PandoraPartyProject

シナリオ詳細

シロタミーのブラックワークSOS

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●悪徳貴族シロタミーの搾取
「週七で18時間シフトね。事務に5時間かかるけどこれ趣味でやって。あ、有休一回でも使ったらボーナス無しだから」
 両脇に美女を侍らせアロハシャツを着た悪徳貴族シロタミー。
 彼は『今月はよく頑張ったからこれご褒美ね』と草生やした口調でえらいねと書かれた名刺を投げてきた。
 それを受け取り、げっそりとする雇われ居酒屋店長シャッチク。
「ど、どうも……」
「元気がないなあ。そんなことで居酒屋やれるの?」
「アリガトウゴザイマッシャー!」
「もっと大きな声出ないの? 基本給下げる?」
「アギャマッギョマッギャーアアアアアアッ!!」
 シャッチクは限界であった。
 学生時代は海洋王国魚木南中学校のギャングと知られたシャチ系ディープシーの彼は見る影も無い。
 かつてもっていた屈強なボディはやせ細り、不眠不休で働いた結果目は血走り脳はほぼ死んでいた。
 一年365日全ての時間を仕事に吸われ友達を無くし家族とも疎遠になり45歳にもかかわらず彼女もできず実際もうそろそろ死ぬんじゃ無いかと言われている。
 そんな彼が、ついに。
「マギャー!」
 といって血を吹いてぶっ倒れた。
 何寝てんのーボーナス無しだよーとか抜かすシロタミーの声ももはや届かず、シャッチクは病院へと搬送されたのだった。

●鉄槌の居酒屋店員
「シロタミーは拘留しておいた。横領と搾取の証拠が揃ったからだ」
 居酒屋シロタミー本店のある魚木島。この島で政治家を営む男はシャッチクの眠る病室で一枚の封筒を取り出した。
「しかし、ただシロタミーをつるし上げるだけでは何も解決はされない。居酒屋は他の貴族に没収され、財産も泡と消えるだろう。
 尊ぶべき人生を踏みにじられたシャッチクの未来が、このままでは暗いままだ。
 そこで私は、彼を正式に店舗オーナーに据え事業正常化を図り、彼の未来を保証することを考えた。
 だが、しかしな……」
 男は封筒を開いて見せる。
「この土地を納める大貴族は、事業の正常化が見られないかぎりシャチックも同罪であるとして財産の没収を検討しているという。
 一刻も早く、シロタミーをホワイトな居酒屋にしなくてはならない」

 これまでのシロタミーは酷い有様であった。
 社員たちは目を血走らせ言語能力を半分失った状態で24時間酷使され、何かあればすぐに自腹を切らされていた。
 そんな雰囲気と引き替えにメニューは格安であり客足はそれなりにあったが、料理人を雇わずバイトをひたすら酷使した料理を出すため質は悪く、妥協で入る店と言われている。
 このままでは取りつぶしは必至である。
「しかし店員たちは店長卒倒の事態に困惑し次々と倒れる始末。
 もはや頼れるのはローレット、君たちしかいない!」
 男は店員のバッジを人数分突き出し、あなたを見た。
「シロタミーをホワイトな……笑顔が優しく料理が美味しく、店員が安心して働ける居酒屋に変えてくれ!
 虐げられたシャッチクの未来を照らし、そしてシロタミーを倒すためにも!」

GMコメント

■オーダー
 居酒屋シロタミーの臨時社員となり、接客業をこなすのが今回のお仕事です。
 やり方は全面的に皆さんに任されています。ホワイトなお店を目指しましょう。

■改装
 一日で出来る程度の改装なら、ある程度自由に行なうことが出来ます。
 というかまず、『シロタミー』って名前変えたくありませんか?

