PandoraPartyProject

シナリオ詳細

チョコレイト・ダンジョン!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●乙女の一念、岩をも砕け!
 名も無き美少女は燃えていた。
 愛と情熱に燃えていた。
 より具体的に言うと、愛という名のチョコレイトドラゴンと情熱という名のチョコレイトゴーレムにバーナーで炙られていた。
 なにチョコが火ぃ吹いてんだよ溶けろよ! と青筋浮かべて炎を振り払った無名美少女は、握りしめた武器を手にチョコレイトドラゴンへと飛びかかる。
 全ては夢のため。
 全ては己のため。
 全ては超高級チョコレートを手に入れイケメンを片っ端からゲットし逆ハーレムを作るという理想のため。
 美少女は飛び――そしてもっかい炙られた。

「ヒッヒッヒ、よくきなすったねえ。
 この先は古い魔女が残したお菓子の家……いンや、お菓子の迷宮さね」
 子供まるまる入りそうな巨大鍋をぐるぐるとかき混ぜる黒衣の老婆。ぐつぐつ煮える音と湯気。
 老婆は長い鼻をひとなですると、軋むように笑った。
「伝説によりゃあ、最初は一枚のチョコレートビスケットから始まったそうさ。
 お砂糖に魔術を施して作った菓子は動き出して、自分とそっくりのお菓子を作った。
 そうしてできあがった二つのお菓子は自分とちょっぴり違うお菓子を作った。
 そうしてできあがった四つのお菓子は自分とちょっぴり違うお菓子を作る。
 こうして倍に倍に増え続けたお菓子は増えに増えてふくれあがって、この辺りを覆ったって話だよ。ヒヒッ」
 老婆がふしくれだった指で窓を指し示す。窓の外には奇妙に傾いた塔が立っている。
 まるでビスケットやチョコレートで組み上げたような傾塔は、不思議と鳥すら寄せ付けない。
 特別な魔術で壁が守られ、張り付くことすらさせないというのだ。
 老婆は鍋に不思議な色の液体をとくとくと垂らし、また軋むように笑う。
「今やあそこは立ち入り禁止。パンピーが入ればたちまちジャムにされちまうって話さ」
 ヒヒヒ、と老婆は笑って火をとめた。
 鍋に指をちょんとつけて、熱さもきにせずひと舐めする。
 うまい! と叫んで謎の光を発した。
「なにをしてるのかって? チョコレート作りさ。バニラの香りのミルクチョコをね……ヒヒッ、灰色の王冠(グラオ・クローネ)の挨拶回り用さ」

●チョコレイト・ジュエル
 甘い甘い砂糖の香り。
 ホワイトとピンクで彩られたストライプの壁ぞいに、色鮮やかなケーキがずらりと並んでいた。
 中央では小さな噴水のようにチョコレートソースが流れている。
 ここは王都のスイーツバイキングショップだ。
「幻想貴族の間でもグラオ・クローネにちなんだお遊びが行き交っているのはご存じかしら?」
 チョコレートのかかったイチゴをフォークに刺して、『色彩の魔女』プルー・ビビットカラー(p3n000004)は『嗚呼なんて甚三紅』とうっとり呟いた。
「宝石、家具、箱馬車に靴……貴族はいつもいいものを持ち寄って、互いの力を見せ合うものよね。チョコレートだって同じことよ。よりいいものを送りつけて、見えない戦いをしているの」
 だから、と。
 プルーは舌先でイチゴについたチョコレートを舐めた。
「びっくりするほど高級なチョコレート素材の回収を、依頼してきたのよ」

 舞台はウワサのお菓子の迷宮(チョコレイト・ダンジョン)。
 フシギな魔術で作られたお菓子たちのお菓子たちによるお菓子たちのためのダンジョンだ。
 立ち入るものはお菓子のモンスターが容赦なく襲いかかる恐ろしい場所である。
「外からはそう見えないでしょうけど、中は無限に階層があるかのように続いているの。
 あのダンジョンに挑戦して、特定のモンスターから採取できる『チョコレイト・ジュエル』を一定数獲得してくること。それが依頼内容よ」
 最後にイチゴを頬張り、ひとしきりスイーツを楽しんだプルーはコインをテーブルにころりとやった。
「後はみんな任せたわ。それじゃあ、楽しんで」

