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シナリオ詳細

<DyadiC>幻海のアイアンボトム

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●大海原を燃やす魔法
 登る朝陽の茜色を、水平線の先に見た。
 幻想南部の隠れ里から出港した一席の船。
 海種、飛行種、幻想種からなる兵士一団は、イオニアス・フォン・オランジュベネの紋章が描かれた旗を船に掲げ、それぞれ左手の拳を胸に当てた。
 先頭に立つ男――兵隊長アキト・A・レイニーブラウンは、遠い空を見つめて叫ぶ。
「我らが目指すは『血の古城』。
 イオニアス様にこの身、この血肉、この魂を捧げるべく!
 首都を破壊し大いなる野望の礎となるべく!
 東の水平線を永遠の暗黒に沈めるべく!
 立ちはだかる全てを撃滅し、必ずや本隊との合流を果たすものである!
 総員、死ぬ覚悟はあるか!」
「「サー! イエッサー!」」
「殺す覚悟はあるか!」
「「サー! イエッサー!」」
「幻想を憎んでいるか! 王を討ち国家を転覆する野心はあるか!」
「「サー! イエッサー!」」
 兵隊長アキトは兵士たちの声を聞き、くるりと彼らへ向き直った。
「さあ、進撃を開始しよう」
 帆を張った船は海を切り裂き、破滅の未来へと進んでいく。

●船戦を準備せよ!
「やあ、いいところで会ったね。君もこの依頼に参加するのかい?」
 ギルドローレットが頻繁に利用する港町の酒場にて、カルネ(p3n000010)は依頼書を手にあなたに話しかけてきた。
「幻想南部で頻発していた怪事件の原因が、魔種になった貴族イオニアスの仕業だったとは聞いていたけど、まさか自軍を招集して首都進撃をももくろんでいたとはね……」
 この件を、あなたも依頼書や情報屋の説明から知っていた。
 幻想南部にオランジュベネ領の高原地帯にイオニアスの兵士が集まり北伐を計画するというものである。もしオランジュベネ領に兵が集結すればそれだけで『滅びのアーク』は膨れあがることだろう。
 仮にそれが無かったとしても、イオニアスを辛抱する狂気の兵団が平和に暮らす人々を惨劇と血の海に沈めてしまうことは容易に想像ができた。
「彼らは今、幻想南部の海に船を出しているようだね。
 ここから東の湾から回りこむことで北上を狙っているらしいけれど……それを未然に防ぐべく船で襲撃するっていうのが、今回の依頼だったね」

 敵はイオニアス兵団アキト部隊。
 海種、飛行種、幻想種からなる分隊規模の部隊である。
 船は一隻。これに船をぶつけ、船上での戦いを仕掛けようという作戦だ。
「もし自前の船を持っているなら、使いどきだね。
 なんとか急いで一隻準備できなくもないけど、使い慣れた船があったほうがずっといいし、二隻以上で仕掛ければ敵の退路をふさいだり挟み撃ちを仕掛けたり……とにかく有利に事を運べる」
 カルネは依頼書を畳んでポケットに入れると、あなたににっこりとほほえみかけた。
「君と働けてうれしいよ。一緒に頑張ろうね」

GMコメント

■依頼内容
 成功条件:アキト部隊の撃滅

 船で海上戦闘を仕掛け、敵部隊を撃滅します。
 敵部隊は飛行種、海種、幻想種の混成部隊10人。
 詳しい内訳までは分かっていませんが、大体同じくらいの数と思っていてください。
 陸海空での得意なバトルをお楽しみください。
 空中や海中での激しいドッグファイトがお勧めです。

 『集中砲火作戦』と『各個撃破作戦』のどちらでも、現在のメンバーにとってやりやすい方を選んでください。

■チーム分け
 こちらがそれなりの誘いをかければですが、敵の飛行種は足場にとらわれない空中戦を、海種はより有利な水中戦を、そして幻想種は船のデッキ(甲板)での戦闘を行なうことでしょう。
 その際にはそれぞれ『飛行』『水中行動』(またはそれを内包する種族スキル)をスキルとしてもっておく必要があります。酸素ボンベやジェットパックは今回戦闘に耐えません。