 改装内容をみなさんで相談して決めてみてください。
 こういうお店にしたいよね、というアイデアを出し合って楽しくやってみましょう。

■接客
 今のところスタッフは皆さん八人しかいませんが、それなりのスキルやプレイングがあれば人手を増やすことが出来ます。
 (人手を増やすためだけにプレイングを使い切らないように注意しましょう。リプレイでの描写が腕組んでうんうんって言うだけになると寂しいです)

 主なポジションはシェフとホール。
 例外としてステージを作って演奏や舞踏を見せたり、ソムリエやお茶の専門家としてサービスするといったポジションの作り方もあるはずです。
 自分にあったポジションを見つけて、皆さんと相談してみましょう。

■そして未来へ
 最終的にはシャッチクへとお店が引き継がれます
 その際に『これからもたまにこの店で働いている』という設定を自分に付与しても構いません。
 というか、側面的な事実とすら言えるでしょう。

■■■アドリブ度■■■
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用ください。

  • シロタミーのブラックワークSOS完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2019年10月17日 23時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

零・K・メルヴィル(p3p000277)
つばさ
レッド(p3p000395)
赤々靴
寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
村昌 美弥妃(p3p005148)
不運な幸運
ミルキィ・クレム・シフォン(p3p006098)
甘夢インテンディトーレ
物部・ねねこ(p3p007217)
ネクロフィリア
高槻 夕子(p3p007252)
クノイチジェイケイ
カンベエ(p3p007540)
大号令に続きし者

リプレイ

●仇討ちアルバイトじゃい!(死んでないけど)
「シャッチクーーーーーーーーー!!」
 『フランスパン・テロリスト』上谷・零(p3p000277)は両手をグーにして大地を叩いた。
「お前の……お前の今までの頑張りは絶対に無駄にしねぇ!
 働くっつぅのはなあ……!
 己が充実した人生を生きる為に! 楽しく生きる為の糧を稼ぐ事だ!
 その前提が覆るのはなっちゃならねぇ!
 散々働かされてんだ、この居酒屋は必ずホワイトにして、お前に返して見せるさ……ッ!!」
 空っていうか休憩室の天井にシャッチクの笑顔と『頼みましたよ、みなさん……』という台詞が浮かんだ。
 まってシャッチクと面識あったの? いつのまに!?
 その反対側では。
「おのれシロタミーーーー!!」
 『Bonbon au lait』ミルキィ・クレム・シフォン(p3p006098)がしゅばしゅばシャドウボクシングをしていた。
「従業員をこんなにひどくこき使うなんてひどい貴族だね!
 このままだとシャッチクくんや店員さんたちが可哀想だし、頑張って最高の居酒屋に生まれ変わらせよう! ね、みんな!」
「へい!」
 ベベン、という三味線の効果音と共に現われる『名乗りの』カンベエ(p3p007540)。
「シロタミーとかいうもんは今や獄中! あとで叩き斬りに行っても宜しいですかね……?」
「いやだめっすだめっす。死んじゃうと遺産が相続されちゃうから……没収したあとっす」
 どよーんと黒い顔をする『特異運命座標』レッド・ミハリル・アストルフォーン(p3p000395)。
「お嬢(?)もワルでごぜえますなあ……」
「へへへ……」
 包丁を手に黒い笑いを買わすカンベエとレッド。
「人生の大半を居酒屋シロタミーで死に物狂いで働いたろうに……。
 貴族さん達に全没収されるなんてシャッチクさん可哀想っす!
 彼の半生が報われる様に、ボクたちがこの世界を変えてやるっす! 頑張ってみるっす!」
「へい!」

 大盛り上がりの仲間たち。
 ブラック企業で酷使されたシャチに報いようとみなモチベーションはマックスだ。
 だがそんな中で、別のところにモチベーションを見いだす者たちもいた。
 もはや海洋ではおなじみ『女王忠節』秋宮・史之(p3p002233)である。
「いつか女王陛下に手料理を召し上がっていただきたい身としては、ここはひとつ頑張りたいところ……。この腕、振るわせていただきます!」
「ハイ!!!! がんばりましょうね!!!! かいたい!!!!」
 包丁を両手で握りしめて両目をかっぴらく物部・ねねこ(p3p007217)。
「何この子マジヤバイ。目がヤバイ」
 ネコカバーのついたスマホでついついしていた『クノイチジェイケイ』高槻 夕子(p3p007252)がすすーっと距離をとる。
「倒れるまで働くとかマジわかんないけど、とりまバイトすればいいのね。りょ」
 スマホ画面を閉じて胸の谷間にすとんと収納すると、かわりに店の制服を手に取った。
 とったが……なんかいかにも『俺たちブラック企業ですよ』って感じの安っぽい制服であった。
「……」
 一秒半見つめた後、ぺいっと投げ捨てる夕子。
「店変えるとこからじゃん?」
「どうやら、そのようデスねぇ」
 段ボールいっぱいの何かを抱えて現われる『不運な幸運』村昌 美弥妃(p3p005148)。
 そして休憩所のドアを蹴破るがごとく居酒屋フロアへ飛び出すと、がらーんとした殺風景の店内を見回した。
「まずは、模様替えデスよぉ!」