GMコメント

 いらっしゃいませ、イレギュラーズの皆様。
 こちらはスイーツバイキングショップ『ファン・リブラン』でございます。
 お客様方はお菓子の迷宮に挑む依頼を受けた方々でございますね?
 お題は頂いておりますので、相談中はどうぞスイーツをお楽しみになってください。

【依頼内容】
 『チョコレイト・ジュエル』を30個以上ゲットすること。
 当アイテムは直径6センチほどのチョコレートに似た石です。
 不思議なきらめきをもっていて、宝石でいうハートシェープ・ブリリアントカットに似た形状をしています。
 弱いモンスターであれば1個、特に強力なモンスターであれば5個ほど獲得できると言われています。

【お菓子の迷宮(チョコレイト・ダンジョン)】
 無限に階層の続く魔法の塔です。
 景色は階層ごとに大きく異なりますが、全体的にお菓子お菓子しています。
 例を挙げると――マシュマロ花畑、クッキーハウス、生クリーム川、キャンディプールといった具合です。
 多くの壁は特別な魔法菓子でできており破壊やすりぬけといったことがでいません。

【探索判定】
 階層を進むごとに判定(ダイスロール)が行なわれ、以下のうち1~2種の現象が起こります。
・A:弱めのモンスター1~3体が襲ってくる(逃走可)
・B:強力なモンスター1体が襲ってくる(逃走可)
・C:地獄みたいなモンスターが襲ってくる(逃走推奨)
・D:休憩できる階層を発見。
 一回まで全員のHPAPを6割まで回復。魔法のドアがあり、安全に帰還できる。
 お料理やお茶をいれるスキルがあったり、休憩しやすい工夫があると回復量がアップする。

【エネミー】
●弱いモンスター
・チョコスライム
 甘いスライム。両手で持てるくらいのサイズ。『体当たり(物近単)』で攻撃。

・ミスタークッキー
 顔が描いてある人型のクッキー。『魔法(神近単)』で攻撃

●強力なモンスター
・ビターチョコスライム
 幅3メートルくらいのでっかいスライム。とってもビター。
 体力が豊富。反面防御や回避はからっきし。
 『超体当たり(物近範)』『チョコブラスター(神遠列)』で攻撃。

・クッキースケルトン
 焼き菓子でできた人型ホネホネモンスター。
 お菓子の剣と盾を装備していて妙に攻防のバランスがいい。
 『お菓子ソード(物近列)』『お菓子シールド(回避・防御アップ【副】)』

・チョコレイトゴーレム
 チョコでできたゴーレム。人型、身長3メートル、首無し。バニラの香り。
 『大暴れ(物近範)』『炎のビーム(神遠範)』で攻撃。

●地獄みたいなモンスター
・チョコレイトドラゴン
 全身チョコレイト・ジュエルの鱗に覆われているというドラゴン型モンスター。
 防御と回避がヤバイ。HPがヤバイ。攻撃力がヤバイ。マジでヤバイ。
 灼熱の炎(神特レ)を吐き辺りをいきなり火の海にする。
 普段はぐーすか寝ているので、音をたてないようにそーっと進めば戦わずにすむかも。

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。

  • チョコレイト・ダンジョン!完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年02月28日 21時35分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ラダ・ジグリ(p3p000271)
灼けつく太陽
デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)
共にあれ
サンディ・カルタ(p3p000438)
金庫破り
江野 樹里(p3p000692)
ジュリエット
アイリス・ジギタリス・アストランティア(p3p000892)
幻想乙女は因果交流幻燈を夢見る
陰陽 の 朱鷺(p3p001808)
ずれた感性
弓削 鶫(p3p002685)
Tender Hound
ニゲラ・グリンメイデ(p3p004700)
特異運命座標

