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シナリオ詳細

<Sandman>救出少女

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ザントマン=
 幻想種の奴隷売買事件。
 その事件の黒幕として、ラサの古参商人であるオラクル・ベルベーグルスという事が、イレギュラーズによって特定された。
 更に、その男が魔種である事も浮上。

 ラサの事実上トップともいえるディルクが、オラクルに対して全体合議にて糾弾。
 しかし、オラクルからは反省などはなく、逆に提案が出された。
 それは、「深緑との緩やかな同盟関係を破棄し、大々的に侵略を開始すること」。
 商人と傭兵に見返りとして莫大なお金が入る事を提案する彼に対し、議会が荒れる。
 その結果、彼に従う者と反対する者が現れ、オラクル一派が一方的に退場するという事態になった。
「これで敵と味方が判別出来たってワケだ」
 ディルクは、魔種ザントマン一党を叩きのめす事が目的であった。
 魔種絡みにて頼りになる者といえば、ローレットのイレギュラーズである。

 そしてローレットに依頼が寄せられた。


 情報屋の男は依頼書を見て顔をしかめている。
 その状態のまま、イレギュラーズが一定数揃うのを待っていた彼は、人数を確認すると依頼書からようやく目を離した。依然、表情は険しいままだ。
「いらっしゃい。早速だけど、任務だよ」
 内容からして胸糞、とでも言いたげな男は先程までにらめっこしていた依頼書に再び目を通す。
「内容は、簡単に言えば幻想種の奪還だね。前にもあった、『ザントマン』による幻想種奴隷の売買。それが現在も頻繁に行われているらしい」
 「懲りていないのか」という声に、男は肩をすくめるだけ。
「で、このザントマンだけど、新緑との同盟を破棄して侵略すべきと発言したようでね。それで傘下に入った商人や傭兵が現れた。莫大な利益を求めたんだろう」
「それで?」
「うん、今から話す依頼は、その中に傭兵が混じっている可能性が高いという話だね」
 前置きをしてから、男は本題に入る。
「先程も言ったけど、幻想種の奪還が今回の目的だよ。オアシスに一つの屋敷があり、そこに幻想種の少女が十名ほど囚われているという情報が入った。急げば商談前には間に合うかな」
「間に合わなければ?」
「複数の商人と殴り合いになるだろうけど、出来れば余計な事は増やしたくないね。囚われた幻想種の少女達は、数日おきに集めて、ある程度まとまった所で売買しているらしい。この奴隷商人が、今回捕えた幻想種達で商売をする前に奪還してほしい。この奴隷商人の屋敷には雇った傭兵達が何人か存在している。こいつらを倒す必要がある」
「……屋敷の詳しい見取り図は?」
「奴隷商人とは言え、屋敷はそこまで大きくない……が、地下室があるという話だ。一階には食堂、客間、厨房、ホール。二階には主人用の寝室、客人用寝室、それから私室。地下室へのルートについては不明。予想としてはホールか客間のどちらかと考えてる」
「傭兵達の情報はある?」
「そちらもあるけど、情報精度は正確さに欠けるかな。傭兵達の構成は人間種である事は間違いないんだけど、『呼び声』の影響で狂っているのか、純粋に支持しているのかの判別がつかない。下手したら混成してる可能性もある。ま、どっちにしても倒してしまっていいよ。捕縛とかいう面倒くさい事はしなくていい」
 そんな奴らに情けなどかけてやることはないと言わんばかりに語気を強めて、男は一つ息を吐く。
 残る商人についてはどうすればいいのか、という質問に対し、男は紙をもう一枚めくる。
「商人についてだけど、こいつは純粋に賛同しているだけの支持者なのは調べがついてる。とはいえ、奴隷商人である事に変わりはないわけでね。こいつは出来れば捕縛の方向でお願いしたい。幻想種達をどうやって捕まえてきたのか、聞き出さなきゃね」
 そう言って笑う男だが、目が完全に笑っていない。
「ああ、それからこの商人だけど、抵抗される可能性がある。どうも、『眠りの砂』が入った小瓶を大事に抱えているようでね。その辺りに気をつけて捕縛してほしい」
 男は「頼んだよ」と告げて、イレギュラーズを送り出した。