●こんな居酒屋にいられるか! 模様替えをさせてもらう!
 リフォーム番組的なBGMを流しながら、カンベエは店内を見回した。
 『笑顔』『奉仕』『金よりやりがい』とかいうポスターが張り巡らされた厨房。フロアには低コストを極めた安っぽい椅子とテーブルが並び、壁のメニュー表は黄ばんではがれかけていた。
 このままではいけない。カンベエはそんな直感から、店内の改装を始めた。
「海鮮居酒屋でごぜえますから、木材を使って外見だけでもいいので和風にしちまいてえもんです! 時間がねえなら玄関口だけでも!」
 そう言って余計な張り紙を取っ払い、大漁旗を貼り付けることで壁のシミを隠し、入り口には和風の門構えとオレンジ色の照明をあつらえていった。
 中でも拘ろうとしたのは看板である。
「色の白い杉材に墨汁を使ってでっかく店名を……」
 と、そこでカンベエの手が止まった。
 居酒屋シロタミーは悪しき名前。店構えも労働環境も変えるなら、店名もまた変えて然るべきだろう。
「海鮮居酒屋『鯱食』ってのはどうかな?」
 横から看板を覗き込んだミルキィ。
「悪徳貴族の名前のままってのもイメージ悪いからねー、店の名前を変えるのは賛成だよ♪
 夕子ちゃんの出したシャッチクくんの名前を使うってのはいいアイデアだね! もっと居酒屋っぽい名前にするんだったら……」
「なるほど、それで『鯱食』」
 (次期)店長がシャチなので軽くブラックジョーク感があるが、『シャチ食堂』を男らしく短くまとめたものと考えればなかなかキャッチーである。
「和風の装飾には賛成っす。それに、椅子もテーブルも取り替えたいっすねー」
 レッドは依頼主から渡された予算を使って黒塗りの椅子とテーブルを運び込むと、店内にややゆとりを持って並べていった。
 更にもうちょっと赤茶けた柵や欄間を設けることで和風感を出し、全体的には粋な黒基調に揃えていった。
 入り口の装飾には深緑盆栽と漆塗りの箱。
 更に純米酒『是酒照』や特別純米大吟醸『美少女殺し』といった粋好みする豪快な酒の瓶を並べていく。
「だいぶ和風の海鮮居酒屋な感じが出てきたっす」
「で、ごぜえますね……!」
 筆を握り、満足そうに看板を眺めるカンベエ。
 漁師の豪快さと料亭の高級感。そしてキャッチーな入り口。
 これまでの安っぽい居酒屋からは大きく変化を見せ始めた。

「お仕事はどんどん効率化するのが基本デスぅ」
 美弥妃は練達ファミレスチェーンを参考にしたハンディ注文入力機を数台並べると、店の新メニューを登録していった。
「この液晶画面をタップすると注文が無線で厨房の機械に飛んで、画面から出力されマスよぉ」
「ハイテクじゃーん」
 スマホをいじりながら『これと似たようなもん?』と言って入力機を手に取る夕子。
 店の衣装も一新され、シャチをかたどったパーカー、そして『鯱食』の文字が入ったエプロンを装着して見せた。
「そんじゃ、シフトはいりまーす」
 基本的に肩の力を抜いているJKだが、そこは要領のいい夕子である。
「はいはーい。『鯱食』でーす。お店が新しくなりましたー。
 美味しい料理に美味しいお酒が待ってまーす。そこのあなた、今晩お暇?
 食事する場所は決まってますか? まだ決まってないなら『鯱食』にかもかも!」
 積極的に外に出て行き、道行く人々を的確にキャッチしはじめた。一歩間違えばうさんくさい宣伝になってしまうような路上キャッチを、夕子はそつなくそして時にあざとく客を捕まえていく。
 スキルというよりもはや人柄。ないしは才能であった。

