シナリオ詳細
断崖絶壁の館にて力試しでござる
オープニング
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鉄帝某所。
そこは、人里離れた高い山の上。断崖絶壁に館が構えられていた。
鉄騎種であれば、多少過酷な環境であっても定住することはできるが、この地にはとあるご老体の男性が住んでいた。
筋肉粒々の体の上から無骨な鎧を纏い、厳つい兜の中から一つ目を光らせた彼の名は「GG助五六」という。
彼は以前、鉄帝国内で働いていたのだが、隠居して今の場所に館を構えたらしい。
GG助五六は変人揃いな従者達と共に、穏やかな生活を送っている。
ただ、それなりに生活資金がある状態で今の場所に移ったようだが、彼の趣味は武器蒐集だ。
各地で珍しい武具を集めてはメイドに買いに向かわせ、館内の自室や倉庫に集めて並べている。
それもあって、家計は火の車。執事やメイド達が齷齪してやり繰りしているらしい。
しかし、主のGG助五六は新たな武具蒐集にご執心だ。
「むう、できるなら、拙者自ら入手に向かうでござるのに……」
執事から自身が持っていない武具の噂を聞けば、それをどんな手段を使ってでも欲しがってしまうまさにコレクターな爺様。
ただ、さすがに世界各地はもちろん、国内ですらも老いた体では移動して回るのは堪えてしまう。
「ここは、件のローレットとやらに頼んでみては……」
「ふむ、以前から、ローレットとやらの力、この目で見てみたかったでござる」
噂によれば、ここに移ってくる前の館で働いていたエーラ・アルブム・ビィストール(p3p002585)もローレットに所属しているという話を耳にした。
「すまぬが、早速依頼を頼むでござる」
だが、家計の苦しい状況でさらにローレットに依頼をするとは……。
不満の表情を浮かべるメイド達を、GG助五六はなんとか宥めて。
「まあまあ、そこをなんとか」
結局、メイド達もこれ見よがしに嘆息しつつ、依頼の為に館を出ていくのである。
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数日後、幻想ローレット。
鉄帝の鉄騎種からの依頼書に目を通すイレギュラーズへと、『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)が声をかける。
「その依頼ですか?」
依頼を受けることにしたイレギュラーズが頷くと、アクアベルは笑顔を見せつつ説明を始める。
依頼主は、鉄騎種の老人、GG助五六。
なかなかの剣豪として名前を馳せた過去もあるらしく、本人曰く前帝とも互角に戦えたという話らしいが、確認は取れていない。
「この方は数日前にメイドさんを通して、依頼に来たようですね」
とある武具の回収が直接の依頼ではあるが、まずはその力を試させてほしいというのが今回の依頼だ。
元々、自らの剣の腕に自信のある老人だ。自らよりも弱いものに依頼などできないという考えがあるのだろう。実に、鉄帝の民らしい考え方だ。
「今回は彼らにローレットの力を見せつけ、信頼を勝ち得てほしいと思います」
本気の模擬戦だが、依頼者達も本気で戦ってくる。生半可な覚悟では大怪我してしまうことだろう。
勝利できれば、改めて後日希望の武具回収の依頼を受ける形だが、その前に彼らなりにイレギュラーズ達をもてなしてくれる。
山菜、イノシシ肉、鹿肉などを使った料理を出してくれる他、お茶やお酒もふるまってくれる。もし、何かあればこちらからも食材を持って料理を作ったり、何か飲み物を手土産として差し出したりしても良いだろう。
「とりあえずは以上ですね。それでは、よろしくお願いいたします」
まずは、依頼者から信頼される関係を作ってほしい。
アクアベルはそう告げ、説明を締めくくったのだった。
- 断崖絶壁の館にて力試しでござる完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2019年09月28日 22時55分