 小型船をアイテムとして持ち込む場合、必ず装備者本人が運転してください。
 運転をしながら通常通りに戦闘を行なえるものとし、仮に戦闘不能になっても運転だけはできるものとします。加えて、船の破壊による沈没(要するに乗組員ごとまとめて戦闘不能になる裏技)は敵味方共にないものとします。
 ただし至レンジの戦闘にかんしてのみ同じ船に乗っている必要があるものとします。相手に船に乗り込んだり、逆に相手を船に乗り込ませたりしましょう。

■味方NPC
 今回カルネ(p3n000010)が味方として参加します。
 彼は『味方PCをかばう』『援護射撃を行なう』『誰も運転できなかった場合船をなんとか運転する』といった行動をとれます。
 防御や耐久に自信がないというかたはカルネバリアをぜひ活用してみてください。彼はイレギュラーズ大好きっ子なのであなたのためなら結構耐えてくれます。

■■■アドリブ度■■■
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用ください。

  • <DyadiC>幻海のアイアンボトム完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年09月30日 23時46分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

レイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)
騎兵隊一番翼
カイト・シャルラハ(p3p000684)
風読禽
咲花・百合子(p3p001385)
白百合清楚殺戮拳
矢都花 リリー(p3p006541)
ゴールデンラバール
エル・ウッドランド(p3p006713)
閃きの料理人
ヴォルペ(p3p007135)
満月の緋狐
アウローラ=エレットローネ(p3p007207)
電子の海の精霊
ジョージ・キングマン(p3p007332)
絶海

リプレイ

●海原を切り裂く、意地と心意気
 大海原。潮香の爆裂する幻想南方海域。
 はるか昔に海洋と幻想の間で行なわれたとされる幻想湾戦争の際多くの船が沈んだことからアイアンボトムの異名で知られたこの海域を、一席の偉大なる小型船が走っている。
 その船首にて腕組みし、乙女のスカーフをはためかせるは『白百合清楚殺戮拳』咲花・百合子(p3p001385)。
 船の脇腹には美少女明朝体で『美少女丸』と彫り込まれている。手刀で刻まれたというこの文字は、淡く青い光を放っていた。
 かかげた帆には同じ美少女明朝体で清楚殺戮の文字が踊る。
「くはっ、こういう事もあろうかとずっと船首を磨いておいてよかった!」
 甲板に立ち、ぐっと両手で前髪をなで上げる『絶海武闘』ジョージ・キングマン(p3p007332)。
 遠い海原には小さな船影。帆に見えるはイオニアス・フォン・オランジュベネの紋章。俗に言う紋章船である。
 乗り組むは幻想種の海兵長アキト・A・レイニーブラウン率いるアキト部隊。陸海空すべての戦闘に対応したというこの分隊規模の戦力を壊滅させるべく、いまイレギュラーズたちは二隻の船を出していた。
「船を用意し、野望の礎を築く……か。
 余所の国の騒動に首を突っ込むのも野暮だが、放置すれば降りかかる火の粉。これは、払わねばならん。
 特に、それが魔種なら尚更だな。話の通じない狂信者共ほど、厄介な手合はない」
 ギルド・ローレットに存在するギルド条約は幻想王国及び諸国を後ろ盾にしたきわめて強力な自由権である。所属するイレギュラーズはその出自と立場にかかわらず依頼に参加する権利をもち、参加した以上はその達成義務をもつ。つまり、極端かつ過激に述べるならば、依頼の発生と受諾という手順さえふめば一個人として他国の戦争に介入する権利をもちえるのだ。
 よって依頼に参加するイレギュラーズの動機も様々だ。
 属国の利益、理想追求、自己実現。そして時には、意地。
「空と海を専有する、ってのは海洋に対して喧嘩を売ってるのも同義であるな……?」
 ネオ・フロンティア海洋王国名門貴族ポルードイ一族を背景にもつ『風来の名門貴族』レイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)もまた、そうした家紋の意地ともいうべきものがある。
 勿論、意地の大小に家柄は関係ない。漁師(を自称する名門軍人一族)の出である『風読禽』カイト・シャルラハ(p3p000684)にも意地がある。
 風読みの一族としての意地だ。
「確かに、空と海原は俺のもんだ。たたき落としてやるぜ!」
「君のものではないが……まあ、そうだな」
 レイヴンは不敵に笑い、船の手すりをトンと叩いた。
「彼らの自信をへし折るところから始めるとするか」

