PandoraPartyProject

シナリオ詳細

恋する共同作戦

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●囮の貴方を追いかけて
 その日の依頼は、最近特に問題となっている人身売買に関するものだった。
 幻想西部にあるスウェルク山の麓を根城にする盗賊の一味が、カオスシードのみならず様々な人種を誘拐し奴隷商人へと売りつけて荒稼ぎをしているという。
 スウェルク山周辺を治める領主フォーミグルンは周辺各国との関係を懸念し、この盗賊団の討伐に乗り出したいと考えていたが、予想以上にその尻尾を掴むことが難しかった。盗賊達は慎重でアジトの場所を漏らさなかったのだ。
 領主フォーミグルンは目的のためには手段を選ばないことで有名であり、すぐに盗賊討伐は依頼となってローレットへと持ち込まれることとなった。

(盗賊達を一網打尽にするには、アジトの場所を知ることが不可欠。その為には誰かが囮をするのが一番早い……とは思ったけど)
 『優心の恩寵』ポテト=アークライト(p3p000294)は身動きの取れない状況に若干の危機感を持ちながら周囲を見やる。
 周囲にはポテトと同じように両手足を縛られ横になっている仲間の姿が見える。何故このような状況になったかと言えば、依頼を受けたイレギュラーズは慎重な盗賊達の足を掴むために、チームの半数――四名を囮にする囮作戦を決行したからだ。
 この作戦は見事に上手くいったと言って良いだろう。目論見通り盗賊達に捕まった四名は、盗賊達のアジトへと向け輸送されていた。
(でもでも、大丈夫なのでしょうか。追跡班のみんなは――あの人はちゃんと追ってきてくれてるでしょうか)
 『お花屋さん』アニー・メルヴィル(p3p002602)は不安になる。囮として捕まるのは上手くいったが、それを追跡する仲間達が見失っていては作戦が破綻する。
 盗賊達に気づかれないように追跡してる以上、追跡班の姿を見ることは敵わないのは当然だが、それはそれとして不安を感じてしまうのは乙女心というものである。
(――けれどわたしは信じています。あの人がわたしを見失うわけがないと、そう信じています)
 腕に食い込む荒縄の痛みを感じながら、『キールで乾杯』ミディーセラ・ドナム・ゾーンブルク(p3p003593)は祈るように目を閉じる。
 その思いは、捕まっている囮班の四名みんなが思っていることだ。
 今回の班分け、囮班と追跡班の関係性は彼氏彼女の間柄と言える。つまり囮班の四名は信頼する人物――恋人、相棒、相方など呼び方は様々あるが――に自分達の命運を託しているのだった。
(ですから、早く助けに来て欲しいのです。この盗賊達が私達に手を出す前に――)
 『白金のひとつ星』ノースポール(p3p004381)の想いは追跡班に届くだろうか。
 揺れる荷馬車が静かに止まろうとしていた。

「どうやら辿り着いたようだね……」
「スウェルク山の麓を根城にしているという噂だったけれど、噂通りスウェルク山に出来てる洞窟を利用しているようだな」
 止まった荷馬車に気づかれないように隠れながら、『死力の聖剣』リゲル=アークライト(p3p000442)と『フランスパン・テロリスト』上谷・零(p3p000277)が言う。
「すぐにでも助けに行きたいけれど……行っても大丈夫よねぇ?」
 『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)の確認に、『Calm Bringer』ルチアーノ・グレコ(p3p004260)が思案し口を開いた。
「裏口から逃げられましたじゃ意味ないからね。まずは周囲の確認、それから洞窟内を慎重に進んで逃がさないように一網打尽にしたいところだね」
 相手は慎重すぎる盗賊団だ。どんな手段を持って迎え撃つかわからない。
 相手の裏を掻き、確実に倒す必要があるだろう。
 追跡班の救出劇が始まろうとしていた。

