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シナリオ詳細

<Sandman>オアシス・マリオネット

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 幻想種の奴隷売買事件。
 それは、閉鎖的で知られる深緑『アルティオ=エルム』と、彼らがほぼ唯一と言っていい緩やかな同盟を結ぶ傭兵『ラサ傭兵商会連合』との関係を切り裂くかと思われた。
 イレギュラーズの活躍もあって、奴隷売買の多くは阻止されると共に、多くの幻想種が解放された。
 そんな中で、イレギュラーズはこの事件の大本近くにいる存在を知る。
 それこそが深緑にて御伽噺が類として語り継がれてきた『ザントマン』なる存在であった。
 そして、戦いの中でイレギュラーズはついにそのザントマンがラサの古参商人であるオラクル・ベルベーグルスと特定することに成功した。
 ラサの傭兵団を束ねる事実上の国主たるディルクの計略により、オラクルとその一派は全体会議の席であぶりだされた。
 その会議が席でオラクルが打って出た作戦――それは、アルティオ=エルムへの本格的な侵略行動であった。
 紛糾し、荒れに荒れた会議は結局なにも決まることなく、オラクル一派の退場により幕を下ろす。


 ラサの都、ネフェレスト。
 その一角にも、根を張る商人と傭兵団がいた。
 会議の顛末を説明した商人と傭兵に、座って聞き入っていた人物が楽し気にくすくすと笑った。
 容貌のほとんどはフードとマントに隠されているが、下から覗く髪の色はややくすんだ緑色で、ゆったりと波を作っている。
「そうなんですか。ザントマン様はそんなことを。それで、団長様はどうしたのです?」
 全体会議より立ち帰ってきた男へ、鈴の音でも転がすような柔らかな声が問いかける。
「私達もこの子達を使って儲けたんでですもの。
 今にあっちが攻めてくるんじゃないです?」
 ぺちぺちと、自分が座っているモノのお尻を叩いてやると、ぐぅとうめき声がした。
「俺達はザントマンについていく。そう決めてここにいる。で、軍師殿、何か策はあるか?」
 団長と呼ばれた男が逆に問いかければ、フードを揺らして愉快そうに笑う。
「それじゃあ、ここで迎撃しましょう!」
「はぁ?」
「寧ろ、今からここを出てどうするんです? 砂漠に隠れるのはまだ良いです。
 でも、敵に囲まれたら全方位から殴られるだけ。
 ならこのままここで籠城して、無理そうだったら抜け道でさっさと出ていく方がいいです」
 そこまで言うと、パンパンと手を叩いて、男達の方に視線を投げる。
「ほら、さっさと準備しましょう! 迎撃するにしたって、手持ちのお金を集めたり罠仕掛けたりあるのです。ねっ、相手が攻めてくるのに時間は少ないでしょうし!」
 言われた男達がハッと我に返って動き出す。
 自分の周りに人影が消えたあたりで、軍師殿とやらはトンと自ら腰かけていたモノから飛び降りた。
「つまらない馬鹿ばっか。まぁでも、幻想種の啼く声は聞いていて心地いいですし、ねぇ? くすくす」
 そう言って振り返る。自らがたった今まで座っていたモノ――幻想種の少女の首元に嵌められた首輪をそっと撫でる。
「ふふふ、ごめんね、今日はあなたが椅子だけど」
 首輪で遊び、そっと首筋をくすぐれば、少女から怯えた様子のひきつった声がする。
「そう怯えないで。あなたの役目は終わり」
 そう言って再び笑うと、首筋に添えた手を、そっと引いた。
 その瞬間、首筋から溢れ出した血液を飽きるまで堪能した後で、ぐぐっと背伸びする。
 鮮血に濡れたフードをぱさりと捨てると、頬についた血をちろりと舐めた。
 その耳は、人間種に比べてやや尖っていた。
 そう――たった今、血だまりに落ちた少女だったものと同じように。
 「うーん、あまり美味しくない……ちょっと使いすぎたのです。次はどの子がいいかしら? 緑色の髪の子? 赤髪の子? それとも――――くすくす」
 ひとしきり悩んだ後、少女はくるくると回りながら満足したところで部屋を後にする。
(とはいえ、鎮圧部隊がきたらあの人達はみんな死ぬでしょうし、そろそろお暇するべき?)
 すたすたと歩き進めた少女は、階段を使って地下に降りていく。
「こんばんは! ねえ、新しい子がほしいんだけど?」
 牢番の男に問いかければその男は少女を見て一瞬怯んだ。
 それもそうだ。今の彼女はつい先ほどの鮮血がほとんど残ったまま。
 男はそれに触れることなくそっと鍵を渡して少女から視線を外した。
 そんな男には目もくれず、直ぐに数人の幻想種の少女が入っている牢を開け、そこに入り込む。
 鍵の開く音を聞いた幻想種達が、焦燥した顔で少しばかり顔をあげ――ひきつったように見える。
「こんばんは! あなたたちから一人だけ、外に出してあげる。ねぇ? 誰がいい?」