 船側面に吊るされたミニボート。そこへハンモックのごとく寝そべる『壺焼きにすると美味そう』矢都花 リリー(p3p006541)。
 フライドポテトを咥えてもぐもぐとやりつつ、ぼやくように呟いた。
「はぁ……あのいおにーとかいう魔種? 没落だとか再興だとかなんか言ってるけどさぁ……結局、現・無職ってことじゃんねぇ」
 貴族は貴族であることが仕事というか、要するに土地の管理と税の徴収によって成り立っているようなところがあるらしいが、かつての領地を失い再就職もせず荒野を勢力圏にしようとしている彼らは、リリーにいわせればただの『オラついたニート』である。
「オランジュベネだけにオラつくとか……さぁ……」
 勝手に連想して勝手にキレはじめるリリー。彼女もニートの自覚があるらしいが、100を超える名声をもつほど働いた彼女にニート性は実は無い。
「ニート法的にギルティ……もう全員根性叩き直して正しいニートにしないとだねぇ」
 やたら愛用しているバールをスッと取り出し、ヤドハンドでこつこつ叩き始める過激派ニートである。
 ……そんな様子を、『イカダ漂流チート第二の刺客』エル・ウッドランド(p3p006713)は甲板の手すりから見下ろしていた。
「今回の騒動……天義の時やと北部戦線の時と同じように避けようと思ったけ……」
 胡桃パンをもふもふしながら、エルは強く拳を握る。
「避けてばかりでは駄目ですよね。魔種が相手というわけでもありませんし、思いっきりやりますよ!」
「そうだね! がんばろー!」
 後ろから忍び寄っていた『電子の海の精霊』アウローラ=エレットローネ(p3p007207)が両手を振り上げてエルの肩をばしばしと叩いた。
「アウローラちゃん船の上で戦うなんて久しぶり! エルちゃんもそう? がんばろうね!」
 そんな彼女たちの乗る船。赤い月のような色をした小型船。舵をとる『満月の緋狐』ヴォルペ(p3p007135)は、敵の船に目を細めた。
 相手もこちらの意図に気づいたのだろう。ターンして迎撃姿勢をとりはじめるのが分かる。
「こんな所で野望が潰えるなんて悔しいかい?
 おにーさんには破滅も崩壊もどーでもいいんだけどさあ、お仕事だからね」
 円形の舵にもたれかかるようにして、ヴォルペはどこか酷薄に微笑んだ。
「死ぬ覚悟があるなら大丈夫。
 誰一人として逃がす気ないから、寂しくないよ」