GMコメント

 こんにちは。澤見夜行(さわみ・やこう)です。
 シナリオリクエストありがとうございました。
 格好良く盗賊達を倒し、そんな彼等にドキドキ惚れ直しましょう。

●達成条件
 盗賊の全滅
 囮班四名の無事

●情報確度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は起きません。

●このシナリオについて
 追跡班の四人はバトルが主体になります。アジトに潜伏する盗賊達を格好良く倒して囮班の愛する人を助け出しましょう。
 囮班の四人は、そんな追跡班の四人を見て、ドキドキしたり、または言葉や動きでサポートしましょう。縄をほどいて貰って一緒に戦っても良いです。
 また囮班の四人は、盗賊達に下劣で卑猥な言葉責めも受けます。放っておくと盗賊達がどんどん調子に乗るので、早めに救ってあげましょう。

●盗賊達について
 よく見る盗賊達。数は十名。
 戦闘能力はイレギュラーズより下だが、それなりに動ける連中。
 リーダーを作らないタイプの盗賊達で、その実力は全員同程度。
 近接戦闘を好むタイプが七名、銃を使うタイプが三名。
 下卑た笑みを浮かべながら、捕まえた女性を言葉や暴力で嬲るのが趣味の連中である。

●他の捕虜について
 アジトのどこかに囚われた一般人がいるようです。
 最後は探して助けてあげましょう。

●戦闘地域について
 洞窟内での戦闘となります。
 狭い場所での戦闘になり、隊列に気をつけないと上手く戦闘行動が取れないでしょう。
 明かりは灯っているので、気にならなそうです。

 そのほか、有用そうなスキルやアイテムには色々なボーナスがつきます。

 皆様の素晴らしいプレイングをお待ちしています。
 宜しくお願いいたします。

  • 恋する共同作戦完了
  • GM名澤見夜行
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2019年10月04日 21時55分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

零・K・メルヴィル(p3p000277)
つばさ
ポテト=アークライト(p3p000294)
優心の恩寵
リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
アニー・K・メルヴィル(p3p002602)
零のお嫁さん
ミディーセラ・ドナム・ゾーンブルク(p3p003593)
キールで乾杯
ルチアーノ・グレコ(p3p004260)
Calm Bringer
ノースポール(p3p004381)
差し伸べる翼
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯

リプレイ

●迫る危機
僅かな音すらもを警戒しながら、四人のイレギュラーズが慎重にその洞窟へと足を踏み入れる。
 潜入は二班にわけて行うことにした。
 単独の『死力の聖剣』リゲル=アークライト(p3p000442)とその他だ。
「できれば奇襲を掛けたいところだけど……囮になった彼女達の様子が気になるな。酷いことをされてなければ良いんだけど」
 『フランスパン・テロリスト』上谷・零(p3p000277)の不安はその場にいる全員が抱えている者だ。
 囮役を買って出た四人は、その関係性がどうあれ大切な、愛する者に違いない。本来ならば率先して守るべき相手である。
 そんな人が、いま囮とはいえ盗賊の手に落ちている。粗暴な連中だ、一体どんなことをするかわかったものではない。
「そういう作戦なんだと分かってはいるけどね、ポーを攫うなんて万死に値するよ」
「同感ねぇ。ミディーくんは男の子だけれど、あんなに綺麗なんだもの。盗賊連中が女の子と見間違えたり、男の子でもいいやなんてことになったら……心配よぉ!」
 『Calm Bringer』ルチアーノ・グレコ(p3p004260)と『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)は気が気でない様子だ。
 最愛の人が今頃盗賊達にどんな目に合わされているか想像して、身震いとともに怒りを覚えた。
 三人は裏口と思われる道を進む。アーリアの動物疎通があればこそ見つけられた小さな入口だ。
「とにかく急ごう。気づかれないうちに内部へと侵入して、優位に立てるようにしよう」
 零のことばに二人は頷いて、奥へと進む。
 その頃、リゲルは正面から潜入を開始していた。
「入口周辺には見張りはいないようだな。
 洞窟自体も複雑な道じゃないようだ。あとは遭遇戦にならないように気をつければ、なんとかなりそうか」
 超視力と透視の力を持って、先の道を知るリゲルは、慎重に歩みを進める。
 最愛の人である『優心の恩寵』ポテト=アークライト(p3p000294)の安否が気になるのは裏口から侵入した三人同様だ。焦りを感じながらも、失敗のないようにと慎重を重ねていた。
 そのようにして、囮班を助けるべく盗賊達の根城を進む潜入班。
 その頃、洞窟奥では、盗賊達による”品物”の値踏みが始まっていた。