 ――――とても楽しそうに、少女が笑った。

 ――――もっとも、それは美味しそうな料理を見て楽しげに頬を緩ませる幼子の様であったが。


 傭兵と商人による連合国家『ラサ傭兵商会連合』が、ザントマンとその一派のあぶりだしを終えたのとほぼ同時、彼らからローレットに依頼が舞い込んできた。
 ザントマンとその一派――特に、ザントマン自身は魔種の可能性が高い。
 そこで、魔種討伐のノウハウという点でローレットにいつものように仕事が舞い込んだというわけだ。
 ――――だが。
「こんばんは、イレギュラーズの皆様」
 ローレットにて君達を出迎えたのは、『蒼の貴族令嬢』テレーゼ・フォン・ブラウベルク(p3n000028)であった。
 ラサでの事件なのに、そう首をかしげる君達へ、テレーゼは少しだけ微笑んだ。
「実は、私のところにいる傭兵さんたちはラサから来ているのですが……
 今回は、私――というより、その傭兵さんたちからの依頼です」
 そう言って、テレーゼは隣に立っていた眼帯の男に視線をやると、彼から資料が君達の手に送られた。
「ここに集まってもらった皆さんにはとある商人と傭兵団のアジトへの攻撃をしてきてほしいのです」
 眼帯の男から手渡された資料を広げれば、そこにはひとつの屋敷の絵があった。
 屋敷――というか、見た限り、ほとんど小さな砦のような外見だが。
「ここは私の雇っている傭兵さん達と依頼上でトラブルがあった――端的に言うと悪徳商人と悪徳傭兵が拠点としているとのことでして……」
 ぺらりと次の資料に目を通せば、敵の情報がある程度、記されていた。
「この人たちの屋敷の地下に、沢山の幻想種が捕まってるらしいのです。
 捕まってる幻想種の人達は、皆この首輪をつけられてるようですね」
 そう言ってもう一つの資料にある首輪のイラストを見せる。
「これを使われると、命令通りの動きを強制される、とのこと。でも、意外と硬いみたいなので、壊すのは苦労するかもしれませんね」
 そう言うと、ゾッとテレーゼは身をすくめた。
「これらの情報は私達が雇ってる傭兵さん達がそのトラブルがあった案件で一緒になった傭兵団から預かった資料です。
 ……とはいえ、場所はラサ。
 私が雇っている傭兵が下手に関わるとえらいことになりかねません。
 そこで、皆様にお願いしたいのです」
 そう言ってぺこりと礼をして、首輪のイラストを見て顔をしかめた。
「でも、どうして彼らは籠城なんて……」
 ぽつりと一人のイレギュラーズが呟いた。
 本来、籠城戦とは余程追い込まれでもしない限り、友軍がいるからやることだ。
 これほどに防備を固めるまでに、さっさと逃げればよかったはずだった。
「諦めたのか、あてがあるのか、あるいは――逃げ延びる理由があるのか。
 いずれにせよ、正気の沙汰ではないでしょう」
 そう言ってテレーゼは首を振った。 

GMコメント

そんなわけでこんばんは、春野紅葉です。
全体依頼、<Sandman>では2本ほど行かせていただきます。
では、下記に詳細をば。

●オーダー
1.籠城中の商人および傭兵の討伐。
2.捕らわれているであろう幻想種の奪還。

なお生死は問いません。

●友軍戦力
ラサの傭兵達が10人友軍として参加します。
皆様と同等程度の実力です。

●戦場
とあるお屋敷です。
全部で5か所の戦場があります。
屋敷への突入後はどこから攻め取っていくのかは皆様にお任せします。

【1】門
衛兵と思しき敵兵が4人待ち受けています。門の外に立つ2人と、壁の上にいる2人。
門の外にいるのは人間種で二人とも剣と盾を装備しています。
壁の上にいるのは獣種でどちらも狼っぽいです。銃を装備しており、高所から打ち込んできます。

獣種はウォードッグ相当、人間種は剣豪相当のスペックを有します。

【2】屋敷1階
突入した直後のエントランス。
遮蔽物となる柱が複数あるのに加え、左右には2階に上がるための怪談が設置されています。
また、1階にも奥へ進む通路があります。

4人の人間種が待ち受けています。
それぞれ剣を装備した者が2人、魔術師風の者が2人です。
魔術師に関してはアタッカータイプとヒーラータイプがいます。
剣士はウォードッグ、魔術師は

【3】屋敷2階
本陣ともいうべき場所。傭兵団長とその護衛を務める者達及びフード付きのローブを身に纏った小柄な人物がいます。

傭兵は3人、全員が銃を装備しています。
ウォードッグ相当の能力を有します。

<傭兵団長・アンゼルム>
剣と銃を持っています。
剣修羅相当の能力を有します。
皆様よりも多少格上の能力を有します。

<フードの少女>
軍師的な立場と思われますが、彼女の思惑は果たして。

【以下メタ情報】
皆様は彼女と相対した時に本能的、或いは状況的などの理由から彼女が魔種であることを悟ります。
強いです。連戦が想定されますので、必ずしも仕留められなくとも失敗にはなりません。
ただし、ある程度の能力を把握するには戦った方が良いかもしれません。

【4】屋敷1階奥
通路先の部屋です。
商人が1人とその手の者が6人います。
商人は銃を装備しています。
商人の配下達はナイフを持つ者が2人、剣を持つ者が1人、魔術師が3人。
魔術師はサポーターとヒーラーが1人ずつ、アタッカーが1人。