●骨の砕ける音を聞け
 真っ向から向き合う船と船。
 百合子の操る美少女丸はアキト部隊の紋章船めがけ船首と船首を激突させる勢いで加速。
 負けてなるものかと舵を握りしめるアキト部隊に対し、百合子は舵を針金で固定。腕組みをしたまま船首先端へと立った。
「いざ……!」
 激突。
 へし折れる船首飾り。
 跳躍によって敵船へ乗り込んだ百合子は、援護射撃をしかけるカルネとアウローラの支援を受けながらまずアキト部隊の操舵手めがけてドロップキックを繰り出した。
「ぐおお!?」
「クハッ、逃げても良いぞ! 逃げ場などないがなぁ!」
 転げて飛ぶ操舵手。はじけ飛ぶ舵。
 キック後の寝転んだ姿勢のまま、百合子は両目の中に花を咲かせた。
「美少女力――解・放!」
 船の甲板だというのに草と百合の花が咲き乱れ小動物が集まりシカとハトがとまり軽くブッダした後海上だというのに流れてきたガンジスに仏の宝船がはしり翼を広げジェット噴射で宇宙へ飛んでいき火星を緑色に染める……という幻影に操舵手がとらわれている間に。
 ドン!
「な、なに――っ!!」
 気づけば百合子の拳が操舵手の心臓を破壊していた。
「奏でるは魔法の重ね唄!」
 ここぞとばかりに船から『魔曲・四重奏』を発動するアウローラ。
 多重展開した魔術が雨のように紋章船に降り注いでいく。
 アキトたちは天空に向けて防御魔術を展開。
 船が海流に流れてしまいそうになったところで、ヴォルペの操舵するワインレッドの船が紋章船の後方へと回り込み、船もろとも紋章船へと激突した。
「さて、お姫さま。今日もみんな無事で帰れるように、守ろうか」
 手をぷらぷらと振って、こちらに乗り移ってくる敵兵に構えるヴォルペ。
「敵をできるだけ引きつけてみるよ。大けがには気をつけて」
 こちらの台詞は、ヴォルペの背後から援護射撃をしかけようとしたエルに向けたものである。
 エルは頷き、『ブルー・インパクト』による銃撃を開始。
 乗り移ってきた敵兵とヴォルペが格闘する光景からやや距離をとり、勇気を出して射撃をしかける。
 彼女の射撃によってのけぞった敵兵を、ヴォルペはハイキックによって蹴り倒した。
「調子にのるなよ貴様ら!」
 マジックライフルを手に飛翔を開始する飛行種兵たち。
 ヴォルペはそれを確認すると、自分の船に乗り移っていた。カイトとレイヴンへと合図を出した。
「一つ、お手並み拝見……とは、驕りが過ぎるか?」
「へん、幻想育ちの飛行種に、海士が海上で負けるわけがねーよ!」
 見せてやろうぜ! といって飛び立つカイト。
 彼のあおりを受け、同じ高度まで飛び上がる飛行種兵。
 後ろをとってマジックライフルの連射を行なうが、カイトは突如翼を畳んで垂直落下。相手の射撃を回避すると、真下をとって翼を広げた。
 展開した翼に炎が纏い、更に巨大な翼のごとく広がっていく。
「鷹は獲物を逃さないんだぜ!」
 繰り出した炎の風が、飛行種兵を飲み込んでいく。
 一方でレイヴンは襲いかかってくる飛行種兵の射撃を青い紋章魔方陣で防御。斜めに弾くようにして受け流した。
「主人が干された間、随分と怠けていたようだな?」
「なんだと……思い知らせてやる!」
 向きになって剣を抜き、鋭く飛びかかってくる飛行種兵。
 レイヴンは軽やかに飛翔して攻撃を回避すると、更に高く上昇していく。
 羽衣を纏った天女のごとき美しくも自由な飛行に、飛行種兵が目を剥いた。
「なんだ、このマニューバは!?」
「ふむ……こちらも専門外とはいえ鍛えているので、な」
 敵の射撃を先程よりも鋭く弾くと、青い魔方陣からサファイア・カーバンクルを呼び出した。
「『起動せよ、起動せよ、碧玉の担い手。蒼碧の光でかの者を貫き滅せよ』」