リプレイ

●お菓子の塔へゆこう
「チョコレートの材料を獲得するために人を雇ってダンジョン探索ですか。貴族様はスケールが違いますね」
 スプーンをくるりと回して、『見習い』ニゲラ・グリンメイデ(p3p004700)は首を傾げた。
「おかげで、初依頼でいきなり念願のダンジョン探索が出来るわけですが」
「念願、だったんですか?」
 陰陽 の 朱鷺(p3p001808)が彼の横でぱたぱたと紙を折っている。どこか綺麗な紙だ。
「チョコレイトダンジョン、でしたね」
「この世界は不思議な事象も、起こり得るのですね。ともあれ、今回の依頼はチョコレイト・ジュエルの採取ですから、時間をかけてでも確実に達成しましょう」
 朱鷺は何度か紙をぱたぱたと折っていき、やがて鶴と武者の折り紙細工を作り上げた。

 甘い甘い砂糖の香り。
 チョコレートとフルーツの香り。
 スイーツバイキングショップ『ファン・リブラン』の一角で席を囲む美女たちがいた。
 『大いなる者』デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)は小さなチョコレートケーキをフォークですくい上げると、満足そうに頬張った。
「お菓子の迷宮とは気が利いているのじゃ。きっとお菓子食べ放題なのじゃ♪」
「今既に食べ放題だ……」
 お茶に口をつける『尾花栗毛』ラダ・ジグリ(p3p000271)。
「小さい頃、お菓子の家や森を夢見なかったわけじゃない。今見ても楽しそうだとは思う。だが実際……甘い匂いが続くと少々辛い」
 この先、スイーツバイキング以上にお菓子だらけの場所に行くからか、ちょっぴり気が重そうなラダである。
 美女たちに囲まれて上機嫌そうな『アニキ!』サンディ・カルタ(p3p000438)。お皿に何個もケーキを重ねて更に満足げだ。
 その横では『ジュリエット』江野 樹里(p3p000692)がチョコビスケットを小動物のようにぽりぽりと食べてどこか満足そうな顔をしていた。
 おおむね、皆ダンジョンへの準備は充分そうだ。
 皆ひととおりスイーツタイムを楽しむと、改めて目的のダンジョンへと向かった。

 チョコレイトダンジョン。
 それは深い森の奥にある、ビスケットやチョコレートで組み上げたような斜塔である。
 旅の準備を整えた皆の様子を確認してから『Tender Hound』弓削 鶫(p3p002685)は改めて塔を見上げた。
「見た目こそはファンシーですが。其の実、中々にとんでもない所ですよね、ここ」
「そういう意味では不謹慎かもしれませんが……こういう冒険は心躍りますね」
 『幻想乙女は因果交流幻燈を夢見る』アイリス・ジギタリス・アストランティア(p3p000892)が杖や盾の具合をしっかりと確かめてから列に加わる。
 確かに、などと頷きつつ、一同はいざチョコレイトダンジョンへの挑戦を始めた。