【5】地下1階
地下牢のある場所です。
多数の幻想種が監禁されています。
怯えていますので、首輪を外すにせよ、工夫が必要です。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <Sandman>オアシス・マリオネット完了
  • GM名春野紅葉
  • 種別EX
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2019年10月13日 22時05分
  • 参加人数10/10人
  • 相談6日
  • 参加費150RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

郷田 貴道(p3p000401)
人類最古の兵器
シグ・ローデッド(p3p000483)
艦斬り
黎明院・ゼフィラ(p3p002101)
夜明け前の風
ミニュイ・ラ・シュエット(p3p002537)
救いの翼
クローネ・グラウヴォルケ(p3p002573)
幻灯グレイ
久住・舞花(p3p005056)
月下美人
藤堂 夕(p3p006645)
小さな太陽
ルチア・アフラニア(p3p006865)
斜陽
彼岸会 無量(p3p007169)
ルクト・ナード(p3p007354)
TACネーム:「ハンター」

リプレイ

●城外戦闘
 しんと静まり返ったそこにイレギュラーズは辿り着いていた。
 情報の通り、門には4人の傭兵が見て取れる。
「……籠城、それも屋敷…骨の折れそうな仕事ですね……」
 屋敷の様子を見ながら『幻灯グレイ』クローネ・グラウヴォルケ(p3p002573)はひしひしと感じる言い知れぬ予感を覚えていた。
「解囲のあてなく籠城するとは解せないわね。野戦よりも自信があるのか、
 それとも囚われた子たちを連れだせない事情でもあるのか……。
 いずれにしても、攻略するほかはないのだけれど」
 クローネの言葉に同意するように『斜陽』ルチア・アフラニア(p3p006865)はうなずいた。
「ふむ。いつの時代も、煽動された愚か者というのは得てして厄介である。
 ……しかし、その彼らを煽動している者の正体が如何なる物かは……興味があるな」
 舞花に応じるように『『知識』の魔剣』シグ・ローデッド(p3p000483)はつぶやいた。
(元ハーモニアの魔種……前に噂を聞いたような。
 同じ相手かは知らないけど。今回も魔種主導の騒動なのかな)
 翼をたたむようにして立ちながら、『応報の翼』ミニュイ・ラ・シュエット(p3p002537)は物陰から此度の事件のことを少し考えてみる。
「ずっと動いてませんし、そろそろ行きましょうか」
 場所を変えることなく、ただ淡々とそこに立っている敵の様子に『小さな太陽』藤堂 夕(p3p006645)が問う。
「見たところ迎撃に出てきてる守備兵の数すら予想以上に少ないですね
 これなら、門を突破するには戦力は十分。一気呵成に参りましょう」
 それに応じた『月下美人』久住・舞花(p3p005056)は、斬馬刀を鞘から抜いた。
「今回は長丁場ですからね、楽しみは後に残しておかないと」
 そう言って、彼岸会 無量(p3p007169)は愛刀・朱呑童子切にそっと触れる。
 刃を見せねば一見、それは錫杖の類にしか見えない。
「仕事を受けた以上全力を尽くすとしようか」
 薄い金髪の髪を流し『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)は静かに立ち上がる。
「……砦攻略、か……久々だ。……「敵」は殺しても構わないんだな?
 ……なら、いい。加減は苦手だしな」
 ゼフィラの言葉に続けるように『TACネーム:「ハンター」』ルクト・ナード(p3p007354)が言えば、『拳闘者』郷田 貴道(p3p000401)は豪快に笑い、闘志を燃やす。
 イレギュラーズの動きに連なるように、傭兵達が獲物を構える。
 イレギュラーズ達が門の前へと躍り出るのを、最初に察知したのは獣種らしき敵だった。
「て、敵襲!!!!」
 獣種の敵兵が大声で屋敷の方へと声を上げた。
 接敵と同時、その獣種がこちらに銃口を向けるよりも早く、ミニュイは動くことが出来た。
 微かな飛翔と共に、壁上まで舞い上がり、一人の獣種へと飛びかかる。
 蹴り飛ばされたような形となった獣種に対して、慣れぬ接近戦に持ち込んだのも、それが相手にとっても苦手なレンジだと見越したから。
 そして――それは正しい。
 よろけた獣種はそのまま若干の間合いを開けて弾丸を放つも、慣れぬ接近戦とミニュイの身のこなしも相まって寂しく無駄撃ちするのみ。
 次いで動けたのは、舞花だった。
 瞬間的に引き上げられた身体能力を駆使して、門の前に立つ2人の片方へ飛び込むと、
神速の踏み込みと同時に敵方手を動かす間も無く斬り下ろす。
 紫電を散らす一閃に、兵士がよろけた。
 メルトヴァイスが持つ熱が急速に上昇していく。
 全身の魔力を結集したゼフィラは、それをミニュイと舞花が挑んだ敵とは違う2人へめがけて振り下ろした。
 強烈な熱量を帯びた破壊の魔力が、その兵士達を飲み込んで直線上を焼き払う。
 貴道はゼフィラの攻撃を受けた門番の憲兵の下へ走り抜ける。
 『盗賊王』の両の爪が力を帯びた貴道の拳は、兵士の盾を弾き、懐へ痛打を加えて返っていく。
 シグは敵を見据えながら静かにペンダントを掲げた。自らの両腕をレールガンのようにして、血液でもある液体金属で出来た鎖を投擲する。
 それは放物線を描きながら城門の上に陣取りこちらへ銃口を構えるもう一人の獣種めがけて放たれた。
 打ち込まれた鎖が獣種の太ももへと食い込み、その体力と魔力を吸収していく。
 それを受けた獣種が、少しばかり膝を崩した。
 クローネは仲間達が抑え込むようにして4人の敵に向かっていくのを見ながら、少しずつ立ち位置を変える。
 引き起こされるのは、ある種の呪い。
 強烈な思い込みにより、まるで病を患ったかの如く、彼らは動きを止める。
 どこからともなくふわっと現れた女性が、夕の前に立つ。
「お願いします!」
『あらあら』
 夕の言葉に答えた女性が、携えていた金鎖をするりと動かせば、4人の敵へと絡みつき、味方にも絡みつく。
 しかし、味方にもたらされるのは癒しであり――敵へともたらされるのは、飛び切りの混乱。舞い踊る金鎖に締め上げられた敵が苦悶の声を漏らす。
 無量は舞花が戦う者とは別の人間種の方へと走る。
 額にある三の目が静かに人間種を射抜き、錫杖の音がしゃらんと鳴った。
 刹那、抜き放つは大太刀。
 目に見える『線』に合わせるように、ただ滑らかに刃を走らせる。
 ゆっくりと動いた盾を、躱して、刃が心臓を貫いた。
 その敵兵の目が、ぎらりとこちらを見る。
 反撃とばかりに打ち込まれた剣が本の僅かに無量に届くが、致命傷にはなりえない。
 ルクトは仲間達が攻撃を仕掛ける中、静かに後方にいた。
 手に持つZ.A.Pに魔力を込め、仲間の抑えの無い獣種めがけて弾丸をぶちまける。
 使いこなしにくいことを代わりに火力の期待できるそれが、獣種の目をぶち抜いた。
 ルチアは味方の様子を見つめながら、魔力を高めていく、
 さる殉教者の指輪が呼応して淡く輝き、周辺から吸収した魔力をも込めた祝福を初手で大技をぶち込んだゼフィラへと注ぐ。
 齎した活力はゼフィラの精神力を復調させていく。




