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シナリオ詳細

<Sandman>猛虎駆ける

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●『ザントマン』、蜂起す
 幻想種の奴隷売買事件に端を発した傭兵と深緑に生まれた。それを主導したのが、誰あろう幻想種の――古参商人、オラクル・ベルベーグルスであったことは驚きを以て迎え入れられた筈だ。
 筈だ、というのは。
 ディルクが彼を全体会議で糾弾し、あぶり出した折に彼を養護した者が少なからずあったこと。そして、オラクル一派が深緑への侵略を提起し、生まれる利益を独占せんという意見に同意を示す者が少なからず現れたためである。
 成程、傭兵の中にも不和を、議論百出の状況を生み出せば利益という餌で宙ぶらりんの商人達を釣り上げられるというわけか。オラクルの仕込みは悪くない。
「だが、これで敵と味方が判別出来たってワケだ」
 悪くないが、ディルクはその一手先を行く。もとより彼は、不穏分子と味方とを選り分けて一網打尽にする気だったのだ。
 魔種である疑いの濃いオラクルら一派を撃破するとなれば、ローレットのイレギュラーズを頼るのが先決。そしてそのためにも、霧の中に手を突っ込ませるよりは氷のように正体を押し固めた上で打倒したほうがずっと早い。
「概ね話はこんなところです。オラクル派の商人達の動きが活発化した今なら、場当たり的な対策ではなく、足並みを揃えて一斉に撃破できる。ローラー作戦みたいな人海戦術ですが、それが出来るのがローレットの強みですので」
 『ナーバス・フィルムズ』日高 三弦(p3n000097)はそう説明すると、今回の依頼概要について話を始めた。どうやら今回は、奴隷商人の拠点襲撃になるらしい。
「拠点といっても大規模ではなく、幻想種を捉えている小さな邸宅なんですけど。商人ルッツと彼が抱えている傭兵は、いずれも保身第一に考える小物のようで、特に行動速度と移動距離に秀でており、連続攻撃などの巧者でもあるそうです。それと、戦況が傾かない限りはひたすら強気で戦える程度の勇敢さは持つとのこと」 
 ラサで商売をやっているということは、汎ゆる情報を握られることと同義である。彼も、隠し玉などを持たぬ限りは戦力と特性を詳らかにされた状態で戦わされることとなるわけだ。
「問題があるとすれば数がそこそこ多いこと、そして現時点で2階建て+地下階のどこに幻想種が捕まっているのかはっきりしないため、戦力分散を行ったほうがいい、という2点ですが……そこはラサ、優秀な傭兵を用立てて頂けました」
 三弦は『御猫街に彷徨ふ』狗尾草 み猫(p3p001077)にちらと視線を向け、「現地合流でお願いします」と付け加え、イレギュラーズを送り出した。

●強くて頼れて、そして……
「初めましてぇ! 黄縞柄 て虎(きじまがら てとら)言います! 坊っちゃん嬢ちゃん達がローレットの人らやんな? よろしくな!」
 合流地点に赴いたイレギュラーズを待っていたのは、なかなか……個性的な女性だった。
 道着(空手着だろうか?)を纏い、サラシを巻いた肉体は十分な鍛錬の賜物とみえ、雰囲気からもそこそこの経験を積んだ傭兵であることが明らかだ。て虎と名乗った女性は、居並ぶイレギュラーズを値踏みするように眺めた後、にいっと笑みを浮かべた。心なしか男性側に熱い視線が注がれているような、気がしなくもない。
「あたしも足を引っ張らない程度に頑張るわ! 館をこう、ガッとして幻想種の嬢ちゃんをバッとすればええんやしな! 商人共は勿論こうや!」
 いきなり知能指数が下がったような抽象的な話しぶりになったが、彼女はそれなり賢いし多分気性とかそう言うものだと思う。館をブッ壊して幻想種を華麗に助け出そう、と。そういうことだ。

GMコメント

 凄く頼もしい傭兵のお嬢さんが現れてしまった。これはつよい。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●成功条件
・商人『ルッツ・カダーヴァー』含む敵勢力の全捕縛、ないし撃破。ルッツ除き生死不問。
・ルッツ捕縛前までに幻想種の被害者を発見、全員避難を完了させる