- 参加人数8/8人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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鉄帝のとある山。
ローレットのイレギュラーズ達は依頼者の元を目指し、かなりの高所にまで足を運ぶ。
「もう少し、館の維持や趣味のやりやすさを得られる立地があったんじゃ……?」
ゆるふわ系な旅人、『魔眼の前に敵はなし』美咲・マクスウェル(p3p005192)は前方に続く山道にげんなりする。
ただ、これも、依頼主のこだわりなのだろう。
そんな中でも、大きなアホ毛に狐の耳と尻尾を持つ『楽しく殴り合い』ヒィロ=エヒト(p3p002503)は気合十分。
「高名な武人との力試し……楽しい楽しい殴り合いの予感!」
しかも、今回は勝つことができればご馳走を頂けるという情報もあり、食事を至福の時間と考えるヒィロは目を輝かせて。
「美咲さん、これ絶対ボク得なヤツだよ」
腕もお腹も鳴る素晴らしい依頼。ヒィロは「えへっ」と満面の笑みを浮かべる。
「山菜、イノシシ肉、鹿肉の料理、美味しいんだろうなぁ……」
自称海の男、華奢な印象も抱かせる少年、『湖賊』湖宝 卵丸(p3p006737)もご馳走を気にかけていたようだ。
しかし、それを気取られたくなかったらしい彼は仲間の視線を気にして。
「卵丸別に、食べ物に釣られたわけじゃ無いんだからなっ!」
ツンとそっぽを向く彼は『海の男としてだぞ』と主張する。
ただ、どう見ても海の要素はこの場に何一つなく、そんな彼の姿に仲間達から笑いが起こった。
「信を得たくば、勝て! ……ってのも、いかにも鉄帝武人って感じよね」
そう話す美咲はその辺りを織り込み、依頼主に手土産を用意していた。
重量もそれなりにあったようで、ヒィロが自身と彼女の分を纏めて運んでいたようだった。
他にも、鉄帝出身の風来坊、『無影拳』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)は、ローレットから食材やお酒を持ち込んでいる。
また、赤髪ポニーテールのスレンダー少女、『斜陽』ルチア・アフラニア(p3p006865)も途中で立ち寄った街で軽く食べられる物を用意していた。
なお、ルチアは合わせて、歩く最中に植物疎通しつつ山菜を採取していたようだ。
そこで、小柄で中性的な外見の金髪少女、『必殺の上目遣い系観光客』ラナーダ・ラ・ニーニア(p3p007205)が思い出したかのように叫ぶ。
「信頼を得る為に戦って力を示すなんて鉄帝かな? ………と思ったら、ここ鉄帝だった!」
人里離れたこの山道から視界を逸らせば、雲海を眼下に見渡す位の標高になっている。
仙人が修行してそうな所を連想し、ラナーダはここがどこかすっかり忘れてしまっていたようだった。
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しばらくして、イレギュラーズ一行はようやく目的の館の前までたどり着く。
準備を整え、メンバー達は示し合わせるようにして館の門を叩いた。
「頼もー! ローレットの方から来たよ! いざ尋常に勝負ー!」
「お待ちしておりました。ローレットの皆様」
ヒィロが大声で叫ぶと、中から現れたのは1人の老執事だった。
彼に案内されて屋敷内へと通された一行は、道場のような場所へと通される。
「遠路はるばるご苦労でござったな」
そこで従者と共に待っていたのは、館の主かつ依頼主であるGG助五六だった。
「ふむふむ、また愉快そうな爺様だな」
機械の四肢を持つゴーグルを装着した金髪オッドアイの『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)は、素直に印象を口にする。
武具集めが趣味というこの依頼主は、自らの知らぬものに興味を示して世界中に従者を派遣し、集めているとのこと。
ゼフィラも方向性こそ違うが、本や珍しい品を購入し、金欠になると理解を示す。