●屋敷に潜む狂気と純粋
 屋敷の主人である奴隷商人は、雇った傭兵達から今日新たに幻想種の少女を捕えたという報告を受けて、笑みを深くした。
 肥え太った体が震える。
(明日には彼女達を使って交渉をしよう。何、大丈夫だ。私には後ろ盾がある)
 己が支持するザントマンことオラクルを信奉する男は、懐に大事に持つ小瓶を確かめた。その中には青い砂が入っている。
 仮に少女達を取り戻すために侵入者が来たとしても、雇った傭兵達が居る。彼らを倒してここに現れても、これをかければ眠くなるだろう。あの御伽噺のように。
 地下室では傭兵達が幻想種の少女達を『調教』している所だ。売った先でも従順になるようにしっかりと『調教』しなければ。
 ここには届かない悲鳴を上げている少女達を考えると、邪な満足感が得られる。
 笑い出しそうになる口元を押さえ、代わりに体を揺らす。突き出たお腹が上下に揺れた。

GMコメント

 今回は、捕えられた幻想種の少女達十名ほどを救出する依頼です。
 立ちはだかるのは、傭兵達が十名ほど。
 商人も出来れば捕えてほしいところですが、『眠りの砂』が入った小瓶で抵抗する可能性が高いでしょう。
 「●屋敷に住む狂気と純粋」についてはPL情報となります。その点にお気をつけください。


●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●リプレイ開始時
 時刻は夕方。まだ灯りはついていない明るさですが、時間が経てば経つほど灯りが必要になってきます。地下室は常時灯りがついています。
 商談は翌朝なので、それまでに地下室を見つけて救出してください。

●傭兵×10
 奴隷商人が雇った傭兵達。連携が取れている様子から、有象無象の集団ではない模様。
 室内での戦闘が主なため、近接武器がメインとなります。
 屋敷は小さいため自由に動けるスペースが少なく、弓矢などの遠距離武器は使用しないようです。
 見る人が見れば狂気とわかる傭兵も居るようですが、気にせず倒して構いません。
 傭兵達は私室以外あちこちに居ます。見つかれば即戦闘となります。
 個別の性能に差異はありません。裏を返せば部隊にウィークポイントがなく攻めづらいということでもあります。
 全体的に命中と抵抗が高め。
 物近単・出血系or窒息系のBSが伴います。

●商人
 オラクルを純粋に支持する者。
 懐には大事に持つ小瓶があり、中には『眠りの砂』が入っているようです。
 彼を捕らえようとすれば抵抗されるでしょう。

  • <Sandman>救出少女完了
  • GM名古里兎 握
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年10月12日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ドラマ・ゲツク(p3p000172)
蒼剣の弟子
リースリット・エウリア・F=フィッツバルディ(p3p001984)
紅炎の勇者
藤野 蛍(p3p003861)
比翼連理・護
桜咲 珠緒(p3p004426)
比翼連理・攻
ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)
奈落の虹
カイト・C・ロストレイン(p3p007200)
天空の騎士
ジェラルド・ジェンキンス・ネフェルタ(p3p007230)
戦場の医師
レイリー=シュタイン(p3p007270)
ヴァイス☆ドラッヘ