●お菓子の大冒険
 大きな砦だ。堀には橋が架かり、大きな門が聳え立っている。
 しかしよく見れば砦の煉瓦はチョコレート。橋や門はビスケットで出来ている。
 あたりにはマシュマロの花がさき、きなこの砂がまっすぐの道となって砦に続いている。
 見上げれば天井は高く、まるで本物の青空があるかのようだ。
 目を疑うような光景だが、ここは立派な魔術空間。何があってもおかしくない。
 早速門が開き、奥から無数の兵隊が現われる。
 否、焼き菓子で出来た兵隊――ミスタークッキーたちだ。
 表面に描かれた顔がキッと怒ったように変わり、一斉にクッキーのマスケット銃で魔法の弾を撃ってくる。
 くるりと身を転じて射撃をかわすラダ。
 背負っていたライフルを素早く構えると早速反撃を始めた。
 反対側へ走る鶫。矢筒から数本の矢をいっぺんに抜くと、走りながら連続で矢を放っていく。
 矢はミスタークッキーに突き刺さり、ぼこんと身体を崩壊させていく。さらにはラダの銃撃がヒットし、頭を吹き飛ばしていった。
 頭が無くなったことで慌てたのか、両手をばたばたさせて後ろ向きに倒れるミスタークッキー。
 その隙に一気に距離をつめにかかったサンディが鞘に収まった剣を持ち上げる。
 慌てたミスタークッキーへと抜刀。散った火花がそのままはじけ、ミスタークッキーは目をバッテンにしてよたよたと下がった。
 今じゃ、ふせておれ!
 デイジーはそう叫ぶと壺を叩いて魔力をぐるぐる渦巻かせた。
 蓋を開いて向けたなら、魔力が壊れた水道蛇口のごとく吹き出してミスタークッキーを押し流した。
 きゃーといいながら逃げていくミスタークッキーたち。
 追いかけて門の向こうに駆け込むと、あたりの風景がねじれるように一転した。

 蜂蜜の川が流れ、キラキラとした星空が光っている。
 岩があちこちに転がっているが、よく見ればホットケーキだ。ちょこちょこと生クリームがのっている。
 はたと何かに気づいたアイリスが死骸盾を発動させると、川から飛び出してきたチョコスライムが次々と体当たりを仕掛けてきた。たちまちに破壊される盾。
 アイリスはさっと距離をとるとポーションの瓶を投げつけて迎撃した。
 薬瓶がはじけ、スライムがきゅーと言いながらぷるぷると震える、どうやら痛がっているようだ。
 朱鷺はここぞとばかりに呪術を発動。綺麗にヒットした朱鷺の呪術がチョコスライムを爆発四散させた。
 一方でラダたちはホットケーキの岩陰へと後退。物陰からちらちらと身体を出しながら援護射撃を始めた。
 川から次々と飛び出してくるスライムが接近前に破壊され、はじけてあたりにチョコレートソースを散らしていく。
「このままじゃチョコレートまみれになりそうだ」
「べとべとしそうですね」
 ニゲラは盾を構えて前に出ると、チョコスライムの突撃を剣によって迎え撃った。
 体当たりを盾でうけ、回り込むように自分の間合いに踏み込んで剣で払う。
 スライムはそんなニゲラに群がろうとするが、樹里がホットケーキの岩に飛び乗って杖を水平に翳した。
「撃ちます、離れてくださいっ!」
 目をぎゅっと瞑って魔力砲撃。
 樹里は反動でひっくりかえり、ホットケーキの上にぽふんと倒れた。
 一方で樹里から放たれた魔力がチョコスライムに直撃。ばしゅんと音を立てて飛び散っていく。
 手にふきかかったチョコソースを手でぺろりと舐めてみる。
「……あ、甘い」
 一方でニゲラやサンディたちは倒した敵が落としたチョコレイトジュエルを拾い上げ、袋に詰めていった。

 ――と、こんな具合で彼らはチョコレイトダンジョンを攻略していった。
 どういう理屈なのか、何階層登ってもつきることがないような、塔が無限に続いているかのような錯覚を覚えるものだ。
 そして何度目になるだろうか。
 モンスターの現われない安全なクッキーハウスを発見したのだった。