さて、挨拶もそこそこに、GG助五六は身の丈2m程もある自らの愛刀『五六丸(ゴロマル)』を抜く。
「早速ですまぬが、貴殿等の力を見定めさせていただきたい」
彼の従者達もまたそれぞれの武器を手にし、主の合図を待つ。
すると、機械の猫耳とコンセント状の尻尾を持つ水色の髪のメイド少年、『二度と折れぬ盾に』ヨハン=レーム(p3p001117)が前に出て。
「貴殿はメイドなのでござるか?」
「はい、メイドです。GG助五六さんでしたっけ、お相手はしばらく僕みたいです」
そんなヨハンは最近、鉄騎種の同族と戦う機会が多いという。
「やっぱり、戦闘民族なんですかね、僕たち」
「やもしれぬでござるな」
「ああ、もう。まったく……。なんだって、鉄帝人ってのはこうも血の気が多いのかしらね」
ルチアはそんな態度の仲間や依頼人に悪態をつき、術式を組み立てていく。
「それじゃあ、やることは簡単だね……。戦闘は得意じゃないけど、全力で行かせてもらうよ!」
ご飯が食べられるかどうかもかかっていると、ラナーダは小声で呟き、保護結界を展開していく。
「これで暴れ放題だね。やったー!」
それを確認し、GG助五六が「助かるでござる」とイレギュラーズ達の気遣いを喜ぶ。
だが、実力とは別の話。まずは彼らに力を示さねばならない。
「何にせよ、まずは依頼に足るものであると示しましょ」
「よっし! ゼシュテル式のアイサツなら任せてもらおうじゃないか!」
美咲の言葉に頷き、イグナートも徒手空拳で戦闘態勢に入る。
「では、交流も兼ねて一戦してみようか。全力を尽くさせてもらうよ」
「卵丸達の力を見せつけるよ!」
ゼフィラに卵丸もまた相手の出方を窺うと、GG助五六は満足そうに頷いて。
「では……、参る!」
従者達に合図をし、一斉にイレギュラーズ達へと仕掛けてきたのだった。
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相手は、この館の主であるGG助五六を始め、老執事に中年鍛冶職人。そしてメイド長とメイド3人。合わせて7人だ。
(さてさて? 流石におじいちゃんといっても、僕1人で殴り勝てるような相手ではなさそうです)
ヨハンは胸を借りる勢いで、GG助五六へと勝負を挑む。
「それじゃあまぁ、フロントラインとしての仕事、させてもらいますよっ!」
彼は一気に、全身全霊で形を成した光の大剣で相手の体へとぶち込んだが、GG助五六も鍛え上げた体の持ち主。
「老獪の身なるが、これしきでは倒れぬ」
ただ、タイマン勝負に臨んでくれたことはヨハンの思惑通り。
(ヒィロさんともちょくちょくお仕事で出会いますが、心強いですねぇ)
あとは、従者達をヒィロに任せる。連携はもう慣れっこだ。
そのヒィロは、美咲が先に動くのを待つ。
「腹に黒雷 右足に伏雷 囲・縛・喰……怨」
「ぐうっ……!」
前線の少し後ろに位置取る美咲は、まず鍛冶職人を黒いキューブで包み込んでいく。
しかし、素早い老執事やメイド達が黙ってはいない。
「ここは一歩も通さない! ボクが相手だよ!」
美咲と息を合わせるようにヒィロは攻めの姿勢を見せつけ、盾役として敵の攻撃を引きつける。
そして、布陣を乱す従者達を卵丸が背後から狙う。
「遅い、背後がガラ空きだよ」
苦痛に苛まれる鍛冶職人の背後から、卵丸はチェーンソーを連続して見舞う。
相手も刀で切るのが大好きというかなり危ない性格をしている。
卵丸はその斬撃から逃れるべく加速し、近づく敵を撹乱していく。
しかし、ヒィロに注意を払うのは近場の従者のみ。
バズーカを発射してくるメイド長や、ライフル銃を携える老執事は冷静にこちらへと照準を合わせてくる。
「さて、銃の扱いはそちらの方が得意だろうが……最近、私は銃以外も覚えてね」
ゼフィラはそんな敵目掛け、機械の義手から精神力を弾丸に変えて発射していく。
狙うは、破壊力のあるモーニングスターを使うメイド。
弾丸に撃ち抜かれた相手は敵意の視線を向け、殴りかってくる。