●ルッツ・カダーヴァー
 オラクル一派に与する奴隷商人。付き合いはそれなり長く、悪どい手管で儲けてきた男。
 逃げ足が速い(反応・機動高め)が、味方の数が多い限り自信を持つ(抵抗バフがかかる)性質。使用武器はチャクラム。
 2階か地下階のいずれかにいる。
・ファール・カルテ(物中列:泥沼)
・ラオエ・クネーベル(物近単・封印)
 その他、通常攻撃(レンジ2)に足止系BSが伴う。

●傭兵隊×15
 ルッツが抱える傭兵達。ルッツ同様、機動と反応高め。
 地下階と2階に同程度配分されている。武器はハンドガン。状況判断で細かく動き、前衛後衛関係なく狙ってくる。
 物遠貫、物近扇など。すべてのスキルに封印を伴う。

●黄縞柄 て虎
 友軍。
 見た目近接物理型だが、ガッチガチの神秘型。近接。
 玉の輿を求めて『ごっつ強くってええ男』を求めている模様。
 グループ分けする際は『男性が多い方』についていく。

●ルッツの館
 地上2階、地下1階、そしてさほど広くない。商人の屋敷としてはどうにも小ぶりな印象を受ける。
 上へ向かうか下へ向かうか、選択可能。1階に幻想種が囚われていることはない模様。

 以上、よろしくお願いします。

  • <Sandman>猛虎駆ける完了
  • GM名ふみの
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年10月12日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

セララ(p3p000273)
魔法騎士
日向 葵(p3p000366)
紅眼のエースストライカー
狗尾草 み猫(p3p001077)
暖かな腕
グリムペイン・ダカタール(p3p002887)
わるいおおかみさん
アルム・シュタール(p3p004375)
鋼鉄冥土
リナリナ(p3p006258)
フラン・ヴィラネル(p3p006816)
ノームの愛娘
グウィルギ(p3p007017)
ケイヴ・ロア