「今日の仕事は楽勝だったな。女が四人。それも上玉揃いと来たもんだ」
「しっかり縄で縛ってるから動けやしねぇ。へへへっ、よぉく見させてもらうぜ」
 酒を呷り囮役四人を上から下まで舐めるように見る盗賊。下卑た視線に思わず顔を逸らす。
 ここまでは予定通りであったが、身体を縛り上げられて、身動きの出来ない状態というのはやはり恐怖を覚えるものだ。
 潜入班を信頼してはいるが、もし、彼等に万が一のことがあれば――自分の身だけではない、潜入班を心配する気持ちが沸いてしまう。
 今はただ、潜入班が無事に救出に来てくれることを願うだけだった。
「それにしても……ん~いい女ばかりだが、少々若すぎたか?」
「ばっかこれくらいが良いんだって。これくらいから調教してやれば、そりゃ良い具合になるってもんよ」
 そういって、盗賊の一人が『お花屋さん』アニー・メルヴィル(p3p002602)のアゴを無理矢理持ち上げる。
「ハーモニアか、こいつは今売れ筋の商品だからな。高く売れるぜ」
「誘拐なんてひどい……私達以外にも攫っていたら許しませんから!」
 気丈に言うアニーは、他にも囚われた者達がいないか、或いはどこに流しているのかを探る。
 盗賊はそんな反応が楽しいのか、饒舌に語って見せた。
「人攫いが仕事なんだ、そりゃいっぱい攫ったもんだぜ。そっちの奥に特製の奴隷部屋があるんだ。買い手が決まるまではそこで暮らして貰うぜ。安心しなお友達はまだ何人かいるからな」
 それは他にも攫われた者がいるという話だ。
 それを聞いた『キールで乾杯』ミディーセラ・ドナム・ゾーンブルク(p3p003593)はアーリアから預かったファミリアーをバレないように手に包んで、出来る範囲で情報を届けようとした。
(まあ、こうして視線を下げて心の内側に引きこもったように見せればそう相手にはされないでしょう)
 そう思うミディーセラであったが、盗賊達の値踏みは無駄に細かく、ミディーセラもまたアゴを持ち上げられて顔を覗き見られた。
「こっちはブルーブラッドか。しかし……ん~?」
 盗賊はどうにも気に掛かる様子であったが、それに気づかず手を離した。
 つまり、ミディーセラが男性だとは気づかなかったのである。
 続けてその手は 『白金のひとつ星』ノースポール(p3p004381)へと向けられる。
「へへ、こっちもブルーブラッドか。なかなか可愛いじゃ無いか、へっへっへ」
 薄汚い手に嫌悪感を感じながらも、強く睨み返してノースポールが言う。
「こんな簡単そうな場所、すっ、すぐに誰かが見つけちゃうんだから!
 わ、私達四人ぽっちの誘拐で、いい気にならないでよねっ!」
「へぇ、言うじゃねぇか。誰か助けてくれる相手がいるのかぁ?
 まぁそんな奴居たところで、俺達が全員ぶっ殺しちまうかもなぁ!」
 顔を寄せて舌舐めずりする盗賊に、思わず背が震える。ノースポールは目に涙を浮かべて顔を背け「やっ、やめてくださいっ!」と悲鳴を上げた。
「ひっひっひっ、か弱い悲鳴も可愛いねぇ、たまんねぇぜ」
「な、なぁ、こんな上玉たち滅多に見れねぇぜ。ちょっと”味見”しちまわねぇか?」
「商品価値が下がっちまう……と言いたいが確かに滅多に見れねぇな……やっちまうか?」
 盗賊達がなにやら顔を付き合わせて不穏な空気を生み出す。欲望に塗れた感情を四人は肌で感じる。
 身の危険、それは性差による直感でもあった。
 じりじりと盗賊達が近寄ってくる。粗野で乱暴な腕が四人に伸ばされようとした。
「やめろ、三人に手を出すな!」
 ポテトが声を上げる。
 縛られた身体でありながら、三人の前に出て庇う。
「ほぅ……守ろうとするなんて正義感のある女だ。そんなに言うならまずはお前から味見してやろうか?」
「私をただの女だと思うと怪我するぞ? それにきっと助けはくる。お前達の悪事もここまでだ」
 気丈に振る舞うポテトに盗賊達が下卑た笑みを浮かべる。
 抵抗できない女が、こうして正義感に満ちた発言をすることを楽しみにしているようだ。
「無駄無駄、誰も来やしねぇよ。それよりもっと可愛い声で悲鳴をあげてほしいなぁ? 服でも破れば可愛く鳴いてくれるかぁ?」
 ゲラゲラと笑う盗賊達は酒を呷って刃物を持ち、ポテトへと向かう。
 ああ、不味いと、四人は思う。
 縛られたままでも抵抗はできるかもしれないが、刃物を持つ相手にはさすがに不利だ。このままでは盗賊達の欲望のはけ口にされてしまうだろう。
 助けて欲しい。強く、強くそう願う。
 身じろぎしながら自分達の身を守ろうとする四人。
 その様子を、潜入していた四人が見ることになる。
 盗賊達の下品な会話や、これからすることが目に、耳に入ってくる。
 許せるわけがなかった。怒りを胸に武器を手に取った。
 今、最愛の人を救うため、盗賊達との大立ち回りが始まろうとしていた。