●開幕の場にて
 異様に手薄な門での戦いを早々に片づけたイレギュラーズがぎぃと館の扉を開く。
「しゃがめ……!」
 反響音――いや、詠唱を耳に入れたルクトが思わず叫んだ直後――うち開きに開きつつあった館の窓を粉砕して、炎の弾丸がイレギュラーズの後方へと消えていった。
 動きの遅れた傭兵達が傷を増やしたのを除けば、さほどの問題はなさそうだった。
 ルクトはそのままZ.A.Pを構えると、近づいて来ようとしていた剣士に向かってレーザーを打ち込む。
 極太のレーザーに焼かれた剣士はその場で立ち止まり、防ごうとしてその身を焼かれる。
 続いて館の中へと躍り出たゼフィラは、たった今、魔法を打ち込んできたであろう魔術師と剣士の一人を巻き込むように破壊の魔力を叩き込む。
 強烈な火力が床を僅かに削りながら薙ぎ払っていく。
 ミニュイは大きく翼を広げた。
 魔力を収束させ、束となった羽根が後方の魔術師へと放たれた。
 イレギュラーズへ立ち向かおうとしたその4人の傭兵は、不意に動きを止める。
 クローネの偽典聖杯の模造品から放たれた不可視の魔力が敵をありもしない病へと誘っていく。
 舞花は疾走する。動きを鈍らせた剣士に向かって至近し、一歩を踏み込みと共に、紫電を巡らせた。
 斬り上げられた敵傭兵が咄嗟に剣を動かすも、遅い。
 すぐさま体勢を直し構えを取る舞花の前で、剣士に罹った異常性が溶けた。
 瞬間、斬り下ろされる剣を致命傷を避けるようにして受け、視線を後ろへ。
 そんな舞花の下へ、夕が召喚した天使が舞い降りる。手に持った注射をぷすっと刺した瞬間、疲労感が消えていく。
 残像を引きながら進んだ無量は舞花と戦い剣士とは別の方へと進むと同時、大きく踏み込んだ。真っすぐに横へ引くような両断は当たれば必殺の一撃。
 深手を負った剣士の攻撃を、なんとか合わせる。
 続くように貴道は走り、魔術師に拳を叩き込み、翻るように帰還する。
 シグは後方に立つヒーラーに向かって液体金属を伸ばす。
 打ち込まれた鎖より、体力と魔力を奪い取っていく。
 ルチアはその後方で、全身にある魔力術式を通じて大気中の魔力を取り込むと、天使の歌を歌う。祝福の歌は、仲間の受ける傷を癒していく。
 敵の後方、魔術師が詠唱を告げる。
 魔方陣が天井辺りに展開したかと思うと、そこから不可避の雹が降り注いでいく。
 降り注いだ雹は傭兵やイレギュラーズの数人を氷結化させていく。
 シグは攻撃を受けた自らの魔力を術式へと構築する。
 輝き始めた知識の結晶は仲間達の恐怖心を覆していく。
 ミニュイは大きく羽ばたき、立ち位置を工夫する。
 そのうえで敵陣目掛けて、硬質化した羽根の山をぶち込んだ。
 鋼の驟雨が如き鮮烈な一撃は、敵だけを識別し、撃ち抜いていく。 
 猛攻を受ける敵陣に、突如として霧が立ち込めていく。
 霧中に入り込んだ者達が、突如として苦しみだす。
 それは、劣化の呪い。腐食し、落ちこぼれていくその呪いは、猛毒となって敵陣に浸透していく。
「……しかし、何でしょうかね……この嫌な予感は……」
 霧を飛ばしたクローネは館の中に入ってより一層と感じるソレに顔をしかめる。
 夕は魔力を込めて敵陣の後方辺りを指定する。
 それは“ここ”と“ここではないどこか”を繋げて引っ張り出す召喚術。
 突如として出現した、謎の平原部が屋敷を上書きし、あふれ出たナニカが敵陣を痛めつけていく。

