るが。
「いや、わたしも望むところ」
芝居がかった仕草を解いた。
怪人『剪刀バッタ軍曹』には人であった記憶がないと言う。
カンベエが唸る。記憶を持たず、なぜ悪を為すのか。
イレギュラーズがイレギュラーズたるように、怪人もまた怪人であるのだと述べ――あの堂々巡りに陥っていたのだと続ける。
「俺も元いた世界じゃ社会から外れてるようなモンだったからなー。アンタの気持ちが少しは解るつもりだぜ」
千尋の言葉に、怪人は岩の上へと腰を降ろした。
「生の意味、意味デスかぁ……難しいデスねぇ……」
美弥妃が手のひらを頬に当て思案し、述べる。
どんな生物とて生きること、ここに居ることに意味がない筈などないと。
「怪人の存在意義を知ってるかい?」
ヴィラン(ヴォルペ)の問いは怪人だけでなく、その場に居る全員へ投げかけられたかのようだった。
「君たちは人々の希望を作り出す存在だ」
ヴォルペは説く。
ヴィランが居なければヒーローはヒーローと呼ばれないと。
余を乱し、現れたヒーローを追い詰め、最後は壮絶に散ることこそ怪人の輝かしい生き方なのだと。
怪人は腰を下ろしたまま一行の話に頷いている。得心行った所があるようだ。
怪人は悪を為さねばならぬ。
パン屋を襲い、子供を脅かし、馬車ジャックしてきた。
そうして生きるうちに、この怪人は人に対して愛着を持つに至ったそうだ。
(その生き様、奇々怪々。人に仇成す存在ながら人を愛すとは……しかし、立ちはだかるならやはり斬らねばならん)
「わしの知る限り。太陽も月も、その姿が見えなくなるのは一瞬。ならば悪と名乗る者が僅かにしか世界に影を落とせないのも、必然」
諭す。
「疑問にこそ思えど、世界が悪と断じる影がいつか光に敗れるのは当然」
「人に寄り添いたいなら手を貸そう、立ち塞がるなら武器を構えよう。
おにーさんは、キミの望みを叶えるものさ――」
「人間が嫌いじゃない、って言ったよね」
シャルレィスの問いが最後になるだろう。
「人が好きなら、敵対する事なんか……!
怪人だって人と共に歩いたっていいと思うんだ!
ヒーロー物でだって、味方になる怪人はいるんだよ!!」
思いの丈を真正面からぶつける。
「私は――やはりキミ達と戦いたい」
ぽつりと溢した。
「……そっか」
答えは分かっていたのかもしれない。
「君には君の、譲れないモノがあるんだね。
君が『怪人』を貫き通すというのなら、私は『ヒーロー』として全力で戦う事でそれに応えるしかない……!」
――でも、忘れないで。
君がそれを望んでくれるなら。
「私は最後まで君に差し伸べる手は持っているんだ……!」
「信念ってヤツだ。互いのな」
千尋は続ける。
「アンタがやってる事は悪い事かも知れねーけど、アンタがそれをやろうと思った気持ちは間違ってねーよ。マジで。多分な」
「ありがとう」
礼を述べる敵へ「不思議な怪人だ」と溢したジョージがゆっくりと立ち上がる。
「怪人の生き様など知らないが、悪の、悪党なりの筋を通すなら、それに俺も応えよう」
「あなたが怪人として生を受け、怪人として生を全うするのが『意味』ならば……」
美弥妃の言葉。
「ワタシたちは全力でぶつかるのが今ここにいる『意味』になりマスぅ!」
その言葉に怪人が笑った。
先ほどまでの演技がかった高笑いではない。どこか暖かく、それでいて微かに寂しげな笑みだった。
「キミ達と出会えて良かった。ならば挑んで来て欲しい。全力で」
「あなたがいなければ成立しないこの『意味』のぶつかり合い!それに答えマスよぉ!」
腹は決まった。
「あ、話は大体終わったにゃ?」
「まあ、そうだな」
シュリエの問いに頷く怪人。
「ならば参ろう」
「ちょいタイム! ちょい待って! 準備すっから!」
「なに?」
「準備にゃ」
「準備?」
「持つにゃ」
「アルテナちゃんちょっと火薬仕掛けるから手伝って」
「う、うん。どうすればいいの?」
「やり方? 大丈夫俺も解らないから!」
「えええ」
「……なんだこのコード、一本切っとく?」
「それはダメにゃ!」
「おっ」
なにやら思いついたのか、慌ただしく動き始めるイレギ……パンドラナイン!