●救出劇
 正面の入口から突入したリゲルが、タイミングを取って盗賊達の前に姿を見せる。それは盗賊達の手がポテトの服へと掛かる直前だった。
「そこまでです。
 貴方達が噂の盗賊ですか……小汚い、いかにも下劣な連中ですね。
 可憐なるか弱き乙女達を縛り上げるだなんて、プライドの欠片もありませんか?」
「なんだぁ、てめぇは?」
 盗賊達がお楽しみを邪魔されたと、リゲルを睨み付ける。挑発するように、気障ったらしい白銀の騎士様を演じるリゲルは言葉を続ける。
「貴方達など、俺一人で十分。
 来ないならば、こちらから行きますよ」
 リゲルのギフトが輝きを放って、盗賊達の注意を奪う。
(リゲル……!)
 颯爽と現れたリゲルに、ポテトは心の底で安心し、声をあげそうになった。だが、まだここからが本番だ。
 ノースポールに目配せすると、ノースポールが頷く。盗賊達の注意が逸れた今がチャンスであった。
 変化による縄抜けを実行し、見事縄を抜けたノースポールが拘束されてる三人の縄を解く。そして潜入班の邪魔にならないように壁際によって支援を始めた。
 ポテトはミディーセラとアニーを守るように二人を背後において、攻撃が来ないようにした。
 リゲルが盗賊達の注意をとったタイミングで、裏口から侵入した潜入班も姿を見せる。盗賊達は焦ったはずだ。万が一があれば裏口から逃げだそうという心算にあったものが、その裏口が新たに現れた者によって封鎖されているのだから。
「逃がしはしないわよぉ。貴方達みたいなのは同士討ちがお似合いね」
 アーリアのパルフェ・タムールの囁きが、盗賊達の精神を犯していく。酩酊にも似たどろりとした感覚は、魅了という力になって盗賊達に同士討ちを行わせる。
 盗賊達の出鼻を挫くアーリアの活躍に、ミディーセラがパチパチと手を叩いた。
「さすがです。アーリアさん。とってもお強いです」
 アーリアが来てくれてホッとするミディーセラ。信用も信頼もしていたが、それでもやっぱり来てくれると嬉しいものなのだ。
 ミディーセラの応援にアーリアの勢いは増していく。
「ミディーくんに良いところ見せないとねぇ。ミディーくんに手を出そうとしたんだもの、許さないわよぉ!」
 生み出した亀裂が盗賊の一人を飲み込む。一瞬とはいえ『月の裏側』に連れて行かれた盗賊はまさに悪酔いにも似た衝撃と気持ちの悪さを覚え、ぐらぐらと揺れ倒れた。
 盗賊達の側面に回り込むようにして敵を多くその視界の内に収めるルチアーノ。
「ここをお前達の墓場にする。拒否権はないよ」
 放たれる鋼の驟雨は決して敵を逃がしはしない。識別による味方を避けた攻撃が的確に盗賊達を穿って行く。
 ちらり、とノースポールの方を見るルチアーノ。作戦通りノースポールの縄抜けで人質となっていたメンバーは行動の自由を取り戻していた。
 で、あれば、盗賊達の目が人質達へ向かないように派手に注意を引きつける必要がある。
 次々に放たれるプラチナムインベルタが、盗賊達に悲鳴をあげさせた。
 奇襲にも近いイレギュラーズの攻撃に、盗賊達は浮き足立ち、不利を感じていた。警戒心の強い盗賊達だ、不利と見ればすぐに逃げだそうと考えた。
 しかし、無理に逃げだそうとした盗賊はすぐにルチアーノに道を塞がれる。
「逃げられると思った? 甘いね」
「ちくしょう!」
 やけっぱちとなる盗賊が凶刃をルチアーノへと振るう。だがその攻撃が届く前に横合いからの攻撃に吹き飛ばされた。
「こんな女子供にやられちゃって、ダッサいよね!」
「ポー! 無事だったかい!」
「もちろん! でも怖かったよぉ、助けに来てくれてありがとう」