●くるくる踊るマリオネット
 ――エントランス戦が終結して少し。
「此処は任せてもらおう」
 戦いを終えたイレギュラーズは事前の作戦通りに二手に分かれることになった。
 シグは透視によりエントランス周辺の様子を見ていた。
 地面を見つめていたシグの目は、はるか下、そこにある空間を見つけ、眉間に少しばかりしわを寄せ、少しの沈黙。
「地下室はこの下にあるようだ。
 ……だがここには抜け道はないか……」
 エントランスから見える周辺を見てから、少しばかり考える。
「……あるとしたら……後はこの奥か……あそこか……」
「地下室自体がこのすぐ下なのは見えた。それで良かったとするべきだろうな」
 シグがは眼鏡を定位置に戻すと、クローネの方を見た。
 クローネは視線を2階へ投げかけ、目を見開いている。
「――まぁ、全員で行くほど考えなしでないですか。
 行ってくれるような人達なら、面白く笑わせてくれたでしょうに」
 声が、した。
 少女と思われる柔らかい声。なのに、肌が粟立つような感覚。
「少しばかり数が多いですね。まぁ、いいですけど」
 フードの下で笑って、ぱさりとフードを剥いだ。
『――ところで、ねぇ、傭兵さん達』
 綺麗な、楽し気な微笑み。
 何か、力を籠められた声。
(……隠す気も無い……魔種……!)
 身体が、心が警笛を鳴らす。
「あのフードに近づくな! 相手は魔種だ!」
 クローネが言葉に、動き出そうとした傭兵達が動きを止める。
(……何でこう……私って嫌の時の予感に限って当たるんですかね……!)
 自分の本能的な感覚に思いを馳せながら、クローネは続けるように傭兵に声をかけた。
「下がれ! 耳を貸すな!」
『妬ましくないですか? 羨ましくないですか?
 このラサで、私達よりも強いかもしれない人たちが』
 傭兵達が蹲る。耳を貸さないように、彼らが静かに後退する。
『――なぁんだ、つまらない』
 ゆっくりと魔種が興味も失ったように笑って。酷く酷薄にエントランスを睥睨する。
「仲間が帰ってくるまでの耐えるのだ」
 シグの指示に肯定した傭兵達が防衛体勢を取る。
「団長さん達はあっちの女をやってくださいな」
 魔種が両の手を静かに広げながら上に持ってくる。
 まるで、人形師が傀儡を動かすような動き。
「踊ってくださいな。私の前で」
 愉快気に、盤上の向こう側で笑った魔種が、手をくるりと動かした直後、シグは咄嗟に防御態勢を取った。その直後、本の僅かな弱点をえぐるように、鋭い痛みが走った。
 返すように放った液体金属を、魔種は意に介さず受け止める。
「くすくす、お兄さん、そんなことが出来るんですね。
 妬ましい、その反撃が妬ましいです。さっさと死んでくれればいいのに!」
「悪いが、決めさせてもらうぞ」
 後退しようとしたクローネを釘付けるように銃弾が走り、動きを止めたところで至近してきた団長と呼ばれた男が剣をふりおろ――すギリギリを傭兵が割り込んできた。
 おかげで後退できたクローネはお返しとばかりに自らの精神力を高めていく。
 急速に高められる精神力は酷く怯えたように見える。
 それでいて、生への執着に満ちた複雑で、だからこそ濃い精神性が、魔力を帯びて収束し、ブラックサン・レプリカより零れ出る。
 溢れるように出た精神力は弾丸となってアンゼルムの身体にぶちまけられた。  
(……何秒だ? 何秒耐えればいい?)
 クローネはコチラヘと迫りくる敵を見つめながら思う。
 貴道はそれに続くように男の懐に潜り込み、稲妻さえ落ちていかんばかり位の超連打を叩き込む。
「ぶち抜け」
 男が静かに告げた直後、敵兵の真後ろから無数の銃弾がクローネ、貴道、傭兵達に驟雨のごとく降り注ぐ。
 シグは体勢を立て直すと、魔種の攻撃を躱すような動きで立ち位置を調節する。
 ――それは、『知識の魔剣』の力を以って再現する一撃。
 己の身体を文字通りの剣に変えたシグは、そのまま浮かび上がり、剣身に魔力を込める。
 炎を象ったそれが急速に収束し、やがて満つる時、シグは思いっきり己が身体を振り下ろした。
 業火の如き破壊の力が走り抜ける。目を見開いた魔種は身体をくるりと不自然に動かしてそれを躱し、その後ろにいた銃を持った傭兵達が焼き払われる。
「面白いことができるんですね、お兄さん」
 興味深げに、けれどまるで興味のなさそうな張りついたような笑みが、シグを見ていた。