「ほう」
「これにゃ」
黄色の爆薬を地面へ。
「準備は、大丈夫だろうか」
やや心配にもなるジョージではあったが。
「火薬火薬! 私ブルーね! みんなのカラーのやつちゃんとある?」
「大丈夫にゃ」
受け取ったシャルレイスもセットを始め。
「なるほど、粋なことを考える」
腕を組んだ怪人に、シュリエは得意げに頷いた。
シュリエとしては様々な疑問もあるが、あえてレールに乗ってやるのも一つの道と考えた。
「ほらアルテナも自分のカラーを埋めるにゃ!」
「え、え、これでいいの?」
「最近入った期待の新人、お前の存在でパンドラエイトはナインになったにゃ! そのつもりでポーズと口上を考えるのにゃ!」
「え、ええええ。う、うん」
「元気ないにゃ、それじゃヒーローは務まらないにゃ!」
「大丈夫だよ、燃える心があればきっとうまくいくから!」
「うん!」
怪人もうんうんと頷いている。
「フフフ、ワタシがヒーローだなんて面白いデスねぇ」
こちらもピンクを受け取った美弥妃である。
どちらかと言えば『魔法少女』なのだが。この際割り切っていた。
「ほらほら気を付けてね? 重かったらおにーさんが運んであげるから」
かくして。
「ヒーローは爆発だ!」
シャルレイスが剣の柄に手をかけ、高らかに宣言する。
「やー、サーセンサーセン、待たせちゃいました?」
「いえ全然」
答える怪人に、ウォッホン――千尋の咳払い。
集合写真の準備のように、ヒーロー達はいそいそと並び。
「ほらほらアルテナさんも名乗り名乗り! ポーズもつけてね」
まごついた『パンドラパープル』アルテナ・フォルテ(p3n000007)をシャルレイスが小声でサポートする。
「さっきのだよね、分かった」
「うんうんOK! 最後もバッチリ決めるよ!」
せーのっ!
冒頭へ続く。
●
三十秒のCMが終わりを告げた。
こうして高らかに名乗りを上げたパンドラナインは、瞬く間のうちに戦闘員をなぎ倒したのである。
「妾には難しいことはわからぬ。悪が正義に打倒される、そこに難しい理屈は不要なのじゃ」
指差し突きつける。
「何ィ!」
「故に、お主が人間が好きじゃろうと、雨の日に濡れた子犬に傘をさしのべる優しい心の持ち主じゃろうとお主が悪である限り正義の味方の妾はこう言おう」
悪いやつらは許さないのじゃ!
お主は悪らしく妾達は正義らしく、そして華々しく死ぬが良いのじゃ!
高らかな声音と共にマジカルコンボが炸裂する。
――説明しよう!
マジカルコンボとは青い月→赤い月→アナセマのマジカルなBS漬けコンボだ!