 縄さえほどければ、彼女達もイレギュラーズであり、囚われの姫君ではない。揃った八人の力ならばこの程度の盗賊、敵ではない。
「俺にとって大事な奴に酷い事してんだ。
 覚悟は当然、出来てんだろうな……!」
 生み出されるフランスパンが音速で射出される。盗賊の口目がけて放たれるそれは、決して美味しいだけの物ではない。
 顎を開かせ、喉に押し込まれるフランスパンの一撃に盗賊が水取討って倒れた。
 零の見開かれた三白眼が、アニーを捕らえる。よかった、無事だと安堵する。いつもならば慌てればテンパる零だが、今日という日はそれがない。大切な友人を救うということに真剣に、集中していた。
 人質達が縄をほどいていることに気づいた盗賊が、力尽くで再度人質にしようと近づいていく。
 それを見た零が、今一度フランスパンは射出し妨害する。
 零に助けられたことを確認したアニーはドキッとする。
(零くんが戦ってる……。
 いつも穏やかで笑っていた零くんが……あんな真剣な顔初めて見るかも……)
 すぐに自分の考えていたことに恥ずかしくなって、被りを振るう。気を引き締めなくちゃと、ビビりながらも盗賊達と戦う仲間を支援していく。
 足掻き続ける盗賊達に、リゲルが剣閃を見舞う。
「見苦しい。溝鼠かゴキブリの方がまだマシですね」
 盗賊達はきっと見たことだろう。リゲルの背に燃ゆる炎が揺れていることを。怒りを乗せた銀閃が走り、一人、また一人と盗賊達を倒していった。
 この頃になると囮班の四人も潜入班とともに隊列を組んで戦い始めていた。いつもの依頼の形となれば、もう怖い物はなかった。
「怖い中、よく耐えてくれた。
 一切の容赦は不要。思い切り叩きのしてやれ!」
 盗賊の数が減ってくると、次に注意しなければならないのは逃走だ。イレギュラーズはしっかりとマーク・ブロックを駆使して盗賊達を追い詰めていく。
「もっと応援したらもっとすごくなるのかしら。アーリアさんがんばってください」
「ふふ、頑張るわよぉ~、全員ノックアウトさせちゃうんだから!」
 大切な人の応援というのは、時として想像以上の力を与えるものだ。アーリアの技が冴え、次々と盗賊達にバッドステータスを与えていく。
「ルークも負けないで! 盗賊達なんてやっつけちゃえ!」
「もちろんだよ。ポーに手を出そうとしたこいつらにはしっかりと分からせてあげるさ」
 ルチアーノもまたノースポールの応援を受けて、その動きに磨きが掛かる。
 死角より放たれる死弾が、次々に盗賊達を穿っていく。また一人の盗賊が倒れた。
「ち、ちくしょう、こいつら強ぇ……それに人質連中まで……まさか――!?」
「それがわかったところで、もう遅い。お前達はここまでだ」
 リゲルの言葉に盗賊達が悔しそうに顔を歪ませる。
 そんなリゲルの立ち居振る舞いにポテトは思わずドキドキとしてしまうのだ。
「さぁ、もう数は少ないぞ。まだ喰らうか?」
 次々とフランスパンを生み出す零。倒れた多くの盗賊達が口にフランスパンを詰め込まれ白目を剥いていた。
(零くん傷付いてる……回復してあげなきゃ)
 アニーがそっと零の傷を回復する。こうして零をサポート出来ることを、アニーは嬉しく思った。
 戦いの決着はほぼ付いたといってよかった。
 正面と裏口から盗賊達を包囲するように入ったイレギュラーズの作戦は見事に嵌まり、盗賊達を包囲することに成功していた。
 次々に倒れて行く盗賊達は、イレギュラーズにそう大きな被害を与えることもできず、ついに最後の一人が倒れた。
 こうして人身売買を行う盗賊達は倒されたのだった。