リプレイ


 問題の奴隷商人の屋敷がある場所へと到着した一行は、人に見つからないように屋敷に出来るだけ近付いていく。
 曇天に覆われた空のおかげで、周囲は闇夜と言っても差し支えないほどに暗い。侵入するにはお誂え向き、という訳だ。
 事前に、『寝湯マイスター』ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)や『学級委員の方』藤野 蛍(p3p003861)がファミリアーによって鼠を召喚。二匹の鼠が屋敷内の偵察を担う。
 蛍が一階を、ウィリアムが二階を、という形で探索し、その最中で蛍は五感に透視を加えて中を確認していく。
 『蒼剣の弟子』ドラマ・ゲツク(p3p000172)が、『要救護者』桜咲 珠緒(p3p004426)へ、中での探索について打ち合わせをしている。
「中に入ったらエコーロケーションで建物内を確認します。その内容を珠緒さんへ伝えるという事でいいですか?」
「はい、屋敷の構造情報と、自身の視点を組み合わせれば、不自然な空白を割り出せるかもです。情報を皆さんにお伝えしていきます」
 隠密行動をする中、彼女が仲間にハイテレパスで情報を伝えていく事が出来るというのは心強い一因だろう。
 いつもより色の暗い外套を羽織り直し、ドラマは「頼りにしています」と告げる。
 『六枚羽の騎士』カイト・C・ロストレイン(p3p007200)は、『終焉語り』リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)を見つめている。守りたいと思っている相手は、今回の奴隷商人が扱う種と同じハーモニアだ。
 彼の視線に気付いたリースレットが、「どうしました?」と問う。
「……なんでもない」
 少しだけ間を置いて、視線を逸らしながら返された答えに、リースレットは首を傾げた後、すぐにその位置を戻した。
「大丈夫です、ありがとう」
 そのお礼の言葉を聞いて、自分の心配が伝わってしまった事を察してしまう。しかし、それ以上は語らず、彼女へ頷くだけに留めた。
 偵察していた二人より、情報がもたらされる。
「一階は、玄関から入ったらすぐに兵に見つかるね。このままホールに行ったらすぐに兵が集まりそうかな」
「二階の方は、廊下に立っている見張りが三名。部屋の前に一人、残り二人が廊下を歩き回っています」
 ジェラルド・ジェンキンス・ネフェルタ(p3p007230)は、もう一つ、知りたい情報を質問した。
「ホールの構造は? 吹き抜けだろうか?」
「玄関に入ったら右手に階段がある。上がってすぐに部屋のドアが一つ、もう少し進んで曲がって部屋が二つ、かな。二階はホールがどこからでも見渡せるような造りになってるね」
「ホールから見て、一階での通路はどの辺りにある?」
「奥に物々しい雰囲気の扉が一つ。もう一つは階段の横にある。こっちは通路になってる」
 次に二階の情報を求め、ウィリアムへジェラルドが問う。
「傭兵達が居るのはどの辺りだ?」
「二人ほど固まっているのが。この二人が立っている部屋に商人が居る確率が高いかと思います。残り一人は時間ごとに動いている感じですね」
「なるほど、ありがとう」
 『背を護りたい者』レイリ―=シュタイン(p3p007270)は、自身が持ってきたカンテラを見やる。灯りだとバレないように布で隠すなどをしたが、どこまでバレずに過ごせるのかという不安が彼女の旨をよぎった。
「侵入したらすぐにバレる、か……」
 彼女の独り言が聞こえた珠緒が、即座に言葉を返す。
「そのようですね。構造的に、正面から入ると二階の見張りにすぐバレるかと思います」
「だけど、幸い、空は月も星も隠れている。ドアを開ける時に注意すれば初動で遅れを取ることは無いだろう」
「だといいのですが。桜咲的には少し不安が残ります」
「それは私も同じだ。だが、やらねばならない」
 レイリーの言葉を聞き、珠緒は「仕方ないですよね」と言わんばかりの溜息を零す。
 玄関のドアまで辿り着くと、イレギュラーズは隊列を整える。
 ファミリアーを解除した蛍がレイリーと共にドアへ手をかけた。
 音を立てぬよう細心の注意を払い、開ける。足元も確認し、光が差し込まない事を目視する。
 滑り込むように、素早く中へ入り込む。浮遊する術を持つ者は装備等がぶつからないように気をつけながら入った。
 暗闇に慣れる目や装備を持った者達は、ホール内の大きさが常識的な広さである事を確認する事が出来た。
 しかし、たまたまドアに注目していたのか、上の方より「誰だ!?」という声がした。
 その声が暗い中で響き、異変を察した鎧の足音が通路の奥からやってくる。
 聞こえてきた複数の足音にイレギュラーズが怯む事はなく、蛍とレイリーが迎え撃つ準備をする。
 視認出来た先頭の二名に向けて、巨大な壁を作り出す蛍。その二人を避けて後ろから更に二名が飛び出した。
 通さぬ意志を持ち、レイリーが立ち塞がる。ジェラルドが、彼女が動きに集中出来るようにと、コンセントレーションを付与する。
 それもあってか、重鎧から来る彼女の構えは、まるで城のように隙が無かった。
 刀身がない、柄のみを構える彼女を、相手が見くびるのがわかった。しかし、その油断が命取りとなることを知るのは少し後の事。
 喉を狙った傭兵の剣筋は、その力を彼女に見せつける事無く空を切る。半歩前へと進んだ彼女の足は後ろへ回転し、その速度でもって柄から出たオーラの刀身を敵兵へ向けた。
 体を切りつけた彼女の剣は、そのまま敵兵の命を奪うに至る。
 もう一人の敵兵をドラマの術が捕えた。魔力を圧縮して鋭さを増したその術式は、敵兵が武器を振るう間を与えずに展開され、体から永遠に力を奪う。
 ブロックにて阻まれた傭兵二人へ、ウィリアムが雷撃を放つ。蛇行する光は敵と味方を区別し、光を連ねて目標を討った。
 異常を察した二階の傭兵達が階段を駆け下りてくるのが見えて、カイトが迎え撃つために前へ出る。打ち合う剣の音が高く響く。
 カイトの助太刀にと、リースレットが駆け寄った。降りてきた傭兵の一人の刀身をクリスタル状の刀身が映し出す。魔力の剣は敵兵の胴を捕え、斬りつけた。触れた箇所から漏れたものが、リースレットの魔力の糧となる。
 更に二階に居た最後の一人が降りてくる。彼だけがかなり遅れて来たのは、主人である商人に報告をしたのか。その結果、こちらへ加勢するよう命令されたのだろう。
 その相手には、ジェラルドが努めた。サポートとして動いていた彼だが、緊急のための戦い方は心得ている。
 呪印の刻まれたグローブが、傭兵の顔を狙う。ウィリアムの雷撃が先に傭兵を撃ち、そこへジェラルドの拳が叩き込まれた。
 直後、傭兵の体に異変が起きる。顔を押さえるようにしてうずくまる姿を、ジェラルドは冷静に見下ろす。彼が女王蟻の首を使用して打ち込んだ毒は、このまま傭兵の体を蝕んでいくだろう。
 そこに慈悲は無い。
 カイトの剣が相手していた傭兵の体を床に倒す。まだ息はある。気絶しているだけのようだ。
 気付けば、毒で倒れた者と、カイトに倒された者以外、立っている傭兵は居なかった。
 これ以上出てこない様子な事を確認したイレギュラーズは、珠緒に怪我を癒やされながら、地下室を探す為の行動を開始する。
 まずは、ドラマがエコーロケーションを使用し、建物の構造の把握に努める。
 風の通り道はわからなかったが、おおよその構造は理解した。
 今した事を珠緒に説明し、彼女は脳内で組み立てていく。声を潜める必要もないので、彼女はその情報をわかり易くイレギュラーズに説明した。
 彼女が屋敷の構造上からの推測として出した結論は、客間からの方が地下室に至る道がありそうです、という事。
 珠緒の弁を裏付けるように、カイトが床に伏した傭兵より読み取った情報を提示する。
「地下室への行き方は合っている。客間の壁から行くようだ」
 判明した所で、一行は二階を見上げた。
 二階で商人が動き出す様子は無い。神経が図太いのか、もしくは繊細で気絶などしているのか。
 何が起きても対処出来るように改めて隊列を直し、階段を登っていく。