「私の武器も中々のものだろう? ま、戦闘は専門外なのだがね」
得意げに語りつつ、ゼフィラはさらに従者達を狙い撃っていく。
ヒィロがナイフ、モーニングスターのメイド、鍛冶職人を引きつけた状況の中、イグナートは後方から冷静に狙ってくる老執事目がけて飛燕の如く襲い掛かる。
敵は武具を活かして攻め来る相手ではあるが、元拳闘士であるイグナートは敢えて武器なしで挑む。
「最後に頼れるのは、自分の筋肉だけだってことを実戦で教えてあげるよ!」
従者達はそんなイグナートの力も含め、しっかりと見定めようとしていた。
前線の盾役が抑えに当たる間、他メンバー達が順調に交戦を続ける。
それぞれ、得意とする武器を持ち、攻撃力、素早さを活かして攻め来る従者達は誰一人劣る者はいない。
(……ナイフの方が、速そうだし優先かな)
美咲は続いて、近距離メイドを黒いキューブで包み込む。
そうすることで、ヒィロの負担が軽減されるはずだ。
そのヒィロは、近場の敵を引きつける合間に闘魂を宿した眼力で直線上の相手を煽る。
「かかってきなよ! ボクが相手だ!」
ヒィロの呼びかけもあり、メイド長が近づいていく。
力に優れるGG助五六を相手にするヨハン、そして、従者達を引きつけるヒィロ。
後方のルチアやラナーダが彼らの回復支援に動いていた。
「体力はこちらで支えるから、気にせずに戦って頂戴」
天使の歌声を響かせ、盾役をメインに回復へと当たるルチアは周囲の建物の状況を見て。
「それにしても、回復魔法で傷んだ建物って修復できたりしないものかしらね……?」
残念ながら、修復できる状況にも限界はあるものの、ラナーダが保護結界を使っている状況だ。この戦闘の間は何とかなるだろう。
同じく、そのラナーダも回復と合わせ、超分析を使って仲間達が万全に動くことができるよう対処する。
動き回って仲間を癒す彼女は防御も合わせ、従者達の攻撃を凌いでいた。
そんな仲間達の支援を受けるイグナートは老執事の銃を殴りつけると見せかけ、一度怯ませてからさらに蹴りかかる。
「アイテの弱いところを攻めるのは、戦闘の基本だからね」
――ゼシュテル式の戦場に愛はない。
イグナートは老執事を蹴り倒して気絶させ、次なる相手へと向き直るのだった。
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従者と仲間が交戦する間、ヨハンは主、GG助五六と怠慢勝負を続ける。
「負けるつもりもないのですよねっ!」
ヨハンもその刃を大剣「フルムーン」で受け止め、返す攻撃で光の斬撃を繰り出す。
だが、堪えた相手が反撃として愛刀『五六丸』で放つ攻撃は苛烈。発する覇気は委縮させられそうな力がある。
この為、ヨハンも防御しつつ腰を据えて戦いを繰り広げるが、時折足に来ていたようで、ラナーダが回復メインでフォローを行う。
ある程度従者を引きつけたヒィロも、特に好戦的な鍛冶職人目がけて威力に特化した拳による一撃を加えていく。
「全力の殴り合い楽しいね!」
そんな彼女へと、鍛冶職人も楽しそうに、容赦なく切りかかる。
傷は決して浅くない為、ルチアが回復を続け、恐怖を打ち払っていた。
「さて、回復は専門外だが、これくらいはね」
ゼフィラも時折、超分析で仲間の異常を振り払うが、それだけではない。
後方からロケットランチャーを飛ばしてくるメイド長目がけて精神の弾丸を放ち、床へと沈めていた。
だが、そんな彼女を、ほぼノーマークの拳銃メイドが狙い撃ってくる。
連射された弾丸は的確にゼフィラの胴体を撃ち抜き、地を這わせかけるも、パンドラの力に頼って踏みとどまる。
その瞬間、ヒィロが中年鍛冶職人目がけて渾身の一撃を拳で叩き込み、倒してしまっていた。
さらに前方のヒィロがメイド達を抑え続けていたのだが、それでも時折引きつけが甘くなることがある。
ヒィロがモーニングスターメイドを抑える間、我に返ったナイフメイドがルチアを狙う。
彼女は防御に集中して仲間を回復していたが、ナイフを操るメイドに続き、ここでも拳銃を手にしたメイドが追撃していく。