●囚われの君を救い出して
「零くん……会いたかった!」
 戦闘が終わると真っ先にアニーが零の胸へとダイブする。その顔には僅かな涙が浮かんでいた。
 きっと怖いかったに違いない。零は「俺も会いたかった……!」と力一杯抱きしめる。
「怖かったけど、零くんが来るって信じてたから……」
「……君が信じてくれたから、俺も頑張れたんだよ。ありがとう」
 互いの無事を喜び合う二人を茶化すものはこの場にはいない。皆同じように大切な人の無事を喜んでいたからだ。
「ポテト……無事だったかい? よく頑張ったね」
「リゲルが助けに来てくれたから大丈夫」
 リゲルがポテトの頬を撫でる。その感触のくすぐったさに目を細め、互いに抱きしめ合う。
「助けに来てくれて有難う、私の旦那様」
 と夫婦である二人は、自然に微笑んで唇を合わせていた。
「みでぃーく~ん。平気? 無事? 変なことされてないかしらぁ?」
「ええ、ええ、わたしは無事ですよ。幸いと言って良いか、わたしが男であるとはバレませんでしたからね。バレたらどうなっていたか、あまり考えたくないところかしら」
「バレなくても危ないわよぉ~なんか服剥こうとしてたし。許せないわねぇ」
 なんにしてもミディーセラが無事で良かったとアーリアは胸を撫で下ろす。こうも心配ばかりしていては寿命が縮まるというものだ。長生きしなくてはならないというのに。
「無事で良かった。おかえり、ポー!」
「ただいま、ルーク! 心配ありがと、これくらい平気っ」
 ルチアーノとノースポールも互いの無事を確かめ合う。互いに戦闘の傷や、縄の締め痕など小さな傷はあるが、大した物ではなかった。
「これからはずっと傍に居るからね!」
「ふふ、うんっ。ずっと一緒だよ!」
 微笑むルチアーノを見つめてノースポールは改めて惚れ直すのだった。
「そういえばみでぃーくんが知らせてくれたように、まだ捕まってる子がいるみたいね?」
「確かあっちの通路の先ですね。無事だとよいのですが……」
 アニーが指さし一行は通路の奥へと向かっていく。
 そこには小さな牢があり、中に三人の女の子が様子を伺うようにして見ていた。
「よかった、みんな無事みたいだね」
 商品にするということもあって、あまり無茶な扱いはされていなかったようだ。盗賊達から牢屋の鍵を奪うと、三人を救い出す。
「さてと、あとは盗賊達を縛り上げて自警団を呼べば終わりか」
「みんな無事でよかった。もう囮はこりごりだな」
 そんなポテトの言葉に囮班の三人が同意する。しかし終わってみれば、共に並んであるく最愛の人との信頼関係を高めることができた気がした。
 八人は揃って洞窟からでる。
 その手を離さないようにと、しっかりと握り合いながら――

成否

成功

MVP

アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯

状態異常

なし

あとがき

 依頼お疲れ様でした。

 MVPはアーリアさんに送ります。おめでとうございます。

 リクエストありがとうございました。またよろしくお願い致します。

PAGETOPPAGEBOTTOM