●もう一つの戦場で
 エントランスでの戦いを収束させたイレギュラーズは傭兵達を連れて奥に行く通路に見えた道を走り抜けて奥の部屋に辿り着いていた。
「地下室はエントランスの真下にあるようだ。
 だが、エントランスには通路は見当たらなかった。
 あるとすれば、そちらへ向かう道か、奥の部屋であろう」
 ファミリアーを通じてシグからの伝言をクローネが伝えると、立ち止まっていたイレギュラーズは頷きあう。
 ゼフィラは罠がないか解錠を試み、仕掛けられていたやけに大きな音の出そうなベルをそっと降ろしてから鍵を開ける。
 解錠と同時に奔った敵の先制攻撃を躱して、室内へと踊りこんでいく。
 部屋の奥、銃を持った商人が何かをパイプ越しに話しているのが見えた。
 それはよく見れば壁を伝って上へ向かっている。
 最初に動いたミニュイは敵陣目掛けて無数の羽根を打ち込み、硬質化した羽根は、敵陣を覆って傷を増やしていく。
 手傷を負った商人が、イレギュラーズへの応戦を部下に命じながら、自らも銃を構える。
 次に動いたのは舞花だった。室内へ走りこみ、跳躍。奥にいる商人へと突撃する。
 それを見た商人が銃弾を舞花へと打ち込んでくるが、それを躱し、紫電を纏う斬馬刀を思いっきり振り下ろす。
 慌てた商人が後退したせいで微かに打ち込みが浅い。
 続くように、ゼフィラは今日3度目となる魔砲を敵陣に目掛けてぶち込んだ。
 高火力の蹂躙が走り、剣士と魔導師を巻き込んで焼き払う。
 しかし、その傷は瞬く間に癒されてしまった。
 夕は再びどこからともなく現れたジーナローズに金鎖を飛ばしてもらった。
 きゅるきゅると敵を締め上げ、混乱を呼び寄せていく。
 ナイフを持つ傭兵が2人、イレギュラーズの前に出る。
 そんな傭兵目掛けて、ルクトはレーザーをぶち込んでいく。
 強烈な閃光と共に放たれた砲撃が敵を焼き、その向こう側から耐えた傭兵達が飛び込んでくる。
 その後ろで、魔術師がなにやら詠唱を唱え、ルクト目掛けて突撃してきたナイフ使い達がその恩恵を受けた。
 精度と力量の増した突きがルクトに襲い掛かる――その寸前、傭兵達がその間に入り込んだ。
「お嬢さんは集中して打ってくれ! 俺達は気にするな!」
 傭兵の言葉に頷いたルクトは再びZ.A.Pを構える。
 無量は敵陣目掛けて飛び込んだ。
 剣を持つ敵へ目掛けて、大きく踏み込み、一閃。
 通常の一刀両断を遥かに超えた、必殺の一撃を静かに叩き落とす。
 朱呑童子切が真っすぐに振り下ろされ、合わせるようにして動いた剣士の剣を弾いてその身を断っていく。
 ルチアは戦場の様子を見ながら、祈りを天に捧げて歌う。
 天使の歌が疲れを見せつつあったイレギュラーズを祝福していく。

 戦いが始まり、混戦となりつつあったその時だった。
 イレギュラーズの前を、一匹の蝙蝠が滑空する。
 それは事前に決めていた合図。
 エントランス側で、2階にいるはずの者達が動いた合図。
 ちらつくのは、この部屋に入った直後の商人のあの動き。
「やってくれましたね」
 この部屋は奥だ。エントランス側に待機する者を用意してなければ、ここに来た時点で挟撃される羽目になっていたかもしれない。
 仲間が今は抑えてくれるだろうが、今度は逆に魔種と強敵を相手に少なくとも自分達が仕留めるまでは耐えて貰わなくてはならない。
 舞花は商人が放った銃弾を受けながらも前に向かう。
「くははは! 今にうちの傭兵と軍師が貴様らを討ち果たすだろう!」
 いったん戻るような動きをすれば、この6人は今度は自分達を追うだろう。
 だから、結局は同じだ。結局は――こいつらを速攻で撃つ。
 舞花は集中力を高めると、一気に一閃する。紫電が輝き、商人が銃を持っている腕を両断する。
 ゼフィラは魔装暗器を起動させると、魔術師へと投擲する。
 クナイのような形状の魔力を帯びたソレが走り抜けると、そのまま魔術師に傷をつける。
 ミニュイは再び敵陣目掛けて羽根を降り注がせた。強烈な速度で放たれた羽根は、イレギュラーズを巻き込むことなく、鋼の驟雨が如く打ち込まれて、ナイフを持つうちの一人と魔術師の一人が膝を屈した。
 ルクトは見逃さず砲撃を魔術師目掛けてぶち込んだ。
 砲撃を受けた魔術師が、自らの前に盾代わりの魔方陣を構築し、ルクトのレーザーの威力を削減したのに続けるように、友軍の傭兵達がその魔術師に迫る。
 無量は剣士が振り下ろした一撃を受けて、微かに動きを返る。
 その目には、既にその『線』が見えていた。
 添えるように打った一太刀は、滑るようにその線を走り、静かに剣士を討ち果たす。
 ルチアは自らの魔力を高めると、傷の増えてきた前衛の方へと進み、天使の歌を奏でる。
 美しき天使の福音が、連戦で疲弊するイレギュラーズに癒しをもたらしていく。
 夕は再び癒しの権能を持つ天使を召喚すると、今度は無量に対して癒しの力を施していく。
 敵陣の後方、イレギュラーズの猛攻を受けて疲弊する魔法使いが魔力を込め上げていく。
 尋常ならざる質量に増していく魔力が、イレギュラーズの一直線上を薙ぎ払うような一撃をぶち込んだ。
 超絶的な火力な一撃は、イレギュラーズの体力をごっそりと削る。
 しかし、それに対抗するようにルチアは再び祈りを捧げて魔力の籠った癒しの歌を歌う。
 重傷的な痛みの攻撃を急速に癒していく。
 それに続けるように動いた夕は癒しも歌を奏でて削られた肉体の痛みを削減する。
 ルチアと夕、二人の癒しの歌は連戦して疲弊する仲間達には必要不可欠だった。
 それに引き続くように、ミニュイは仕返しとばかりに再び敵陣へと硬質化した羽根の雨を降り注ぐ。
 敵に味方を区別して放たれる驟雨は確実に敵を削り落とすという意味で大きな貢献を残していると言えた。
 