 甲板と空での戦いが始まった……その頃。
 海中をごくごく静粛に潜水したリリーが、紋章船の船底へとはりついていた。
(メンドー事とか起こさずに、ニートはニートらしく家にこもってればいいんだよねぇ……)
 ヤドハンドを引き絞り、怒りの床ドン(天地無用エディション)を叩き込む。
「ぐお!?」
 揺れる船。かたむく甲板。手すりのそばにいた兵士が転落し、もう一人が彼の手を掴んで引き上げよう……とした、その時。
「ここじゃ手狭だな。戦場を移すか?」
 眼鏡のブリッジを中指で押さえたまままっすぐに突撃してくるジョージ。
 ジョージは跳躍と宙返りをかけてフライングキックの姿勢をとると、そのままコウテイペンギンモードへチェンジ。
 兵士に直撃させ、手すりを破壊しながら無理矢理海中へと転落させた。
 半魚状態となり水中戦の姿勢をとる兵士たちに、ペンギンの翼めいた両腕で腕組みしてみせるジョージ。
 そしてバールをくるくる回しながら合流してくるリリー。
 ジョージは眼鏡の縁をきらりと光らせ、くいくいと挑発的に手招きをした。
「こいつ、まさか……あの『キングマン』か」
「誰でもいい。少なくとも、アンタはここで終わりだ」

●流星の如くに
「ふむ。鍛えたとはいえ貴族の魔術師……根っからの海士との、差か」
 複雑な機動をものともせずに飛び回るカイトを見やり、レイヴンは感心するように息をついた。
 高高度での戦闘は攻撃力に対し防御力が一方的に落ちるため回避性能がモノをいう。
 カイトの卓越した回避技術は敵兵の攻撃をことごとくかわし、そしてちくちくと相手の体力や手段を削っていく。
「ちょこまかと鬱陶しいやつめ!」
 マジックライフルにエネルギーを溜め、激しい魔力砲撃を仕掛けてくる敵飛行種兵。
 カイトはそんな敵兵の周りをぐるぐると旋回飛行し、砲撃がやってくるタイミングを読んで身を丸めた宙返りや翼を逆向きにあおった制動をかけてタイミングをずらし、敵兵をいらつかせ続けた。
「殺してやる! こうなったら……」
「おいおい、いいのか? 俺の方ばかり見てると」
 ホレ、と敵兵の頭上を指さすカイト。
 太陽と重なるように上をとったレイヴンが、敵兵めがけて両手を突き出していた。
「起動せよ、起動せよ、湧き立て我が魔力。渦巻き立ちて――」
 複数の青い魔方陣が重なるように起動し砲身の形をとる。
 敵兵があせり回避しようとしたその瞬間――。
「空を駆けよ!」
 レイヴンの放った青い砲撃が敵兵を打ち抜いていく。
 墜落していく敵兵。
 そこへ、木箱の裏に隠れていたエルが待ってましたとばかりに飛び出していく。
「『とっておき』の出番ですね!」
 拳銃に特殊弾頭をセット。
 両手でしっかりと銃を握りしめ、ゆっくりと構え、そして墜落する敵兵めがけて発射した。
 あまりの反動と揺れる足場に転倒するも、それほどの衝撃によって放たれた弾頭が体勢を立て直そうと身をよじっていた敵兵へと命中。
「ぐ、ぐああ……!?」
 激しい爆発を起こし、そのまま海へと墜落していった。
「くそっ、こんな邪魔が入るとは。フィッツバルディ派貴族だけ退けていればよかったんじゃないのか!」
 幻想種の兵が壊れた舵に予備部品とキーを差し込み、船のエンジンを再起動。
 船をだし戦闘エリアからの離脱を試みたが……。
 どふ、という激しい音と共に兵士は激しく蹴り飛ばされた。
「悪いね、逃がさない決まりなんだ」
 ジャケットに両手を突っ込み、だらんと前に乗り出すような構えをとるヴォルペ。
「いこうか、俺のかわいい双子姫」
 目をぎらりと輝かせ、宙返りと共に蹴りかかる。
 咄嗟に剣を抜いてガードする敵兵。その刀身を靴底で蹴って反転。
 ヴォルペはやっと両手をジャケットから抜くと、流れるようにジャケットを脱ぎ捨てた。
「アツくなってきた……はは」
 キュッと鳴る鋭いフットワークで床を鳴らし、ヴォルペは相手の顔面と腕を狙った連続のキックを繰り出していく。
 攻撃のため、ではあるが。その半分は相手の剣を打ち払うための攻勢防御である。
 敵兵は焦りの表情を徐々に濃くしながら、ヴォルペの攻撃を防ぎ続けていく。
「ハッ、ハハ……まだだ、まだ私は倒れはせんぞ!」
 そして、懐からマスケット短銃を抜きヴォルペの額に突きつけた。
「私の勝ちだ! 私の――!」
「いや?」
 額に銃口をつき突きつけられたまま、ヴォルペは首を傾げ片眉を上げた。
 直後、真上から流星の如く垂直落下してきたカイトが、己を真っ赤な流星そのものに変えて敵兵を完膚なきまでにたたきつぶした。
「「死ぬぜ」」