 兵士が見張りをしていたという部屋の前に着き、まずは様子をドアの外から伺う。
 慌ただしさのような気配も無い。
 顔を見合わせ、突入する。
 同時に駆け出したのは蛍とリースリット。
「因果応報よ、観念しなさい!」
 その一喝は、青い正義感よりもたらされる心の叫び。理不尽な行ないをする商人への怒りの咆哮。
 商人が体を小刻みに震わせる。痺れてきているのか。
 震える手が瓶の蓋を開けた。渾身の力を込めてイレギュラーズへと振りかけられたのは、砂。
 蛍がその砂を被るが、彼女は砂を恐れることはなかった。
 何故ならば、彼女には珠緒がついているのだ。だから、眠りに誘われても、彼女が助けてくれると信じている。
 眼鏡の奥、瞼が降りてくる。
 前のめりになりそうな体をウィリアムが支えに行く。
 ジェラルドが、この状況になってもなお余裕を崩さぬ商人を前にして、声を荒げた。
「アンタもその砂も美しくないわ! その根性叩き治してやるから覚悟しなさい!」
 普段の言葉遣いからは考えられない、師匠にして養父に移された言葉遣いが彼の口から飛び出て、商人の目が丸くなる。
 リースリットが飛び出し、剣を持ったまま懐に入る。
 姿勢を低くし、腹部へその柄を叩き込んだ。
 蛙が潰れたようなくぐもった声がして、商人が目を剥く。
 早足でやってきたカイトが、商人の肩を掴み、床に座らせる。剣で峰打ちをした後、彼は頭頂部を掴むと、無理やり顔を上げさせた。
「商人、あまりに非人道的行為で断罪する。だが生きて償え、簡単に死ぬなんて許さない」
 男から読み取った情報に吐き気がする。
 蔑みの目を向けて、彼はその手を放した。
 ドラマが商人に尋問しようとしたが、カイトに止められた。
 自分が情報を読み取った事を伝えると、「そうですか……」とどこか残念そうに呟いた。
 逃げられないよう、寝室を見つけてそこから頂戴したシーツで縛る。
 彼が持っていた砂および、撒き散らした砂を集めたジェラルドは、それらを瓶に詰める。
 どういう構造のものなのか、調べるために。
 商人が身動き取れないのを確認し、レイリーはイレギュラーズを振り返った。
「それじゃあ、地下室を探そうか」