 数の優位を発揮するイレギュラーズの猛攻は続き、やがて傭兵と商人たちは大地に伏した。
 傭兵の数人に力尽きて倒れる者も出たが、イレギュラーズに限っては全滅というわけでもない。
 シグとクローネ空の情報をもとに、イレギュラーズは商人に問い詰める。
 痛みに耐える商人が、ほんの一瞬、本棚のある壁際を見る。
 夕はそちらへと向かうと、ゼフィラと共にその本棚を調査し――やがて、引っこ抜けない本を見つけた。
 それを押すと、ごとごとと音を立てて本棚が横にずれていった。
「皆は先に戻ってて! 私も捕まってる人達を助けたらすぐ行きます!」
 夕の言葉に頷いたイレギュラーズは、商人と傭兵を縛り終えると、エントランス目掛けて走り出した。
 夕はそれを見届けると、残っている味方の傭兵と共にその階段を下りていく。
 足音の反響する暗がりの通路を走り抜ければ、やがて見えてくるのは、ぼんやりと薄明かりに照らされた場所。
「……酷い」
 そこにいたのは、多数の幻想種の少女だった。
 暗がりの廊下のその奥で、何もすることなくぼんやりと外を――こちらを見ている。
「私達はローレットから派遣されたイレギュラーズです。
 ラサの盟主赤犬と、ファルカウの巫女からの依頼で助けに来ました」
 牢に閉じ込められた彼女たちは、怯える者も訝しむ者も、それすら諦めている者もいた。
 壁に掛けられた鍵の束をひっつかんだ夕は、次々と牢のカギを開けては説明を繰り返す。
 つけられた首輪を破壊しようとして試みた夕はそれが生半可な力では壊れそうにないことを悟る。
 そんな時だった。数人の少女が、発狂するように雄たけびを上げ、夕めがけて突進する。
 目を見開いた夕が魔力を込めると、やがてこの世ならざる何処かへの扉が開き、幻想種達を引きずり込んでいく。
 その直後――攻撃を受けた首輪がぴきりと音を立てて崩れ、同時に少女たちがぱたりと倒れた。
 すやすやと寝息すら立てるのを見た他の幻想種達が、次々と声を上げ、夕に向かって行く。