 見た目も中身も生まれ変わった居酒屋『鯱食』。
 字面がブラック企業っぽくて内装もブラックなのでかえって信用されるという、レッドたちが想定していなかったプラスポイントもあって客が続々と入店しはじめた。
 が、居酒屋はあくまで酒と食事を出す店。店内の空気や見た目も大事だが、やはり重要なのは料理である。
「ファミリー層を意識して王道、女性向け、子供向けを揃えてみたんだ。
 食材の数を絞って、調理でバリエーションをつけるスタイルだよ」
 そう語るのは史之。
「マグロのお造り、握り寿司、マグロの赤身焼きをベースに旬の鮭やひらめコハダを加えてアレンジ……。
 たこわさ、梅くらげ、イカ明太、叩き胡瓜など造置きつまみも用意して……。
 締めには各種魚茶漬け!」
 一新されたメニュー表にはジャンル分けされたそれぞれの料理が並び、注文が次々に入ってくる。
 ジャンルには女性向けエリアと子供向けエリアがそうと明言せずに分けられており、ワカメしゃぶしゃぶや秋刀魚の塩焼き、海鮮アヒージョ&フランスパン……子供向けには魚肉ハンバーグや海藻サラダといったシーフードを中心にしたセットメニューを用意していた。
 ここであえてギフト能力を使わないのが史之のイキなところである。
「マグロはいったよー!」
「おまかせあれーーー!!」
 目にハートを浮かべて包丁を握るねねこ。
「おー! 死にたてほやほやですねっ♪」
 ねねこがオープンイベントに選んだのはマグロの解体ショーであった。
 厳密な話、海洋のこの地域では調理や魚の解体に関する法律がかなりゆるく、一種の娯楽として解体ショーを楽しむ文化が一般に普及していた。
「うへへへへ♪ 解体解剖は私の得意分野ですからね♪ いきますね♪ いきますね♪」
 豚牛魚は守備範囲外かと(一部で)思われていたねねこだが、案外イケるらしい。
 彼女のもはや倒錯的ともいえる解体ショーは評判をよび、客足は加速し注文も更に増える。
 そんな注文をさばいていくのが零の仕事である。
「はい、いらっしゃい!」
 次善に仕込んで置いた食材を適切に調理し、効率のいいマルチタスク調理で複数の料理を素早く的確にホールへ送り出していく。
 勿論フランスパン系の料理にあわせてギフト能力を使うことも忘れない。
 店舗スタートダッシュ時におけるスタッフの不在に対する、零なりのカウンターであった。
「けど本番は夜……深夜だ。俺たちの考えたホワイトなシフトプランが火を噴くぞ!」

●夜はキラキラ
「うふふふふ任せてください私いつも(欲を発散させるために)やってますんで(死体の)肉と骨をわけるのは慣れたものなんですようへへへへ!」
 ねねこはちょっとおかしなテンションのままマグロをさばきにさばき続ける夜。
 店内に広がるなんとも言えない独特の空気。
 最初は物珍しそうにしていた客たちも『ああいう特殊なテンションの店なんだな』という慣れを早くも発揮したらしく、店のシックな雰囲気も相まってわいわいと楽しみ始めていた。
「客足がだいぶ伸びてきたね。そろそろフロアのヘルプに入って貰っても佳いかな」
 史之が換えのエプロンをねねこに手渡し、自分は再びキッチンへと入っていった。
 夜の居酒屋。それも厨房は戦場と言っていい。
 あがる炎と煮える油。舞い飛ぶ酒と肉。店舗規模の都合からさほど広くない店内でせわしなく動き回り次々とオーダーされた料理を作り上げていく。
「6番テーブル、刺身盛り合わせあがったよ」
「はいっす!」
 シャチパーカーをかわいく着こなしたレッドが、木製の船型容器を手にとって運んでいく。
 途中で新たに入ってきた客に笑顔を振りまくと、空いたテーブルを指さした。
「らっしゃいっす! 喫煙されるっすか? はい、席はこちらっす!
 注文が決まったら紙に注文番号書いてスタッフを呼んで渡すっす!
 退店時に伝票を会計にお渡し下さいっす」
 海洋の、それも人種と文化が入り交じりやすいエリアだからだろうか、真心さえあれば形がどうあれ受け入れられる傾向にあるらしい。客たちはレッドの元気な接客に満足そうだ。
 元気といえば、仕込み作業ではキッチンで、開店後はフロアで活躍していたミルキィも忘れてはいけないだろう。
「混み合う時間がわかればシフトの調整もしやすくなるから、シャッチクくんが戻ってきた後に参考にしてもらえれば嬉しいかな♪」
 フロア作業のシフトは時間ごとで明確に分けられており、個々人が働き過ぎないようにトータルの作業時間が設定されている。
 海洋にというかこの辺の地域に労働基準法的なものがないおかげで参考基準を探すのに苦労したが、皆で話し合ってうまい具合に無理なくシフトパターンが作成できたようだ。
 ミルキィは特製のミルクレープを休憩スペースに置いていくと、再びフロアに飛び出してレッドと交代。てきぱきと働き始める。