リプレイ

●協力者は魅惑の香り
「奴隷商人とは中々エグい商売してやがるな……人を何だと思ってんスか、まったく」
「おー、捕らわれたゲンソー種、助ける! 助ける! そのあと下手人の商人なオッサン逮捕! きっとハゲ!」
 『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)が呆れた調子で頭を掻く傍ら、『やせいばくだん』リナリナ(p3p006258)は握り拳を掲げて作戦を反芻する。根拠はないが元気はある。まあ、いつもの彼女だ。
「兄さん達、元気やなあ。頼りになるわぁ」
 そんな2人の様子に、ラサ側の援軍である黄縞柄 て虎はくすりと笑みを浮かべて応じた。そこそこ腕が利く彼女は、同時にイレギュラーズに……というか、男性諸氏に強い興味を示している。
「うふふ、虎ちゃんは変わってへんねぇ」
 『舞猫』狗尾草 み猫(p3p001077)は、そんな知人の様子にどこか嬉しそうである。浅からぬ付き合いの相手が息災で、肩を並べて戦えるのだ。喜ばぬ方が無理だろう。
「猫ちゃんも変わっとらんよぉ、お互い様やで!」
「……せにゃけど、思い出話は後やね」
 挨拶がてら、軽口を叩きあった2人はすぐさま表情を引き締め、依頼を遂行する者の顔つきになった。み猫もて虎も、イレギュラーズも。『ザントマン』を僭称するオラクル一派の撃破に向けて、そして幻想種の救出に向けて全力を尽くす決意は十分なのだ。
「人間を誘拐して奴隷にするなんて絶対許せない!」
「下衆共には必ずや裁きを受けさせましょう」
 『魔法騎士』セララ(p3p000273)と『堅牢なる楯-Servitor of steel-』アルム・シュタール(p3p004375)は義に篤い者同志、絶対に商人達をとっちめるという決意を露わに拳を構えた。まあ2人とも得物は剣なのだがそれはそれとして。かたや魔法少女、かたや騎士。他者を護る者として己を高めてきた者にとって、この機を逃す道理はないのだ。
「悪い子にはお仕置きだ、押し入れに閉じ込められてしまっても文句は言えまい」
 魔女裁判がお好みなら判事をするがね、と続けた『わるいおおかみさん』グリムペイン・ダカタール(p3p002887)は常と変わらず、どこか芝居じみた声と所作で戦いへの姿勢を見せた。どこか、て虎に対して引け腰気味なのは犬科として猫科を敬遠しているからだろう。……て虎がそんなことを気にするのであれば、いいのだが。
(我、独りであるが故、奴隷売買という経済活動について語れる事は無いが……)
 『ケイヴ・ロア』グウィルギ(p3p007017)は軽く首を傾げ、そう思索を巡らせる。語れることはない、というのは興味がない、と同一ではない。知らぬ事、計れぬ道理を独善で語ることほど愚かしいことはない。グウィルキはその点、精霊種らしいフラットさでことに挑んでいる――パンドラを蒐集し、依頼に従うという意味では心強い。
「いやあ、猫ちゃんのお仲間は心強いで! あたしも負けちゃいられんで!」
「ガッとしてバッ! だね、おっけーわかったよて虎先輩!」
 果たして本当に分かっているのか否か、『繋ぐ命』フラン・ヴィラネル(p3p006816)は感覚的な答えでて虎の言葉に応じた。
 彼女は割とそういうところがあるのだが、本質は十二分に理解しているし、同胞を思う気持ちは過去の彼女のおこないで証明されている。……つまりは、イレギュラーズに決意の甘い者など一人としていないのである。
「『自由になりたい』と言うのならば、そこに手を貸す事に躊躇無し」
 グウィルギはそう言い切ると、仲間と共にルッツの館へと歩を進める。グウィルギの能力は総じて屋内探索向けだ。結果としてフランやグリムペインの知覚能力に頼ることになるが……探知範囲を十全に活かす意味でも、館に近付くリスクを負う。
「ゲンソー種どこ? 上? 下?」
 リナリナが今にも飛び込もうとそわそわしているが、そこは探知を任された面々、落ち着き払った調子で探知を進め。
「流石に地下を透かし見る事はできないね。土の下は常に死と秘密で満ちているようだ」
「大丈夫だよ、グリムペイン先輩! 上の方から……助けを呼ぶ声が聞こえてくる!」
 グリムペインが地下を透視しようとして首を振るのと、フランの人助けセンサーがビンビンに反応したのとはほぼ同時だった。彼女の言葉にヒントを得て、グウィルギは苦痛の感情に意識を絞って探知を行えば……成程、己にもその感情を捕捉することが可能というわけだ。
「狙いが決まったところで、一気に終わらせるッスよ」
「片付くんなら、早う終わらせたいところだにゃぁ」
 葵とみ猫が扉に貼り付き、合図に合わせて一気に押し開く。最前線を行く仲間を待って、仲間の突入から間をおいて後に続く両者。
「ワタクシは上へ参ります。セララ様はご武運ヲ」
「任せてっ!」
 最後尾を務めたアルムと視線を交わし、入口の扉を閉じたセララは聖剣を床に突き立て、堂々たる出で立ちでその場に身構える。探索に向かった仲間達の物音はすでに届いているだろう。地下に何者かがいれば、或いは上で打ち漏らしが出れば、間違いなく此方に来る。――彼女こそが最後の砦だ。