パンドラに縋ることのなかったルチアが力尽き、その場に倒れてしまっていた。
「ボクが、ボク達が、ローレットだ!!」
そこで改めてヒィロがメイド達の気を引けば、美咲が援護するようにギフトを使用して瞬間的に魔眼を輝かせる。
「詰められてそのまま終わっちゃあ、申し訳ないものね?」
殺意の視線を向けられたナイフメイドは意識を失い、崩れ落ちていく。
ヒィロがそこで自らの力を誇示し、モーニングスターメイドを拳で殴り倒してしまうと、拳銃を向けてくる敵には卵丸が接敵して。
「唸れ、チェーンソーの咆吼。海賊戦法音速の一撃だっ!」
一度その体を切りつけた彼はすかさず蹴りを叩き込み、拳銃メイドの意識を奪っていった。
残るは、GG助五六ただ1人。
「手練れの従者達を……さすがでござるな」
自分の従者が全員倒れているのに、どこか満足そうな依頼者。
雷を纏う一撃にヨハンはギリギリ耐えながらも、大きく息をつく。
依頼者にとってはたかが力試し、レクリエーションのようなものなのだろうが……。
「僕は絶対に負けたくないんですよ!!」
声を荒げたヨハンはまだパンドラを使うまで追い込まれてはいないが、堪える彼へとラナーダが治癒魔術を施す。
回復手が減ったこともあり、ラナーダは最後まで力を振り絞って回復を続けることになりそうだ。
「こっちはまだまだ平気だよ。もっともっと楽しくなろうよ!」
限界の近いヨハンに代わり、前に出たヒィロが全力で殴り掛かると、美咲が合わせて精神の弾丸を撃ち込む。
「あとは派手によろしく」
それを受け、距離をとるゼフィラが蒼い衝撃波を、飛び込むイグナートが慈悲ある一撃を叩き込むが、GG助五六も最後まで底力を見せて。
「今こそ、若かりしときの力を……!」
大きな刃より繰り出される鋭い一突きに耐えきり、ヨハンは大剣を慈悲深き正義の鉄鎚へと変形させて。
「どんだけぶったたいても、ピンピンしてそうですが」
万が一を考え、ヨハンは刃でなくハンマーのヘッドで殴りつける。
「貴殿等の勝ち、で、ござる……」
気力で立っていたGG助五六もついに、道場の床へと倒れ込んだのだった。
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力を示したメンバー達は、依頼人達に対して手土産を差し出す。
まず、ルチアが鉄帝の街で購入した手軽な食べ物を差し出すと、執事やメイド達が礼を告げて受け取る。
美咲は豪快な者も多い鉄騎種へということで、アルコール度数の高い蒸留酒を。また、重いけど助かる土産ということで塩を見せると、館のメイド達が大層喜んでいたようだ。
「山の幸と殴り合うなら、海の幸だよね」
ヒィロが用意していたのは、おつまみになりそうな乾燥した海産物やメイド達向けの甘味。
また、美咲に見繕ってもらった海底熟成酒なんてものも。
卵丸もまたギフト「原初生命の湖」を使い、桶に組んだ水の水面から新鮮な海産物を取り出す。
「これは珍しいでござるな」
海洋の品は物珍しいのか、揃って感嘆していたようだ。
「海から遠いし、海の魚や貝は余り食べれないんじゃ無いかと思って、海の男の嗜みなんだぞ」
なお、料理についてはメイド達にお任せの卵丸である。
「うん、ボクの持ち物に食材なんて無かった……」
仲間達が様々な土産を用意していた中、ラナーダは手に持ちかけたゴーレム肉をそっと懐にしまっていた。
戦いの後とは思えない程に執事やメイド達は動き回り、依頼を託すと決めたイレギュラーズ達を持てなしてくれる。
「うわああっ、すごい料理……」
メイド達が作ってくれたのは、猪や鹿などの肉、山菜といった山の幸を使った料理。
卵丸はキラキラと目を輝かせていたが、仲間や依頼者達の視線に気づき、顔も真っ赤にしてツンと視線を反らす。
「べっ、別に珍しいとか、凄く美味しそうとか思ってたわけじゃ……。わぁ、凄く美味しい」
だが、味覚は正直に口をつく卵丸である。
「戦闘が終わったら、ウタゲだね!」
改めて、イグナートは鉄帝も幻想も関係ないお約束だと声を上げて。
「セッカクだから、今度は酒の飲み比べでバトルしよう!」