●クッキーハウスでの休憩
 折り鶴がクッキーハウスの周りを巡回している。
 キャンディドロップでできた花畑。ソーダドリンクの川にはビスケットとドーナツの橋がかかり、その先にドーナツ水車をまわすクッキーづくりの家がたっている。
 随分と広い家のようで、八人はそこで休憩することにした。
 プリンの椅子に腰掛け身体を濡れタオルでふくラダ。
 ふと見ると、ニゲラがお茶をいれていた。
 一方でサンディがコーヒーをいれ、トレーに乗せて運んでくる。
「皆さん。お茶はいかがですか」
「甘いものにはコーヒーもいいよな」
 レディのためなら労は惜しくないぜとばかりに前髪をふぁさっとやるサンディ。
 対して、アイリスは『いただきます』といて飲み物を受け取った。
 飲食や睡眠をおろそかにしても十全な生命活動ができるというアイリスだが、食べて損はなさそうだ。
「ん……この香りは」
 道中ずっと甘い香りに包まれてもはや慣れ初めてすらいたラダが、ぴくりと頭をあげる。
 つられてニゲラも顔をあげたが、『ああ』といって振り返った。
「どうやら、料理をしているようですよ」

「本当にお菓子で料理なんてできるんじゃろうか。そのまま食べても美味しい気がす――んまんまんま」
 両手に抱えるほど大きなビスケットをほっぺいっぱいにしてにっこりしていた。
 その横で腕まくりをする鶫。
「ジュエル以外のチョコは、ホット・チョコレートにしてみますか。生クリーム、乗せます?」
 ザックを開いてそれまで倒したモンスターの素材を取り出していく。
 チョコレイトジュエルは採取素材だから手をつけないとしても、ミスタークッキーやチョコスライムの身体は回収することができたのだ。
 他にも川からくんできた生クリームやソーダ水を素材にして、鶫は料理を試みたのだ。
「パンケーキの生地を解し、生クリームを加えて捏ねて……と。成型して焼けば、スコーンっぽいのが出来そうですかね。本当は、牛乳が欲しいですが」
「そういえばチョコレイトジュエルは、宝石ではなくチョコの素材、なんですね。これがこの子達の核なんだとしたら……やっぱり、食べられそうですね」
 ジュエルを一個手にとってうっとりする樹里。
 貴族がお金をかけて採取を求めるくらいなので、それはそれは美味しそうなのだが……。
 樹里はふるふると首を振った。
「今はこっちで我慢しましょう」
 クッキースケルトンの骨をもぐもぐやってみる。
 やけに硬かったが食べられないほどじゃあない。それに樹里は口の中でころころやってる時間がなんだか幸せそうだった。
 一方で料理を一通り終えた鶫は、小さく作った焼き菓子をまとめてザックに詰めていく。
「腹が減っては戦が出来ぬ、と申しますし。用意しておいて、損は無いと思います。さて、では……」

 テーブルに広がる第二次スイーツバイキング。
 『アンチョビサンドも食べるのじゃ』と壺を掲げるデイジーや、手をあわせるサンディ。
 休憩は思った以上に楽しく過ごすことができたようだ。