●危地は潜む
 ルッツの館・2階。檻に囚われた幻想種達は最奥として、騒ぎを聞きつけた者達が集まってくる。数は8名、きっちり半分、というわけか。
「リナリナ、傭兵倒す! 倒す!」
 リナリナは真っ先に2階へと飛び込むと、眼前に飛び込んできた男をぶん殴る素振りを見せた。そう、『見せた』だけなのだ。なのに、相手は顎を撃ち抜かれ、ぐらりと大きくよろめいた。
「逃さない。貴様等は確実にここで止める」
 グウィルギがリナリナへ向かった銃弾を受け止め、いきおい、相手の男へ遠吠えを放つ。指向性を持ったそれは、並の人間が受け止めるには余りに威圧的だ。震えながら膝を屈しそうになった相手に、まともな戦闘は期待できまいが……それでも震えた銃口を向けてくる気概やよし、といったところか。
「それ以上はやらせんよ!」
 だが、その気概もて虎の追撃を受けて力なく潰え、倒れ込んだ。死んではいない……相当な精度の威嚇術だ。
「相変わらずやねぇ虎ちゃん。後ろはうちが気にしとくさかい、前の方はよろしゅうにゃあ」
「ホラ、あたしって強い男が好きでっしゃろ? 丈に合わない服を詰めるようなモンやわ」
 み猫の言葉に応じているようないないようなて虎の返答。だが、彼女らはそれで通じるのだろう。役者不足の相手は殺すにも値しないということだろう……多分。
「あの銃弾がうぜぇな……蹴るだけで行けるッスかね?」
 葵は飛び込んでくる銃弾、その一発を足に受け、体が思い通りに動かない感覚を味わう。技術や魔術を十全に引き出せない、と感覚が告げている。さりとて、それは動かない理由たり得ない。失敗を恐れる思考は彼にはなく、蹴り込んだボールは白銀の軌跡を描いて、自分を撃った相手へと叩き込まれた。
「ワタクシ達は皆様の商売を潰しに来た者でス。退けなくてもいいのですカ?」
 アルムの軽妙な言葉は、そのまま傭兵達の感情を思い切り揺さぶり、蹴り込む。状況判断、などその言葉一つで容易にかき消されるだろう。
 ……イレギュラーズがここまで好調でことを進めていることは、驚異的といえば脅威的だ。だが、なぜ? と問う者はいない。状況を判断し、仲間を鼓舞し、強化したみ猫の存在があればこそ、一方的に近い戦いだって可能なのだ。
「ハーモニアに酷い目合わせた人、近寄らせないよ! 今のうちに助けちゃうんだから!」
 フランはアルムに視線を注ぐ傭兵を無視し、檻と彼らの間に入って立ちはだかる。絶妙に、仲間達の治癒射程を維持するところまでがワンセットだ。
「グリムペイン様、任せましタ」
「無論だとも。サンタの魔法の鍵、お見せしよう」
 アルムの言葉に軽口を返し、グリムペインはするりと檻の前に歩を進めると、怯える幻想種達にウィンクして……鍵をいともたやすく開いてみせた。
「おじちゃん、だれ……?」
「悪くて優しい笛吹き男さ。遊び終わっておうちに帰る時間だよ」
 子供達から『おじさん』呼ばわりされたことに少々表情を歪めつつも、グリムペインは紳士的に彼ら彼女らを誘導する。
 ――彼は役目を果たした。状況は順当に推移している。だが、イレギュラーズはここにきて役割分担と状況把握に不安要素が存在することに気付いていなかった。
「彼女らを避難させるとなると、下からだが……セララが1人守っている乱戦状態の出口を、脇から?」
 傭兵を半ばほど倒したところで、グウィルギがぽつりと呟き、一同の表情が僅かに曇る。依頼の達成条件は、ルッツとの決着より早く――つまり安全裏に――幻想種を開放することだ。乱戦状況、加えて旗色が悪くなることが見えているセララをおいて脱出などさせられるわけがない。
「……でハ、ワタクシがこの場を預かりましょウ。皆さん、その子とセララ様を頼みましタ」
 アルムの決断は早かった。治療の要たるフラン、攻撃の手段に長けたグリムペイン、能力封じを受けても物ともしない戦力を誇るリナリナや葵を足止めされるぐらいなら、堅牢さと阻止力に長けた己が殿を努めるべし、と踏んだのだ。
「アルム先輩、……絶対あとで迎えに来るからね!」
 フランの決意は早かった。セララの危急を告げる状況が、センサーを通して強く訴えかけてきているのだ。
 次々と下階へ駆ける仲間達、それを見やりつつもアルムから視線を逸らせない、半数余りの傭兵達。アルジャンヌに殊更力を込めたアルムは、しかし傍らを通り過ぎた一閃に目を剥く。
「葵様?」
「オレもこいつら潰していくッスよ。……皆は気にすんな! 早く助けてやれ!」
 葵は、蹴り込んだボールが戻ってくるのを待たず宙に飛ぶ。吸い付くように足に戻ったボールへ、全力を込めて蹴り込んだ。