 時間帯で分けるというのは飲食店アルバイトの基本である。
 美弥妃は夜7~8時を担当するフロアスタッフだ。
(しっかりと笑顔、居酒屋さんらしく大きく元気な声での接客を心がけたいデスねぇ。
 人数が少ないので待たせてしまったり、ミスしてしまった時は誠心誠意謝りマスよぉ)
 鏡を見つめてにこっと笑顔を作ると、やってきた客にしっとりとした接客を始めた。
「料理のおすすめならワタシは揚げ物デスねぇ♪
 お酒は進むらしいしお子さんも揚げ物大好きデスからぁ!
 あ、もちろんそれ以外の料理もおいしいデスよぉ、どんどん食べてもらいたいデスぅ♪」
 そんな具合に客とほどほどに絡みつつ、フロアを潤滑に回していく。
 その交代で入ったカンベエは一転してハキハキと。
「さあさあご注文は御座いますか! 酒の追加もどうです!」
 これまでの白目剥いて『ハイヨロコンデ!』しか言えなかった居酒屋とはうってかわった、イキイキとした姿を客にアピールしていった。
 『名乗りのカンベエ』と呼ばれるだけあって元々声も大きくよく通る彼である。ウハハと笑って客との会話も楽しんだ。
 それまで『ここブラックだったよなあ』と思っていた客たちも、そんなカンベエの働き方を見て安堵したことだろう。
 勿論、彼の快活さは客だけでなく同じスタッフも元気にできるようで、キッチンでアヒージョを仕込んでいた零がニッと笑ってフランスパンを出していた。
「スタッフもそうだけど、客の顔つきがいいね。店が生まれ変わったのがよくわかるよ」
 零の言うとおり、店が生まれ変わったと実感できたのはシロタミーが拘留された時でも店を改装した時でもなく、こうして客が楽しそうにしている時だった。
 これまでの店を見ていたわけではないが、ハッキリと『これまでと違うな』という印象をどの客も抱いているのがわかるのだ。
 そしてそれは、最もなじみある人物にとってはより顕著に映る。
「いらっしゃいませー。カウンター1名はいりまーす。
 今日のお勧めはフランスパンつきのアヒージョです!
 ――って、あれ?」
 元気よく接客していた夕子がぱちくりとまばたきをした。
 カウンター席に座ったのは、誰あろうシャッチクだったのだ。
「もう出てきて大丈夫なの?」
「はい……自宅療養とは言われたのですが、足がついここに……」
 社畜のルーチンワークがしみ出たのだろうか。
 だが、今はもう縛られる必要はない。
「こんなに変わっているなんて思いませんでした。皆さんのおかげです」
「あーしらがこの店をここまで改装できたのは、いままでアンタがこの店を存続させたからよ」
 夕子はお刺身の皿をサービスとしてカウンターに置くと、シャチパーカーをつついてみせた。
「辛くて苦しかっただろうけど、それは無意味じゃなかったの。アンタが投げ出さなかったから、あーしらに依頼が来て店がこうなったのよ」
「みなさん……」
「それじゃあね、店長さん。バイトぐらいはシテあげる」
 涙を頬に流し刺身を頬張るシャッチク。夕子は背を向け、フロア業務へと戻っていった。
 今夜の酒はきっと美味い。
 飲酒のできない(と思われる)夕子にも、それはよくわかった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 居酒屋シロタミーは海鮮居酒屋『鯱食』として生まれ変わり、業務改善が確認されたことからシロタミーだけが懲罰をうけることになりました。
 シャッチクは新店長に任命され、元気に居酒屋をきりもりしています。
 今では『ローレット割引』なるサービスを始めているとか……?

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