すると、鍛冶職人がイグナートの勝負に乗り、盃を交わして両者が用意した酒を飲んでいく。
ヒィロもまたおもてなしを受け、大騒ぎではしゃいでいた。
「噂に違わぬ力でしたな」
老執事に褒められたヒィロは大いに喜ぶが、個々の力量だけではないと話す。
「皆の色んな力を合せて依頼に挑んでこその、ボク達イレギュラーズなんだ!」
「さすがです」
そんな彼の言葉に、メイド達もそれぞれ賛辞を送ってくれていた。
ラナーダもまたそれらの料理を嬉しそうに見つめ、食べていたのだが。
「あっ、かき氷なら持ってるから、デザートに食べよう! 早速、いただき、ますっ!!」
こんなこともあろうかとシロップも取り出し、言いながらもぐもぐ食べるラナーダに皆から笑いが起きていた。
その最中、メイド達が武器のコレクションの一部を見せてくれる。
刀剣が多くを占めるが、珍しい形の武具もちらほら。
「武器コレクション凄いなぁ」
後ほど、卵丸は直接、保管場所にも出向いてみようと考える。
「依頼は蒐集品を集めてくることなのよね?」
これらの武具に関して、美咲も料理を頂きながらも興味を示すのは次の依頼の話だ。
「実は、危険な場所に眠る武具の回収を頼みたいのでござる」
GG助五六はイレギュラーズ達をもてなす間、次なる依頼の話をしてくれた。
ただ、今日はすでに戦ってボロボロな上、目的地まで移動距離もある。
依頼自体はまた後日。この日は、心ゆくまでメンバーももてなしを受けることにしたのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
リプレイ公開です。
MVPは従者達の攻撃に耐えつつ、2人を倒したあなたへ。
次は10月中にOPをと考えております。
今回はご参加、ありがとうございました!
GMコメント
イレギュラーズの皆様こんにちは。なちゅいです。
関係者依頼ですが、どなたでもご参加いただけます。
今回は、この筋肉爺様に皆様の力を見せつけてあげてくださいませ。
●敵……7人。
いずれも、鉄騎種(オールドワン)です。
○GG助五六
今回の依頼者。エーラ・アルブム・ビィストール(p3p002585)さんが鉄帝で仕えていた館の主です。
鍛え上げられた体の上から無骨な鎧を纏っており、
老いてなお血気盛んな爺様です。
身の丈2m程もある自らの愛刀『五六丸(ゴロマル)』を操り、対してきます。
・空牙一閃……(A)神中貫・出血
・轟烈斬……(A)物近列・飛・
・剛腕爆雷断……(A)物至単・感電
・覇気……(A)神中範・ショック・乱れ
・高所暮らし……(P)窒息耐性
○従者×6人
・老執事……ライフル銃を使い、後方支援してきます。すりすりしてしまうほど銃が大好きらしいです。
・お抱え鍛冶職人……刀を使い、苛烈にせめてきます。人を切るのが大好きなヤバい中年男性です。
・メイド長……バズーカ、ロケットランチャーなど、高火力の武器を扱う。爆裂大好き女性で自らも弾けるようなスタイルの持ち主。
・メイド×3……それぞれ、ナイフ、拳銃、モーニングスターを使う少女達です。自身が持つ武器に並々ならぬこだわりを持っているようです。
いずれも、高所暮らしのスキルを持ちます。
●状況
鉄帝内、断崖絶壁の山頂にある館での戦いです。
戦いの場は150畳(大体50m四方くらい)ほど。
館はあちこちが痛んでいますので、保護結界などあると依頼主も喜んでくれます。
勝利したのであれば、彼らなりに次の依頼の話をしつつもてなしてくれます。
お金があまりないのか、近場で狩りした猪や鹿などの肉や、山菜料理を。飲み物はお茶や、成人した者には地酒を振舞ってくれます。
こちらからも食材を持ち込んで調理したり、手土産を持ち込むと依頼者は喜ぶかもしれません。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
それでは、よろしくお願いいたします。
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