 一階に降り、客間にやってきたイレギュラーズは、地下室へと通じる場所を探していた。
 客間は一見して普通の部屋のようだった。ソファと棚が壁に並び、中央にはテーブルと椅子がある。壁には何を描いたのかが不明な絵画が飾られており、一見しておかしなところは無さそうだ。
 眠りから回復した蛍が、「棚の後ろとか?」と寝ぼけまなこで発言したことにより、一行は再度ドラマのエコーロケーションで探し直す。
 その結果、空洞らしき場所が見つかったとの報がもたらされる。
 怪しい棚をカイトとジェラルドが二人がかりで動かすと、現れたのはいかにもな四角い扉。取っ手は、無い。
 更に、リースリットが透視を行ない、その扉の先を確かめる。
「間違いないですね。空洞と、階段らしきものが見えます」
 彼女の透視によって確定した事で、後はこの扉をどう動かすのか、という問題点へ移る。
 ドラマがそっと押してみると、扉が動いた。
 押してみて分かった事だが、どうやらこの扉は回転式のようだ。
 開いた隙間から蛍とリースリットが鼠を召喚し、使役する。
 二匹の鼠は地下室に潜り込み、その状況を術者に伝えてくれる。
 長い階段を降りた先に、部屋があった事。
 その部屋にはドアはなく、突入は簡単そうだという事。
 中には三名ほどの傭兵達が居るという事。
 奴隷のハーモニア達の衣類も姿もボロボロで、中にはひどい事をされたと分かるほどの状態な者も居るという事。
 鼠を通して知ったその状況に、蛍の血が頭に上る。
 横たわるハーモニア達にテレパスを飛ばす。
「すぐに悪者を倒して助け出すから、もうしばらく静かに待ってて……!」
 目をみはる様子が見えた。蛍はリースリットと共に使い魔からの情報を遮断すると、彼女と顔を見合わせて、イレギュラーズに情報を伝えた。
「行きましょう」
 赤い瞳に静かな青の炎を灯しながら発したドラマの一言に、一行は大きく頷いた。