●鉄壁堅牢堅守撹乱
 救出班が2階に到着したのに少し遅れ。地下階から駆け上がってくる影、その先頭にセララは先制攻撃を叩き込んでいた。
「ここは通行止めだよ。通りたかったらボクを倒していくしかない。できるものならね!」
「……どうします? こいつローレットの腕利きですぜ」
「ですが1人でしょう? 1人で何ができると言うんですか!」
 『セララフェニックス』を受け、足を止めた傭兵を押しのけるように後続の傭兵、そして身なりのいい男……ルッツが姿を見せる。彼を含めて8人がかり、というのは如何にセララが実力者であろうと無理がある。
「できる? やるんだよ、ここから先は通さないからね!」
「成程、貴女は上に向かった連中の殿と。逃げる? それもいいでしょうが……割に合う人質が取れるならそれも重畳。逃げるなど後から考えても間に合うことです」
 セララの決意は固く、ルッツの判断は愚かだった。だが、人数の差は実力を誤認するに十分すぎる要素でもある。チャクラムを構えた彼の動きは、明らかに実力以上のものと化している。
 セララの聖剣をすりぬけるように、チャクラムが上滑りして彼女の腕を裂いていく。なめらかな切断口からこぼれた血は、そのまま呪いのように手指を縛り上げ、全身の連動と魔力伝達を妨げる。この状態で必殺技のたぐいを放とうとすれば、ダメージを負うのはセララで、当然ながら全て不発に終わるだろう。続けざまに響く銃弾は、彼女の回避技術をもってすればさして精度が高いとは言えないが、さりとて容易に避けられる類ではない。それもまた、数の差だ。
「魔法騎士は諦めない! この程度でボクは挫けない!」
「結構、結構。ではもう少し踊ってもらいましょうか」
 チャクラムを投げつけながらステップを踏むルッツは、銃弾が床を打つ音を背景にして華麗に飛び回る。セララの動きは先より明らかに鈍り、しかしそれでも、配下の傭兵達へと着実に傷を重ねていた。
 彼女の堅牢さと諦めの悪さは、ローレットなら多くの者が知っている。だからこそ、彼女が殿に立つことを誰も疑わなかった。……分散した戦力、片一方を彼女1人に背負わせる愚に、誰も異論を唱えなかったのだ!
 次第に荒くなる呼吸、崩れかけた膝を即座に運命の力で引き戻す。
 倒れかけた彼女を好機と踏み込んだルッツは、一瞬の間に全快した彼女のセララフェニックスによって深々と傷を負う。
「ルッツ! キミの悪事もここまでだ!」
「愚か、愚か、愚か! 今の貴女が私を止められる道理がどこにあると――!」

「――全国から試せと王子は宣った、ならば君達も勿論対象だとも。さあ硝子の靴を履かせてやろう」
 芝居がかった声が響く。子供達の笑い声が――或いは幻想種の声に錯覚しうるそれが――響き渡る。
 グリムペインの朗々たる詠唱に合わせて縄がなわれる。傭兵達は混乱のあまり手ずから互いを傷つけ、動きに精細を失っていく。
「セララ先輩!」
「間に合ったようですにゃぁ。余裕ばかり持っているあちらさんには、思い通りに動けなくなる恐怖を味わってもらえるにゃろうか?」
 フランとみ猫の声が続き、セララの傷が癒え、体がより軽くなる。それに比例するように、絡められたルッツの足は哀れなほどにあっさりとリズムを崩し、追い込まれていく。突如として倒れた傭兵達の姿に驚いたのか、今更自分の愚を思い知ったのか。
「我にとって、自由とはあるもので欲するものではなかった。当たり前の者を奪うことの愚かしさ、自由を求む貴さはわからないが、貴様が愚かだということだけはわかる」
 グウィルギは弱りきったルッツを爪の一撃で昏倒させると、扉の方へと振り返る。
 リナリナにかばわれるようにして出口へと向かった幻想種が無事であることを確認し、一同は胸を撫で下ろしたのだった。

「悪い商人なのにハゲてない! ヅラ?」
「大丈夫ッスよ、これからハゲるほど話を聞くんで」
 そんなリナリナと葵の軽口が事実となるかはさておき。
 一同は、なんとか依頼を完遂させることに成功し。
 事後処理の間、グリムペインはて虎に連絡先の質問攻めにあったとかなんとか。

成否

成功

MVP

アルム・シュタール(p3p004375)
鋼鉄冥土

状態異常

なし

あとがき

 お疲れ様でした。
 やや想定より苦戦しているかもしれませんが、理由等はリプレイを御覧ください。
 あと、これは余談ですが……分担や班分けの表記は統一していただけるととおおおっても助かります。
 本当に。マジで。

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