「まだだ、まだ終わらんよ!」
「それロボットモンな」
「ぬう!」
「回復だけだと思いましたぁ?」
美弥妃もパンドラエ――ナインの一員である。
強大な魔力の奔流が大鎌を象り、怪人を袈裟懸けに切り裂いた。きらきらとした生命エネルギーが迸る。
「言っておくにゃ」
「なぁんだ!?」
「倒される悪の怪人に余計な過去も思想も要らねーにゃ。お前との戦いは派手に、わらわ達の正義の戦いとして宣伝するにゃ」
「ワッハハ! それでこそ!」
「行くにゃ!」
放たれるべきでない災厄。己が力の根源、その一端を解き放ち――獄式『災禍』。
続く怪異憑式『毒葬』。胸元へと突き込まれた爪に怪人は絶叫し。
「行くぞ!」
シャルレイスの剣撃乱舞が怪人を追い詰め。
「怪人、剪刀バッタ軍曹。貴様は強い。だが、その程度か?」
無数の傷を負いながらも辛うじて踏みとどまった怪人に、ジョージはあえて挑発を投げかける。
「ほざけえ!」
躍りかかる怪人のハサミが襲い。
「貴様は強い! だが悪ならば、それを超えて打ち砕くまで!」
ジョージの無法。無形海鳴から放たれる拳が怪人を吹き飛ばす。
最期に果てるとしても、ヒーローに並ぶほどに強いのだと、生き様を見せてみろ!
怪人最後の特攻に。
ヴォルペは右手に浮かぶ螺旋。描かれた蒼き鎖を解き放ち。
「俺の愛しい双子姫……゛blu culla゛――」
これなんて、ヒーローっぽくない?
「――燃え盛る氷華に抱かれて眠れ」
「ヌウウウ、これは!」
「気づいたで御座いますか」
足下に仕掛けられていたのは――
「強敵で御座いました」
「グワアアアア!」
「まあ、八百一人の中では一番手強かったかにゃ!」
シュリエが猫の手ポーズをキメた。
――小さな木の十字に、焼け残ったお守りをかけたのはシャルレイスだった。
確かに、悪党には悪党の、似合いの最期があるだろう
「だが、願わくば、次に産み落とされる時は、人間として出会うことを祈っておこう」
ジョージは静かに祈りを捧げ――
最後に説明しておこう。
この解説はデイジーのスキルをなんやかんやしてお贈りしたのである。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
依頼はご覧のスポンサーの提供でお贈り致しました。
今回は称号いっぱいです。
それでは。またのご参加を心待ちにしております。pipiでした。
GMコメント
戦え、イレギュラーズ!
負けるな、イレギュラーズ!
実は特撮未履修のpipiです。
好き放題暴れましょう。
●目的
剪刀バッタ軍曹と戦闘員をやっつけろ!
とにかく格好良くやりましょう。
特撮ノリ?
書いてる人が分かってないからイイんだ。
とにかくアクセルカレイドとかぶっぱしたりましょう。
こういうのやっぱ、ノったモン勝ちな所とかあるし!
●ロケーション
ネオフォボス秘密基地。でっかい門の前です。
木とか岩とか廃屋とかあって派手なアクション取り放題です。
●敵
・剪刀バッタ軍曹
驚異的なジャンプ力と、ハサミのような腕が特徴の怪人です。
非常に攻撃的で、どんどん前に攻めてきます。
近距離中心に高威力単体スキル、範囲攻撃スキル、単体遠距離スキルなどを持ちます。
持ち味は出血です。
一応は難易度相応に強いんですが。まあ、その辺はあまり重要じゃないでしょう。
普段はシルクハットをかぶった壮年に擬態し、幻想王都に潜んでいたようです。
その真意は――
『ポイント』
・準備する前は攻撃してこない。
・会話にノってくる。
・人生(怪人生)に悩んでる。
・人間が好き(隠しているつもり)。
・倒すしかない。
・とどめをさすと爆発四散する。
・戦闘員×いっぱい
すんげえ一杯いて、果敢に立ち向かってきます。
めっちゃ弱いので、ぼこぼこにしてやりましょう。
●同行NPC
・『冒険者』アルテナ・フォルテ(p3n000007)
両面型。剣魔双撃、シャドウオブテラー、ディスピリオド、格闘、物質透過を活性化しています。
皆さんの仲間なので、皆さんに混ざって無難に行動します。
具体的な指示を与えても構いません。
絡んで頂いた程度にしか描写はされません。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
Tweet