 地下室に入る前に、ウィリアムが怪我人達へ改めて癒やしの技を施す。
 そして、一行は自分達が敵である事を悟られない為に、ゆっくりとした足取りで降りていった。
 ドアのない部屋の入口からは光が見える。
 どの入口の奥から重低音の声がした。
「なんだぁ? もう交代の時間かぁ? どうもここに居ると時間が狂っていけね……ぇ……」
 声を発した男が目を見開いた。
 ドアに立っていたのは主人である商人ではなく、知らない人物で、そして彼らは自分達に敵意を向けているのだから。
 男は、自分が今しがた仲間と共に乱暴に扱っていたハーモニアの一人を放り出すと、武器に手をかけた。
 だが、動くのが遅い。
 武器を先に構えていたカイトとレイリーが順に声を上げる。
「自分の名は、カイト・C・ロストレイン! 彼女達を助けに来た!」
「私はレイリー・シュタイン! 貴様らを討ちに来た者だ!」
 剣士二人の名乗りにより、傭兵達の注意が彼と彼女に向く。
 おかげで他の面々が動くのに先制を取ることが出来た。
 ジェラルドが手近な傭兵の一人に、グローブを嵌めた拳を叩き込む。
 彼を補助するように、ウィリアムの雷撃が兵士を撃った。
 レイリーが壁役として前に進む。その後ろにドラマが控え、マギスナイプを放っていく。
 鎧に阻まれるものの、その防御が崩せれば良いのだ。
 傭兵が進んできたのを、レイリーが壁役として阻む。彼女が持つオーラの剣が、傭兵の剣をいなす。
 首元などを狙う傭兵の動きに対し、レイリーは防戦するのみ。
 ドラマが本を一冊出して前へ掲げ、助太刀すると告げた。
 瞬間、傭兵の喉元を何かが掴んだ。
 ドラマの本に潜む、不可視の悪魔。その腕が傭兵を掴み、そして――――
 事切れた体を地面に投げ捨てさせて、本に潜む悪魔は消えた。
 最後の一人をカイトが相手を務める。その間に、ハーモニアの少女達を救い出しにかかる。
 壁役として、再びレイリーが立つ。彼女の後ろを、ジェラルドや蛍、珠緒やウィリアム、リースリットが少女達と共に動く。
 商品を奪われたと激高する傭兵の、怒りに任せた攻撃はカイトの腕を切りつけた。
 利き腕を傷つけられ、怯む彼に、珠緒が自身の調和を用いて変換した力でカイトの傷を癒やす。
「……はぁっ!」
 剣による光の筋が煌めいた。
 深い傷が傭兵の体に刻まれ、今度は傭兵が怯む番であった。
 後ずさる男へ、ウィリアムがとどめを刺す。
 彼がかざした手は傭兵を狙い、放たれた衝撃は男を圧し潰した。
 命を刈り取った行為の代償に、ウィリアムもまた倒れてしまったのだが。

 彼が回復した時、その場所はあの地下室ではなく客間だった。
 落ち着いた場所である程度の治療を。
 そう望んだのは医師であるジェラルド。
 優しい言葉で声をかけ、蛍や珠緒、レイリーからも補足してもらう事で、医師として診察させてもらう事が出来るようになった。
「女の子の身体に傷を残しちゃいけないからな。ちゃんと処置して元気に家に帰ろうな」
 医者として見過ごせない傷の処置を施す彼の手は、優しい手つきをしていた。
 彼らの様子を見て、リースリットがホッとした顔をしているのを、カイトは見逃さなかった。
「……孤児はローレットで引き取れないだろうか」
「……どうですかね。そこがどうなるかは、まだわかりませんから」
「それもそうだな。だが、彼女達の傷が癒せるようになればとは思う」
「はい、それは、とても」
 同じ意見だと互いに微笑みあい、それから再びハーモニアの少女達の様子を見守る。
 ドラマは商人に尋問したくてたまらない様子で、見かねたジェラルドが「やりすぎない程度に」と告げた事で、険しい顔をして部屋を出る。
 様子が心配だからと、レイリーもついていく。彼女ならいざという時止められるだろう。
 ここからどうするかを、残ったメンバーが話し合う。
 その話し合いにカイトとリースリットも混ざりつつ、束の間の休息が流れるのだった。

成否

成功

MVP

レイリー=シュタイン(p3p007270)
ヴァイス☆ドラッヘ

状態異常

なし

あとがき

お疲れさまでした。
MVPの方のおかげで、傭兵達の動きも止められることが出来ました。
皆さんのプレイングのおかげで、少女達も全員助け出すことが出来、ほっとしています。

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