●人形達の終わり
 原罪の呼び声に抗わんとする傭兵達の動きは牽制され、シグは結果的に一人で魔種と相対することになっていた。
 パンドラの加護は既に消費され、魔種から放たれる複数のBSは自らの動きを阻害してくるものが多い。
「お前さん、何を隠している」
「あらあら、なんでしょう?」
 無影血鎖を叩き込み、相手の生命力を、魔力を喰らいながら、それでも無尽蔵に思えるほどけろりとしたこの魔種は、どこか手を抜いているように見える。
 翳された掌。数度受けた攻撃がまた来ることを予感しながら、シグは防御態勢を取る。
 その直後――受けたのは痛みではなかった。
 暖かい光は、己が体力を復調させていく。
「……なぁんだ、失敗ですか。つまんないですね」
 目の前の魔種が目を見開いて、呆れたように声を上げたかと思うと、一気に後方へ跳躍する。
「見かけは兎も角――気配でわかるものもある。
 一連に魔種が絡んでいる以上、ここに居ても驚く事ではないですね。
 理屈に合わない謎の籠城も戦力分散も、恐らくあなたが原因ですか」
「くすくす、くすくす。そうですよ? 怖いお姉さんです」
 楽しげに笑う魔種とシグの間に立った舞花は斬馬刀を油断なく構えながら、敵を見る。
「……耳を見るに元幻想種、例のオラクルの同類。
 真のお仲間と言う所かしら?」
 その言葉を聞いた瞬間、ほんの一瞬――本当にほんの一瞬だけ、魔種が目を細めた。
 舞花はもう一歩前に出る。
 魔種の腕の動きに合わせるようにして、舞花はゆるりと斬馬刀を振るう。
 変幻の刃が刹那に魔種の心臓へ目掛けて走らせる。
 微かに届いた舞花の刃に、驚いたように敵が目を開く。
 クローネとアンゼルムの間に躍り込んだのはミニュイだ。
 銃撃に晒され、敵の猛攻に晒されながらも、クローネを護るように展開しながら交戦する傭兵達を後ろに下がらせて、ミニュイは前に立つ。
 そのまま、己の羽根を弾丸に変え、アンゼルムへとと叩き込む。
 長大な射程と貫通力を帯びた羽根の飛翔に、アンゼルムの身体が鈍る。
 ゼフィラは自らの魔力を糸に変質させると、アンゼルム目掛けてそれを飛ばす。
 不可視の糸はアンゼルムの身体を切り裂き、その身動きを阻害する。
「悪いが、足を引っ張らせてもらうよ。
 戦闘は本来専門外でね。悪く思わないでくれたまえ」
「くっ、この程度……!」
 魔力の糸を斬らんと抵抗を見せるアンゼルム目掛けて、次に動いたのは無量だ。
「この戦場は当たりでしたね――」
 微かな笑みを浮かべて静かに走らせた大太刀がアンゼルムの肩を捉えつつも、肉に行く前に止められる。
 アンゼルムのまっすぐな瞳はどこか狂気染みていた。
 大技を頻繁に連発する余力がある者などほとんどいない中、ルクトは静かにZ.A.Pを構えていた。
 ここまでの戦いで、殆ど使ってこなかった魔力を、砲身に注ぎ込む。
 充填した膨大な魔力を、ルクトはそのままぶち込んだ。
 その魔力砲撃が、敵の傭兵を薙ぎ払っていく。
 損耗著しいクローネとシグに近くへと移動して貰ったルチアは指輪の力を込めて歌を歌う。
 神聖なる救いの歌が、二人の傷を少しずつ癒していく。
 クローネは多少の傷を癒したあたりで自らに残る魔力を振り絞った。
 注ぎ込んだ魔力を死者の怨念とあわせ、アンゼルム目掛けて叩きこむ。
 真っすぐに駆け抜けた矢は、仲間と仲間の間を縫うように走り抜け、アンゼルムのわき腹辺りへと炸裂する。
 続くようにシグが再び液体金属を放つ。真っすぐに駆け抜けた銃弾の如き鎖が、魔種の身体に叩き込まれ、その命を吸い取っていく。

 激化する戦いにより、双方の疲弊が高まる中、それでも圧倒的な数の優位に立ったイレギュラーズは、アンゼルムを含む傭兵達に猛攻を重ねていた。
 銃弾が、驟雨のごとく敵の後方から降り注いでくる。
 狂気に満ちたアンゼルムが奇声を上げる。
 魔性の如き切っ先が無量の首を落とさんと強靭な一撃を振り下ろしていく。
 無量はそれを朱呑童子切を合わせる。
 重たい一撃が、無量の身体を微かに傷をつけ、返すように無量は太刀を翻す。
 一歩、アンゼルムの方へと踏み込む。狂気的なまでの踏み込みは、死地へ自らを置く一歩。
 深い、深い踏み込みと共に、剣を振り下ろす。
 猛烈な一撃はアンゼルムの一撃とすれ違うように爆ぜ、その肉体を大上段から振り抜いた。
 血飛沫が舞い上がり、屋敷の中に鮮血を濡らす。
 さすれば、もはや、アンゼルムの動きは、ない。
 魔力の糸でも絡められるような、動きを阻害する魔種との戦いに集中していた舞花は、ふと、嫌な予感がして、一歩前へ踏み込んだ。
「……そろそろお暇しましょうか。
 どうやら傭兵の方々も全滅してしまったようですし、
 何より……全員取られちゃったみたいですから」
 不意の呟きと共に、魔種の視線が舞花を離れて遠くを見る。
「そういえば、貴女、こう言ってたかしら?
 オラクルの真のお仲間って……くすくす。
 妬ましいわ。愚かしいわ。
 たかだか一派閥の構築をなしただけの、たったそれだけの。
 あれぐらい――――妬む価値もない」
 時折見えた酷薄なそれを、ぎゅっと濃縮したような、冷たい目を向けて、魔種が嗤った。
 “頭部に何かを刺すことを試みるような”真上からの攻撃に、微かな痛みが背中をかする。
「私の名はマリナ、覚えておいて貰えると嬉しいわ」
 そう言った直後、魔種――マリナが後ろに向けて跳躍する。貴婦人を描いた大きな絵画が八つ裂きになり、その後ろに開いた、黒い穴。
「さて、そういうわけで、可哀そうな人達ですけど、
 最後に私の役に立ってもらいますね」
 そこへ飛び込んだ魔種が、イレギュラーズの方を見て指を震わせる。
 直後――そこらに散らばっていた兵士達が、その死体が、“糸に引っ張られた操り人形のように”不自然に動いて穴の前に移動する。
「せいぜい、時間を稼いでくださいな」
 ――――くすくす。くすくす。と、笑う声が嫌に耳についた。

成否

成功

MVP

シグ・ローデッド(p3p000483)
艦斬り

状態異常

郷田 貴道(p3p000401) [重傷]
人類最古の兵器
シグ・ローデッド(p3p000483) [重傷]
艦斬り

あとがき

お疲れ様でしたイレギュラーズ。

連戦と激闘、お疲れ様でした。まずは傷を癒してくださいませ。

MVPは地下室の場所の把握と防衛を行なったシグさんへ。

ここががら空きであれば皆様は挟撃を受け、その損害はこの比ではなかったでしょう。

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