●ドラゴンの庭、そして
「指定された数は集まったようですね」
「次に帰還するためのドアがあったら帰ることにしよう」
 アイリスやラダがチョコレイトジュエルを拾い上げ、仲間のもとに集めていく。
「僕は限界まで挑戦してみたかったですが……確かに消耗も激しいですしね」
 帰還のタイミングはチョコレイトジュエルが依頼された数集まったらと決めていた。無理をして全てを失うのは避けたいところだ。ニゲラも剣をしまって頷いた。
 次の階層へのゲートが開き、光の輪になっている。
 さてどんなものだろうと入った一同を待っていたのは、まるでマグマが流れる洞窟だった。
 といってもストロベリーソースが流れるスコーンの洞窟だ。
 遠くからはごうんごうんと奇妙な風が流れるような音が聞こえてくる。
 朱鷺が念のためにと放った式神が戻ってきて、何かがいたことを知らせてくる。
「これは恐らくチョコレイトドラゴンですね。どうします?」
「触らぬドラゴンにたたりなしだ。次の階層への扉はこの先なんだろ? 俺が様子を見ておくから、さっと通り抜けよう」
「逃げることは決して恥ではない、と英雄たちも言っていますしね」
 サンディがゆっくりとドラゴンをよく観察できる場所まで近づいていく。ハンドサインを出す彼に従ってニゲラたちがこっそりと通り抜けていく。
 その途中、サンディはふとドラゴンの横のぽっこりと盛り上がったチョコレートが気になった。
 とはいえ他のことをしている場合ではない。できる限り音を立てないように気をつけつつ半数が渡りきったところで……。
「あ、やばい」
 何となく危機を察したサンディが声を上げて『走れ!』と呼びかけた。
 そう。ドラゴンが目を覚まし、起き上がったのだ!
 サンディたちに気づいて吠え、火をふくドラゴン。
「全力ダッシュじゃ!」
「言われなくても!」
 デイジーやラダが思い切り走り、その後ろを鶫と樹里が一生懸命に走る。
 最後にサンディたちが走り抜け、なんとか階層移動の扉をくぐり抜けた。
「あつっ! あっつい! 燃えてる燃えてる!」
 地面をごろごろ転がりながら服についた火を鎮火させるサンディ。
 他のメンバーも似たようなもので、ドラゴンから逃げるのに精一杯といった様子だ。
「けどレディたちを守れたな、いいぞ俺。ここでやっと一息……」
 サンディが自分で自分を褒めていると、モンブランケーキの山の向こうから巨大な影が顔を出してきた。チョコレイトゴーレムだ。
 ゴーレムは炎のビームを放ち、地面を爆発させはじめる。
 足下からはチョコスライムたちが飛び出して来るでは無いか。
 ここは切り抜けるしかない。
 接近を試みるチョコスライムたちを阻むべく展開するニゲラとサンディ。
 二人は盾を翳して突撃し、スライムと正面からぶつかり合う。勢いよく突撃してきたスライムが盾にどかんとぶつかり跳ね返り、一方でサンディたちも衝撃で転倒した。
 二人の間をすりぬけていくもう一体のチョコスライム。
「そっちに行ったぞ!」
「ええい、こうなったら相手になるのじゃ!」
 壺を掲げて叫ぶデイジー。
 サンディとニゲラの前衛が抜かれればデイジー、アイリス、樹里、朱鷺という中衛メンバーが止めるしかない。
 一方のゴーレムはここぞとばかりにアイリスたち炎のビームを打ち込んでくる。
 ビームに対抗して死骸盾を展開し、ポーションによる回復に集中し始めるアイリス。
 朱鷺も呪術による攻撃を一旦やめてライトヒールでの回復に集中しはじめた。
 そこへ螺旋回転しながらタックルをしかけてくるチョコスライム。
「くらえい!」
 対して、デイジーの必殺壺アタック(通常近接攻撃)。
 そんな状況の中、遠距離射撃が得意な鶫とラダはそれぞれモンブランの山に駆け上がり、チョコレイトゴーレムへと狙いを定めていた。
 攻撃のチャンスはあまり多くない。可能な限りダメージを叩き込まねばならないだろう。
 矢を弓につがえ、よくねらう鶫。
 ラダもまたライフルを構えて身を伏せ、最高のタイミングを待つ。
 タイミングとは、杖を水平にして全力攻撃の構えをとった樹里との同時攻撃である。
 狙いはひとつ。チョコレイトゴーレムの核ともいうべきジュエル部分だ。心臓にあたる部分に沢山集合している。
 大砲のように魔力を発射する樹里。
 着弾のタイミングがぴったりあうように矢を打ち込む鶫。
 予想を大きく超える衝撃にぐらついたゴーレムの足へ、的確にライフル弾を打ち込むラダ。
 派手に転倒したゴーレムに、スライムたちをなんとか倒したサンディたちが飛びかかる……!

 満身創痍。
 傷だらけになった八人はなんとかかんとか魔法のドアがある階層までたどり着き、安全に帰還することができた。
 その時の八人の感想を代表して、ラダに述べてもらおう。
「嗚呼、普通の空気がとても美味しい!」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 おかえりなさいませ、イレギュラーズの皆様。
 皆様の活躍によって無事チョコレイトジュエルを納品することができました。
 今はお家でゆっくり、身体を休めてくださいませ。

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