「さぁ掛かってこい。全力で叩きのめしてやろう!」
 海中を激しく蛇行しながら潜水する海種兵と幾度もぶつかりながら併走し、ジョージはペンギンの腕を広げた。
「君主のために剣を取るなら、当然、折られる覚悟も出来てるんだろう?
 その覚悟は侮らない。見下しもしない。
 没落した主君再興のためはせ参じ、あらゆる障害に立ち向かおうとするその姿勢……実にいい戦士だ。
 だが。いや。だからこそ――!」
 海中を走る電撃。
 身体を突き抜けていく痛みと苦しみを、しかしジョージは受け入れ、歯を食いしばって耐えた。
 目を見開き、魚雷のごとく海中を走る。
 相手もまた拳に電撃を纏わせ迫る。両者は激しい閃光をもってすれ違い……そして、ジョージのヒレからびしりと血がふきあがった。
「いい、覚悟だ」
 目を瞑るジョージの後ろで、敵兵が血を吐いて海底へと沈んでいく。
 が、戦いの余韻に浸っている暇は無い。水中銃を乱射するカニめいた海種兵の攻撃に、ジョージは両腕をクロスしてガード。
 追撃を自慢のヤドハンドで殴るようにして打ち払い、リリーが間に割り込みをかけた。
「ここは任せてよねぇ……」
 ヤドハンドを翳し銃撃を防御。そのまま突き進み、リリーは手に持ったバールを投擲した。
 水中だというのに回転しながらまっすぐ飛んでいくバール。
 激突した敵兵がのけぞるが、しかし身体にバールが突き刺さったままさらなる射撃。
 必死の反撃にまるで近寄れないリリー。
 が、しかし。
「近づけないならさぁ……投げればいいよねぇ……」
「投げるだと? 武器はもう投げただr――」
 ジョージは足を掴まれた。
 あ、と思った。
 視界がぶおんぶおん回転し、そして激しく流れた。
「う、うわああああああ!」
 敵兵の悲鳴が近づき、そして。
 ジョージと敵兵は激突し、そのままぶくぶくと沈んでいった。(ジョージは回収した)

「アウローラちゃんの唄に聴き惚れて!」
 船の上から『スピリット・カンターレ』を歌い続けるアウローラ。
 それをやめさせようとアキトは剣をとり突撃する……が。
「待たれよ」
「アウローラには触れさせないよ」
 左右から割り込むように道を塞ぐ百合子(美少女レベル1フォーム)とカルネ。
「そこをどけ!」
 アキトが剣を繰り出すが、カルネはそれを硬化した手で掴み取ることで受け止めた。
 ぱきぱきと破壊されていく手。
 だが一方でアウローラの歌がアキトにしみこみ肉体の動きを縛り……
「アキトとやら。主君の命を至上とする心、美少女道にも通じるものがある。
 故に、この言葉で終わりにしよう」
 拳に美少女力を漲らせ、百合子はアキトの顔面をたたきつぶした。
「忠義ご苦労である!」

 破壊され、沈んでいく紋章船。
 大いなる歴史の残骸の中に、彼らの遺体と船は重なっていくのだろう。
 幻想王国の平和と、引き替えにして。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete!

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